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群馬県立近代美術館の常設 【2010年02月】

群馬県立近代美術館で「酸化したリアリティー 群馬青年ビエンナーレの作家たち」を観た後、常設展も観てきました。 常設も予想以上に面白くて、幅の広い作品を楽しむことができました。いくつか気に入った作品について軽いメモを取ってきたのをご紹介しようと思います。 なお、こちらの常設では絵葉書のようなモノクロの解説付カードも無料でもらえます。(埼玉県立近代美術館と同じようなサービス) 中々嬉しいサービスです。

P1110611.jpg


【公式サイト】
 http://www.mmag.gsn.ed.jp/permanent/index.htm

 この美術館の常設コレクションは下記のサイトで一部観られます
 http://www.mmag.gsn.ed.jp/collection/col_kaigai.htm

【会場】群馬県立近代美術館
【最寄】倉賀野駅/新町駅
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構広くて、私が行ったときは西洋絵画、日本人の西洋画、現代アート、特集展示、書といった感じの構成となっていました。(部屋ごとに展示期間が異なるようです) 部屋ごとに気に入った作品をご紹介しようかと思います。

<日本と西洋の近代美術IV>
期間:2010年01月26日~03月07日

マルク・シャガール 「寓話」 ★公式サイトの解説
版画です。所々に青、赤、黄色などシャガールらしい色彩も見られます。全部で100点のシリーズのようですが、ここでは10点ほど展示されていて、特に気に入ったのは、ライオンが戦争の指揮を執る話の絵。これは、「役に立たないからロバと兎は家に帰れ」と言われたのを、ライオンが「ロバはラッパ兵、兎は伝令として役に立つ」と言った話です。絵にはライオン、兎、青いロバ、その背に乗る赤い猿?が描かれていて、寓話に沿った挿絵のようでした。
この他にもシャガールは「サーカス」などお馴染みのリトグラフや油彩作品などもありました。

クロード・モネ 「睡蓮」 ★こちらで観られます
モネも2点ありました。そのうちの1枚が睡蓮の連作の1枚で、これはどこかで見たかも? 紫と深い緑で少し暗めの色調の作品でした。

印象派はモネ以外にもピサロの「エラニーの教会と農園」も並んでいました。こちらも好みの作品でした。

オディロン・ルドン 「ペガサスにのるミューズ」 ★こちらで観られます
この作品を去年観た方も多いのでは? こちらは去年、東京都美術館で行われた「日本の美術館名品展」にも出品されていた作品です。
 参考記事:日本の美術館名品展 感想前編(東京都美術館)
幻想的な色に染まる雲の中を飛ぶペガサスに乗った女神が描かれています。夢の中のような雰囲気は流石ですね。馬が向いている左上の方の空間が広いせいか、躍動感も感じられました。

モーリス・ド・ヴラマンク 「わかれ道」
街中の左右に分かれる道を手前から描いた絵です。左は下り坂、右は上り坂。ヴラマンクの作品としては全体的にすっきりした感じに仕上がっているように思いました。ヴラマンクはどんな作品も好きですw

マリー・ローランサン 「ブルドッグを抱いた女」 ★公式サイトの解説
白い子犬のようなブルドッグを抱く白い肌の女性の肖像です。こんなに可愛くて、本当にブルドッグかな?w 儚い雰囲気の女性は右ひじ辺りは消えかかっているかのように白く塗られていて、まるで幽霊のような・・・。 犬も寂しそうな顔をしているのが印象的でした。

西洋画には他にもルオー、パスキン、フジタ、ピカソなどが1枚ずつあり、ロダンやマイヨールの彫刻も置かれていました。
続いて日本人画家のコーナーです。

岸田劉生 「五月の砂道」 ★こちらで観られます
青い空の下、砂道と民家の屋根が描かれています。爽やかで開放的な雰囲気があり、新緑の頃の生気を感じる作品でした。

佐伯祐三 「パリ郊外風景」 ★こちらで観られます
町の通りを描いた作品。誰もいないよくありそうな道で、よくこんな平凡な道を芸術作品にすることができるなあと妙なところに感心しながら観ていました。筆遣いが早いように思われ、流石に影響を受けたヴラマンクに似てるように思いました。

山口薫 「花子誕生」 ★公式サイトの解説
この作品はどこかで最近観た覚えがあるのですが、どこかが思い出せずもどかしいw 少し単純化されて描かれた親子の牛が並び、親牛が子牛を舐めているようです。観ているだけでも微笑ましい光景です。また、緑色で描かれた子牛をはじめ、抽象と具象の狭間のような色彩が独特でした。


