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和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち- 【サントリー美術館】

先週の土曜日に六本木で美術館巡りをしてきたのですが、まずはサントリー美術館で「和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち-」を観てきました。私が行ったのは前期でした。今回もメンバーズクラブのカードで入りました。(メンバーズクラブの紹介ページ

P1120294.jpg

【展覧名】
 和ガラス -粋なうつわ、遊びのかたち-

【公式サイト】
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/10vol01/index.html

【会場】サントリー美術館
【最寄】六本木駅/乃木坂駅
【会期】2010年3月27日(土)~5月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
今回の展示は「和ガラス」ということで国産のガラス器の展示となっています。テーマとしては結構大きな括りで、去年の同時期に行われた薩摩切子展のような歴史的な流れの構成ではなく、用途でコーナーを分けて優品を紹介するという感じでした。難しいことを考えなくても、一目で麗しいガラス器は広く人々に訴えるものがあると思います。満足度を④にしていますが⑤でも良い位好みの作品が多くありました。

参考記事:
  一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子 (サントリー美術館)
  一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子 2回目(サントリー美術館)


最初に簡単な説明があり、日本でのガラス工芸は飛鳥時代のビーズのような装身具が作られていたと解説されていました。本格的にガラスが作られたのは江戸時代で、ヨーロッパから入ったガラスに憧れて工夫されていったようです。今回の展示も江戸時代の作品が多かったかな。詳しくは章ごとにご紹介していこうと思います。まずはこの展覧会の象徴的な作品が展示されています。

「藍色ちろり」 ★こちらで観られます
深い藍色のちろり(急須のような形の酒を温める容器)です。取っ手を捻ってあるのが面白く技術を感じます。何と言ってもその色合いが美しいです。
また、この作品の近くには朝顔のようなデザインと色のガラス容器もあり可憐でした。


<プロローグ:「写す」 ― 憧れの和ガラス>
最初のプロローグの「写す」はヨーロッパの真似をして作られた作品を紹介するコーナーです。丸パクリだろwっていうくらい似ているガラス器などが展示されていました。

「つまみ脚付杯」 「つまみ脚付杯」 「乳白色ツイスト脚付杯」
ほとんどそっくりの3点です。2つの国産の杯は、台の部分が凝っているイギリスのグラスを真似て作ったものですが、台の部分の技法がわからなかったようで、捻ったような細工となっています。比べてみるとイギリスのものとは違った新しい味わいが出ているのが面白かったです。

このコーナーには絵や書物などもありました。特に面白かったのが加賀屋という店のカタログのようなもので、何枚か出版年が違うバージョンがあり、徐々に売っているガラス器が多様になっていく様子がわかります。特に切子(カットグラス)が増えていったようで、当時のガラス技術の進歩をうかがわせました。

他にも、色眼鏡や遠眼鏡(望遠鏡)が展示されていて、北斎の浮世絵の中には遠眼鏡を覗かせる商売があったことが描かれていました。当時のガラスへの関心が分かって面白いです。

<第1章:「食べる・飲む」 ― 宴の和ガラス>
1章は飲食の際に用いるガラス器を集めたコーナーでした。

「色替唐草文六角三段重」 ★こちらで観られます
六角形で唐草文が入った器が3段に重なっています。上段は緑、中段は無色、下段は黄色と色が違うのが面白いです。大正の民藝運動を起こした柳宗悦が中国で買ってきた作品だそうですが、元々は長崎で作られたもののようです。

「藍色十角鉢」
十角形の形の器です。形も面白いですが、ここには深いエメラルドグリーン、黄緑、紫、透明、藍色などの涼しげな色の器が並び眼に鮮やかでした。

「水色徳利」
その名の通り水色のとっくりです。色は口の方が濃く、下に向かってグラデーションがあり気品があります。形もすらっとした雰囲気で、細く伸びた口、柔らかい丸みの胴の部分は特に優美でした。シンプルですが色・形ともに素晴らしい作品でした。

「ギヤマン彫りふきのとう文緑色脚付杯」
ギヤマン彫りというのは欧米ではダイヤモンドポイント彫りと呼ばれ、ダイヤ並の硬い石をつけた工具でガラスの表面を引っかき、文様を描く技法です。この作品は鮮やかなエメラルドグリーンで、表面に薄っすらとふきのとうが描かれていました。可憐です。

「練上手徳利・脚付杯」
この展覧には「練上手」という作品がよく出てきましたが、これは色々な色を混ぜた状態で固めたガラスです。黄色、赤、緑などの縞模様が出来ていますが、全体的には茶色っぽいかな。不思議な色合いが面白いです。

「ガラス徳利・二段重・小皿入り提重」
簡単に言えばピクニック用の容器セットです。徳利・二段重・4枚の小皿があり、皿には寿を文様化したものが刻まれています。また、それらが入っている木枠も洒落ていて、格子状に組まれて中が覗けるようになっていました。

「色替八角皿揃」 ★こちらで観られます
中央に緑の8角形の皿があり、その周りを無色と紫の皿が取り囲み、1回り大きな八角形(ちょっと円に近い)を形づくっています。組み合わせが面白く、こうしてセットで残っているのは貴重なのだとか。また、解説によるとこの作品が作られた頃には既に絵ガラスの技法が伝わっていたようですが、あえてガラス本来の美しさを大事にしているようです。

