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《放散虫》 テーマ別紹介

今日はテーマ別紹介で、放散虫を取り上げます。放散虫は海のプランクトンの一種で、単細胞の原生生物です。5億年前の地層からも化石が見つかっていて、5回の大量絶滅でも生き残り 1万種以上にもなる驚異的な生き物です。現在でも世界中の海に暮らしていて、アメーバ状の体にガラス質(シリカ、二酸化ケイ素からできている)の骨格を持ち、奇妙なほどに複雑な形となっています。今も謎が多い生き物ですが、地層の年代測定に使われるという意外な側面もあり、地質学で大きな役割を担っています。今日は2019年の写真展を振り返る形で、当時使わなかった写真を追加しながらご紹介してまいります。
 参考記事:「放散虫(ほうさんちゅう)」~ 小さな ふしぎな 生き物の 形 ~ (FUJIFILM SQUARE フジフイルム スクエア)

まずこちらは様々な形をした放散虫の写真。
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幾何学的な文様みたいな不思議な形をしているだけでなく、骨格は石英やガラス製品と同じ物質の二酸化ケイ素(SiO2)で出来ています。単細胞なのに複雑な形をしていて一層に謎が深まるw 最大でも数ミリ程度しかないようですが、肉眼で見えない世界にこんなのがいるんですね。5億年前のカンブリア紀からこうした骨格を持つようになったようで、どうやってこうした形を作り出すのかはまだ謎のままだそうです。

こちらは放散虫の一種の体の仕組みを図解したもの
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こうして観ると生物っぽいかな。 北極海から赤道まであらゆる海に漂っているそうで、海面から深海5000m(8000mでも確認あり)まで生息している意外とポピュラーな生物です。

一体何を食べているのか気になりますが、このようになっています。
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さらに小さな生き物を捕食しているようです。消化器官はなく体に取り入れて消化する細胞内消化を多なっています。群体になったり藻類と共生する種もいるようで予想以上に複雑な生態のようですね…。

1993年に「しんかい6500」がマリアナ海溝の水深6300m付近で採取した石の中からも放散虫が見つかっています。およそ1億4000年前の中生代白亜紀最初期の頃の化石で本当に驚くべき存在です

「アーケオセノスフェラのなかま」
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綺麗な球体で、中にもう1層骨格があると考えられているようです。骨格がこんなに規則正しく作られるのが不思議で仕方ないですね。

「ループス・プリミティヴス」
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9個の筒を重ねた塔みたいな形となっています。筍とかにも見える… 一番下にはヒダが無く、どういう理由でこうした形になるのか気になります。

ちなみにこれらの放散虫の大きさはアメーバ状の体を入れても3mmに満たず、骨格の大きさは0.1~1mmと非常に小さい生き物です。

「ヘキサスチルス?のなかま」
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ウルトラマンのブルトンかエヴァのラミエルか…w こんなエイリアンじみた生物がいるとは…  しかもこれがガラス質なのもヤバいw

「シューム・フェリフォルミス」
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網状の中に外側の骨格を支える柱のようなものがあるそうです。猫の後ろ姿のように見えると思ったら、フェリフォルミスは猫のことなのだとか。

「オービキュリフォルマのなかま」
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かつてはドーナツ状の真ん中に骨格があったはずと考えられるようです。これが生物の化石とは信じがたい形ですw

生態だけでも驚きの連続の放散虫ですが、放散虫を調べると時代ごとに特徴的な種類がいるので年代測定に使えるそうです。地殻変動が多く地層が変形する日本において、1970年代に発見された放散虫による年代測定方法は「放散虫革命」と呼ばれるほど大きな役割を果たしているのだとか。

「アリエヴィウム・ヘレネ」
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3つの大きな棘と小さな棘が無数にある形が花のようにも見えます。真ん中の球体は層になっていて結構複雑な構造です。

「アカントサークス・エキノサークス」
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こちらは泡状の孔が空いていないツルッとした表面に見えるかな。メリケンサックみたいなw

「デヴィアトゥス・ヒッポシデリクス」
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こちらは半円形の珍しい形。無機的な幾何学模様のが多い中で有機的な雰囲気があるかも。

「アーケオディクチオミトラのなかま」
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なにかの蕾のような形の放散虫。中にはドーナツ型のしきり板があるそうで、これも見た目以上に複雑な構造なのかも

「パンタネリウムのなかま」
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まるで金剛杵みたいな形でどうしてこんな形に進化するのか想像もつきません。

放散虫は種類が多すぎて名前がついていない種類もいるそうです。まだまだ新種発見があるかもしれませんね。

「シュードポウルプス(?)のなかま」
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穴の入り口が結び目のように見える謎の構造。ここから餌を食べるのだろうか?? 何本もの柱で骨格を支えています

「ウィリリーデルムのなかま」
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まるで蜂の巣みたいですが、六角形は安定性が高く自然界によくある形なのでこれはある意味納得。しかし六角形以外にも五角形や七角形などもあるようです。

「アーケオトリトラブス・グラシリス」
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もはや何かの建造物のように見える3方向に伸びた骨格の種類。編み込まれたような無数の穴もきれいに並んでいます。

「ナポラのなかま」
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古代中国の鼎に似ていることから明治時代にはこのような3本足の放散虫は「かなえ」と呼ばれたそうです。足が4本ならエッフェル塔とか東京タワーみたいにも見えたかもなあw

放散虫は英名はラジオラリアというそうで、ラジオはラテン語で光線、放射、車輪を支える棒などを示すそうです。確かに放出して散った形の虫ですね。

「クロコカプサのなかま」
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一見すると棘のあるホネガイみたいに見えますが、巻き貝と違って螺旋に巻いていないのが特徴となっています。

「ミリフスス・ディアネ」
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こちらは綺麗に均整の取れたフォルムの放散虫。貝殻とかを思い起こしました。

エルンスト・ヘッケル 「自然の芸術的形態」(複写)
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こちらは約100年前に亡くなったドイツの生物学者いよる放散虫のスケッチ。放散虫の形に魅了されたらしく、こうしたスケッチを沢山残しているそうです。



ということで、恐竜より前からいるのに現在でもたくさんいて非常に不可思議で驚異的な生き物となっています。その形も面白いので観ていて飽きません。
ちなみに現在開催中の神保町ヴンダーカンマー(2021年9月4日~9月26日)の展示の1つとして9月12日、23日にはワークショップで放散虫を実際の顕微鏡で見るイベントもやっているようです。まだコロナで外出は難しい状況ですが気になる方はチェックしてみてください。
 参考リンク:神保町ヴンダーカンマー
 



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