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ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 (感想前編)【横浜美術館】

今日は休みを取って降りしきる雨の中、横浜美術館で「ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡」を観てきました。驚きの多い内容で、去年観た西洋美術館のローマ展やカルタゴ展と同様に充実した内容となっていました。見所も多かったので、前編・後編にわけて詳しくご紹介しようと思います。

P1120353.jpg

【展覧名】
 ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/pompei/

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2010年3月20日(土)~6月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

参考記事:
 古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ- (国立西洋美術館)
 古代カルタゴとローマ展 ~きらめく地中海文明の至宝~ (大丸ミュージアム・東京)

【感想】
今日は平日で雨なのでそんなに混んでないのでは?と読んでいたのですが、結構混んでいて各作品に2~3人ついているくらいの混み具合でした。これが連休や土日になったら推して知るべしという感じでしょうか。かなり人気がありそうです。
なお、今回も作品リストはありますが館員の方に訊かないと貰えませんでした。また、余談ですが、リストをくれた館員さんは丁寧な対応をしてくれましたが、相変らずこの美術館の応対は上から目線というか、客を厄介者程度に思っているような感じの応対でイラっとくる事がありました。せっかく素晴らしい展示をやっているのに残念な限りです。それさえなかったら最高の満足度なんですが…。

さて、気を取り直して感想に入ります。今回の展示は10章に分かれ、様々な観点からイタリアのポンペイ遺跡から出土した品が展示されていました。今日は1章~4章と6章について気に入った作品と共に振り返ろうと思います。

<プロローグ>
まずはポンペイの説明をしたプロローグです。非常に簡単に説明すると、ポンペイは紀元前1世紀頃にローマの支配下に入った町で、今のナポリ近郊にありました。西暦62年に大地震で打撃を受けた後、復興を進めていましたが79年にヴェスヴィオ火山の噴火によって町ごと火山灰に埋もれてしまいました。しかし、幸か不幸かその火山灰によって町はタイムカプセルのように眠り続け、18世紀に発掘されるまで日の目を見ずに良い保存状態で残り、現在の私たちに当時の様子を伝える貴重な存在となっています。その様子は後の章でご紹介していこうと思います。
 参考:ポンペイのwiki

「噴火犠牲者の型取り」
樹脂製の噴火の犠牲者を型取ったものです。噴火の衝撃で堀に落ちた人だそうで、うつ伏せになって倒れた様子が生々しいです。その後、火山灰が降り積もって地中に埋まり、体が朽ちて骨だけ残して空洞となった所に、発掘隊が樹脂を注入し型を取ったそうです。その際、犠牲者は2体発見されたそうで、もう1人は足枷がついていたのだとか。隣には奴隷の足枷も展示されていました。

最初のあたりにはフレスコ(壁画)も展示されていました。この展覧会は驚くほどフレスコが多かったです。

<第1章 ポンペイ人の肖像>
ポンペイの人口は1万人弱くらいだったそうで、支配者層から奴隷まで幅広い身分の人が住み、余暇地、商業都市、港湾都市、交易都市といった様々な側面があったそうです。ここにはそうしたポンペイに住んでいた人々の像が並んでいました。

「マルクス・ノニウス・バルブスの彫像」 ★こちらで観られます
3体の大理石の像が並んでいたうちの1体です。左手に巻物を持った男性像で、足元に公文書を入れる筒を置いています。顔は聡明そうで身にまとった服のひだが流れるようでした。この像はこの人が建てた公共施設においてあったそうで、功績を誇示したのでしょうか。 この像の他の2体も良く、特にギリシア風の女性像は好みでした。

「女性肖像(小アグリッピーナ?)」
この像は上半身像で、暴君として有名な皇帝ネロの母親アグリッピーナではないかと考えられているようです。(ネロ時代の通貨に描かれた肖像に似ているそうです) この母親はネロを皇帝につけるために画策し、皇帝を毒殺するなどした人物で、願いどおりネロが皇帝に就くと自分も政治に口を出したそうです。巻髪が目立つ丸顔で、大きな目をしていました。顔からは恐ろしい側面は感じないかも。


<第2章 信仰>
続いて信仰に関するコーナーです。ローマ帝国は4世紀頃にキリスト教を国教としましたが、それ以前は多神教で、特にギリシア文化をよりどころにしていたようです。ギリシアの神とローマの神を同一視し、都市の公共の場や神殿に像を置いていました。ここではそうした像やフレスコが並んでいました。

「ポセイドン像」
堂々たる海の神ポセイドンの像で、紀元前5世紀頃のギリシアの作品を模倣したものだそうです。裸で左手を挙げた姿をしていて、左手には三叉の矛を持っていたはずですが失われています。右手にはイルカ?を持っていました。 中々威厳を感じる像でした。

「アキレスとキローン」 ★こちらで観られます
この辺には5点のフレスコがずらっと並んでいましたが、特に目をひいたのが今回のポスターにもなっているこの作品です。上半身が人間で下半身が馬の「キローン」が少年時代のアキレスに竪琴を教えている様子が描かれています。キローンの思慮深い顔と、キローンを見上げるアキレスの目が印象的で、2人の感情まで伝わってきそうな作品でした。それにしても色が鮮やかで、保存状態が良いのが何よりです。ポンペイならではかもしれません。