「青色菊形向付 6口」
青色の器で、そうめんのつゆ入れみたいな感じかもw それぞれ縦に22本の溝があるのが美しい作品でした。

「薩摩切子藍色被脚付杯」 「薩摩切子紅色被皿」
この2つはちょうど去年の今頃に薩摩切子展でも展示されていたかな。特に薩摩切子紅色被皿の色合いの力強さはよく覚えていました。今回の展示は結構見覚えのある作品も多かったかも。

「切子蓋付三段重」 「切子三ツ組盃・盃台」 ★こちらで観られます
丸い台に乗った3つの切子が華麗で幾何学的な美しさを感じます。塔のようでカッコいいです。 ここら辺は去年の展示の美味しいところを持ってきた感じなのかな。

<第2章:「装う」 ― みだしなみの和ガラス>
2章はガラスを使った装身具に関するコーナーでした。ガラスで出来た櫛や印籠、手ぬぐいなどまでありました。

「グラヴュール芦に雁図櫛」
透明で何とも涼しげな感じの櫛で、べっこうに嵌め込まれた板ガラスに、飛び立つ鳥が描かれています。裏面から見ると違う絵柄に見えるのだとか。素晴らしい技術です。ここら辺りには他にも髪関連の装飾品が並んでいました。

「ビーズ飾り梅に尾長鳥文印籠・瓢形根付」
「ビーズ飾り印籠袋・切子瓢形根付」 ★こちらで観られます
ビーズ編みの印籠と、瓢箪型の根付です。特に後者は切子となっていて手が込んでいます。持ち主の洒脱なセンスが伺えました。現代にこんなストラップがあったら欲しいんだけどなあw

「ねじり棒手拭掛」 ★こちらで観られます
この辺で最も、おおっ!?と驚いたのがこの手ぬぐいかけです。S字を組み合わせた部分と、ねじった棒を丸めた円が1つになって手ぬぐいかけになっています。洗練されたデザインが現代的で衝撃でした。なお、ガラスのように強度が高くないものを手ぬぐいかけの素材にしているのは、非日常的な遊郭などで使用するためのものではないかと解説されていました。

2章で4Fは終わりです。3Fに降りるとすぐに、風鈴の音が聞こえてきました。(構成的には風鈴は4章のもののようです)

「風鈴の森2010」篠原まるよし風鈴
500個もの風鈴が天井から釣り下がっていました。ちりんちりんと涼しげな音を鳴らしていて、風流な空間となっています。これらは江戸時代のデザインの復刻が3種類、現代のデザインが3種類の計6種類のようでした。現代のはスズランのような形もあり、それぞれ微妙に音が違うようでした。ちなみに、風鈴を庶民が楽しめるようになったのは明治以降なのだとか。


<第3章:「たしなむ」― 教養と嗜好の和ガラス>
3章は文具や喫煙具が並んでいるコーナーでした。

「薩摩切子文具揃」 ★こちらで観られます
薩摩切子の文具セットです。赤と青のついたてのようなものがあるのですが、何に使うのかいまだによく理解できていませんw それにしてもガラス器で書道とは洒落た感じです。

「緑色ガラス棒入り鳳凰文透かし絵煙草盆」
こちらはタバコの箱です。縦に緑のガラス棒が沢山入っていて、光の加減では鳳凰が見えるようです。私も一生懸命観たのですがちょっと見えなかったかな。

「ビーズ飾り硯箱」 ★こちらで観られます
2mm以下のビーズで作られた硯箱の蓋が見事な作品。小さな6角形で大きな6角形を描く模様を作っています。果てしなく手間がかかっていそうで驚きでした。

「箸 5膳」
ガラス製の細いお箸です。青いお箸や透明のお箸が並び、繊細かつ華麗でした。美しさに目を奪われました。

「ビーズ飾り台子」
側面にビーズを並べて馬の絵が描かれいる大きな台です。(タンスみたいな棚) ビーズでここまで絵を描くとは…。恐るべし根性ですw


<第4章:「愛でる」 ― 遊びの和ガラス>
最後のコーナーは遊び心満点の非日用品のコーナーでした。

「ビーズ飾り風声」
これはビーズ飾りや金属板をぶら下げているもので、風が通ると金属同士がぶつかり合って涼しげな音がでる仕組みです。色と風の音で暑さを忘れようとした当時の風流な感性がうかがえます。他にも燈籠などもありました。

鳥高斎栄昌 「若那屋内白露」
遊女が手に金魚の入ったガラス器(金魚玉)を持っている浮世絵です。その顔は非常に嬉しそうで爽やかな雰囲気でした。

「金彩波頭文金魚玉」 ★こちらで観られます
実際の金魚玉も展示されていました、金魚を入れた丸っこい入れ物で、横には波紋が描かれています。周りをビーズで編んだ紐で縛って、持ちやすくなっていました。昔よく観た金魚鉢みたいな感じかな。可愛らしいデザインです。

「数眼鏡」
亀の甲羅のようにカットが入ったレンズです。中を覗くと、ものが万華鏡のように見えるのが面白かったです。なかなか遊び心を感じます。

「ガラス棒入り虫籠」 ★こちらで観られます
ガラスの棒で檻を作った虫かごです。非常に細いガラスで出来ていて、ちょっとはかない感じもするかな。見た目と虫の音を楽しんだのでしょうか。技術と遊び心に感心しました。


ということで、色々なガラスを使った作品にかなり満足できました。今回は2回の展示替えのようですので、後半の展示もまた観てみたいです。好みの展示でした。
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