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2021 MOMASコレクション 第2期 【埼玉県立近代美術館】

3週間ほど前に北浦和の埼玉県立近代美術館で展示を観てきました。特別展については準備中なので先に常設についてご紹介しようと思います。なお、この展示は既に終了しておりますが、撮影可能だった作品の写真を使って参ります。

DSC07222.jpg

【展覧名】
 2021 MOMASコレクション 第2期

【公式サイト】
 https://pref.spec.ed.jp/momas/2021momas02

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅

【会期】2021年07月17日(土)~10月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
意外と人が多かったですが、快適に鑑賞することができました。

さて、この展示は常設展で、埼玉県立近代美術館では年4回テーマを決めて入れ替えていて、今回は2021年度の2期となってきました。大きく分けて2つの章から構成されていましたので、詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介していこうと思います。

<1 セレクション>
まずはモネの積み藁など埼玉県立近代美術館が誇る代表的なコレクションが並ぶコーナーです。以前ご紹介したものは除き撮影可能だったものを取り上げます。

レオナール・フジタ 「横たわる裸婦と猫」
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藤田の得意とした裸婦と猫を描いた作品。乳白色と称された微妙な陰影のある白と面相筆で描いた細い線が特徴ですね。この美術館でも特に価値の高そうな1枚。

里見明正 「鏡の前」
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こちらは今回のポスターになっている作品。作者は埼玉県熊谷市出身の画家で、この美術館にほど近い浦和の別所沼畔に住んでいたようです。21年もの間展示されずに倉庫にあったようですが、色彩が強く澄ました感じの女性が可憐で素晴らしい。

瑛九 「十三子姉像」
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こちらの瑛九も浦和にゆかりのある画家。1939年の作品で、恐らく抽象化する前の時代だと思います。静かな色彩でやや硬い表情をしているので厳格そうに見えました。
 参考記事:《瑛九》 作者別紹介

瑛九 「作品(34)」「作品(13)」「作品(47)」「作品(6)」
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瑛九はマン・レイのレイヨグラフの影響を受けてフォトデッサンと呼ばれる写真作品も手掛けていました。レース模様や何かの管のようなものを使っているんでしょうか。ややシュールな雰囲気で写真とは思えない抽象性がありますね。

瑛九 「雲」
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瑛九の代表的な作風といえば点々です。この作品は1959年のかなり細かめの点描となっていて、具象のような抽象のようなものが描かれています。色の対比で花束のようにも思えたり。

瑛九 「出発」
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こちらは1949年頃の作品で、具象と抽象の中間という点では先程と共通していますが輪郭と色面を使った全く異なる画風となっています。瑛九の作品は時代ごとにこんなにも違いがあるというのが数点で分かるのが面白い


<2 色彩と軌跡―ジャコモ・バッラ《進行する線》を起点に>
続いてはイタリア未来派で活躍した画家ジャコモ・バッラ(1871-1958)原画によるカーペットと、色彩や運動への関心があらわれた作品のコーナーです。

ジャコモ・バッラ 「進行する線」
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こちらがバッラ原画のカーペット。バッラには色彩と軌跡の2つの要素があり、1918年には「色彩宣言」を発表し、イタリア未来派の絵画は「色彩の爆発」でなければならないと述べていたようで、この作品のカラフルさを見れば頷けます。一方、1910年の「未来派絵画技法宣言」では「すべては動き、すべては走り、すべては高速で変化する(中略)疾走する一頭の馬の脚は四本ではなく、二十本である。そして、その動きは三角形をなす。」と述べていました。そしてフランスの生理学者エティエンヌ==ジュール・マレが考案したクロノフォトグラフを着想源にして、対照の動きの軌跡を連続撮影のように捉えていきました。この作品では動きはわからないけど左右対称になっていて万華鏡を覗いているような感じがしますね。

エティエンヌ=ジュール・マレ  「鴨、1秒に10イメージ」
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こちらが影響を与えたジュール・マレの作品。連続写真となっていて羽ばたく様子が肉眼以上にはっきりと分かります。止まっているけど躍動感がすごいw

北野謙 「「光を集めるプロジェクト」ダイヤモンドグリッド・東京(反復)2015冬至-2016夏至 」
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こちらは冬至から夏至までの約半年間、カメラのシャッターを開放し続けて撮影された写真を組み合わせたもの。光の軌跡が出ていて太陽の動きが可視化されています。気の遠くなるようなスケールと発想が野村仁に通じるものがあるように思えました。

瑛九 「青の中の黄色い丸」
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こちらのコーナーにも瑛九がありました。1957~58年頃の作品で、こちらは大きめの丸が無数に並び、一層にカラフルな感じになってますね。

白髪一雄 「青波」
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こちらはロープにぶら下がって足を使って描いた作品。その軌跡がダイナミックに残っていて、近くで観るとその凹凸の深さに驚きます。色も爽やかで海を彷彿としました。
 参考記事:《白髪一雄》 作者別紹介

須田剋太 「作品 1964e」
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これも白髪一雄かと思いましたが須田剋太でした。渦巻くような円の赤が強く、力強い印象を受けました。


小部屋には最上壽之のドローイングなどが並んでいました。


ということで、今回はカラフルな作品が多めで瑛九が充実していました。既にこの展示は終了しておりますが、この美術館の常設は見応えがありますので、特別展で立ち寄る際には常設も合わせて観ることをオススメします。
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