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《マリメッコ Marimekko》 テーマ別紹介

今日はテーマ別紹介で、フィンランドを代表するデザインブランドのマリメッコを取り上げます。マリメッコは1951年にアルミ・ラティアとその夫によって生み出されたデザインブランドで、才能あるデザイナーを発掘し発展してきました。マリメッコは自由に創作できる環境をデザイナー達に用意し、制作されたパターンに名前をつけて作家の創造性を大事にする文化があり、非常に先進的かつ伸びやかな色彩感覚の作品が多いのが特徴と言えそうです。なお、マリメッコとは「マリのドレス」という意味で、マリはアルミのアナグラム(armi→mari)で、メッコはフィンランドの古い言葉で「小さな女の子のドレス」という意味となります。今日は2017年のギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)での展示とGallery A4(ギャラリー エー クワッド)での展示を元にご紹介していこうと思います。

まず こちらはGallery A4での展示の際に壁に飾られていたテキスタイル。
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右側のテキスタイルはこの後出て来る茶室にも使われています。アルミは「マリメッコは流行ファッションではありません。私たちは時代を感じさせない、使い続けられる商品を作るのです。ただ、それが偶然かつ往々にしてファッショナブルなのです」と言ったそうで、確かに普遍的なデザイン性を感じさせます。

1960年のアメリカ大統領選挙で、ケネディ候補の夫人であったジャクリーン・ケネディがマリメッコのドレスを愛用していたことが、知名度の向上につながったとされています。

こちらもテキスタイル。様々なモチーフがありますが、場の空気が明るくなるようなデザインばかりです。
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花柄が多いのも特徴で、特にケシの花は「ウニッコ」と呼ばれマリメッコの象徴とも言えるデザインとなっています。

ウニッコが生まれたのは1964年で、マイヤ・イソラによってデザインされました。当時、アルミ・ラティアはマリメッコでは「花柄の生地なんて作らない」と宣言したのですが、それに対してマイヤ・イソラが「それでも花柄はいらないといいますか」と見せたのがウニッコでした。
 参考リンク:https://www.marimekko.jp/the-brand/marimekko-story

こちらはマリメッコのデザインの茶室。この展示の時の目玉作品でした。
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右側面に先程と色違いのテキスタイルが使われています。また、左側面にはカラフルな市松模様があって、マリメッコと日本のデザインが融合したような感じ。

マリメッコが茶室なんて意外だと思いますが、亭主と客人が時間を共有する文化はフィンランドにおいてのサウナ文化にも通じるということで、根底に似たものがあるのかも知れませんね。

にじり口から茶室の内部にも入れました。
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鳥のテキスタイルを掛け軸にしています。壁紙もシンプルな白黒のテキスタイルで、日本の市松模様に似た美意識となっています。

花鳥風月をデフォルメする点においては日本の文化に近いものを感じます。

茶釜や茶道具もマリメッコです
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色とデザイン次第では日本独特と思われている侘び寂びの雰囲気も出ているように思います。

こちらも茶道具。
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ポップなイメージのマリメッコですが、これは華美になりすぎず凛とした印象を受けます。テキスタイル自体のデザインも良いですが、それが実際にどう使われるかによっても印象が変わるものだと感心します。

続いて、現在のマリメッコを支える3人のデザイナーをご紹介。マリメッコは1979年にアルミ・ラティアを亡くし、その後10年ほど試行錯誤を繰り返す低迷期に入りましたが、1991年にキルスティ・パーッカネンがマリメッコを買収するとマリメッコに新しい時代が訪れました。デザインを最優先させるようになり新しいデザイナーたちを起用し、特にそれまで以上に若い世代のデザイナーたちに着目するようになりました。

<マイヤ・ロウエカリ>
この方は1982年生まれの女性デザイナーで、ヘルシンキ芸術大学時代にマリメッコのデザインコンペで優勝した実力の持ち主です。明るくグラフィカルなデザインが特徴らしく、これぞマリメッコといった印象を受ける作品が多いように思います。

マイヤ・ロウエカリ 「シィルトラプータルハ 市民菜園」
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色鮮やかで華やかな印象がある一方、黒い輪郭線が力強い生命力を感じさせます。これは絵画としても素晴らしい作品。

