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酸化したリアリティー 群馬青年ビエンナーレの作家たち 【群馬県立近代美術館】

少し前に、群馬の高崎と伊香保温泉へ1泊2日の小旅行に行ってきました。この辺の美術館には行った事が無かったので、一気に巡ろう!と意気込んだのですが、予想以上に移動に時間がかかってしまい、結局行ったのは2日でわずか2館でした(><)

まず初日に行った群馬県立近代美術館へは私は行きは高崎駅からタクシーで行ったのですが、2600円くらいだったかな。帰りはバスでしたが滅多に来ない上、1時間くらいかかりました。多分、倉賀野駅か新町駅のほうが地図では近いように見えます。(そこにタクシーやバスがいるかは知りません) とにかく交通手段が貧弱なところですので、車で行くべきところなのかもしれません。時間と距離の計算を誤りました。
とは言え、群馬県立近代美術館が思っていたより面白くて、観るのに時間がかかったというのも時間が足りなくなった大きな理由だったかも。わざわざ行っただけの甲斐がありました。

やっとの思いで着いた美術館。この馬の像は写真だとわかりづらいですが巨大です
P1110618.jpg


まずは企画展を観てから常設を観ることにしました。今日は企画展についてご紹介しようかと思います。
P1110626.jpg


【展覧名】
 酸化したリアリティー 群馬青年ビエンナーレの作家たち

【公式サイト】
 http://www.mmag.gsn.ed.jp/exhibition/g_bien.htm

【会場】群馬県立近代美術館 展示室1
【最寄】倉賀野駅/新町駅
【会期】2010年1月23日[土]~3月22日[月・祝]
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
特にこの特別展を観に来たわけではないですw 美術館そのものに興味があって、行ったらやってたくらいの感じだったのですが、予想以上に面白い内容で楽しめました。
まずはタイトルが謎ですが、これは情報が多様化・氾濫している現代の感覚を、情報に飲み込まれ確かなリアリティを感じない「酸化したリアリティ」と名づけ、その中で作家達は作品を作ることで生のリアリティを得る/生み出すという意味があるそうです。また、「群馬青年ビエンナーレ」というのは30歳以下の若手の公募展のことで、今回の展示はこの「群馬青年ビエンナーレ」で2000年代に大賞・優秀賞を取った7人の作家の作品が展示されていました。1人1部屋って感じで展示されていたので、さらっと全員ご紹介しようと思います。(説明が難しい作品ばかりですがw)


<江原一幸>
この作品は特別展の会場の入口前にあって、一旦出てから気づきましたw CGアニメによる映像作品で、果物を輪切りにしたような半円状の空飛ぶ庭園(というか飛行船みたいな乗り物)の物語です。真っ白な背景に、赤めの色彩(セピア色というかピンクというか)のみで様々なものが描かれ、温かく優しい雰囲気です。話の内容は何らかの戦争直後の時期のを描いているようで、物悲しい場面もあります。その際はBGMのピアノもそれに合わせて少し悲しい曲調でした。最後は海に沈んでいくなど、見た目は童話のようですが、様々なメッセージが詰まっていそうでした。

<SATSUKI>
中に入って最初の展示室で、偶然にも本人(若い女性の作家さん)によるトークを聞くことができました。
まず目に付いたのが天井にビニール傘や木の枝でできた作品なのですが、これは群馬の森(美術館のある森)で拾ってきたそうです。木は枯れてきていて、時間の経過を感じるとおっしゃっていました。
また、アマゾンの未開の街(いまだに物々交換を行っているようなところ)に行った際に、海で魚を取った想い出や星を見た想い出を形にした作品などもありました。アニメと実写が3分、途中から音だけ7分というもので、アマゾンの生活の音や動物の鳴き声、日本の音なども入っていました。こちらの作品にはステレオが使われているのですが、その上にはマツボックリが置かれていました。これについて、今回の会場を設置する際に、群馬の森でどんぐりを拾っていたところ、見知らぬおばさんがマツボックリをくれて意気投合したというエピソードを語っていました。この作家さんはこうした人との結びつきを重視しているようで、人との関わりについてのコメントを多くされていました。ここで展示が無かったら出会いは無かった、物事が偶然広がっていく楽しみを感じるとおっしゃっていました。
他にも色々と聞いたのですが、全部書くと大変なので割愛。すみません。

<大矢加奈子>
アクリルを使った絵画作品が10点ほど並んでいました。洗濯物の絵や部屋の中の絵などを、赤や紫がかった妖しい色使いで描いているのが印象的でした。所々に絵の具が下に滴り落ちているのも妖しいw

<松岡圭介>
なんか見たことがあるぞ!と思い出したら、最近、INAXギャラリーで観た作家さんの作品でした。
 参考記事:http://21stcenturyxxxman.blog40.fc2.com/blog-entry-259.html

木で型を取ってから金網に磁石をつけ、鉄粉で全体を覆っているらしく、砂鉄が毛のように見える像がいくつか並んでいました。特に面白かったのが、人が横に動くのをコマ送りにしたような像(残像がならんでいるような感じ)の作品で、動きを感じました。

<永田惇哉>
様々な宇宙人のような人の絵や、剣を持った人と人面の犬と道に倒れている人々の絵、生首のようなものが土に乗っているような絵など、シュールでトラウマになりそうな絵が多かったw なぜか海老の握り寿司の絵もあったり。

<笹山直規>
小学校にある人体解剖の像のような(人体の内部が見えている)人が車の運転席で横たわって食べかけの林檎を持っている絵や、スクラップ工場のようなところで手術台のように乗せられ内臓が解剖図のように見えている絵など、グロい生々しさのある絵が何点かありました。他にも、死刑囚の最後の食事の静物画のコーナーもあり、ピクルス、チョコチップクッキー、かに、コーヒーなどが描かれ、各死刑囚の罪状と経緯も書かれていました。 うーん、猟奇的なものもありますが、最後の食事は興味深いものがあったです。

<椎名勇仁>
ガラスの容器に入ってグラスに入った獏の置物や、3つのサングラスがくっついているものが3つ置いてあったり、青いホースで出来たクリスタルのような形をした作品、
砂の詰まったガラスに海苔で出来たできた舟の作品など、なんだこれ?と思う作品が多くありました。特に海苔でできた舟はその発想が面白かったですw


とい感じで妙なものも沢山あって予想以上に楽しい展覧会でした。現代アートは難解なのが多いですが、こういう展示なら結構楽しめますね。
この後、常設展も観てきました。常設も見所が多かったので、次回はそれをご紹介しようと思います。
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はじめまして。
はじめまして。
ブログランキングで「心地よい暮らしのコラボレーション」同じカテゴリーに登録しているsumippyです。
いつも、ブログ内容の充実ぶりに感心して拝見しています。
群馬県立近代美術館は出来た当初から、何回か訪ねています。倉賀野からバスに乗っていくとあたりの風景に東京にはない独特の雰囲気があるのを感じます。
この日もよく晴れて青空がきれいですね。
昨年は中之条で開かれていたビエンナーレに行きましたが、が予想以上におもしろいものでした。
続きを楽しみにしています。
Re: はじめまして。
はじめまして。同じランキングなんですね^^
この美術館は私は初めてだったのですが、交通の便はもっと調べてから行けばよかったかなと。良い展示とコレクションでかなり満足できたので、そこだけが失敗でした。

それにしても、ビエンナーレというのもレベルが高そうですね。群馬の美術館、侮れません!
続きで常設展も書きますので、またご覧いただければと思います。
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