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美術関連の映画

今日は久々に映画の記事です。と言っても最新の映画ではなく、過去にこのブログでご紹介した映画の中から美術鑑賞に関係がありそうなものをピックアップしてまとめてみました。緊急事態宣言が出されコロナの感染者数が連日過去最高を更新するような状況でお盆を迎え、お家で過ごす時間も長いと思われますので この機に映画で美術の知識をつけるというのも一興かと思います。それぞれ簡単な説明で振り返るとともに、NetflixおよびAmazon prime Videoで視聴可能かどうかを調べてみました。当時の記事もリンクしておきますので気になる映画があったらチェックしてみてください。
 ※NetflixおよびAmazon prime Videoの視聴情報は2021年8月8日時点のものです。



ゴッホ~最期の手紙~
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参考記事:映画「ゴッホ~最期の手紙~」(ややネタバレあり)
Netflix:取り扱い無し
Amazon:視聴不可

【総合満足度】駄作_1_2_3_4_⑤_名作

こちらはその名の通りフィンセント・ファン・ゴッホについての映画で、推理小説のようにゴッホの人間関係を深掘りしながら亡くなった当日の様子なども詳細に描写されます。この映画が革新的なのが全編に渡って油彩画を使ったアニメーションとなっている点です。まず最初に役者たちが普通に演技を行ったのを、わざわざ油彩画にし直すという非常に凝った手法になっています。そしてその各シーンはゴッホの描いた名画をモチーフにしているので、ゴッホ好きなら あの絵だ!!と思うことも多々あると思います。これらの絵は何と1秒に12枚の油彩を描いたそうで、総勢125名によって6万2450枚もの油彩画を使っています。(メインはカラーの油彩画、回想シーンは白黒という切り分けも面白いです) その色、そのタッチ すべてがゴッホ風で観たことがある絵が動くのは本当に驚きと感動がありました。ストーリーも映像も非常に素晴らしい内容となっているので、ゴッホが好きな方は是非観ておきたい映画ではないでしょうか。有力2サイトで取り扱い無しとは意外…。



永遠の門 ゴッホの見た未来
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参考記事:映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」(ややネタバレあり)
Netflix:取り扱い無し
Amazon:有料レンタルあり

【総合満足度】駄作_1_2_3_④_5_名作

こちらもフィンセント・ファン・ゴッホの画家としての活動をテーマにしたもので実写映画となります。アルルを目指す少し前から死ぬところまでの物語となっているので、先述の最期の手紙 よりは時系列の範囲が広い感じです。ストーリー自体はゴッホの生涯を辿っていくので特に意外性はありませんが、あまり説明的ではなく 前後不覚で自分の耳を切った事件は直接描かれない等 ゴッホの主観のような感じで進むので、ゴッホの生涯を全く知らないとストーリーは理解できないかもしれません。一方で人々(特にゴーギャン)との芸術論のやり取りのシーンなどは厚めとなっているので、ゴッホの芸術に対する考え方はよく分かるようになっています。精神に異常をきたしてからは画面の一部がボヤけたりしてきて、映像もゴッホの主観を取り入れたような感じとなっています。また、セリフがなく絵を描いたりするシーンが多いのも独特かな。広く一般に受けるような映画とは思えませんが、ゴッホの内面を重視しているのでゴッホ好きには面白いと思います。



ゴーギャン タヒチ、楽園への旅
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参考記事:映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」(ややネタバレあり)
Netflix:取り扱い無し
Amazon:有料レンタルあり

【総合満足度】 駄作_1_2_3_④_5_名作

こちらはポスト印象派の巨匠として名高いポール・ゴーギャンについてです。ゴーギャンと言えばとんでもない性格で、そのクズっぷりは絵画ファンにはよく知られているところですが、この映画を観るとちょっとゴーギャンに対して悪い印象を持ちすぎていたのかも?と思える内容になっています。1回目のタヒチ移住の直前あたりから物語が始まり、楽園を夢見たものの現実に直面するといった内容で辛くても芸術に対してのストイックな所が随所に出てきて、良くも悪くも純粋な人だったのかも?と思う一方で 頑固さが状況を困難にしている感もあり、観ていてもどかしいところが多いように思います。ハリウッド映画のように明確に伏線を張るのではなく、演技や仕草でそれとなくその後を予見させる演出もさりげなくて、たまに有名な名画を描いているシーンなんかもあるので、ゴーギャン好きの人は一層楽しめるのは間違いないです。特にノアノアの版画なんかを観たことがあると、絵の中のタヒチのイメージと映画でのイメージを照らし合わせることもできて楽しいと思います。原始の楽園だと思っていたら予想以上に西欧化した光景なので、ゴーギャンが奥地を目指した気持ちも理解できる気がしました。これを観ると今後のゴーギャン作品を観る上でも参考になると思います。



