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愛のヴィクトリアン・ジュエリー展 華麗なる英国のライフスタイル 【Bunkamuraザ・ミュージアム】

今日、渋谷のbunkamuraで「愛のヴィクトリアン・ジュエリー展 華麗なる英国のライフスタイル」を観てきました。色々と紹介待ちのネタがあるのですが、割り込みで先にご紹介しようかと思います。

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【展覧名】
 愛のヴィクトリアン・ジュエリー展 華麗なる英国のライフスタイル

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_victorian/index.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【会期】2010年1月2日(土)~2月21日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
 ※写真はコンパクトデジカメで撮影しました。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
行くまではこの間行ったヴァン クリーフ&アーペル展みたいな感じの展示かのかなと思いましたが、この展示は宝石だけではなく、後半は衣装やテーブルセット等もあり、結構幅広い展示になっていました。作品と共にヴィクトリア女王に関するエピソードや宝飾品の作成技法なども解説されていたので、気に入った作品の感想と共にご紹介しようかと思います。似たような名前の作品が多いので、念のため番号をつけておきます。

なお、込み具合に関してですが、そんなに人は多くないものの、ケースに入った小さなジュエリーが展示のメインですので、ケースの前は混みあうこともあります。(一度に観られる人数は少ない) しかしちょっと待てば空くくらいの混み具合で、そこまで不便は感じませんでした

<プロローグ ヴィクトリア女王の愛>
まずはプロローグです。ヴィクトリア女王は1837年から64年間に渡って英国女王として君臨した女王で、夫のアルバート公とは相思相愛だったようです。(2人の愛はこの展覧でも大きなテーマになっています。) 1851年に行われたロンドン万国博覧会に2人の幸せは頂点に達したそうですが、結婚21年目にアルバート公は急死してしまったそうです。その悲しみもわかる展示となっていました。

1 「若き日のヴィクトリア女王」
最初のコーナーにあるのは若い頃の女王の肖像画です。胸にはハート型のペンダント、左指には結婚指輪をはめています。この結婚指輪の風習はアルバート公がドイツの風習を持ち込んで、イギリスにもそれを機に広がったそうです。この絵に描かれている女王は、女王とは思えないくらい温和で女性らしいやわらかな雰囲気を持ち、幸せそうな表情を浮かべていました。
この絵のほかに、宮殿の生活を描いた絵の写しなどが展示されていて、当時の様子を想像できるようになっていました。


<1 アンティーク・ジュエリー>
1章がほとんどメインの章です。いくつか素材や技法ごとに小コーナーがあり、それに沿った作品が並んでいました。最初に作品名や説明によく使われる用語の解説などもあって親切ですが、情報が多すぎて覚えきれないw これはパンフレットにでも書いて欲しかったかな。とりあえず、重要そうなのをご紹介すると、

 パリュール:髪飾り、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリングが一揃えになっているジュエリーのこと
 スウィート:完全に揃っていない場合
 セット:アイテムが2種類の場合

という区別のようです。これを知れば作品名で大体何が展示されているかはわかるかもw

5 「シトリン&カラーゴールドパリュール」
パリュールです。ゴールドと透明感のある黄色いシトリン、トパーズで出来ています。黄金色に統一された感じで、ミリ以下の細工の細かさに驚きます。最初に驚くジュエリーです。

[ゴールド]
17 「ブルーエナメル&ゴールドセット」
ゴールドの小コーナーです。金は当時珍しかったらしく、合金にする技術が発達したそうです。それにより、銀を混ぜて青みを出したり、銅を混ぜて赤みを出す技術が生まれたようです。これはブルーエナメルの忘れな草、金の鳩、そして真珠で出来た鳩の卵があしらわれていました。鳩は精霊のシンボルらしく、三位一体を表すそうです。見た感じは可愛らしく、小さな真珠が卵になっているのが特に面白かったです。

13 「リガードパドロックペンダント」 ★こちらで観られます
錠前のような形のペンダントです。これには3つの意味があるそうで、メッセージジュエリーと呼ばれるようです。その意味は、
①真ん中のターコイズと真珠で忘れな草を象っている → 私を忘れないで
②左から順に円形に、ルビー、エメラルド、ガーネット、アメジスト、ルビー、ダイヤとならんでいる。これらの宝石の英語の頭文字を順に並べると「REGARD」つまり敬愛となる。
③形が錠前である。とらわれた愛情という意味
となっているようです。単に綺麗というだけでなく、願いを込めるというのがロマンチックな感じでした。


[パール]
33 「シードパール&ゴールドブローチ」
パールが無数に集まってブドウのようになっています。葉っぱにはカラーゴールドが使われていました。シードパールというのはケシと呼ばれる小さなパール(ビーズくらいの大きさ)で、色々なところに使われるようでした。 この作品はその大きさを活かした可愛らしい作品でした。

