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細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション- 【東京国立博物館 平成館】

ご紹介が後回しになっていましたが、4月末の金曜日の夕方に、東京国立博物館で「細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション-」を観てきました。この日も東博のパスポートを使って入りました。
 参考リンク:友の会・パスポート

P1120463.jpg

【展覧名】
細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション-

【公式サイト】
 http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=7192

【会場】東京国立博物館 平成館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2010年4月20日(火)~6月6日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間00分程度

【混み具合・混雑状況(金曜日18時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
この日はゴールデンウィークの祝日と土日に挟まれた金曜日の夜だったせいか、結構空いていて自分のペースでのんびり観ることができました。2部構成となっていて、前半は細川家の足跡を辿るコーナーとなっていました。特に予習もせず細川家のこともよく知らずに行ったのですが、1部で大体のことがわかります。 そして、後半の2部は細川氏の集めた永青文庫のコレクションが中心となっていて、私的にはこっちのほうが楽しめたかな。様々なジャンルの美術品が並んでいました。 いくつか代表的な品をメモしてきましたので、章ごとにご紹介しようと思います。

[第1部 武家の伝統―細川家の歴史と美術―]
最初は細川家の歴史に関するコーナーです。細川氏は足利氏の流れを組む御家人で、戦国時代には大名となり織田信長に従いました。江戸時代には54万石の大名となり、代々続く武家として栄え、最近だと細川護煕氏が連立政権の首相になりました。(細川護煕氏は今回の展覧会で、解説機で祖父の思い出などを語っています) ここでは武家時代の細川家に関わる品々が展示されていました。

<第1部 第1章 戦国武将から大名へ―京・畿内における細川家―>
まずは武家時代の頃の品々です。戦国時代の頃の当主、細川忠興は織田信長・豊臣秀吉・徳川家康に仕え、信長の薦めで明智光秀の娘「たま(後のガラシャ)」を妻とした人物で、その後の細川家に大きな影響を与えました。1章は細川忠興を中心に紹介していました。
 参考リンク:細川忠興のwiki

「紺赤糸威二枚胴具足」
いきなり時代が違いますが、これは明治維新の頃の鎧です。非常に長い兜で、兎の耳というか鎌というか、変わった形をしていました。中々面白い鎧です。近くには戦国時代に細川忠興が使った甲冑もありました。

「幟 白地紺九曜に引両」
続いて着物と旗のコーナーもありました、これは細川家の旗で、大きな円の周りに小さな8つの円が配されたマークでした。これ以外にも円の中に「有」という文字の入った旗などもありました(細川家の始祖の頼有の「有」らしいです)

この辺りには地図や書簡のコーナーもありました。

「明智光秀覚書」
これは明智光秀が本能寺の変で、姻戚関係にあった細川藤孝、忠興の父子に加勢を頼んだ書簡です。前述の通り、忠興は光秀の娘(ガラシャ)を妻としていましたが、謀反人には与さないとして、ガラシャを幽閉して豊臣につきました。この選択が日本の歴史自体も変えたのでは??と考えると、歴史の重みを感じる書でした。

「細川ガラシャ消息(松本殿御内儀宛)」
ガラシャ夫人のコーナーもありました。明智光秀の次女たまとして細川忠興に嫁ぎ、本能寺の変の際には2年間幽閉されました。その後、1587年にキリスト教に入信しラテン語で「恩寵・感謝」を意味する「ガラシャ」の洗礼名を受けたそうです。 その後、関が原の戦いを控えて石田三成への人質となるのを拒んだことで、三成の軍勢に囲まれ、大坂の細川屋敷で家臣に胸を突かせて死にました。享年は38歳だったそうで、壮絶な人生を送った人でした。
 参考リンク:細川ガラシャのwiki
これは細川ガラシャから侍女への手紙で、流れるような文字で書かれ教養の高さを感じさせる書でした。

<第1部 第2章 藩主細川家―豊前小倉と肥後熊本―>
2章では江戸幕府の時代の頃の品々が展示されていました。 豊前小倉藩39万石を拝領した後、肥後熊本54万石へ配置換えとなり、比較的安定した時代だったようです。途中、藩の建て直しなどに関する展示もありました。

