関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 (感想後編)【横浜美術館】

昨日の記事に引き続き、「ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡」の後半の記事になります。混み具合などについても書いていますので、前編をお読みでない方は前編から読んでいただけると嬉しく思います。
 前編:ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡 感想前編(横浜美術館)

P1120346.jpg

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 ポンペイ展 世界遺産古代ローマ文明の奇跡

【公式サイト】
 http://www.ntv.co.jp/pompei/

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2010年3月20日(土)~6月13日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(平日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

参考記事:
 古代ローマ帝国の遺産 - 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ- (国立西洋美術館)
 古代カルタゴとローマ展 ~きらめく地中海文明の至宝~ (大丸ミュージアム・東京)

【感想】
全体で10章あるうち、今日は6章、7~10章をご紹介します。(何故か5章の前に6章が来ていましたので6章は前編でご紹介しました。)

<第5章 家々を飾る壁画>
5章はポンペイの家々に飾られたフレスコ画のコーナーでした。ところ狭しと並んだフレスコの数々は圧巻です。なお、詳しい人には今更でしょうが、イタリア語の「フレスコ」は英語にすると「フレッシュ」で、「新鮮な」という意味だと解説してくれます。乾ききらぬうちに素早く仕上げるフレスコは、描き直しもできないので高度な技術が要求されます。ここでは当時の職人たちの素晴らしい描写を見ることができました。

「三脚を飾るクピドたち」 ★こちらで観られます
木枠に収められた珍しいフレスコ画です。10人のキューピッドたちが木の塔(やぐら?)のような三脚をたててます。キューピッドたちは手に月桂樹を持ったり、大きな竪琴を押さえているなど、アポロを象徴するモチーフが散りばめられていました。仕事してるのか遊んでるのかわかりませんが可愛らしい様子です。 なお、この作品は商家の中に飾っていたようです。教養を示していたのかな。

「ディオニュソスとアリアドネ」
大き目のフレスコで、眠りの神ヒュプノスの膝で眠るアリアドネを見つけるディオニソスが描かれています。その周りにも多くの人々が描きこまれていましたが、2人は特に目を引きやすかったです。結構鮮やかでドラマチックでした。
この部屋には他にも神話を題材にした作品が多いので、ある程度ギリシアやローマの神話を知っていると一層楽しめると思います。


この辺で一旦、入口付近に戻ってくるのですが、ホールには映像のコーナーもありました。CG再現などで当時のポンペイの様子が分かりやすく簡潔にまとまっていて理解が進みました。ポンペイもローマと同じく公共浴場が社交場となっていたことなども分かり、次章以降の予備知識にもなります。


<第7章 家具調度>
このコーナーは家々にあった家具や調度品に関するコーナーでした。必見は何と言っても最初にある高温浴室でしょうか。日本で言うと弥生時代の頃にこんな高度な文明があったのかと驚かされる内容となっていました。

「ボスコレアーレ、ピサネッラ荘の高温浴室」 ★こちらで観られます
大理石で出来た個人宅用の浴槽と、ボイラーなどの設備です。蛇口を捻るとお湯が出る仕組みや、浴槽の下部にある青銅の筒を熱することで追い炊きも出来るようでした。ちょっと浴槽が狭いですが、現代の日本と同じようなシステムが2000年前に存在したことに驚きです。さらに床暖房の機能まであったのだとか。うちのお風呂より凄いかも…w

「イルカのモザイク」 ★こちらで観られます
どう見てもイルカには見えませんが、白黒のイルカのモザイクです。むしろドジョウのような姿で、尻尾の先が5つに分かれています。憎めないひょうきんな顔をしてました。ちょっとしたゆるキャラかもw

「金庫」
重厚感たっぷりの金庫です。金属製で丸い突起が幾何学的に並び、所々にシュロ、豹、イノシシ、ディアナ、キューピッド、サテュロスなどが彫刻されていました。当時、金庫は目立つところに置かれて、財力を誇示していたそうです。

「飲料加熱器(サモワール)」
台座にライオンの足が彫刻された銅の容器です。中で飲み物を温めたそうで、注ぎ口には量を調節できる仕組みがあるそうです。見た目も面白い上に実用性もばっちりで、恐ろしく高度な文明を垣間見た気分になりました。

「三灯式樹木形燭台」
樹木のような形をした燭台で、枝から吊り下げられたランプに火をつけて使っていたようです。ランプもカタツムリの形で、台座もライオンの足だったりと自然をモチーフにした作品で面白いです。これがアールヌーボーの展示に紛れていたら20世紀のものと信じてしまいそうw 本当にローマ人の文化レベルは半端じゃない!


