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ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス 【Bunkamura ザ・ミュージアム】

この週末に渋谷のBunkamuraで「ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス」を観てきました。既に会期末なので先にご紹介しておこうと思います。なお、今回の記事で使っている作品の写真は以前にポーラ美術館で撮影可能な時に撮ったものです。今回の展示では撮影禁止となっております。

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【展覧名】
 ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス

【公式サイト】
 https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_pola/

【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅

【会期】2021/9/18(土)~ 11/23(火・祝)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
終盤ということもあってかなり混んでいました。この展示は事前予約制の時間帯指定があり、17時の回しか空いてなかったので1時間でダッシュで観る羽目に…w 

さて、この展示は箱根にあるポーラ美術館が誇るコレクションの中から近代フランス絵画の巨匠たち28名74点も集まったもので、これさえ観ておけば印象派からキュビスムやエコール・ド・パリ辺りまでのメインストリームが分かるという内容となっています。ざっくりと時代や画家、テーマなどで章分けされていましたので、詳しくは各章ごとにご紹介してまいります。冒頭に書いたように、この記事で使ってる写真は主にこちら↓の展示の時に撮ったものです。
 参考記事:100点の名画でめぐる100年の度 (ポーラ美術館)箱根編

<第1章 都市と自然 ―モネ、ルノワールと印象派>
まずはコローから印象派にかけての時代のコーナーです。ここには同時代の風景や人物を描いた作品が並んでいました。

1 ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「森のなかの少女」
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じっと牛を見つめている少女。素朴で穏やかな田舎の暮らしを想像させます。全体的にぼんやりしていて神秘的ですらある。

7 クロード・モネ 「睡蓮」
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モネの代表作の連作からの1枚。優しい色彩で、近くで観ると縦方向に揺らめくようなタッチが確認できます。反射で木の存在や空の様子なども伝わってきますね。

4 クロード・モネ 「サン=ラザール駅の線路」
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こちらもポーラ美術館の誇る人気作。駅や線路というよりは漂う蒸気が主役になっていますね。移ろいゆく大気や光を捉えようとした印象派らしい題材。

3 クロード・モネ 「散歩」
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こちらは最初の妻と乳母と息子を描いたアルジャントゥイユにいた頃の作品。穏やかな光を感じ優雅な雰囲気。幸せな気持ちになります。

2 クロード・モネ 「セーヌ河の支流からみたアルジャントゥイユ」
ドービニーを真似してアトリエ船で川の上から描いた作品で、向こうから3人乗ったボートが近づいていきます。白いマストの小舟などもいて行楽のようですが、空は曇っていて木がしなるなど天気が荒れそうな風の強さを感じます。その場の雰囲気がよく伝わってくるようでした。
 参考記事:
  ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ 感想前編(横浜美術館)
  モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新 感想前編(国立西洋美術館)

この展示は絵画だけでなく各所にガレやラリックの香水瓶なども置かれています。化粧品メーカーだけあって、その辺のコレクションも充実していますね

11 ピエール・オーギュスト・ルノワール 「ムール貝採り」
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この美術館のコレクションの中でも特に好きな作品の1つです。印象派に回帰しつつロココ様式の要素が感じられます。それにしても何とも素朴で可愛らしいです

10 ピエール・オーギュスト・ルノワール 「髪かざり」
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こちらを観て微笑む女性が幸せそうな雰囲気です。「絵は楽しくて美しいものでなければならない」という考えを持っていたのがよく分かります。
 参考記事:《ピエール=オーギュスト・ルノワール》 作者別紹介

12 ピエール・オーギュスト・ルノワール 「レースの帽子の少女」
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こちらの人気作もありました。ルノワールは仕立て屋の息子なのでファッションへの力の入れようは他の印象派に比べても際立っています。

ルノワールは他にも裸婦が3点ほどありました。表現と色彩が違っていて、肌に青色が交じるような表現をしていたこともあれば晩年のように滑らかで温かみのある肌の時期もあります。

18 カミーユ・ピサロ 「エラニーの花咲く梨の木、朝」
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こちらは近くで観ると細かい点描で描かれていて、スーラやシニャックといった年下の新印象主義に影響を受けています。最後となる第8回印象派展の出品作なので、歴史的な1枚。(新印象主義の扱いで揉めたのも一因w)

21 アルフレッド・シスレー 「ロワン河畔、朝」
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こちらは通り沿いのショーウィンドウにあった絵葉書を撮ったものです。色が薄めで、青空が非常に爽やかです。最も印象派らしい画家と呼ばれたシスレーですが、特に水辺の光景が多いのが特徴です。