「ウェヌス像」 ★こちらで観られます
少し身をくねらせたウェヌス(英語読みするとヴィーナス)の像です。上半身裸で、下半身は金色のマントをまとっています。大理石に彩色された像が残っているのは珍しいことだそうです。手に金色の林檎を持っているのはパリスの審判で貰った林檎でしょうか。手を置く台も女性像で、全体的に洗練された雰囲気が漂います。解説によると初期ヘレニズム様式をローマ時代に模倣したものなのだとか。非常に優美で官能的な像でした。

この辺りにはヘラクレスやアポロの像などもあり、いずれも躍動感がありました。ローマの神像はカッコよくて良いw


<第3章 娯楽>
ローマ人は戦車競走・球技・レスリングなどのスポーツや、詩の朗読や演劇、ゲームなど様々な娯楽を持っていたようですが、中でも剣闘士の試合は特に人気があったようで、1万人の人口なのに2万人も収容できる闘技場もあったようです。ここではそうした娯楽をテーマにした作品が並んでいました。

「コルヌス(ホルン)」
非常に長く細い管を持ったホルンです。これは青銅で出来ていますが、元々は動物の角などが使われていたそうです。闘技場でも吹かれていたようですが、どういう音色だったのか興味が沸きました。

「遊技用チップ」 「魚型遊技用チップ」 「アーモンド形遊技用チップ」 「鶏型遊技用チップ」
動物の骨でできたチップです。作品名の通り、魚の形をしたものや鶏?の形をしたものがあり可愛らしい^^ それぞれ数字や文字が刻まれていて、ゲームに使われたのは分かりますがルールなどはわからないそうです。

「垢すりヘラ」
緩やかなカーブをした孫の手みたいな垢すりです。これは漫画『テルマエ・ロマエ』にも出てきたなあw 銅で出来ていて、持つところには銀でボクシングのような運動競技者が彫刻されていました。裏にはイルカが描かれているそうで凝っています。それにしてもこんなもので垢が取れるのでしょうか??w
余談ですが、今回の展示はお風呂に関する内容もあったので、テルマエ・ロマエを読んだのもちょっと役に立ったかもw
 参考:テルマエ・ロマエの紹介ページ

「剣闘士の兜」「脛当」「短剣」「ボクシング用グローブをつけた前腕」 ★こちらで観られます
剣闘士の武具と、手の彫像です。いずれも重厚感があります。これを着て戦ったのかと思うと相当重そうで、兜は前しか見え無そうに思えました。
当時、剣闘士はヒーローだったようで、この作品の近くには小さな剣闘士像や剣闘士のことを書いた落書きも展示されていました。縁起担ぎなのか、新年に剣闘士像を贈ったのだとか。その人気ぶりが伺えるコーナーでした。


<第4章 装身具>
古代ローマの貴婦人は凝りに凝った化粧をしていたようで、蜂の巣の穴ほど化粧があるとまで言われたそうです。ここではそうした女性達を飾った装飾品が展示されていました。

「蛇型腕輪」
蛇がとぐろを巻いたように螺旋を描く金の腕輪です。蛇の胴の部分は細くなっているのが優美で妖しい魅力がありました。アールヌーボーみたいw

「宝石箱」
木製の箱に骨製の枠をはめた宝石箱が2つ並んでいました。この木の部分は現代の再現で、骨の部分が当時の物となっています。カリアティッド(女性像が柱になっているもの)が精巧で、台座にも細かい彫刻が施されていました。宝石箱まで凝っていた様子がわかります。

「入浴する女性像のある手桶」
大きな銀製の丸い手桶です。側面には浮彫で入浴している女主人が召使に髪をとかせ、足を洗わせ、香水を持ってこさせている様子が彫刻されています。また、その逆側には薄い衣を着た女性を中心に召使たちが世話をしている様子が彫られていました。これが当時の様子なのかな?(解説によるとヴィーナスの伝説の一部ではないかという一説も紹介されていました) 華やかで気品のある作品で、気に入りました。

「首飾り」 ★こちらで観られます
細い金の糸のようなものをいくつも束ねて編み上げた首飾りです。留め金には愛の象徴である車輪が2つつけられ、胸元にはほぼ円形の三日月が配されています。三日月には魔よけの意味があるのだとか。非常に繊細かつ豪華な首飾りでした。ローマ帝国の技術は半端じゃないw


<第6章 祭壇の神々>
ポンペイの家々に祭られた神像のコーナーです。何故か5章より先に6章がきました。ポンペイの家々には、「ララリウム」と呼ばれる祭壇が設けられ「ラル」という家の守り神や「ゲニウム」という家父長の守り神を祀っていたそうです。その信仰では、神々と協調して平和を築くのが大切と信じていたと解説されていました。

「ラル小像」 ★こちらで観られます
これが「ララリウム」の語源となった「ラル」の像で、角杯を持った手を挙げる若者の姿をした神の像です。頭に植物の冠を被り、結構人間的な感じですが覇気を感じました。

ここには他にもユピテル(ゼウス)、ヘルクレス、ウェヌス(ヴィーナス)、ミネルウァ(アテナ)、メルクリウス(マーキュリー)、イシスなどの像もあり各地の神々が習合したような感じでした。片足をあげたウェヌス像は特に好みだったかな。


ということで、この辺で大体半分くらいです。当時の様子がわかる構成も面白く、充実した内容となっています。まだまだ後半にも素晴らしい展示が続いていましたので、次回は後半をご紹介しようと思います。


 ⇒後編も書きました。こちらです。


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