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いけばな~歴史を彩る日本の美~ 【江戸東京博物館】

昨年末に久々に江戸東京博物館に行って、「いけばな~歴史を彩る日本の美~」を観てきました。意外なことに江戸東京博物館には去年はこれしか行かなかった…。

DSC_8528.jpg DSC_8529.jpg

【展覧名】
 いけばな~歴史を彩る日本の美~

【公式サイト】
 http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2009/1123/1123.html

【会場】江戸東京博物館
【最寄】JR両国駅/大江戸線両国駅


【会期】2009年11月23日~2010年01月17日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(年末 14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
元々この展示にそんなに興味があったわけではなかったのですが、他の展示で観たポスターとパンフレットが面白そうだったので、行ってみました。年末の最終営業日に行ったせいかかなり空いていてゆっくり観ることができました。

そもそもいけばなのことを全然知らないので、これを観ればわかるかと思いましたが、あまりよくわからなかったかなw ポスターなどで想像したよりも博物展的な要素もあって、ちょっと難しいなと思いながら見ていました。 その為、自分の中で咀嚼できずにあまりメモを取らなかったので軽めのご紹介となります。

<プロローグ いけばなの源流>
プロローグではいけばなの成立について触れられていました。 元々は仏教での供花の儀式に源流があるようで、曼荼羅や鳥獣戯画などの模本、華鬘、青磁の器などがありました。

<第1章 いけばなの成立>
1章も成立についてのコーナーでした。いけばなは15世紀の室町時代の京都で発生し、16世紀に芸術となったと説明され、実際にその時代のものが多く展示されていました(一部は江戸時代後半でしたが)

「鋳銅三具足」
龍の巻きついた燭台、麒麟の香炉、龍の花瓶の3点セットです。どうやら中国でつくられたもののようですが、見応えのある細かい細工が施されていました。

「君台観 巻第四・第五」
これは座敷飾のマニュアルで、相阿弥流の系統のものなのだとか。(この展示で何とか流の違いとかも知りたかったんですけどね…。) 絵入りで描かれてわかりやすいマニュアルのようでした。

「花王以来の花伝書」 ★こちらで観られます
これも花の飾り方のマニュアルで、最古の花伝書らしいです。短く簡単な教えも書かれていたので、ポイントを押さえた実用書だったのかなと思いました。

「立花図屏風」 ★こちらで観られます
これは狩野春信の作品ではないかと言われている6曲2隻の屏風です。床の間に活けられた花と背景に画中画(掛け軸)のある曲、床の間に活けられた花の曲と交互に並んでいました。画中画と花のタッチが若干ことなっているのが面白いです。色彩も豊かで、特に白い花が華やかさがありました。

<第2章 豪華になるいけばな>
江戸時代に入ると、武家の屋敷で儀礼の飾として「いけばな」が取り入れられ、大きく豪華になっていったようです。ここではそうした風潮にあった作品が並んでいました。

「花車図屏風」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている6曲2隻の屏風です。左隻には菊、萩、すすきなどを載せた牛車のような車、右隻には杜若を載せた小さな車と、藤と牡丹を載せた車が描かれています。背景は金地で、花とあわせて非常に華やかさのある作品でした。こういう直感でわかりやすい作品が好みですw

「立花之次第九捨三瓶有[池坊専好立花図]」 ★こちらで観られます
池坊専好という人は立花の中興らしく、○代目池坊専好と何代(4代?)かいるようです。 これは全93図あるイラスト付の立花マニュアルの1つで、飾り方の手本にした本のようです。小さい字で何の花か書かれて説明されていました。飾り方も芸術的な感じですが、その鑑賞方法がわからないので詳しくは何とも…。(そういう観る観点もわかると良かったのに)

<第3章 流派の誕生といけばな大流行>
元禄の時代になると、いけばなは成人男子のたしなみとされたようで、立花よりも手軽に活けられる投げ入れ花が好まれたそうです。 ここではいけばなの模写本が並んで展示されていました。どうやら花を学ぶものの必携の書となっていたようです。また、滑稽本で茶化しているものも展示されていて、当時の盛り上がりが相当だったことがわかります。

「近世花くらべ 遠州」
ここには現代の7流派による、造花を使った江戸時代作品の再現がありました。新春から秋に向かう順番で並んでいたのですが、特に驚いたのがこの作品。枝の部分が富士山の形をしたいけばなでした。これは作り物ですが、当時はこの形に花を育てたのかな?と驚きながらみていました。

「江戸名所百人美女 するがだい」
これも今回のポスターになっている作品。「薄端」という口の広い薄手の花器に、梅を活ける美女が描かれた浮世絵です。左上には名所絵が描かれ、いけばな、美人、名所という人気の題材が1枚に収まったお得な絵のようでした。

<第4章 はなの器>
いけばなは花だけでなく、花器や道具も鑑賞の対象になったようです。特に輸入品や唐物が珍重されていたそうで、ここにもそういった作品がいくつか並んでいました。

「花留」
江戸時代までは花留は見えないようにしていたようですが、あえて見せるようになり、花留は多様化していったそうです。蟹、蛸、亀、いかり、かご、碁石?などなど様々でユニークな花留めが並んでいました。

「いけばな図屏風」
菊、すすき、桔梗などが投げ入れられた花籠と、左右には花瓶に入った立花が描かれていました。花と大和絵の優美な雰囲気が呼応する作品でした。

<エピローグ いけばなの近現代と広がり>
明治時代に入ると、武家や商家が没落し、いけばなも一時廃れたそうです。しかし、女子の情操教育として再び勢いを取り戻し、現在に至るようです。最後のエピローグでは明治、大正、昭和の歴史を駆け足で紹介していました。

「The Flowers of Japan and The Art of Floral Arrangement」
英語で本格的にいけばなを紹介した本です。建築家のジョサイア・コンドルが書いた本だということで驚きました。自然や宗教的な行事まで踏み込み、幅広い内容になっているらしく、流石です。そういう本を読んでからくればよかったw


ということで、貴重なものなんだろうなとは思っても、あまりピンと来ない展覧でした。この流派はこういう特徴があるとか、この飾り方はこういう意味があるとか、基本的なところから知りたかったのに、特に無かったのが残念。成り立ちは何となく分かったけど、どうもテーマも散漫な気がしました。ど素人にはハードルが高かったw
出品リスト(公式サイトのPDFで確認可能)を見ると、重要文化財と重要美術品が合わせて10点くらいあり、作品点数も160点もありますので、価値の分かる人が行けば面白いのかもしれません。 テーマが多岐に渡っているので,
ある程度いけばなの知識があったほうがより楽しめそうな展覧会でした。

この後、常設で沢山写真を撮ってきました。次回はそれをご紹介しようと思います。
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Comment
No title
こんにちは
何時も役に立つ美術館の情報をありがとうございます。
いつも楽しく見せて頂いています。
いけばな、素人には難しい世界と思いますが、
一度、行ってみたいなあと思います。
応援しています。ポチ!
Re: No title
骨董品/骨董市ネットギャラリーさん
コメントありがとうございます。応援頂きありがとうございます!
この展示は私にとってはハードルが高かったかなとw いけばなそのものを全然知らないので苦戦しました。
ここは常設もあるので、そちらと合わせるとより楽しめるかと思います。
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
Re: No title
>The comment that was written in Chinese
I cannot judge your comment whether spam or good comment. because I cannot read your comment,
so I do not display it. sorry.

中国語のコメントは私には読めないので、コメントがスパムであるか良いコメントか判断できません。
そのため、表示しないようにしております。すみません。
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