宮本武蔵 「鵜図」
この章には宮本武蔵のコーナーがありました。宮本武蔵は3代当主 細川忠利の招きに応じて熊本藩に身を寄せた為、細川家には宮本武蔵に関する作品が残っているようです。巌流島での決戦など、武芸で名高い武蔵ですが、武芸だけでなく晩年には本格的に絵を描いていたりします。 これは崖に立つ鵜の姿を水墨画で描いたものです。解説によると濃淡が効果的で画面にリズム感があるそうです。(そんなに良い作品なのか私にはちょっと分からなかったかなw)

「五輪書」 ★こちらで観られます
これは有名な武蔵の兵法の書である五輪書の写本です。自筆本は現存しないようなので、かなり貴重な品かもしれません。

竹原玄路(筆) 秀山宗騏(賛)「細川重賢像」
この肖像の細川重賢という人は江戸中期に熊本藩の改革を行った人物です。重賢が藩主になる前は凶作や出費が重なり、前藩主が急死するなど藩はピンチの状態だったようです。 しかし、重賢が藩主になってからは3年の改革を行い、役所の再編・刑法の改変や特産品の専売などで藩を建て直し、「肥後の鳳凰」とまで呼ばれるようになったそうです。また、時習館(藩校)や再春館(医学の藩校)を建てたりして活躍したのですが、改革が軌道に乗ってくると早々に引退し、博物学に没頭したのだとか。
 参考リンク:細川重賢のwiki
そう聞くとこの像も聡明そうな顔に見えてきましたw 近くには時習館の額、刑法の本、熊本城の図なども展示されていました。

谷文晁 「東海道勝景図巻」
これは谷文晁に描かせた富士図(20図)です。富士山を背景に、麓の川とその畔の村を描いています。細かく写実的で雄大な作品でした。ようやく好みの作品が出てきたw

矢野良勝・衛藤良行 「領内名勝図巻」
これはお抱え絵師に描かせた全14巻のうちの1巻で、領内の滝がずら~っと描かれ圧巻です。太く濃い輪郭の画風で、雪舟に学んだのだとか。カラフルで切り立った感じの風景画多かったように思います。


<第1部 第3章 武家の嗜み―能・和歌・茶―>
1部の最後は武家の嗜みとされた茶や能に関する品々が並ぶコーナーでした。

豊後行平 「太刀 銘 豊後国行平作」 ★こちらで観られます
これは戦国時代の細川幽斎(忠興の父)が関が原の時、講和を結んだ使いに贈ったものらしいです。柄の部分に細かい彫刻が施され、すらっとしていて美しい刀でした。

この辺には他に古今和歌集や茶器、釜などが並んでいました。

「黄天目 珠光天目」
薄黄色と焦茶色の混じった色の、光沢のある碗です。2種類の釉薬が使われているためにそういう色になっているのだとか。素人目にも面白い碗でした。

長次郎 「黒楽茶碗 銘 おとごぜ」
こちらは真っ黒でいびつな形の茶碗です。ざらっとした表面で重厚感があるかな。いかにも黒楽といった感じでした。

伝 雪舟等楊(筆) 伝 仲和(賛)「富士三保清見寺図」
雪舟作と伝わる作品です。三角の山と、麓の家や湖が描かれています。霞がかった感じの空気感が素晴らしく、静かな雰囲気が漂っていました。

千利休 「竹二重切花入」
利休が作った花入です。結構太い竹で出来ていて、表面に赤や黒の線が入った花入れです。立派で味わいのある作品でした。

「能面 翁」
この辺は能面や衣装のコーナーでした。これは満面の笑みを浮かべる翁の面です。長いあごひげで丸っこい眉をしています。解説によると、上品でおおらかな雰囲気があるそうです。冬に大倉集古館で見た面を思い出しました。
 参考記事:新春を仰ぐ 大倉コレクション 能面・能装束展 (大倉集古館)

「能面 般若」 ★こちらで観られます
まさに般若!という感じの面です。角が生え、金色の目をして眉がありません。赤っぽい顔でちょっと口を開いているのが恐ろしい雰囲気を強めているように思いました。非常にパワーがあります。


[第2部 美へのまなざし―護立コレクションを中心に―]
続いて2部は、文京区の「永青文庫」の設立者16代当主 細川護立(1883年~1970年)のコレクションを紹介するコーナーでした。古今東西の品が揃い、ようやく美術品が主役のコーナーとなっていましたw
 参考リンク:
  細川護立のwiki
  永青文庫公式サイト

