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ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント (感想後編)【東京都美術館】

今日は前回に引き続き東京都美術館の「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」についてです。前編は3章の途中(ゴッホのオランダ時代)までご紹介しましたが、後編ではゴッホの晩年までのコーナーについてご紹介して参ります。まずは概要のおさらいです。

 → 前編はこちら

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【展覧名】
 ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント

【公式サイト】
 https://gogh-2021.jp/
 https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_vangogh.html

【会場】東京都美術館
【最寄】上野駅

【会期】2021年9月18日(土)~12月12日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】

<3 ファン・ゴッホを収集する>
[3-3 画家ファン・ゴッホ、フランス時代]
[3-3-1 パリ]
ゴッホは1886年2月28日頃にパリに到着して画商の弟のテオと暮らし始めました。3ヶ月ほどフェルナン・コルモンのアトリエに通い、そこでロートレックやベルナール等と知り合っています。パリで印象派、新印象主義、浮世絵、アドルフ・モンティセリの絵画などに出会い、自分が時代遅れであることに気づき 新しい表現を試みるようになりました。オランダで学んだドラクロワの色彩理論は変わらず手本にしながら花の静物に何十点も取り組み色調を明るくしていきました。約2年ですっかり表現を刷新しています。

50 フィンセント・ファン・ゴッホ 「草地」
こちらはパリに来てから1年後の作品で、ニューネンで描いた絵の上に描いています。草地が広がり緑が鮮やかで、所々に白やピンクの花が咲いています。細かく描いている訳ではなく、印象派の技法を取り入れた大胆な描法となっているかな。また、モチーフにこうしたものを選んだのは浮世絵の影響のようでした。

52 フィンセント・ファン・ゴッホ 「レストランの内部」 ★こちらで観られます
こちらはレストランの中にテーブルと椅子が並ぶ様子が描かれ、右上には画中画としてゴッホの絵が飾られています。点描で描かれていて新印象主義から影響を受けて試しているのは明らかで、シニャックとは一緒に絵を描いたりする親しい関係だったようです。陰影は浅めですが、誰もいない画面は落ち着いていて静かな雰囲気です。家具類は普通のタッチで描いていたりするので、1枚の中でも様々な技法を試行錯誤しているのが伺えました。


[特別出品 ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション:オランダにあるもう一つの素晴らしいコレクション]
続いては特別展示のコーナーで、ここはファン・ゴッホ美術館から出品された作品が並んでいます。ファン・ゴッホ美術館は弟テオ(ゴッホの半年後に亡くなってしまった)の奥さんのヨーと 息子のフィンセント・ウィレムに引き継がれたコレクションを核としていて、フィンセント・ウィレムが散逸しないことを願い1960年に財団を設立し、1962年に財団にすべてのコレクションが売却され1973年に美術館として開館しています。ここにはそのうちの4点が並んでいました。

72 フィンセント・ファン・ゴッホ 「黄色い家(通り)」 ★こちらで観られます
↓これは以前にゴッホの家の跡地付近の看板を撮ったものです。
DSC02215.jpg
非常に有名な作品が不意に現れて驚きました。アルルでゴーギャンと共同生活を送った「黄色い家」のある街角が描かれていて、本当に黄色っぽい壁となっています。深い青の空とのコントラストで一層に明るく見えます。街行く人々も長閑な雰囲気で、観ていて清々しい気分になります。

ちなみに現在この家は残っていません。こちらはゴッホゆかりの地巡りで撮った2017年頃の写真
DSC02214.jpg
第2次世界大戦の時に壊れたらしいので、ここも戦場だったのかも。右奥には鉄道の橋が残ってるのがちょこっと写っています。この写真を撮った辺りにラウンドアバウトがあり、それが耳切り事件を起こしたラ マルティーヌ広場となります。
 参考記事: ゴッホゆかりの地めぐり 【南仏編 サン・レミ/アルル】

71 フィンセント・ファン・ゴッホ 「サント=マリー =ド=ラ=メールの海景」 ★こちらで観られます
こちらは海とその上を行く帆船を描いた作品で、波は大きく手前では白い飛沫をあげて荒々しい感じです。絵の具には砂の粒子が含まれているそうで、実際に浜辺で描いたと考えられています。ペインティングナイフを使って描いたらしくタッチの粗さと相まって動きが感じられました。左下に赤でサインをしてあるのは珍しいので自信作なのかも。


[3-3-2 アルル]
続いてはアルル時代のコーナーです。ゴッホは日本に憧れ それを南仏のアルルに見出し1888年2月20日に居を構えました。画家との共同生活を夢見たものの来てくれたのはゴーギャンだけ(しかもテオの仕送り目当て)というのは有名な話ですが、10月23日に合流して たった2ヶ月後の12月23日にはゴッホが自らの耳を切り落とすという事件を起こしました。その治療のために1889年5月にアルルを去っていますが、この短期間でもゴッホとゴーギャンはお互いに影響を与えあっています。

54 フィンセント・ファン・ゴッホ 「夕暮れの刈り込まれた柳」
奥に太陽が描かれ、手前に3本の青い木、その下にはオレンジ色の草が生い茂った様子が描かれています。赤く細い線が多く、太陽から放出されたような黄色が目に鮮やかです。大胆で、燃えるような色彩が見事でした。

