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メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 (感想前編)【国立新美術館】

前回ご紹介した展示を観たあと、同じ国立新美術館の1階で「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」を観てきました。この展示は既に終了していますが今後の参考にもなるので記事にしておこうと思います。

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【展覧名】
 メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

【公式サイト】
 https://met.exhn.jp/
 https://www.nact.jp/exhibition_special/2021/met/

【会場】国立新美術館
【最寄】乃木坂駅/六本木駅

【会期】2022年2月9日(水)~5月30日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
時間指定の意味があるのか?というくらい混んでいて、あちこちで人だかりが出来ていました。

さて、この展示はアメリカのニューヨークにあるメトロポリタン美術館のコレクションを紹介するもので、ルネサンス前後から近代にかけて西洋絵画の歴史を俯瞰するような超豪華なラインナップとなっていました。名だたる巨匠の作品ばかりで日本初公開の作品も多々あり、絵画ファンには見逃せない内容だったと思います。3章構成となっていましたので、各章ごとに気に入った作品と共にその様子を振り返って参ります。


<I.信仰とルネサンス>
まずはルネサンスの頃からのコーナーです。ここは時代的にも神話や宗教画が中心となっていました。

8 フラ・フィリッポ・リッピ 「玉座の聖母子と二人の天使」
青と赤の衣を着たマリアが赤ん坊のキリストを抱いて座り、その背後に天使が向き合うように立っている姿が描かれた作品です。左の天使は巻物を持っていて、旧約聖書の一節が書かれているようです。また、キリストは真正面を向いて本を開いていて やや硬い表情に見えるかな。右足をこちらに向けることで奥行きを出していて、この時代の作品にしては立体感があるように思いました。

1 フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ) 「キリストの磔刑」 ★こちらで観られます
こちらは上部がドーム型になった作品で、キリストが磔刑にされて周りに多くの人が集まり、手前ではマリアが倒れ込んでいる姿が描かれています。打ちひしがれる悲壮な雰囲気や、槍で点かれてキリストの脇腹から血が滴る様子など細やかかつドラマチックになっていて、感情表現が豊かなのがルネサンスの特徴と言えます。作者は「天使のような修道士」という意味の通り名で、遠近法を用いて3次元空間を表現した最初の画家の1人とされています。まるでその場にいるような光景を表したのは画期的だったのでしょうね。

15 エル・グレコ(本名 ドメニコス・テオトコプーロス) 「羊飼いの礼拝」 ★こちらで観られます
こちらは中央に生まれたばかりのキリストが描かれ、その周りには礼拝しにきた羊飼いや天使などが描かれています。キリストから強い光が放たれているような陰影となっていて、神秘的な雰囲気となっています。くすんだ色合いや縦に引き伸ばされたような描写にエル・グレコっぽさを感じるかな。身振り手振りも大きくドラマチックで動きも感じられました。

17 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 「ヴィーナスとアドニス」 ★こちらで観られます
こちらは狩りでイノシシに突き殺される直前のアドニスと、狩りに行くのを抱きしめて止めようとしている恋人のヴィーナスが描かれています。仰け反るような裸体のヴィーナスやアドニスの踏み込む姿勢などは動きがあってルネサンスからバロック的な表現になっているようにも感じます。陰影も巧みで2人に光が当たって瑞々しい肉体美となっていました。

5 ラファエロ・サンツィオ(サンティ) 「ゲッセマネの祈り」 ★こちらで観られます
こちらはラファエロの20歳頃の作品で、キリストが最後の晩餐の後にオリーブ山で祈りを捧げている様子が描かれています。周りには寝てしまった弟子たちがいて、右上には天使がキリストに向かっていくような感じで浮遊しています。リアリティのある細やかな描写で聖書の場面を忠実に表し、画面は鮮やかでありながら落ち着いた色彩となっていました。若くして気品すら感じられる画風です。

14 ルカス・クラーナハ(父) 「パリスの審判」 ★こちらで観られます
ユノ(ヘラ)、ミネルヴァ(アテナ)、ヴィーナス(アフロディーテ)の三女神の誰が最も美しいか?をパリスが選ぶという頻出の画題の作品です。ここではパリスは牧童ではなく甲冑を着たトロイアの王子としての姿で描かれ、裸体の三女神を見上げるような感じとなっています。女神たちはほっそりした体に小ぶりな乳房というクラーナハ特有の姿となっていて、スラッとした印象となっています。それぞれ横向き、正面向き、後ろ姿となっていて、やや官能的な雰囲気すらあるかな。中央には水晶玉を持つメリクリウス(伝令の神)、左上にはキューピッドの姿もあって物語の流れも詰め込まれているように思いました。


<II.絶対主義と啓蒙主義の時代>
続いては王家による絶対主義の17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての時代のコーナーです。宗教改革/対抗宗教改革の影響もあって主題の幅も広がっています。

25 アンニーバレ・カラッチ 「猫をからかう二人の子ども」
こちらは兄妹らしき子供が右下の猫にザリガニのようなものを突きつけてニヤニヤしている様子が描かれています。猫は体を丸めて警戒しているように見えて可哀そう。。。子供の無邪気な残酷さのようなものを感じました。

28 シモン・ヴーエ 「ギターを弾く女性」
こちらはタイトルの通りギターを弾いている女性を描いたもので、かなり写実的に描かれています。陰影が濃くドラマチックな光となっていて赤みがかった肌なども含めてカラヴァッジョからの影響ではないか?と思わせる作風でした。この隣にカラヴァッジョがあったのでそう思ったのかもw

26 カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ) 「音楽家たち」 ★こちらで観られます
こちらは駆け出しだった26歳のカラヴァッジョが、最初のパトロンとなったデル・モンテ枢機卿のために描いたもので、そのパトロンの元に集まった音楽家の青年たちが描かれています。後ろ姿で楽譜?を観ている人、リュートらしき楽器を持つ人などがいて、奥で角笛を持ってこちらを観ている人はカラヴァッジョの自画像とも言われているようです。濃い陰影で描かれた半裸の青年たちの肌が透き通るような白さで、気怠い表情も妙に色っぽいのでカラヴァッジョが同性愛者ではないかと言われるのも分かる気がします。解説によると左端にキューピッドもいるので「音楽」と「愛」の寓意が込められているのではとのことでした。これだけの傑作を目にできるとは驚きです。

27 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 「女占い師」 ★こちらで観られます
こちらは今回のポスターにもなっている作品で、若者が占い師の老婆に占ってもらっている様子を描いたもので、周りには3人の女性の姿もあります。占いで気を引いている間に周りの女性達が宝飾品をスリ盗ってるわけですが、この時代の作品では占い師が出てくると大体こんな感じの胡散臭い役割ですw 若者も若干奇抜な衣装をしているのは芝居にヒントを得たのではないか?とのことで鋭い目線で警戒している感じがします。(老婆は囮なわけですがw) この画家は「昼の絵」と「夜の絵」に大分され、私は夜の絵の光の超絶技巧のほうが好きですが この絵も昼の絵は代表作と言えるほどの傑作となっています。非常に色鮮やかなのはカラヴァッジョの影響が指摘されているようですが、どうやってそれを知ったのかは謎なのだとか。これだけの実力がありながら死後急速に忘れられて、20世紀になって再評価されたというのも数奇な画家ですね。


ということで2章の途中ですが長くなってきたので残りは後編とします。前半だけでも驚いていたけどこの後も良い作品ばかりでしたので、次回はその様子をお伝えしようと思います。

 → 後編はこちら

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