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イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン (感想前編)【三菱一号館美術館】

久々に展覧会の記事です。2週間ほど前の土曜日に三菱一号館美術館で「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」を観てきました。メモを多めに取ってきましたので前編・後編に分けてご紹介していこうと思います。

DSC07552.jpg

【展覧名】
 イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン

【公式サイト】
 https://mimt.jp/israel/

【会場】三菱一号館美術館
【最寄】東京駅/有楽町駅

【会期】2021年10月15日(金) ~ 2022年1月16日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
事前予約制の展覧会ではあるものの 当日券もあるということでチケットを買わずに行ったところ、20分くらいチケット購入待ちの列に並びましたw 中はそれほど混んでいませんが、待ち時間は長いので混雑状況は②にしておきます。これから行かれる方は事前予約をしたほうが無難だと思います(人で一杯になると予約者優先です)

さて、この展示はイスラエルのエルサレムにあるイスラエル博物館の名前を冠したもので、その50万点にも及ぶコレクションの中から印象派前後の画家の作品を中心に69点が並ぶ内容となっています。そのうち59点は日本初公開ということで、非常に貴重な機会で大半の方はまだ観たことがない作品なのではないかと思います。展示構成は主にモチーフごとに分かれていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。


<I 水の風景と反映>
まずは水辺の作品のコーナーです。印象派は水のある光景を好んで描いたことが知られていますが、その印象派の先駆けになったコローやクールベ、ブーダンなどの時代の作品から並んでいました。

2 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「川釣り」
水辺の森を描いた作品で、岸には牛、水上には小舟で釣りをする人が描かれています。木々のぼんやりした表現がコローっぽさを感じさせます。穏やかでちょっと幻想性すら感じられる光景でした。

この辺りには他にもコローが3点ほどあり「川沿いの町、ヴィル=ダブレー」(★こちらで観られます)という作品も同様にコローの典型的な作風に思えました。

8 カール・ピエール・ドービニー 「漕ぎ手のいる大きな川の風景」
こちらは印象派の先駆けの1人であるシャルル=フランソワ・ドービニーの息子の作品で、水上から見た橋や教会が描かれています。父に比べるとやや暗く くすんだ色合いに見えるかな。川には小舟が浮かび静かでちょっと物悲しい雰囲気にも思えました。
近くには父のシャルル=フランソワ・ドービニーの作品もありました。モネにも伝授したアトリエ船から見た川の景色を描いたもので、さすが親子だけあって似た雰囲気です。

9 ギュスターヴ・クールベ 「海景色」 ★こちらで観られます
荒々しい海の波を描いたクールベお馴染みの画題で、背景には黒っぽい雲が迫っている様子が描かれています。粗目のタッチではあるものの写実的で力強さを感じます。特に波の飛び散り方に緊張感があるように思いました。

14 ウジェーヌ・ブーダン 「潮、海辺の日没」
こちらは小さめの作品で、夕日の中で網を引っ張る漁師らしき2人の人の姿が描かれています。水平線には太陽があり全体的に黄色~オレンジに染まっています。縦長の画面に水平線が下の方にあるので画面は小さくても広々とした印象を受けました。

10 ポール・セザンヌ 「川の湾曲部」
こちらは恐らくセザンヌの初期作品で、暗い色調で川を描いています。かなり粗くて細部はよく分かりませんが力強く、セザンヌが表現を模索している様子が伝わってきます。解説によると、レアリスムの理念を反映しているものの、本質はロマン主義に近く気質や気分が優先されてるようでした。
この隣にあった「エスタックの岩」は打って変わって平坦で滑らかな表現になっていて、その違いに驚きます。

23 ポール・シニャック 「サモワの運河、曳舟」
こちらは大型の作品で、川の上に蒸気船が浮かぶ様子が描かれ、川岸には並木道が続いています。新印象主義の特徴である大きな点描で描いていてオレンジ~紫がかった独特の色彩となっています。陰影もしっかりついていてシニャックならではの味わいです。長閑で静かな光景となっていました。

この近くにはベルギーの20人会の作品などもありました。点描のベルギーへの受容を感じさせる1枚です。また、モネのエトルタを描いた作品やシスレー、ブーダンなどもありました。ブーダンは典型的な作風の海景画で、広々として清々しい光景です。

25 ポール・セザンヌ 「川のそばのカントリーハウス」 ★こちらで観られます
手前に水面があり両脇に木々が並び、奥に屋敷の見える光景を描いた作品です。木には茶色が混じり全体的に緑とオレンジが多いセザンヌらしい色彩感覚です。家は三角や直線でデフォルメされていたり、塗り残しのようなところがあったりするのも個性が感じられて見応えがありました。


<II 自然と人のいる風景>
続いては自然や人の営みを描いた風景画のコーナーです。大部屋だけは撮影可能となっていましたので、この部屋は写真を使ってご紹介して参ります。

レッサー・ユリィ 「風景」
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今回の展示で一番の発見だったのがこのレッサー・ユリィでした。ミュンヘンの分離派に参加した画家で、静物や風景を印象派に近い技法で描きました。ここでは水辺の風景を陰影強めに描いていて神秘的な雰囲気かな。この後にも何度かレッサー・ユリィは出てきますがどれも好みです。

27 クロード・モネ 「睡蓮の池」
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こちらは今回の見所の1つです。後の章でこれとよく似た作品が3点出てきますので、じっくり観ておきたいところです。晩年のジヴェルニーの自邸の庭を描いたもので、光の微妙な違いや、空の広がりなどを感じさせます。実物、反射、水面下などが一体となって遠近感も曖昧になるような光景ですね。
 参考記事:番外編 フランス旅行 ジヴェルニー モネの家
 
クロード・モネ 「ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて」
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これは実際には娘たちではなく、悪天候に備えて築かれた藁の束です。影がないので真昼と思われるようですが、かなりボコボコした仕上がりになっていて近くで観るとそれが藁の質感を強めているように思えました。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「モルトフォンテーヌ、小さな柵へ続く道」
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牧歌的で柔らかい空気感がコローの真骨頂だと思います。この樹のモヤッた感じが特徴の1つですw 穏やかで温かみがありますね。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「樹々の間に差す陽光」
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こちらも樹が描かれたコローの作品。逆光で暗い中にポツンと人影があるのが何とも寂しげで詩的な印象です。

シャルル=フランソワ・ドービニー 「花咲くリンゴの木」
DSC07584_20211107011840a62.jpg
コローと同じくバルビゾン派なので表現は共通する部分が感じられるかな。よく観ると人や牛の姿もあり、一種のユートピアのような雰囲気すらあるかも。

ギュスターヴ・クールベ 「岩のある風景」
DSC07578.jpg
クールベは天使とか見えないものは描きたくないという当時の画壇では反逆児のような存在で、一方でこうした自然はつぶさに描いています。岩のゴツゴツした感じが何とも力強い
 参考記事:《ギュスターヴ・クールベ》 作者別紹介
 
ギュスターヴ・クールベ 「森の流れ」
DSC07588.jpg
こちらも自然描写。この時代は自然を大画面に描くということ自体も革新的なことでした。この光景を描こうと思った時点ですごいw


ということで、2章の途中で中途半端ですが今日はここまでにして次回も残りの写真を使っていこうと思います。巨匠の典型的な作品が多い一方で目新しい画家も見つかってかなりの満足度です。

 →後編はこちら

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