この辺には果樹園を描いた作品もありました。3月下旬から花咲く木々に集中して取り組んでいたようです。

56 フィンセント・ファン・ゴッホ 「レモンの籠と瓶」 ★こちらで観られます
こちらは黄色いテーブルに置かれたピンクの籠に入ったレモンや緑の瓶などが描かれた静物です。壁も薄い黄緑で、全体的に緑~黄色がかっていて明るく温かみのある印象を受けます。ゴッホは黄色に魅せられ、色々な黄色を試していたようです。レモンは以前のジャガイモを彷彿とさせますが、色彩はだいぶ変わったのが分かります。なお、この作品はヘレーネ・ミュラーのお気に入りの1枚だったのだとか。

59 フィンセント・ファン・ゴッホ 「緑のブドウ園」
ブドウ畑で日傘を差して歩く女性たちを描いた作品で、空は青々しています。全体的に厚塗りで、筆跡が残っていて近くで観るとウネウネした感じw これは割とモンティセリっぽさが強いんじゃないかと思います。解説によると、この作品は1日で描いたとゴーギャンへの手紙に書かれているのだとか。

58 フィンセント・ファン・ゴッホ 「種まく人」 ★こちらで観られます
太陽を背に種を蒔く農夫が描かれた作品で、ポーズはゴッホが敬愛したミレーの「種まく人」と同じ格好です。オレンジ~黄色がかった麦畑や補色の対比を使った手前の畑など、色彩が強く感じられて この辺はドラクロワの理論からでしょうか。青やオレンジを幾重にも細いタッチで重ねていて、場所によっては盛り上がっています。点描やモンティセリなどの要素も感じられて、ゴッホの中で上手く混じり合っているように思います。放射状の太陽光も力強く特にインパクトがありました。

[3-3-3 サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ]
最後は精神病院に入院していたサン=レミと、終焉の地であるオーヴェールの時代のコーナーです。ゴッホは1889年5月8日にサン=レミの療養院に自ら入院しました。この地では療養院の部屋から見渡せる周囲のものや散策した周り風景などを描き、アルルの頃よりは色調は落ち着き よりリズミカルな筆使いになっています。発作の時は手本とした画家の版画や自らの作品の模写なども行いました。1890年5月16日に療養院をあとにし、パリ滞在を経て5月20日に北仏のオーヴェール=シュル=オワーズに移り住みました。ここではサン=レミ時代よりも強い色彩を採用し様式的な筆触を抑え、より自由な筆遣いをしています。しかし7月27日に銃で負傷(自殺説が定説)し、2日後に弟テオに看取られながらこの世を去りました。

60 フィンセント・ファン・ゴッホ 「サン=レミの療養院の庭」 ★こちらで観られます
こちらは療養院の庭を描いた作品で、緑の中に黄色や赤の花を咲かす木が描かれています。療養院の黄色っぽい壁も含めて色は鮮やかですが、確かにアルルの頃よりは暗色も使われているように思います。また、輪郭が黒く太くなっていて渦巻くような感じの下草に生命力を感じました。厚塗りも力強いです。

こちらはサン=レミに行った時に撮った療養院の庭の写真
DSC02015.jpg DSC02033.jpg
今でもゴッホが描いた絵の光景が残っています。割と普通の風景なんだけどゴッホが描くと素晴らしい光景となります。

65 「善きサマリア人(ドラクロワによる)」
こちらはドラクロワの模写で、馬から降りる人を抱きかかえる男が仰け反る様子が描かれています。タッチはゴッホらしく長い線を重ねるような感じでうねっているように見えます。ゴッホは画家人生の中でずっとドラクロワを手引にしていたことが分かります。

この近くには「悲しむ老人(「永遠の門にて」)」(★こちらで観られます) という自分の版画を模写した作品もありました。青い服を着ていて、この頃の画風も出ています。

67 フィンセント・ファン・ゴッホ 「夜のプロヴァンスの田舎道」 ★こちらで観られます
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今回の展示のポスターにもなっている代表作で、サン=レミの田舎道にある糸杉を描いています。三日月の浮かぶ空を突き抜けるように そびえる糸杉は、ゴッホがオベリスクのようだと感じた通りの印象で、手前の人の比べるとその大きさがよく分かります。空の深い青と 糸杉の緑、下草の黄色、道の白 などの色彩が響き合っていて細長いタッチが燃え立つように渦巻いています。解説によると、これは記憶と想像を混ぜた光景で、その点はゴーギャンからの影響のようです。また、南仏で最後に描かれた作品とのことで、まさに集大成とも言える傑作でした。

オーヴェール時代の作品は「花咲くマロニエの木」(★こちらで観られます)の1点のみでした。


ということで、後半はゴッホのイメージ通りの鮮やかな色彩や力強いタッチの作品の数々を観ることができました。ゴッホ展は結構な頻度で開催されるように思いますが、クレラー=ミュラー美術館は質・量ともに素晴らしいコレクションを持っているので是非この機に観ておきたい内容だと思います。コロナも落ち着いてきましたが割と混雑しているので、これから観に行かれる方はその点を予め考慮して楽しんで頂ければと思います。

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