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イタリアの印象派 マッキアイオーリ展 【東京都庭園美術館】

最近忙しくてご紹介が遅れましたが、始まってすぐに東京都庭園美術館で「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」を観てきました。勿論これもぐるっとパスで周っております。ぐるっとパスは庭園美術館→松岡美術館だけでもだいぶ元が取れる勢いです。

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【展覧名】
 イタリアの印象派 マッキアイオーリ展

【公式サイト】
 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/macchia/index.html
 http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html

【会場】東京都庭園美術館
【最寄】目黒駅(JR・東京メトロ) または 白金台駅(東京メトロ)
【会期】2010年1月16日~3月14日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
開催されて2日目に行ったのですが、相対的な混雑感がありました。そんなに人は多くないのですが、何せ広い美術館ではないので、すぐに人だかりができて混みあった雰囲気でした。 特に2階の小部屋は3~4人来ると混んでるように感じてしまう…。少し離れて見たいとき等は難儀しました。

さて、今回の展示は聴き慣れない「マッキアイオーリ」というイタリアの一派を紹介する展示で、見慣れないながらもフランスなどからの影響を感じる作品や、イタリアのルネサンスからの伝統も感じられる内容となっていました。
まず、「マッキアイオーリ」とは何かというと、イタリアの印象派とも言える存在で、1860年~80年代くらいの時代に活躍した一派です。パリ万博でのバルビゾン派に共鳴し、明暗の強いタッチと色の斑点(マッキア)を使って光を捉えようとした、まさに印象派的な存在でした。その隆盛には流れがあるようですので、今回も章ごとに気に入った作品を通じてご紹介しようかと思います。
なお、この展覧会には解説機も作品リストも無く、作品名はメモを頼りにしていますので、間違っていたらごめんなさい。 なぜかパンフレットは充実しているのが不思議w また、作品脇の解説の細かく書かれて詳しいのですが、内容は難しいですw


<第1章 カフェ・ミケランジェロのマッキアイオーリ:古典主題から同時代の主題へ>
ルネサンスは過去の栄光となっていたイタリア美術界の中で、歴史画や物語画への偏重や旧来の画法に疑問を持つ先進的な若い画家が「カフェミケランジェロ」という店に集まるようになりました。そしてバルビゾン派などに共鳴するようになっていったようです。ここではそうした新しい表現方法を求めた画家たちの作品が並んでいました。

なお、この頃、イタリアは分裂状態だったそうで、リソルジメント(イタリア統一運動/復興)が芸術にも影響を及ぼしているようです。
 参考:イタリア統一運動のwiki

ヴィンチェンツォ・カビアンカ 「自画像」
広つば帽を被った紳士風の自画像です。解説によると構図の単純化が観られるとのことでしたが、そんなに単純化されているかなあ?と思いながら観ていました。目に帽子の影が落ち、青白い頬と無精ひげを強調しているらしく、確かに個性的なものを感じました。

クリスティアーノ・バンティ 「宗教裁判の前のガリレオ」
問い詰めるような顔の老人と、脇の2人の修道士風の人、そして老人の机の向かいには凛々しいガリレオが描かれていました。自信がありそうな表情を浮かべていました。

ジョヴァンニ・ファットーリ 「歩哨」
白い壁と白い土の道、そして何も無いような背景に、3人の馬に乗った兵士が描かれています。強烈に日の光を感じ、土と壁が同じような色というのも面白かったです。幾何学的な直線の多い構図も先進的な印象を受けました。


<第2章 マッキア(斑点)とリアリズム>
リソルジメント(イタリア統一運動/復興)が終局に入った1860年頃、ティツィアーノ(ルネサンス ヴェネチア派)などの巨匠が下図を描くのに用いていた、色の斑点で明暗を捕らえる技法を採用する人たちが現れました。彼らの作品は観衆には習作にしか見えなかった(下図に使ってた技法ですからねw)ようで、彼らを「マッキアイオーリ」と呼んでいました。これは半ば蔑称で「子供の作る斑点みたい」という意味もあったようです。しかし彼らはあえてその呼び名を使っていたみたいですw

テレマコ・シニョリーニ 「日向の子供たち」
軒先で向かい合って地べたに座る2人の子が描かれ、2人には強い日差しがあたっています。背後には家の中にいる親らしき女性も見えるのですが、家の中は暗くぼんやりしていてよくわかりません。明暗がくっきりと対比されている作品でした。

クリスティアーノ・バンティ 「農民の女性達の集い」
夕暮れの郊外の村に人々が集まっておしゃべりをしているようです。家々の間には光が差し込んでいますが、落ち着いた感じでした。のんびりと幸せそうな雰囲気がありました。

ヴィンチェンツォ・カビアンカ 「糸をつむぐ人」
のんびりして石の壁に腰掛ける老女、建物の入口にいる糸をつむぐ女性と子供が描かれています。くっきりとした明暗で、糸つむぎの女性にスポットライトが当たったみたいでした。

ラファエッロ・セルネージ 「わんぱく坊主(イチジクと泥棒)」
塀の上のイチジクを盗む様子かな。漆喰の壁の白、扉の赤、空のコバルトブルーなど色の分け方がはっきりしていました。この作品はこのコーナーの典型的な作品のようです。


<第3章 光の画家たち>
イタリアが統一されイタリア王国が生まれた頃、美術評論家のディエゴ・マルテッリはリヴォルノにも近いカスティリオンチェッロに広大な土地を相続しました。そして、そこに画家達を連れて行き、画家達は雄大な自然と海に触れ、それを作品にしていったようです。 ここではカスティリオンチェッロ近郊を描いた作品が多かったです。