<第2章 日常の輝き―セザンヌ、ゴッホとポスト印象派>
続いては印象派の次の世代を担った画家たちのコーナーです。印象派の絵具を混ぜずにそのまま画面上に配置していき、明るい色彩を表現する「筆触分割」を更に発展させた大胆な作品などが並びます。

29 ポール・シニャック 「オーセールの橋」
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こちらは新印象主義の点描技法で描かれています。紫がかって見える大きめの点がシニャックらしさを感じるかな。手前がやや暗めとなっていて、奥は明るめになっているなど点描でも陰影の表現が巧みです。まるで奥の景色が輝いて見えますね。

24 ポール・セザンヌ 「4人の水浴の女たち」
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こちらは人物が三角形に配置されている作品。セザンヌはこうした構成を意識した作品が多いので、これはそれが特によく現れていると思います。近くで観ると細長いタッチが斜めになっているのが分かり、それもリズムを生んでいました。

25 ポール・セザンヌ 「プロヴァンスの風景」
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セザンヌといえば南フランスの風景で、赤い屋根とクリーム色の家をよく描きました。緑と赤の対比が目に鮮やかで、形態的な面白さもあります。

33 ピエール・ボナール 「地中海の庭」
これは初めて観ました。巨大な作品で、第一次世界大戦の間に描いた装飾画の1点です。そんな暗い世相は全く感じさせない明るい色彩で、黄色いミモザの花に埋め尽くされた画面となっています。右下にはオレンジが入った果物籠を画面左にいる2人の子に差し出す若い女性の姿があり、長閑な雰囲気です。奥には暗めの木々があり、手前の黄色を引き立てています。さらに奥にはヤシの木や青い海と空が広がり、爽やかで心温まる光景でした。

35 ピエール・ボナール 「ミモザのある階段」
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こちらも非常に明るい色彩の作品。ボナールの作品はオレンジや黄色が多いので温かみがありますね。近くで観るとかなり大胆なタッチとなっています。

32 ピエール・ボナール 「浴槽、ブルーのハーモニー」
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こちらはパートナー(後の奥さん)のマルトが水浴している姿。タイトルの通り青の多い画面でそれぞれ違っているのが面白い。神経の病気で1日に何度も風呂に入っていたのでボナールもよくマルトの水浴を題材にしました。ちなみにこのマルトは結婚したときにボナールに8歳も年をサバ読んで伝えていたことが発覚した上に、実はマリアという本名だったことも判明しましたw

26 ポール・ゴーガン 「ポン=タヴェンの木陰の母と子」
崖のような所?でブルターニュ地方の白黒の民族衣装を着た母親がしゃがんで何かしていて、その傍らに子供が立っています。画面の大半は緑が生い茂り、やや暗めの色調かな。見晴らすような構図となっていて、これは浮世絵からの影響があるようです。細長いタッチがリズミカルでした。

27 ポール・ゴーガン 「白いテーブルクロス」
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こちらはゴーギャンにしては優しい色使いに感じられます。ピサロやセザンヌからの影響も現れた1枚。

36 ピエール・ラプラード 「バラを持つ婦人」
こちらは初めて観ました。暗い背景に横向きの女性が描かれた肖像で、肩を出したドレスのような服を着て頭のバラの飾りを手で抑えています。目を閉じているのがメランコリー(憂鬱)の伝統的な表現ですが、ピンクがかった衣装が可憐な雰囲気を出しています。女性の前にはパンや花瓶のようなものもあり、食事しているのかも?? 輪郭線がなく背景に溶け込むようにぼんやりした画風も特徴的で、非常に気に入りました。


<第3章 新しさを求めて―マティス、ピカソと20世紀の画家たち>
続いてはフォーヴィスムやキュビスムの画家のコーナーです。

39 モーリス・ド・ヴラマンク 「シャトゥー」
中央に川向こうの建物が描かれ、それを覆うように手前の木々がアーチのように囲んでいます。色が強くやや平坦なタッチも大胆で、全体的にセザンヌからの影響が感じられます。どうやらこれを描いた場所もセザンヌの作品にあるようで、その敬愛ぶりも伺えました。

近くにはキュビスムになる前のジョルジュ・ブラックの作品などもありました。

43 ラウル・デュフィ 「パリ」
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今回のポスターにもなっている作品で、水彩のように透明感のある色彩ですが油彩です。昼から夜に移り変わるのを屏風のような形式で表現していて、色彩と共にサラサラッと描いた描線が軽やかでした。この流麗さにデュフィの魅力が詰まってます。

