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最後の印象派、二大巨匠 シダネルとマルタン展 【SOMPO美術館】

先日ダイジェストでご紹介した通り、GWの少し前に新宿のSOMPO美術館で「最後の印象派、二大巨匠 シダネルとマルタン展」を観てきました。

DSC03754.jpg

【展覧名】
 最後の印象派、二大巨匠 シダネルとマルタン展

【公式サイト】
 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2021/sidaner-martin/

【会場】SOMPO美術館
【最寄】新宿駅

【会期】2022年03月26日(土)~ 06月26日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
時間指定は無かったものの混んでいるという程でもなく概ね自分のペースで観ることができました。

さて、この展示は印象派の後の時代に新印象主義や象徴派を取り入れて独自の画風を築き上げたアンリ・マルタンとアンリ・ル・シダネルの2人を取り上げたもので、深い友情があったこともあって2人展という形となっています。ちょうど10年ほど前にこの美術館でシダネルの個展をやっていましたが、その展示が長らく記憶にあり今回も楽しみにしていました。(今回は特に細かいメモを取っていませのでシダネル については以前の記事をご参照ください) 3点ほど撮影可能となっていましたのでそれを使って簡単に振り返ってみようと思います。

 参考記事:
  アンリ・ル・シダネル展 (埼玉県立近代美術館)
  アンリ・ル・シダネル展 2回目(埼玉県立近代美術館)
  薔薇と光の画家 アンリ・ル・シダネル展 -フランス ジェルブロワの風- (損保ジャパン東郷青児美術館)

今回は時系列的だったものの2人が交互に紹介されるのでちょっと分かりづらい所もあったかな。写真が撮れたのは展示中盤以降の作品で、初期は撮れなかったのですがマルタンは割りと最初の頃から新印象主義のような大きな筆跡と明るい色彩が特徴のように思えました。

アンリ・マルタン 「腰掛ける少女」
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こちらはポスターを撮ったもの。明暗が深くて色が強く感じられます。印象派の筆触分割みたいだけど、俯いている女性からは象徴主義的な内面の表現も感じるかな。

アンリ・マルタン 「ガブリエルと無花果の木(エルベクール医師邸の食堂の装飾画のための習作)」
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マルタンは画家として名声を得てフランス国務院など国の機関の壁画をはじめ、大画面の仕事を多く残しています。今回の展示ではそうした装飾壁画の原画が出品されているのが目玉で、これは医師の家の食堂の装飾画の習作。実際に観ると習作と言えど十分に大きな作品で、目の前にこの光景が広がっているような迫力があります。のんびりとしながら色彩豊かで、強い光を感じる表現がマルタンの特徴かな。南仏を活動拠点にしていったのも頷ける画風ではないでしょうか。

アンリ・マルタン 「二番草」
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こちらは先述の国務院の「農業」に通じるモチーフが描かれた作品。小さな写真でも筆致の大胆さがわかるのではないでしょうか。額縁のように縁の部分を自分で描いているのも面白く、絵が引き締まって見えます。平和な光景で何かを意味してそうな感じが象徴主義からの影響かな。

一方のシダネルも充実した内容でした。初期は色彩が静かな作品が多く詩情を感じさせ 次第に象徴主義的な儚さすら感じさせる作品が出てきます。やがてフランドルに滞在した頃から画風が変化し、やがて「アンティミスト」という身近なもの(特に室内画)を情感を込めて描くようになってきます。

アンリ・ル・シダネル 「ジェルブロワ、テラスの食卓」
DSC03777_20220516000930e23.jpg
こちらはシダネルらしさが詰まった作品。シダネルは春と秋は各地に取材に行き、夏はジェルブロワで過ごして周りでスケッチしてアトリエで仕上げ、冬はヴェルサイユなど暖かい所でサロンへの出品に備えるという生活をしていました。人が描かれていないけど、手前のテーブルに食事の用意があって存在を感じさせます。これは日本の留守模様に通じる人となりを想像させるような洒脱さを感じます。手前が暗くて奥が明るいのも絵としては変わってるけど日常感があってここにいるような気分になります。そしてこの落ち着いた色彩が何とも素晴らしい。明暗が強いのに柔らかい空気感で幸せな雰囲気です。

この他にも期待していた通りシダネルらしさを感じる作品が並んでいました。シダネルはジェルブロワでは自らバラ園を作ってそれを描くなど、観ていて心が癒やされるような光景を多く残しました。一方で寒々しく誰もいない冬の街や夜の街から温かい明かりの灯る家を描いた作品などもあり、叙情性の高い作風となっています。


ということで、大満足で図録も買いました。特にシダネルは私自身の絵や写真で参考にしている部分が大きいので、改めてその素晴らしさに浸ってきました。そんなこともあって今季推したい展示No.1です。
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