36 「シードパールティアラ」
これもシードパールを使った作品で、ティアラです。3つ大きな花(アザミなどイギリスの3つの花を表している)が付いているのですが、花がぶるぶると振動していて驚きました。実は、これはわざと揺らすようにスプリングで取り付けられているようです。特に真ん中は常に揺れる感じで展示されていました。

[ダイヤモンド]
50 「ダイヤモンドスプレーブローチ」
花束を象ったブローチです。ビクトリア女王は植物が好きだったそうで、植物にちなんだ作品が多くあり、これもその1つです。花束には愛情を意味するメッセージもあるようです。 ダイヤが嵌め込まれた花束は高貴な印象がありました。

51 「ガーネット&ダイヤモンドペンダント」
丸っぽい3つのガーネットが円を組み、その真ん中にダイヤが嵌め込まれています。果実の実を思わせる艶やかなペンダントでした。

[エナメル]
58 「スイスエナメルブレスレット」
これは3つの円形の絵をエナメルで作ったブレスレット。中央には犬を撫でる若い女性、両端には子供を抱く女性が描かれ、エナメルらしい光沢と柔らかい色調を感じました。
他にも山の情景をスイスエナメルブローチなど見事な作品がありました。(★こちらで観られます

[インタリオ&カメオ]
インタリオというのは沈み彫り、カメオは浮き彫りのことです。

65 「カメオ&インタリオゴールドパリュール」
金のネックレス?に沢山の飾りが付いています。その飾の真ん中に人物などを彫り込んだ宝石が嵌め込まれていました。結構遠くからでもわかるくらい目立ちました。手が込んでます。

72 「アメシストカメオ&ハーフパールバングル」
薄紫のアメジストに女性の顔が浮き彫りになっています。その透明感ある宝石と女性の顔が可憐な雰囲気を出していました。

71 「ラプラドライトカメオペンダント」
全体的に鮮やかな青をしているペンダントで、ミネルヴァが浮き彫りになっています。結構大きくて存在感のある作品でした。独特の青が高貴な感じを漂わせます。

このコーナーにはカメオのデザインのコーナーもありました。

[モザイク]
2万色もの種類があるガラス片を使った手法です。ガラス片を並べてモザイクにするらしいのですが…。どの作品を観ても、どこがモザイク模様であるかは全くわかりませんw 細かすぎてモザイクになんて見えないw 

85 「ローマンモザイク&ゴールドブローチ」
花籠?と2羽の鳩を絵画のように表現したモザイク作品。どう観ても絵画的で、超絶技巧を観た気分になりました。豊富な色のバリエーションによって陰影も細かく表現されていました。

[スコティッシュ]
スコットランドの瑪瑙で作った作品をスコティッシュというそうです。

91 「スコティッシュブローチ <ケルトスタイル>」
円環状になっているデザインで、4つの宝石が嵌め込まれています。この形はケルト人の遺跡から発掘されたものをモチーフにしていると解説されていたように記憶しています。

[ピクウェ]
べっこうや象牙に金銀などを象嵌したものをピクウェというそうです。フランスのユグノー教が聖職者に捧げたものが始まりらしく、秘法であるため現在では途絶えた技法なのだとか。

100 「ピクウェ櫛」
べっこうの櫛です。べっこうのせいかどこか日本の櫛を思わせるものを感じました。(形も日本の櫛みたいでした)

[アイボリー]
象牙です。有史以前からある伝統的な材料です。

102 「アイボリーブローチ」
バラを持つ手を象った作品。バラを持つ手は真の友情を示すそうです。立体的で写実的な彫りは見事で、どうしたらこんなところまで彫れるんだろう??と首を傾げながら観ていました。

103 「アイボリーブレスレット」
森と狩人と犬を象った象牙です。この作品で驚くのはその細かさで、木々の葉っぱの1枚1枚までもが表現されていました。その細かさはミリ以下の精度に見えました。

[多種多様な素材]
ここは変り種の素材が多く、面白い小コーナーです。

107 「フレンチペーストブローチ」
七色の光を放つガラスを使った星型のブローチ。その輝きはダイヤのようで、ダイヤと言われたら信じてしまいそうw その形と合わせて面白い作品でした。

119 「タイガークロウ&ゴールドブローチ」
その名前の通り、虎の爪を使って作られた作品。珊瑚などと組み合わされています。虎の爪は半透明でちょっと象牙を透明にしたような質感に思いました。円を描くように2つの爪が並んでいました。

123 「ブルーバタフライブローチ <トンボ>」
南米のモルフォ蝶の羽を使った作品です。トンボの羽として嵌め込まれていました。青紫に鈍く輝くのが美しく、角度を変えながら観ていました。非常に美しいです。