近くにフェルナン・レジェも1点ありました。

40 アンリ・マティス 「紫のハーモニー」
こちらは紫のバラ柄の壁紙?を背景にソファらしきものに肘をついて寝そべる薄い紫色の服の女性が描かれた作品です。ややぼんやりして考え事をしている顔に見えるかな。背景のバラと服の色は似ていて、タイトルの通りの調和を感じます。全体的には黄色と紫が多いですが、茎の緑、髪とスカートの黒、唇の赤などが目を引き、鮮やかさも感じられました。このモデルはニースにいた頃に主要なモデルを務めたアンリエット・ダリカレールとのこと。

42 アンリ・マティス 「襟巻の女」
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こちらも今回の目玉作品の1つ。かなり簡略化されていて、色がブロック分けされているように見えるのが面白い。格子もリズムを与えていますね。

この先にはピカソが並んでいました。初期のキュビスム作品、量感ある人物像の古典回帰時代の作品、ジャクリーヌを描いた80歳頃の作品、ゲルニカと同じ年に描いた作品などがあります。ジャクリーヌは近くで観ると筆跡がうねるような大胆さです。


<第4章 芸術の都―ユトリロ、シャガールとエコール・ド・パリ>
最後はエコール・ド・パリの画家たちについてです。

52 モーリス・ユトリロ 「シャップ通り」
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当時完成したばかりのモンマルトルのサクレ=クール寺院が見える坂道を描いた作品。曇天で全体に白っぽく、ユトリロの最も評価の高い「白の時代」に描かれました。構図もしっかりしていてパリの情緒が漂いますね。

54 モーリス・ユトリロ 「ラ・ベル・ガブリエル」
これはパリのモンマルトルのモン・スニ通りにある居酒屋を描いた作品で、周りに行き交う人が描かれている中、左の建物の壁に向かって何か文字を書いている人がいます。これはユトリロ本人らしく、「正面にあるのは私の人生の最良の思い出 モーリス・ユトリロ 1912年10月」と書いているようです。建物の壁や道は非常に厚塗で、引っかき傷のようなものなどもあり質感が見事でした。それにしても居酒屋が最良の思い出って、そりゃアル中になるわな…w

ユトリロは他にもラパン・アジルを描いた作品などもありました。

57 シャイム・スーティン 「青い服を着た子供の肖像」
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ちょっと不機嫌そうな顔をした少女像。この構図やポーズは過去のルーヴルで観たレンブラントなどの巨匠の作品から学んでいるそうです。口をひん曲げて子供っぽい怒り方が逆に可愛いかも?w

59 ジュール・パスキン 「果物をもつ少女」
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「真珠母色の時代」と呼ばれる時代の作品で、淡い独特の色彩で描かれた少女。どこか儚げで虚ろな感じがします。この人もアル中で、この絵の3年後に自殺しています…。その悲しい雰囲気は自身の気持ちかもしれませんね。

62 マリー・ローランサン 「黄色いスカーフ」
黄色いスカーフと白黒の髪飾りをつけた白い肌の女性が描かれた作品。赤い唇と大きな黒目で優美な雰囲気が漂います。ローランサンらしさを感じる画風で、色の明るい時代のものだと思います。

ローランサンは3点ありました。

64 キーズヴァン・ドンゲン 「灰色の服の女」
こちらは灰色のドレスと大きな帽子のベル・エポックの頃の流行のファッションを身にまとった貴婦人を描いた作品。大きな目で白い歯を見せて微笑んでいる表情が生き生きしていて魅力的です。可愛らしくて特に気に入った1枚。

69 キスリング 「ファルコネッティ嬢」
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こちらは通り沿いのショーウィンドウにあった絵葉書を撮ったものです。舞台女優をモデルにしていて、目は遠くを観るような感じですが、澄んだ色合いでやや憂いを帯びています。色が対比的で赤が引き立っていました。

最後はシャガールが並んでいました。

73 マルク・シャガール 「オペラ座の人々」
オペラ座を背景に男女が空を飛んでいる様子を描いた作品で、周りには弦楽器を持って舞い上がる音楽家や自分の頭部を放り投げる軽業師の姿もあります。また、幸福のシンボルの宿り木を男女に捧げる鳥や、左下隅には画家自身の微笑む姿もあり、幸せを祝福しているような雰囲気でした。モチーフなどもシャガールを象徴する感じ。


ということで、非常に充実した内容となっていました。ポーラ美術館はこんなに貸し出しして大丈夫なのか?と思ってしまいますが、出品されていない名作はまだまだ沢山ある素晴らしい美術館です。箱根という絶好の観光地にあり建物も綺麗なので、この展示を観て満足した方も見逃した方も一度はポーラ美術館に訪れてみることをオススメします。

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