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ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想後編 【森アーツセンターギャラリー】

前回の記事に続き、ボストン美術館の感想となります。混み具合などについては前編に書いていますので、読んでいない方は前編から読んで頂けれると嬉しいです。
 前編:ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想前編 (森アーツセンターギャラリー)

今日は4章から8章をご紹介しようと思います。まずは概要のおさらいです。

P1120298.jpg

【展覧名】
 ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち

【公式サイト】
 http://www.asahi.com/boston/
 http://www.roppongihills.com/art/events/2009/12/macg_boston.html

【会場】森アーツセンターギャラリー
【最寄】六本木駅
【会期】2010年4月17日(土)~6月20日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日18時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編は伝統的な絵画が多かったように思いますが、後半は印象派の作品が多かったと思います。特にモネは1つの章になるほどの充実振りでした。

<IV 描かれた日常生活>
4章は生活の中にある風景を描いた作品のコーナーでした。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「花輪を編む娘」
タイトルどおり立って花輪を編み娘が描かれ、手に視線を向けて作っています。背景には森と城が見え、これはコローがイタリア旅行した頃を思い出して描いたそうです。少しぼやけたようなコローらしい描写で少女の周りが柔らかく感じました。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 「鎌を持つ草刈り人」
これは一昨年に西洋美術館のコロー展でも展示されていた作品なので、ご存知の方も多いかも。頬杖をついて左手で鎌を持った女性が、親しげな表情でこちらを見ています。観ていると女性と対話しているような感覚になるのが面白い作品です。

ジャン=フランソワ・ミレー 「馬鈴薯植え」 ★こちらで観られます
ミレーらしい主題で畑で農作業をしている夫婦が描かれている作品です。くわで土を掘る夫、手で馬鈴薯をなげる妻、背景には木の下で休む赤子とロバも見えます。遠く見える野原や空は明るく、光が2人当たり崇高な雰囲気すらありました。

エドゥアール・マネ 「音楽の授業」
先日のマネ展の記事で、マネはサロンに出品し続けたとご紹介しましたが、この作品もサロンに出品した作品です。ギターを持ったひげの男性と、楽譜を膝に乗せた女性が描かれています。2人とも黒っぽい服を着ているのはマネならではの黒へのこだわりでしょうか。特に女性のドレスが艶やかです。何故か2人の視線はあわず、2人ともどこを見ているのかよくわからないのが気になりました。何か意味があるのかな? また、明暗の対比と奔放な筆さばきにベラスケスの影響が観られると解説されていました。
 参考記事:マネとモダン・パリ (三菱一号館美術館)

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ガーンジー島の海岸の子供たち」
中央にすみれ色の帽子を被り、子供たちを軽く押さえている白っぽいドレスの女性が描かれ、その右にはピンクの服の女性、左には座っている子供たち、背景はちょっとぼやけた感じですが夏の浜辺で遊ぶ子供たちが描かれています。中央の女性は非常に優美で、慈愛を感じさせる表情に心を奪われました。明るく爽やかで、今まで観てきたルノワールの作品の中でもかなり好みの作品となりました。

クロード・モネ 「アルジャントゥイユの自宅の庭のカミーユ・モネと子ども」 ★こちらで観られます
赤とピンクの花が咲き誇る庭に腰掛けて針仕事をしている妻と子供の姿を描いた作品です。花の赤、草の緑、妻と子供の服の青と、色の使い方も面白いですが、何よりも幸せに満ちたのんびりとした風景が心に残りました。どうやらボストン美術館はモネの作品の揃えは特に素晴らしいようです。

エドガー・ドガ 「田舎の競馬場にて」 ★こちらで観られます
こちらは第1回印象派展に出品した作品だそうです。競馬場を題材にした作品なのに、競馬場は背景に使われているくらいで、手前に大きく描かれた見物人の馬車が主役の絵となっています。馬車には子供に授乳する母親や、ちょこんと座った犬など一家団欒の様子が描かれていました。解説によると、馬車の馬は画面の外にはみ出ていて、これは浮世絵の技法からの影響とのことでした。見た瞬間、ちょっと左に寄ってるぞ?と思ったらそういうことなんですねw

<VI モネの冒険>
さて、今回の展示はモネ好きの人にはたまらないコーナーがあります。10点のモネの風景画が展示されているこのコーナーには、モネの代表的な連作が少しずつ楽しめるようになっていました。どれも素晴らしくて、私のテンションは最高に上がってしまいましたw (何故か6章となっていますが5章より先に展示されています)

クロード・モネ 「アルジャントゥイユの雪」
街からちょっと外れた場所から描いた作品です。点で表された雪が降り、傘をさした人たちや雪の積もった街が見えます。ちょっと薄暗くて寒さが伝わってくるようでした。 解説によると、水平の草地や垂直の塀が描かれ安定した構図のようです。

クロード・モネ 「ヴァランジュヴィルの崖の漁師小屋」 ★こちらで観られます
この小屋の絵は(似たような絵を)よく見ますが、この作品は特に良い作品に思います。光に溢れた鮮やかな色合いで、海の崖に立つ小屋が描かれています。海は緑が混じった青で、オレンジの小屋とは補色関係であると解説がありました。また、海の上に白いものが描かれているのですが、それが船なのか波なのかわからないくらい簡略化されていました。 これだけ明るいと心も晴れるようで、爽やかな気分になれました。

クロード・モネ 「積みわら(日没)」 ★こちらで観られます
これも私が今まで観てきた積み藁の中でもかなり好みの作品です。積み藁が夕陽をまとって赤く染まっている絵です。ちょうど積み藁が夕陽をさえぎっていて、後光が差しているかのように輪郭が輝いています。その日光のやわらかな表現が素晴らしく、心休まる風景でした。

