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《ブラジル先住民の椅子》 テーマ別紹介

今日はテーマ別紹介で、ブラジル先住民の椅子を取り上げます。ブラジル先住民の椅子には日用で使う実用的なものや、シャーマンが宗教儀式で使うものなどがあり、現代においてはアートとして価値が認められ今でも作られています。椅子は生活や伝統、独自の神話と色濃く結びついて コミュニティ内の文化的・社会的なシンボルでもあり、その造形は幾何学文や動物の形といった、プリミティブでありつつモダンな雰囲気も感じられる独自性となっています。今日は2018~2019年に行われた2つの展示を振り返る形で写真とともにご紹介していこうと思います。
 参考記事:
  ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力 (東京都庭園美術館)
  ブラジル先住民の椅子 (埼玉県立近代美術館)

ブラジル先住民の椅子は大きく分けて下記の3つとなります。A~Bは詳しいことが分からないものが多いようですが、どの民族が作ったものかは判明しているようです。

 A:日用で使う実用的な椅子(幾何文様など)
 B:シャーマンが座って宗教儀式で使う椅子(動物の形など)
 C:動物彫刻の椅子(アートや民芸品として作っている椅子)

BとCはかなり似ていますが、Cの方は最近なので作者がはっきりしているものが多い感じです。Aから順にご紹介してまいります。

まずはカテゴリーAの日用で使う椅子をご紹介。

不詳 「幾何文様」 (カテゴリーA カヤビ)
DSC06345.jpg
シンプルな幾何学性が現代的なデザインと類似するように思えます。素朴なのに洗練と似ているのが面白い。

カテゴリーAは幾何文様と無文様が多い簡素な作品が多く、まさに「用の美」の民芸に通じるところがあるように思えます。

不詳 「幾何文様」 (カテゴリーA ワイワイ)
DSC06371_20190516002214be9.jpg
手作り感があってプリミティブな雰囲気です。このセンスは日本人には出ないと思う。

カテゴリーAにはかなり小さい椅子もありますが、非常に精緻にできています。

続いて宗教的な儀式で使うカテゴリーBの椅子をご紹介

ウルフ 「オウギワシ」 (カテゴリーB メイナク)
DSC02897.jpg
鳥の形が非常に洗練されていて模様も見事です。

鳥は遠方への誘いを意味し、神話の中でも重要な役割のようです。そのためか割と頻出のモチーフ。

ヤワピ 「カエル」 (カテゴリーB カマユーラ)
DSC02901_201808300105234b0.jpg
こちらはカエル。笑ったような表情までユニークで面白い。

椅子に座れるのは高位の男性のみなのだとか。椅子自体が聖なるもののようです。

不詳 「エイ」 (カテゴリーB カラパロ)
DSC03009.jpg
このちょっと ゆるキャラみたいな造形が何とも可愛いw 目もちゃんとついてます。

シャーマンはトランス状態になりながらこうした椅子に座っている訳ですが、椅子に座る分 天に近づいているという考えもあるようです。

不詳 「ハチドリ」 (カテゴリーB パリクール)
DSC03025.jpg
ハチドリらしいくちばしを持っていますね。幾何文様も非常に完成度が高い!

不詳 「サル」 (カテゴリーB クイクロ)
DSC03054.jpg
ゆるキャラ感のある猿w スーパーマンの飛行ポーズみたいに手を伸ばしていますw

カナリ 「ホウカンチョウ」 (カテゴリーB クイクロ)
DSC06406.jpg
こちらは赤いくちばしが特徴の鳥。目はくりっとしていて可愛らしい。背中の文様が見事。

これは制作の様子の写真。寄木造りではなく一木造りとなっていて驚きです。
DSC03100.jpg
現地で今も制作するメイナクのアーティストのインタビューも見たことがありますが、民芸品と思われるのではなくアーティストとして敬意を払って貰うために様々な努力をしているようです。

最後は現代において民芸やアートとなったカテゴリーCです。現代なので作者名がハッキリしている作品が多めです。

クータピエネ 「バク」 (カテゴリーC メイナク)
DSC03110.jpg
アリクイかと思ったらバクでしたw 鼻先が長くてキュートな顔をしています。

不詳 「ジャガー」 (カテゴリーC クイクロ)
DSC03127.jpg
ちょっとずんぐりして間が抜けてる感じがしますが、この独特の味わいが素朴で好みです。

カワカナム&ヤルル 「ジャガー」 (カテゴリーC メイナク)
DSC06503_20190516002427268.jpg
こちらは立派な体格のジャガー。身構えるようなポーズに見えました。ジャガーはかなり強い動物なので神聖なのかも。

アパリタ 「ウミガメ」 (カテゴリーC メイナク)
DSC06544_201905160024336ae.jpg
甲羅がつるつるの亀。座ったら滑りそうw 甲羅もしっかり表現されています。

こちらはこの時の展覧会で触ることのできた椅子。
DSC06634.jpg
見た目以上にずっしりとした重さがあります。表面はつるつるですが、木の温もりがありました。


ということで、ブラジル先住民のエトスが詰まった椅子となっています。工業的な椅子とは一線を画する造形で、どこか懐かしさすら感じられるのではないでしょうか。また見られる機会があるかは分かりませんが、私の中で特に心に残っている作品群です。

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