ジュゼッペ・アッバーティ 「カスティリオンチェッロの谷」
簡略化されたような感じで、広大な茶色の原っぱと山、水色の空といったシンプルな風景画です。シンプルですが色の対比などが面白い作品でした。

ジュゼッペ・アッバーティ 「カスティリオンチェッロの眺め」
凄く横長の絵でパノラマのような風景が広がります。黄土色の建物や土、青い海、青白い空といった色彩も綺麗です。横から日が差し込んでいるみたいで影が伸びていました。光や色彩の微妙な表現が面白いです。

ここからは2Fの作品です。

ジュゼッペ・アッバーティ 「トスカーナの道」
白い道と脇の樹、手前の見えていない(画面に描いてない)木から落ちる影が描かれています。木の影はリスミカルな規則性がありました。見えないはずの木の存在感が強くて、影が主役みたいになっていて遊び心を感じます。

ジョヴァンニ・ファットーリ 「マルテッリ夫人の肖像」
林の中で椅子に寝そべるように座っている夫人の像です。何故か中央ではなく少し右よりに描かれているのが気になりました。また、晩夏の午後の光に満ちた地平線や垂直に立つ木が幾何学的な要素を持っているようでした。

シルヴェストロ・レーガ 「庭園での散歩」 ★こちらで観られます
日傘を持った2人の女性がこちらに歩いてきます。周りには木々あり、そこに当たった日差しが画面全体を明るくしているように見えました。また、かなりくっついて歩いている2人からは親密な間柄であることまで伝わるようでした。

シルヴェストロ・レーガ 「水揚げポンプ」
垂直の柱と水平に延びる水車のような木の軸が描かれています。他には丸い大きな籠が描かれていて、水平や円といった単純かつ幾何学的なモチーフが目立って面白いです。特に柱と木の軸の存在感は凄かった。

クリスティアーノ・バンティ 「内緒の話」
庭で並んで座る3人の女性が描かれています。真ん中の女性は奥の女性に話しかけている様子で、手前の女性は庭に生えた花をいじっているように見えました。恋の秘密話でしょうか。 3人には木漏れ日が落ち、光の斑点が服に落ちているのがよくわかりました。のんびりと平和な雰囲気の1枚です。


<第4章 1870年以後のマッキアイオーリ>
イタリアが統一された1870年代には、既にカフェ・ミケランジェロは閉鎖され、マッキアイオーリも節目を迎えていたようです。リアリズムというのは何かという概念も複雑化/多様化していくなかで、現実社会をみつめその根源の熱望を理解し、社会に衝撃を与えたいと考える画家も出てきたそうです。しかし、マッキアイオーリ自体は衰退に向かっていたようです。

テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの行進」
両側をレンガに囲まれた狭い坂道を登る大勢人々が描かれています。肩を組む子供や、色とりどりの画面から楽しげで明るい印象を受けました。

テレマコ・シニョリーニ 「リオマッジョーレの屋並」
人っ子一人いない、色あせたような海辺の町が描かれています。どうやら夜明け前の様子のようで、冷気が漂っていそうです。 建物の直線的な構図や雑多な町並も見所でした。

シルヴェストロ・レーガ 「お勉強」
三つ網の女の子と、後ろで抱くようにして教える黒衣の女性が描かれています。2人は親子? 温かみのあるお勉強の風景でした。

ジョヴァンニ・ファットーリ 「休憩(ローマの荷馬車)」
先ほどの1章でご紹介した「歩哨」と似た場所に見えます。御者と4頭の馬が休んでいるようで、道には車輪の後がついています。構図や光と影の表現に作者の試みが観られるということです。 のんびりした感じでした


<第5章 トスカーナの自然主義者たち>
最後の章はマッキアイオーリのその後の展開というニュアンスで、国外に活路を見出した者や、第二世代の登場などを紹介していました。

アドルフォ・トンマージ 「田園詩(逢瀬)」 ★こちらで観られます
柔らかい色調の作品で、荒れた道の横にある垣根ごしに話す富裕層の男女が描かれています。こんな会い方をするのは何か秘密の仲なのだろうかと勘ぐってしまいますw 人間関係や心理が気になる1枚でした。

アドリアーノ・チェチョーニ 「主人と散歩」
これはブロンズ像の犬(テリア?)です。首を傾げていて可愛い(><) 犬をよく観て観察しているのが伺える作品でしたが、何故ブロンズ像がいたのかはわかりませんでした。

フランチェスコ・ジョーリ 「水運びの娘」 ★こちらで観られます
今回、最も気に入った作品。後姿で頭に甕を乗せて、それを両手で押さえる女性が野原を歩いています。気品というか威厳すら感じる佇まいで、背筋を伸ばし、均整の取れたスタイルをしていました。輝くような草原も明るく爽やかでした。


ということで、中々観る機会の少ないジャンルの絵を堪能することが出来ました。63点なので1時間半もあれば観られますが、中々濃い内容です。イタリアならではの部分と、フランスなどから影響を受けた部分が分かったのは特に面白かったです。

この後に松岡美術館へハシゴしました。(ご紹介が前後しましたがw)
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Comment
イタリアの印象派って珍しいですね!
展示されていた絵をたくさん見たくなります。
Re: イタリアの印象派って珍しいですね!
>見る世界 聴く音楽 さん
コメントありがとうございます。
確かに知らない画家も多いし、見慣れない画風が多くて新しい世界が広がった気分になりました。
良い展覧会です^^
Trackback
東京都庭園美術館で開催中の 「イタリアの印象派 マッキアイオーリ~光を描いた近代画家たち」展に行って来ました。 「マッキアイオーリ」(macchiaioli)この耳慣れない言葉を初めて知ったのは昨年の6月。イタリア大使館で行われた「日本におけるイタリア2009・秋
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