この他に、サメの歯を使った作品等もあり、驚きの多いコーナーでした。また、近くにはジュエリーのデザイン画のコーナーもありました。デザインも非常に細かいですw

[世界の著名なコレクション]
ここでは著名なコレクターの紹介と共に、そのコレクションが柱状の展示ケースの中に飾られていました。

145 「ガーネット&ダイヤモンドゴールドセット」
柘榴石(カーバングル)と金、ダイヤが組み合わさった作品で、特に艶やかな柘榴石が目を引きました。生々しくも美しい赤です。

146 「ブルーエナメル&ゴールドネックレス」 ★こちらで観られます
ロイヤルブルーでハートの形をしたネックレスです。中には星型にダイヤが配置され真ん中にパールが嵌っていて、見事な調和を感じます。また、チェーンの部分にはヘビが表され、自分の尻尾を飲み込むヘビは永遠を表すのだとか。この展覧の中でもかなり気に入った作品となりました。

148 「コーネリアンインタリオセット」
夕陽のようなオレンジに染まったインタリオ。馬車に乗る人や神話風の絵が沈み彫りされていました。グラデーションがあり透明感があって鮮やかでした。綺麗です。

[英国王室にまつわる宝飾品]
ここではヴィクトリア女王の家族に関する作品や、なぜかダイアナ王妃に関する作品までありました。

156 「ジョージ4世のデスクシール」
薄黄色のシトリンを水晶カットしたものです。印鑑などがついてるようですが、その透明感ある美しさがとにかく好みでした。

166 「ロイヤルポートレートミニアチュール(ヴィクトリア女王の子供達の肖像画)」 ★こちらで観られます
象牙にグワッシュで描かれたヴィクトリア女王の子供たちの絵です。古風な服装で神話の絵のようになっていました。可愛らしく幸せそうです。

172 「ヴィクトリア女王のプレゼンテーションペンダント」
ブルーエナメルが非常に鮮やかで、真ん中にAEとダイヤで描かれているペンダント。これは女王直筆の手紙と共に展示されていました。友人に息子のアルバート・エドワード(その頭文字がAEの意味)がお世話になったお礼に贈ったものらしいです。その手紙からは夫を亡くし喪に服している様子がわかるのだとか。色々とエピソードや人柄も詰まった作品のようでした。

<2 歓びのウェディングから哀しみのモーニングへ>
2章からはジュエリーというよりは生活様式に関するコーナーかも。ここではウェディングドレスや指輪、ケーキの模型、モーニング(喪服)などが並んでいました。

191 「ウェディングショール」
純白で大きなショールです。細かい刺繍が施されていて豪華で華麗な感じでした。 このコーナーの壁にはいくつものレースが並び、優美な雰囲気と緻密な芸術性がありました。

237 「シャンティリレースの扇」
黒いレースの扇子です。根元は素材はわかりませんが七色に鈍く光る材質で、艶やかさを感じる扇子でした。 ここら辺には扇子や日傘が何点かずつありました。


ウェディングのコーナーの次にはモーニングのコーナーがあり、亡き夫へ想いを寄せる女王についての説明のありました。喪服や遺髪を入れるペンダントなども展示されていました。

255 「ジェットブローチ <ベッラドンナ>」
ジェットは流木の化石で、真っ黒で光沢のある材質です。昔から魔よけとして使われていたそうです。 このブローチは結構大きなもので、ジェットのブローチとしては最大なのだとか。艶があり高貴な印象のある黒でした。 このジェットを使ったティアラやブローチもありました。

<3 優雅なひととき -アフタヌーンティー->
最後のコーナーはアフタヌーンティーのコーナー。これも女王が広めた風習のようです。テーブルに置かれたティーセットの再現コーナーなどもありました。

265 「デザートセット」
白蝶貝という真珠のような材質の持ち手と、銀の刃を持ったナイフとフォークです。銀の部分にも装飾がされ豪華です。白蝶貝と銀の組み合わせはかなり好みでした。こんなのでデザートを食べてみたいw


ということで、ジュエリー以外にも色々とある展覧でした。後半は何でもありな感じもしますが、宝石をより美しく見せる技術や、作品に込められた気持ちや意味までもわかる面白い内容でした。そして女性客の割合が高いのは宝飾展ならではの特徴でしょうかw

なお、Bunkamura ル・シネマでは「ヴィクトリア女王 世紀の愛」という作品を上映しているようです。私は観ませんでしたが、合わせて観るのも一興かもしれません。
 公式サイト:ヴィクトリア女王 世紀の愛



おまけ。東急の交差点あたりにあるショーウィンドウの写真です。
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