<第2部 第1章 コレクションの原点>
まずは細川護立が美術品を収集するきっかけとなった作品についてのコーナーです。細川護立は体が弱かったそうで、ある時、白隠慧鶴という僧の本を読んで健康法を試したところ体調が良くなっていったそうです。それに感謝したのか、白隠の作品を集めるようになったのがコレクションの始まりでした。当時は特にまとまって保存されていたわけでなかったので、所持している人の家々を周ったりして集めたようですが、10年で1000点も集めたそうです。(後に300点まで絞った) 解説機を借りると、元首相の細川護煕氏がその経緯を詳しく解説してくれます。

白隠慧鶴 「乞食大燈像」 ★こちらで観られます
最初は白隠のコーナーとなっています。これは、ぎょろっとした目でこちらを見る修行僧が描かれた絵で、大徳寺を開いた僧(宗峰妙超?)を描いたものらしいです。白い袋を持ち乞食や追剥に混じって修行していた姿だそうで、鬼気迫る雰囲気がありました。

仙義梵 「人形売」
天秤を担いで声を張り上げる人形売りを描いた作品です。「小供こいこい 人形の安売りじゃ」というセリフも書かれているのが面白いです。解説では親しみやすい顔で軽妙と言っていましたが、その通りの印象を受けました。

「短刀 無銘正宗(名物包丁正宗)」
この辺には刀や鍔のコーナーもありました。これは短い刀ですが、白い波紋が太くて非常に美しい刀でした。


<第2部 第2章 芸術の庇護者>
続いて、細川護立が有力な支援者として横山大観・菱田春草・小林古径といった日本画家の活動を支え「芸術の庇護者」となったのがわかるコーナーでした。少数ですが西洋画も展示されていました。

菱田春草 「黒き猫」 ★こちらで観られます
木の上に乗っかっている黒猫を描いた作品です。解説によるとフワフワした毛の黒猫は写実的に描かれ、上部にある金色の柏の葉は装飾的な美しさがあるようです。確かにそのように見えるかな。また、黄色の多い画面で猫の黒は非常に目を引くように思いました。

横山大観 「焚火」
3枚セットの掛け軸で、伝説的な僧である寒山・拾得が掃き貯めた木の葉で焚き火をしている様子が描かれています。どちらが寒山か拾得かわかりませんが、右に立っているほうは箒を持って笑い、左の座っている方は微笑んでいました。顔はちょっと不気味w 中央の焚き火は装飾的というか、不動明王の光背のような炎だったのも印象的でした。

川合玉堂 「彩雨」
水車と木でできた水道を描いた作品です。背景には紅葉した木々が描かれ、手前には傘をさす2人がいます。ぼや~っとした感じで雨が降っているのが分かります。紅葉の美しさと共に繊細な表現が素晴らしい作品でした。

小林古径 「髪」
これは切手のデザインにもなった作品だそうです。上半身裸の女性が、着物の女性に髪を梳かしてもらっています。髪は1本1本描かれたようで、本物のような艶と質感がありました。それに対して女性の輪郭線は単純化されて流麗な印象でした。

アンリ・マティス 「縞ジャケット」
これはブリヂストン美術館でよく常設に飾ってある作品なので、あれ?と思いました。元は細川護立が所蔵していたそうです。単純化されつつも爽やかな雰囲気の女性像です。
隣にはセザンヌの作品もありました。

梅原龍三郎 「紫禁城」
梅原の紫禁城は何枚か見ていますが、こちらも中々素晴らしい作品です。朱色が鮮やかで伸びやかな雰囲気でした。


<第2部 第3章 東洋美術との出会い>
最後は東洋美術のコーナーでした。仏像や陶器など幅広い作品が展示されていました。

「如来坐像」(伝 中国陝西省西安青龍寺) ★こちらで観られます
空海が修行した寺の仏像と伝わる作品です。解説によると写実性があり端整な姿なのだとか。日本とはどこか違う雰囲気をたたえていました。

この辺は唐三彩や中国の壷のコーナーでした。ちょっと苦手なジャンルですw その上、閉館が迫ったのでちょっと急ぎ足になってしまった…。

「白釉黒掻落牡丹文瓶」(磁州窯)
白地に黒の掻き落としで牡丹の文様が描かれている作品。非常に見事な壷で、文様が目を引きました。


ということで、特に細川家に興味があるわけでは無いので前半部は私にはあまりピンと来なかったですw 後半の方が楽しめました。ちょっと作品のジャンルや時代などが多岐に渡りすぎて、貴重なものだとは思っても気分が乗らなかったかな。歴史に詳しい方・興味のある方には面白い展示かもしれません。
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