<現代の美術III>
期間:2009年11月28日~2010年04月11日

私は基本的に現代アートは苦手なのですが、ここの展示は面白い作品が多かったです。特に福田美蘭の作品は好みでした。

福田美蘭 「道頓堀」 ★公式サイトの解説
アクリルを使って描かれた絵で、遠くから見ると、道頓堀のグリコの看板とかがある辺りの夜景そのものに見えますが、近くによるとちょっとボケているのがわかります。解説によると、これは上半分に夜景を描き、絵具が乾く前に半分に折りたたんで、下半分の水面に絵具を写しているそうです。そんな技法とは気づきませんでしたが面白い作品でした。

福田美蘭 「リンゴとオレンジ」
セザンヌ風の静物画ですが、その上に油性マジックで批評が色々と書かれています。モチーフの組み方や視点、台の設定など専門的な指摘が書かれていて確か評価はB+と描かれていましたw この発想が面白かったです。

上田薫 「なま玉子」 ★公式サイトの解説
超リアルな油彩画です。生卵が今まさに殻から流れ落ちる一瞬を描いています。滑らかに変形した黄身や伸びている白身など、こんなの観察不可能では?と思ったら、最初に写真を撮って、それを元に絵を描いたそうです。その写実性も凄いですが、日常にありながらも気づかない光景を題材にしている感性にも凄さを感じました。

白髪一雄 「蒲昌海」
これは分厚い絵具がインパクトのある作品です。館員さんが教えてくれたのですが、これは足で描いた作品らしく、力強い流れができていて、特に足の指の跡が残っているのが面白かったですw 何を描いたのかは全くわかりませんw

これ以外にも30点近くあったかな。どれも面白いので現代アート好きの人には特に良いコーナーだと思います。

<特集展示 : 山口薫>
期間:2009年11月28日~2010年04月11日
公式サイト:http://www.mmag.gsn.ed.jp/permanent/yamaguchi.htm

先ほどもご紹介した山口薫は、高崎市の生まれだそうで、特集展示となっていました。ここだけでも30点くらいあり、画家の変遷などもあったのですが詳細は割愛します^^;

山口薫 「路傍のキリスト像(ブルターニュ)」「ブルターニュの回想」
これは構図は似たような作品なのですが、色彩が全く異なる2枚です。「路傍のキリスト像」の方が先に描かれたらしく、こちらはカラフルでゴーギャンのような色彩感覚です(そう思っていたらゴーギャンに影響を受けたようなことが解説に書かれていました。) そして、「ブルターニュの回想」はその15年後に描かれた作品で、茶色っぽく暗めの色合いですがすっきりとしていて、路傍のキリストとはタッチもだいぶ違って見えました。解説によると、こちらのような薄塗りの絵の具や哀愁が漂う雰囲気は山口薫の特徴だとのことでした。変遷がよく分かる2枚で面白かったです。

山口薫 「しばられたあいつ」
タイトルを見て吹き出しそうになりましたw 仏像がテープのようなもので腕をしばられている水彩画です。あいつってw

この他にも色々とあったのですが、抽象画のようで初心者には難しかった…。もうちょっと分かりやすい解説が欲しかったところです。

<素材を楽しむ>
期間:2009年11月28日~2010年04月11日

このコーナーは「素材を楽しむ」という特集になっていました。大小様々な作品が並んでいて作品名などは気にせず観ていたのですが、シュロで出来た縄や壁に掛かった絨毯のような布団?の作品、ステンレススチールで出来た立方体の作品など、「素材」が主役になっているような作品が13点ほど並んでいました。大きな作品などは素材感が出す迫力もあり、ここも面白いコーナーでした。

<大澤雅休と近代の書>
期間:2010年01月26日~03月07日

山種記念館という名前のついた部屋で、書が15点ほどありました。
大澤雅休の書は何度か観たことがあると思いますが、ダイナミックで抽象絵画のような書で、書が分からない私でも観ていて面白かったです。


というわけで、常設もかなり楽しめました。広くて建物のデザインも良かったし、満足できる美術館でした。
ちなみに、私は時間が無くていけませんでしたが、この美術館の隣には群馬県立歴史博物館もありました。(今は休館しているようです)
 参考リンク;群馬県立歴史博物館の公式サイト
もしこちらの美術館に興味がある方はハシゴしてみるのもありかなと思います。

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