<第8章 生産活動>
ポンペイの市民にとって労働は家の中で行う仕事のことで、農作業や土木工事は奴隷の仕事だったそうです。市民はそうした奴隷仕事を管理したり、商業や手工業や家事が主な仕事内容だったと解説されていました。ここでは当時のポンペイの人(奴隷を含む)の活動が分かるような品が並び、鍬、鎌、熊手、斧、金槌、鍋、フライパン、ナイフなどがずらっと並んでいました。

「果物と野禽のある静物」 「パン」
どちらもフレスコの静物画です。この時代に静物まで描かれていること自体も面白いですが、当時の様子が伝わってくるような描写も目を引きました。

「果物のある静物」
こちらも静物のフレスコで、チーズ?とガラスの容器に入った桃のような果物が描かれています。透明なガラスに入っている表現が見事で、ガラスの質感まで感じます。解説によると、ローマ時代に吹きガラスの技法が発達したらしく、以前より安価に買えるようになって広まったようですが、透明に近いのは高価だったそうです。

「ガルム用の壷が描かれたモザイク床の断片」
「ガルム」というのは特産品だそうで、魚醤のような調味料で肉料理に合うと解説されていました。このモザイクにはそのガルムの入れた壷と文字が書かれ、文字は「最上級の一番絞り」という意味なのだとか。お店の広告みたいなものかな? 意訳かもしれませんが現代に通じるフレーズですねw

「遊ぶクピドたち」 ★こちらで観られます
小さくブロック分けされたフレスコ画です。キューピッドが仕事の真似をしたり、遊んでいたりと可愛らしい様子が描かれています。靴を作っているところなど当時の仕事風景も想像できました。

この辺りにはアンフォラ(壷のようなもの)や鍋、竿秤、鉗子、ガラス器なども展示されていました。鉗子って外科手術に使ったのかな?? 本当に恐るべし文明です。


<第9章 饗宴の場>
ローマ人は色々な娯楽や快楽を楽しんでいたようですが、宴会も楽しんでいたようで、解説では「金持ちは食べるために吐き、吐くために食べる」という言葉を紹介していました。吐いてまで食べるとは…w ここではそうした宴に使われたであろう品々が並んでいました。

「カメオガラスのパテラ」 ★こちらで観られます
パテラというのはフライパンのような形の身を清める儀式に使うものだそうで、これはコバルトブルーのガラス器です。ブルーの上に白いガラスでシレヌス(ディオニソスに従う精霊)などの絵が描かれていました。深い青が光を透過する様子が非常に美しく、展示方法も良かったと思います。この展覧会の中でもかなり気に入りました。

この辺にはほかにも色ガラスの見事な器が多々ありました。

「宴会の情景」
3枚の宴会の情景を描いたフレスコです。フレスコに描かれた人物の頭の上には文字が描かれ、それぞれのセリフになっているようで、「私は飲むよ」とか「元気でやれよ」など声をかけて楽しんでいる様子が伺えます。一種の漫画?w 

このコーナーの最後あたりに銀食器のコーナーがありました。 ★こちらで観られます
4つずつのセットで杯や皿など様々な銀食器が並んでいます。それぞれには花鳥風月や神話をモチーフにした装飾もあり、華麗で優美な気品を出していました。2000年も経過したら酸化して黒ずんでいそうなものですが、しっかり銀色だったのも良かったです。

<第10章 憩いの庭園>
最後のコーナーは庭園に飾った水盤や庭園風景のフレスコなどが並ぶコーナーでした。

「噴水用水盤」
半球状の水盤の中に、子供の胸像が彫られていました。作品の上部に鏡を設置して、中を覗けるように展示されているのが嬉しい配慮でした。この子供はイシスに捧げた子供なのだとか。・・・ちょっと怖い話ですw

「ディオニュソス神話の表された庭園用クラテル」
巨大な杯のような形の大理石の壷かな? 胴部分にサテュロスやディオニソスが彫られていて躍動的です。結構凹凸も深くて相当手間がかかっていそうでした。非常に豪華です。

「神託を伺うアキレスの表された円形浮彫」 ★こちらで観られます
女神のお告げを聞くアキレスが浮き彫りにされた円形の大理石像です。かなり細かく彫られ、女神のまとう服のひだや髪の毛などの表現が見事でした。これも今回の展示の中でもかなり気に入りました。


ということで、こんな貴重な品々をよく借りてきたものだと感心する内容でした。当時のポンペイの様子がよくわかったのも面白かったですが、何よりも文明の高度さと文化の深さに驚き、今日の我々と当時のポンペイのどちらが「豊か」なのか考えさせられたかも。たった1万人でここまで文化的な都市を作れることに驚嘆でした。心底素晴らしいです!
まだ期間はありますので気になる方はお早めにどうぞ。

 ・・・蛇足ですが、ポンペイは男性器を崇拝していたとよく聞きますが、特にこの展覧では触れていませんでしたw
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2012/11/12(月) 06:26 | | #[ 編集]
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