マイヤ・ロウエカリ 「カスヴ」
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こちらは色彩が抑えてあり輪郭線もないので、先程に比べると落ち着いた印象ですがそれでも華やかさがあります。マリメッコの代表的なモチーフであるユニッコ(ケシ)らしきものも描かれていました。

<アイノ=マイヤ・メッツォラ>
続いては1983年生まれの女性デザイナーで、やはりヘルシンキ芸術大学を卒業しマリメッコのデザインコンペで選ばれた経歴の持ち主です。水彩やフェルトペン、グアッシュなど多彩な画材を使い幅広いデザインを生み出しているそうで、滲みを使った作品が多いように思います。

アイノ=マイヤ・メッツォラ 「ユハンヌスタイカ 夏至の魔法」
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水彩の滲みが絶妙で、デフォルメの仕方も含めて日本の琳派に通じるものを感じます。色彩感覚も非常に素晴らしいです。

アイノ=マイヤ・メッツォラ 「シトルーナプー レモンツリー」
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こちらは補色関係の色が並んで目に鮮やかな作品。観ているだけで楽しくなるような生き生きとした色使いです。よく見ると同じパターンの連続ですが、そうと感じさせません。

<パーヴォ・ハロネン>
もう1人は1974年生まれの女性デザイナーで、2011年からマリメッコの生地デザインを手がけヘルシンキを拠点に活動している方です。自然からのインスピレーションを有機的な抽象パターンに転換するのが得意なデザイナーです。

パーヴォ・ハロネン 「トルスタイ 木曜日」
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曲線中心の輪郭線を使い、優美な印象を受けるデザイン。色も統一感があって落ち着いた雰囲気です。これもパターンを感じさせない複雑さでした。

パーヴォ・ハロネン 「ルースルオホ スカビオサ(植物)」
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ただの黒丸のように見えるけど、手描き感に温もりが感じられます。これは植物を元に抽象パターンにしたのかな?

こちらは3人のテキスタイルを用いた品々。
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先程のパーヴォ・ハロネンのテキスタイルを使ったドレスやマイヤ・ロウエカリのティーセット、アイノ=マイヤ・メッツォラのお皿などです。特にお皿が欲しいw ファッションやアクセサリー、室内装飾など幅広いところにデザインが使われています。

ここからは日本との関係を感じさせるデザインについてです。マリメッコでは日本人デザイナーも活躍していて、1970年代には脇坂克二 氏がデザインした「ブーブー」(車のデザイン)が人気を博しました。今回ご紹介した3人のデザイナーも来日したことがあり、日本文化にインスピレーションを得たデザインを発表しています。

アイノ=マイヤ・メッツォラ 「苔寺(コケデラ)」
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アイノは京都の西芳寺から大きな影響を受けて、コケデラという名前のデザインを作りました。割と渋い色合いで扇状に連なっているように見えます。

マイヤ・ロウエカリ 左:「キルシカンクッカサデ 桜の花の雨」 右:「キルシカンクッカサデ アイデアラフ」
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マイヤは日本の街並みを題材にしたようです。ポップで洒落た印象を受けます。若い作家らしい瑞々しい感性ですね。

パーヴォ・ハロネン 左:「アウレオリ 光の輪」 右:同左アップ写真
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パーヴォは葛飾北斎や円山応挙、宮﨑駿など様々な日本文化からインスパイヤされたそうで、これは切り絵の技法を使って染め抜きしています。一見すると黄色っぽいテキスタイルですが、近くでみるとかなり精緻なデザインです。


ということで、単に可愛らしいだけでなく根底で日本文化に通じるものがあるデザインとなっています。多くのデザイナーがマリメッコの精神を受け継いで革新し続けるところも素晴らしい所です。現在ではアパレルショップや雑貨屋さん、ネットなどでも気軽に購入できるので、好みの方は是非チェックしてみてください。
 公式サイト:https://www.marimekko.jp/

 参考記事:
  Marimekko Spirit -Elämäntapa マリメッコの暮らしぶりー (Gallery A4 ギャラリー エー クワッド)
  マリメッコ・スピリッツ ― パーヴォ・ハロネン / マイヤ・ロウエカリ / アイノ=マイヤ・メッツォラ (ギンザ・グラフィック・ギャラリー ggg)
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