セザンヌと過ごした時間
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参考記事:映画「セザンヌと過ごした時間」 (軽いネタバレあり)
Netflix:取り扱い無し
Amazon:プライム特典で視聴可能

【総合満足度】 駄作_1_2_3_④_5_名作

この映画は近代画家の父と呼ばれ現在でも絶大な影響力を持つポール・セザンヌを主人公にしたもので、史実を下敷きに最近の研究結果なども考察して作られた物語となっています。幼少の頃に地元のエクス・アン・プロヴァンスで友達になったエミール・ゾラ(後の有名小説家)との友情を主軸に、苦労した若い頃と、仲違い後に久々に再会した頃の2つの時間軸を行ったり来たりするような構成となっています。2人の友情がどうなってしまうのか、結果を知っている人にはストーリーが読めてしまうと思いますが、それよりも心情表現が深くてそこに面白味があると思います。お互いの歯に衣着せぬ応酬が観ているこっちまで心苦しくなってくる感じです。ストーリー以外でも楽しめる点としてこの映画の登場人物にはマネや画材屋のタンギー爺さん、画商ヴォラールなど近代絵画史で有名な人物も沢山出てきます。しかしそれらを知らなくても十分にストーリーは分かるので、知っていたらより楽しめる要素と言った感じかな。また、セザンヌがモデルに対してじっとしていることを強要するシーンなどはセザンヌのエピソードとしてよく紹介されているので、そういった所も細かい配慮を感じます。映像や役者も当時の風景や本人そっくりな感じなので、強烈な個性を堪能できますw これを観ておけば、今後セザンヌの絵を観る時により感慨深いものになるかも。



ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ
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参考記事:映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」(ネタバレあり)
Netflix:取り扱い無し
Amazon:プライム特典で視聴可能

【総合満足度】 駄作_1_2_3_④_5_名作

この映画は近代建築3大巨匠のル・コルビュジエと、女性家具デザイナー アイリーン・グレイの名前を冠したタイトルとなっています。ちょっとネタバレをしてしまいますが、このタイトルだけ観るとこの2人が主軸の映画のようですが、半分そうと言えますが半分は違っているように思います。というのも、主人公はアイリーン・グレイとその恋人で建築家・批評家の評論家ジャン・バドヴィッチ(ル・コルビュジエの仲間)で、ストーリーは2人の人間ドラマと、アイリーン・グレイの代表作である「E.1027」という家を如何に作り、その家がどうなって行ったかという話が主な筋書きです。勿論、その中でル・コルビュジエとアイリーン・グレイがお互いの建築論をぶつけ合う所なども非常に重要なポイントになってきますが、基本的にはアイリーン・グレイとジャン・バドヴィッチの視点で描かれ、ル・コルビュジエは狂言回しのような感じで出てきます。この「E.1027」は長年ル・コルビュジエの建物と勘違いしていた人も多かったのですが、それにはいくつか理由がありそれがアイリーン・グレイのル・コルビュジエへの愛憎両極端の理由とも言えます。この映画の中では2人の考えの違いなんかも分かるようになっていて、ル・コルビュジエの入れ込み具合なんかも分かりますw 事前にこの2人について知っておいたほうが楽しめると思いますので、ご興味ある方は簡単にでも2人の作品や生涯について調べてから観ることをお勧めします。



写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと
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参考記事:映画 「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」
Netflix:取り扱い無し
Amazon:有料レンタルあり

