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《塩田千春》 作者別紹介

今日は作者別紹介で、ベルリンを拠点に活躍をされている塩田千春 氏を取り上げます。塩田千春 氏は記憶、不安、夢、沈黙など 形の無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られ、時に恐怖すら感じるような生々しい作品もあります。現在は大規模な個展が各国の美術館を巡回していて、世界的な注目を集めています。今日も過去の展示で撮った写真とともにご紹介していこうと思います。

塩田千春 氏は1972年に大阪で生まれ、1992~1996年に京都精華大学美術学部で洋画を専攻、彫刻科で村岡三郎 氏の助手も務めたそうで、在学中にオーストラリアに留学もしています。19歳の時滋賀県立近代美術館でポーランドのマグダレーナ・アバカノヴィッチの個展を観たのを契機に、彼女のもとで学ぶためにドイツ留学を決意し、1996年に渡欧しハンブルグ美術大学に入学。1997~1998年はブラウンシュヴァイク美術大学でマリーナ・アブラモヴィッチに師事し、その後ベルリン芸術大学でレベッカ・ホルンにも師事しました。その後はベルリンを拠点に数多くの展覧会で作品を発表していて、すべて合わせると300以上もの展覧会に出品しています。2019年には森美術館で大規模な個展が開催され、2021年には台湾、中国へと巡回し、その後にはオーストラリアやインドネシアも予定されています。今日はその2019年の展示を振り返る形でご紹介してまいります。
 参考記事:塩田千春展:魂がふるえる (森美術館)
 

塩田千春 「蝶のとまっているひまわり」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは5歳の頃の絵。ミロ的な簡略化を想起してしまうのは考えすぎかなw 何故か鏡文字になっているサインや色彩感覚など、非凡なものを感じさせます。

この作品は牧歌的ですが、若い頃からちょっと生々しい表現が多いので、この後ご注意。

塩田千春 「絵になること」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは大学在学中にオーストラリアに交換留学に行っていた頃の作品。自分が絵になる夢を観たそうで、自身が絵画の一部となった感覚を表そうとしているようです。血まみれの事件じゃないのねw

塩田千春 氏には全身を使った作品がいくつかあり、こうした作風も特徴のように思えます。

塩田千春 「物質としての存在のあり方」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは京都の法然院を会場にしたインスタレーションの記録写真。生と死、輪廻転生などを表現しているそうで、「生まれた時に物質として見えるのはへその緒、死ぬ時に残るのは灰」という言葉からへその緒をイメージしました。

この個展もそうでしたが、会場と一体化するような作品も特徴の1つかもしれません。

塩田千春 「私の死はまだ見たことがない」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは180個もの牛の頬骨を使った作品。タイトルはマルセル・デュシャンの墓碑の「されど、死ぬのはいつも他人ばかり」に呼応しているとのことで、確かに他者の死を連想させるモチーフになっています。水を求めて集まってきたような配置になっていて、その中心には本人が首だけ出して埋まってるという…w 死んでいるのに生き物のように見えるのが面白い作品です。

沢山のものを集めて表現するという手法もいくつかの作品で共通しているように思えます。それが迫ってくるような存在感を出していてちょっと怖いものもw

塩田千春 「親戚の顔」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは塩田千春 氏の親戚の写真を並べた作品。ドイツの地で自分の帰り道がないように感じて昔のことを思い起こしたそうです。記念写真が多くて一家の歴史を観るような感じかな。一種のノスタルジーなのかもしれません。

先述の通り、記憶は塩田千春 氏の作品にとって重要なテーマとなっています。同様に夢など形のない観念的なものに関心があるようです。

塩田千春 「アフター・ザット」「皮膚からの記憶」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
「皮膚からの記憶」は2001年の第1回ヨコハマトリエンナーレでも出品された作品。泥だらけのドレスをシャワーで流し落とすインスタレーションですが、「ドレスは身体の不在を表し、どれだけ洗っても皮膚の記憶は洗い流すことができない」とのことですが、ちょっと不穏なものを感じるw

塩田千春 「皮膚からの記憶」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
これだけ並ぶと無茶苦茶怖いですw このインパクトは一度観たらトラウマレベル

インスタレーションだけでなく映像作品も作られています。

塩田千春 「眠っている間に」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは映像作品。糸が張り巡らされている中で何人か寝ている様子が映されていました。糸が繭のようで人々は荘子の「胡蝶の夢」を観て夢と現実の狭間にいるとのことで、シュールさも感じられます。やはりここでも糸を使っていて幻想的な雰囲気を出していました。

映像でも塩田千春 氏自ら作品の中に登場することもあります。

塩田千春 「ウォール」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらも映像作品。またもや自ら体を張っていますw 血が連想させる家族・民族・国家・宗教などの境界線を壁に喩えているそうで、「その壁を超えることの出来ない人間の存在を表現」しているとのことです。チューブの中の血が巡る様子は中々美しく、これもへその緒などを思わせるものがありました。

インスタレーションでは黒や血のような赤い色が多く使われているように思います。心身を表しているからかも。

塩田千春 「外在化された身体」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは心と身体がバラバラになっていくの表現しているようです。下の方に手が転がっていて、ボロボロのネットは心なのかな?

塩田千春 「静けさのなかで」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは9歳の頃に隣の家が火事になり、次の日に外にぽつりとピアノが置かれていたという体験に基づく作品。言い知れぬ不安と死を感じる一方で、廃墟的な美しさも感じられます。

黒い糸を張り巡らせた焼けた椅子の作品などもあり、黒はそうしたイメージを増幅させます。

塩田千春 「時空の反射」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは鏡を使ってドレスが2つあるように見えています。黒い糸はどうしても死を連想させるかな。純白のドレスなのにちょっと不穏というかw

この展示の際、これまでの特徴が合わさったような大型作品がありました。

塩田千春 「集積-目的地を求めて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらは沢山のスーツケースを階段状に赤い糸で吊るした作品。かなり圧倒的な光景です。

塩田千春 「集積-目的地を求めて」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
裏から観ることもできます。作者の言葉によると「スーツケースの山を見るとその数だけ人の生をみてしまう。故郷を離れどこかに目的地を求め、どうして旅に出たのか。その出発の日の朝の人々の気持ちを思い起こしてしまう」ということで、このスーツケースは持ち主の人生そのものを表しているのかもしれません。連なり混じり合うような配置も作者の境地を反映しているようです。

最後に塩田千春 氏の作品を象徴するようなインタビュー作品。

塩田千春 「魂について」
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cc1.pngこの写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
こちらはドイツの小学生に魂(ゼーレ)って何?と聞いたインタビュー映像。割と深い回答が多くてちょっとビックリ。塩田千春 氏病気で生きることに精一杯だったそうで、魂について今一度考えさせられるような映像でした。


ということで、ちょっと生々しいほどに生命や死、記憶や夢といったものを感じさせる作品となっています。海外で高い評価を受けていて 日本よりも海外での展示に忙しそうではありますが、ちょうど2021年9月4日から始まった奥能登国際芸術祭2020+にも参加されているようです。今後もそうした機会があると思いますので、また是非じっくり観たいアーティストの1人です。
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