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《ガラスの歴史》 テーマ別紹介

今日はテーマ別紹介で、ガラスの起源から10世紀頃までの歴史を取り上げます。ガラスは今から4300年ほど前にメソポタミアで生まれました。その後、前1世紀頃に東地中海地域で吹きガラスの技法が生まれると、ごく一部の人の贅沢品だったのが一般の人々の日用品としてローマ帝国全土に広まり、やがてササン朝ペルシアやイスラーム王朝に受け継がれ、シルクロードを経て中国や日本にももたらされていきます。形や技法も高度化し、洗練された器や装身具は交易品として好まれ、それぞれの地域の特質も生まれていきました。今日も過去の展示で撮った写真と共にご紹介しようと思います。

 参考記事:
  雲母 Kira 平山郁夫とシルクロードのガラス (平山郁夫シルクロード美術館) [山梨 北杜編]
  Drinking Glass-酒器のある情景 感想前編(サントリー美術館)


ガラスがいつ何処で発明されたのかが明らかになったのは割と最近のことで、以前はエジプトや東地中海が起源と考えられていましたが、70年ほど前にイラクでアメリカの調査隊がガラスの円筒印章やガラスの塊を発見し、最も古いガラスは4300年前のメソポタミアであることが判明しました。

こちらは前16~13世紀頃の北メソポタミアの首飾り
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青く線状の模様がついていて、既に加工技術が装飾品を作るまでになっているのがよく分かります。

ガラスは西アジアやエジプト、エーゲ海のミケーネなどでも作られるようになりました。艷やかで熱で加工しやすいのでラピスラズリやトルコ石などの輝石を目指して作られ、エジプトではファラオの身を飾る装身具や葬送品に使われました。

こちらは前14~13世紀頃のミュケナイの鋳造ビーズ。
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ミュケナイはギリシャのミケーネのこと。細かい文様の金の飾りと共にビーズが使われています。こちらも既に中を空洞にできるだけの技術と美しさに驚き。

ガラス器は紀元前16世紀半ばにメソポタミアやエジプトで王族のもとに作られ、権力者への捧げ物となったようです。また、酒は人の穢れを払い神への畏敬を表す場面と共にあり高貴な方たちの儀礼などにも使われるようになりました。

こちらは前4~3世紀頃の東地中海地域の「両耳付瓶と金製台」
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装身具だけでなく身の回りの品にもガラスが使われました。今はあまり透明感が無いように思えますが、装飾性が見事。

ちなみに古代のガラスはほとんどがこんな感じで風化しているようです。表面が白くなったり虹色に輝く皮膜のようになっているのを「銀化」と呼ぶそうで、長い間土の中にあると化学変化をおこしてこうした感じになるようです。しかし別の風合いが生まれるのでそれはそれで美しい。

前1世紀頃の東地中海地域の碗
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日本の茶器のような侘び寂びを感じるのは風化した為かも。こうしたガラス器は鋳型を使った製法で作られていたようです。

前1世紀頃の東地中海地域のリブ装飾碗
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この時代のガラス器が好みのツボかもw 色だけでなく周囲のひだの形も面白いのですが、この形は「熱垂下法」という特殊な成形が行われたようで、上下逆さにしたお椀状の型に、予め刻んだ模様(日章旗の太陽みたいな形)を乗せ、再び溶かして流れ落とすという方法で作ったそうです。 古代の人たちの知恵は凄い…。

こちらは前1世紀頃の東地中海地域のミルフィオリ(千華文)皿
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表面に無数に華の模様が付いた皿。こちらはミルフィオリガラスと呼ばれるもので、モザイクの切片を鋳型に敷き詰めて熔着しているようです。華やかな宴会で使われたのかな?

こちらは前1世紀頃のエジプトや東地中海の小さいガラス
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モザイクガラスやとんぼ玉、ペンダントなど。鳥の形や神々の頭など、ユーモラスな感じが面白い。

前1世紀~前50年頃頃になると、東地中海地域(恐らくシリア・パレスチナ地方?)で吹きガラスの技法が生まれ、これまでの鋳造ガラスやコアガラスと異なり格段に早く大量に生産できるようになりました。その為、ごく一部の人の贅沢品だったのが一般の人々の日用品へとなっていきました。また、ガラスの色の技術も発展し、徐々に透明になり紀元1世紀には窓ガラスも作られるようになったそうです。 こうした技術はローマ帝国全土に広まり、やがてササン朝ペルシアやイスラーム王朝に受け継がれ、シルクロードを経て中国や日本にももたらされることになります。

こちらは紀元1~2世紀頃の東地中海地域の吹きガラス。
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これまでのガラスと違って無色透明にかなり近づいています。消色剤としてアンチモンやマンガンを加え鉄分等の発色を抑え、温度を調節することでこうした透明度を実現しているのだとか。ローマの科学技術には毎度驚かされます。

日用品である水差し。
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紀元前後のローマの著述家によるとガラスの杯は銅貨1枚で買えるとのことなので、以前に比べて一気に値段が下がって日常に溶け込んでいったのが伝わります。

この他にもリュトンや首飾りなど様々な品が作られています。吹きガラスによって表現力も増して装飾に関してもさらに多様化したようです。

こちらは大英博物館所蔵の「ゴールドサンドイッチガラス碗」の再現模型
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オリジナルは前3~2世紀頃に作られたとされているようですが、非常に高い技術で作られていて海外では再現の研究も行われてこなかったそうです。金箔の装飾は日本の敷金と同じような技術のようで、そうした点などもあって2013年に日本の研究者によって再現されました。 現代でも簡単に再現できないほどの技術が2000年前にあったというのは驚異的です。

ガラスは安価な原料で出来ますが、洗練された器や装身具は交易品として好まれたそうで、ヨーロッパでは毛皮や琥珀、東南アジアではスパイス、中国では絹 など様々な品と交換されたようです。そうしてガラス製造も各地で行われるようになりましたが、同じ技法でも原材料の僅かな差や好みの違いでそれぞれの地域の特質が生まれたそうです。

こちらは7~8世紀頃のイランの「短形切子碗」
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透明度が高く薄手で、カットまで入っている碗。ここまで来ると現代にも通じるような出来栄えになっているように思えます。

安価になったはずが、高級な嗜好品としての側面もなくならないというのがガラスの特徴の1つかもしれませんね、

こちらは7~8世紀頃のシリア~エジプトの「羽状文小壺」
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マーブルのような模様が緻密で美しい小壷。

9~10世紀頃のシリアの腕輪
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イスラーム化する前は単色無文のシンプルなものが多かったようですが、9世紀頃からガラス棒をひねって様々な色を巻きつけるタイプが作られるようになったそうです。イスラームの人たちの好みに合ったのかな?

ちなみに有名なヴェネツィアン・グラスは982年の文献には既にガラス職人がいたことが記されているようです。(ヴェネツィアン・グラスについてはまた別の機会にでもご紹介しようと思います)


ということで、ガラスは現代に至るまでその美しさと実用性の両面で人々の生活に密接に関わってきました。高級な品がやがて安価になって大衆化するというのは人類の歴史のパターンではありますが、ガラスは芸術的な側面を維持しているのが面白いところです。今後もガラスに関する展示は沢山行われると思いますので、その歴史をざっくり知っておくと一層に楽しめると思います。
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