【総合満足度】 駄作_1_2_3_④_5_名作

こちらは写真家のソール・ライターをタイトルに冠した作品で、ソール・ライターはbunkamuraで2017年と2020年に大規模な回顧展が行われ多くのファンを獲得したと思いますが、晩年の2011年頃にイギリスのトーマス・リーチという監督がソール・ライターに密着して数々の言葉を引き出したものとなっています。一般的にイメージする映画というよりはドキュメンタリーといった感じのもので、時系列に追っていく訳ではなく一緒に生活している中であれこれエピソードを思い出して語るような感じの構成になっています。(ちょいちょいと章立てのように13個のテーマが出てきて、その話をする感じ) 色々とこだわりがあるちょっと頑固なおじいちゃんですが、亡くなった奥さんへの愛情が深く 助手の女性の言うことには素直だったりと優しい面もあってちょっと微笑ましいところもあります。技術的な話などはほぼ無くソール・ライターがどういう光景に興味を持っているのかに主眼が置かれているように思えます。しかしそこで撮った写真は映画内で観られないのが残念かな。一方でソール・ライターへのオマージュ的な映像が入るところも見どころで、最後はソール・ライター自身もこの映画を気に入ってくれたようです。短編ですがソール・ライターの人となりがよく分かる内容で、完全にファンの方向けの作品です。



メリエスの素晴らしき映画魔術&月世界旅行
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参考記事:映画「メリエスの素晴らしき映画魔術&月世界旅行」(ネタバレあり)
Netflix:取り扱い無し
Amazon:プライム特典で視聴可能

【総合満足度】 駄作_1_2_3_④_5_名作

この映画は2本立てとなっていて、1本目は110年前にジョルジュ・メリエスによって作られた映画「月世界旅行」に関するドキュメンタリーで、もう1本がカラー版の「月世界旅行」となります。まず1本目の「メリエスの素晴らしき映画魔術」ですが、こちらはジョルジュ・メリアスの偉業やその後の顛末、月世界旅行の修復についての話がメインとなっています。1902年に世界最初のSF映画とも言える「月世界旅行」が発表されると、たちまちのうちに大人気となりました。これは複数のシーンから成るストーリーのある作品で、今では当たり前のようでも当時の映画界ではこれは大変画期的なことでした。しかしその後大半のフィルムは失われ、奇跡的に見つかったフィルムの修復作業などが紹介されます。そして十分に価値と有難味が理解できた所で、修復されたカラー版の「月世界旅行」が始まります。映画の中の解説や構成も非常に分かりやすくて、メリアスと「月世界旅行」がどれだけ偉大な存在であるのか実感できるので、特に映画好きの方は映画の歴史を知る上でもチェックしてみるのもよろしいかと思います。



ミッドナイト・イン・パリ
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参考記事:映画「ミッドナイト・イン・パリ」(ややネタバレあり)
Netflix:視聴可能
Amazon:有料レンタルあり

これは娯楽映画で、アメリカ人の主人公がふとしたきっかけでタイムトラベルする話です。ちょっとコメディテイストもあり1920年代のパリに憧れる脚本家の主人公が実際に過去に行ったらどうなるか?みたいな感じで話が進んでいくのですが、出てくるメンツがかなり面白いです。最初のほうでF・スコット・フィッツジェラルド(グレート・ギャツビーなどの作者)と妻のゼルダ・セイヤー(この人も作家)が出てきて、その後もアーネスト・ヘミングウェイ、ガートルード・スタイン(芸術サロンを開いていた女性詩人)といったパリに行っていたアメリカの文豪が次々と出てきます。特にヘミングウェイの男気溢れるところなどはイメージぴったりで面白いです。
文豪だけでなく、ジャン・コクトー(名前だけ出演)、ピカソ、ダリ、マン・レイ、ルイス・ブニュエル(ダリとアンダルシアの犬を作った映画監督)、ロートレック、ゴーギャン、ドガなど芸術家もどんどん現れてきては主人公と交流を持っていく感じです。 他にも思い出し切れないほど沢山の芸術家・音楽家・文豪・舞踏家などが出てくるので、観る側にもある程度以上の知識・見識が無いとなんのこっちゃとなるかと思います。しかし、それを知っているとその設定や時代考証の緻密さに引き込まれると思います。役者が驚くほどに本人に似ていて、ピカソやダリ、ロートレックなどは出てきた瞬間に分かるほど似ていました。(さらに各芸術家の性格もよく把握していて言動がいちいち面白いw) パリの美しい町並みも楽しめるし コメディ的な小ネタもウィットに富んでいるので、芸術好きの方には特に楽しめる作品ではないかと思います。



ということで、いくつか挙げてみました。映画館で観ていないものやブログ休止中に観た映画は割愛していますが、そのうちまた同じようにご紹介するかもしれません。せっかくのお盆休みがこんな状況となってしまいましたが、その時間を有効に使う方法を考えたいところですね。
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