クロード・モネ 「ルーアン大聖堂の正面とアルバーヌ塔(夜明け)」 ★こちらで観られます
連作シリーズにはルーアン大聖堂もありました。青く描かれた聖堂が、霧の中に立っています。後ろの塔には日が当たりだしたのか薄いピンクに染まってきていて、夜明けの頃の空気感があります。静かな雰囲気ながらも夜明けの清清しさや、心地よい明るさを感じる作品でした。

クロード・モネ 「睡蓮の池」
モネの連作と言えばやはり睡蓮は外せませんが、勿論この展示にもありました。これは自宅の日本風の太鼓橋の周りを描いたもので、赤や緑が混じった風景は抽象画のようにすら思えるくらい簡略化され、色が主役になっています。しかし、ちょっと離れてみると水面の動きまで感じられるようで驚きました。素晴らしいです。

<V 風景画の系譜>
5章は風景画のコーナーです。ちょっと時代が戻って印象派以前の作品が多かったかな。

テオドール・ルソー 「森の中の池」
バルビゾン派のTルソーの作品。手前に木々に囲まれた暗い池が描かれ、奥には日の当たる草原に牛達が見えます。全体的に非常に緻密に描かれ、特に手前と奥の明暗の対比を感じます。解説によると、池が描く曲線なども慎重に構成されているのだとか。単に綺麗な風景ってだけでなく奥深いです。

ギュスターヴ・クールベ 「森の小川」
森の中の暗い小川と、その川べりでこちらを見る鹿が描かれています。背景には画面をはみ出して伸びる木々が描かれ、非常に力強さを感じ迫力がありました。はみ出し者のクールベに似つかわしいかもw


この章の後にまた休憩所があります。ここまでの記事でわかるかと思いますが、実に様々な時代・地域・流派の作品が並んでいるせいか、休憩所にはこの展示に出品されている画家の簡単なプロフィールなどが紹介されていました。休みながらおさらいもできる中々良い趣向でした。


<VII 印象派の風景画>
7章は印象派の風景画が並んでいました。と言ってもここまででもだいぶ並んでたとは思いますがw

ポール・シニャック 「サン=カの港」
新印象主義のシニャックの点描で描かれた作品です。砂浜を描いているのですが、シニャックにしては点が小さいような気がします。また、独特のピンクや紫がかった色合いもあまり感じず、ちょっと薄めに感じました。私があまり観たことがないシニャックのように思いました。

アルフレッド・シスレー 「サン=マメスの曇りの日」 ★こちらで観られます
大好きなシスレーの作品も3枚あり、特に気になったのがこの作品です。セーヌ川のほとりを描いた絵で、川沿いの木や街、木材の作業をしている人、船などが見えます。また、画面の多くの部分は曇り空が描かれ、雲がリズミカルな模様で描かれていました。普通、曇り空なんてつまらないと思うだろうに、こんな面白く描きあげるとは…。そのセンスが凄いとしか言いようが無いw

ポール・セザンヌ 「池」
緑豊かな池のほとりで寝転がったり座っている人々が描かれた作品です。観ていると平面的な感じを受け、遠近感もおかしな感じです。表現の実験的な作品なのかもしれません。後世に絶大な影響を与え時代を作り上げたセザンヌの新しい表現を感じる作品でした。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「オーヴェールの家々」 ★こちらで観られます
今回の目玉作品の1つでポスターにもなっている作品です。明るい色彩で家々が描かれ、力強さを感じる一方、流れるような印象も受け、手前に描かれた家の屋根の色からはリズム感も感じます。また、間近で観るとゴッホらしく厚く塗られた筆跡がよく分かりました。ゴッホは直接感情に訴えかけるものがありますね。

カミーユ・ピサロ 「エラニー=シュル=エプト、雪に映える朝日」 ★こちらで観られます
ピサロも3枚あって特に気に入ったのがこの作品で、これは自宅の窓から描いたそうです。 薄いオレンジがかった枯れ木と雪原が描かれ、手前には両手にバケツ?を持った女性が描かれています。雪の色には紫や青も使われ影の表現も見事です。全体的に暖色系なせいか、冬の雪景色なのに温かみを感じる作品でした。解説によると当時ピサロは「自然に対する感動を感じる」と賞賛されたようです。

<VIII 静物と近代絵画>
最後のコーナーは静物のコーナーでした。

アンリ・ファンタン=ラトゥール 「卓上の花と果物」 ★こちらで観られます
卓上に置かれた洋ナシ、葡萄、桃などを描いた作品です。本物のような質感がありました。解説によると構成もよく練られているようです。左の方のことかな?

ジョルジュ・ブラック 「桃と洋梨と葡萄のある静物」
いかにもブラックの作品といったキュビスム様式で描かれた静物です。輪郭が太く簡略化されていました。多面的というのはあまり感じなかったかなあ。
このコーナーにはマティスなどもありました。

ということで、80点の展覧で40点近く紹介したと思いますが、これでも紹介しきれてない感がしますw 本当に全部気に入るくらいの内容で、心底満足できました。これは近いうちにもう一度行こうと心に決めております。 会期が進むと混む可能性があるので、気になる方はお早めにどうぞ。
 ⇒後日、再度行ってきました。
  参考記事:ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 2回目(森アーツセンターギャラリー)

この後、さらにハシゴして森美術館で「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」を観てきました。六本木クロッシング2010では写真撮影もできました(勿論ルール厳守)ので、次回はそれをご紹介しようと思います。
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