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ストラスブール美術館所蔵 語りかける風景 コロー、モネ、シスレーからピカソまで 【Bunkamuraザ・ミュージアム】

最近、渋谷の記事を連続して書いていますが、今日は先週から「Bunkamuraザ・ミュージアム」で始まった「ストラスブール美術館所蔵 語りかける風景 コロー、モネ、シスレーからピカソまで」をご紹介しようと思います。2010年05月31日現在、東京では西洋画の展覧会がこの上なく充実しておりますが、この展覧会もその一端を担っているのではないかと思います。

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【展覧名】
 ストラスブール美術館所蔵 語りかける風景 コロー、モネ、シスレーからピカソまで
【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/shosai_10_strasbourg.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_strasbourg/index.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【会期】2010年5月18日~7月11日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
まだ始まったばかりで日曜日の夕方※だったこともあってか、そんなに混んでおらず自分のペースで鑑賞することができました。 (※前回までご紹介していたたばこと塩の博物館とは別の日に行きました) 内容は、絵の題材で章が区切られている感じで、時代や流派が交錯しますが80点ほどの質の高い作品を楽しめる内容となっていました。

まず、最初にストラスブール美術館とは何か?という説明から入ります。ごく簡単にご紹介すると、フランスのアルザス地方というドイツとの国境付近にある美術館です。ドイツとフランスの歴史に影響を受けた土地であるためか、フランスであってドイツのような側面もあるようです。そこに根ざした画家やその土地を題材にした作品のコレクションがあるようで、この展覧会でも展示されていました。そうした作品については章ごとにご紹介しようと思います。なお、公式サイトに美術館についての詳しい説明が載っています。
 参考リンク:ストラスブール美術館紹介(公式サイト)

<第1章 窓からの風景>
この章は5点しかありませんでしたが窓を取り扱った作品が並んでいました。15世紀のイタリアで遠近法の確立と並行して、窓によって切り取られた屋外の一部が絵画作品に導入されたのが風景画の原点だそうです。
入口付近が変わった内装だなと思ったら、そこに窓が出来ていて、窓の向こうに鑑賞する人々を眺めるという凝った趣向となっていました。

モーリス・ドニ 「内なる光」 ★こちらで観られます
背景に窓がある部屋の中で4人の女性が花束を持ったり、林檎の乗った盆を持ってきたり、祈っていたりしていて、仲睦まじく食事の用意でもしているように思えました。どっしりとした色調でナビ派らしい作品でした。

モーリス・マリノ 「室内、縫い物をするエレーヌ」
アールデコのガラス作家として有名なモーリス・マリノですが、元々はフォービスムの画家でした。この作品は、手前にカーテンと扉、中ほどに針仕事をしている女性と室内、背景に窓の外が描かれています。手前から3つの世界がある構成が面白かったです。また、奥行き感があり、色彩豊かで明るい雰囲気でした。

<第2章 人物のいる風景>
17~18世紀の風景画は、風景画といってもテーマは人間の営みが中心で、単なる田園風景とは違ったようです。19世紀のロマン派は雄大な自然を好み、その後のバルビゾン派は自然と人間が一体化したような作品が多かったと解説されていました。この章ではそうした人物と自然をテーマにした作品が並んでいました。

ギュスターヴ・ブリオン 「女性とバラの木」 ★こちらで観られます
庭でバラの世話をする上流階級の男女を描いた作品です、あごを触っている女性の背中に光が当たっていて、白い服が目をひきます。のんびりした雰囲気で穏やかな気分になれました。
この辺にはストラスブールの画家達の作品が並んでいて、観たことが無い画家が多かったです。

レオポルド・フォン・カルクロイト 「伯爵夫人マリー」
草原の中で腰掛ける黒衣の女性を描いていて、黄色い帽子にも黒い飾りがついています。。着ているのは喪服かも?? うつむきながらこちらを見ていて、右手にペン、左手に白いノートをもって悲しげな表情でした。また、後ろに広がる風景は明るくて対照的に思えました。

モーリス・エリオ 「年老いた人々」
新印象主義のスーラやシニャックのような点描の技法で描かれた作品。手前では食事をしている老夫婦と背を向けて畑を見る孫娘が描かれ、背景には農作業をする父母が小さく描かれていました。娘は父母に声をかけてるのかな? 明るく幸せな雰囲気がありました。

<第3章 都市の風景>
都市を題材にした作品は18世紀に盛んに描かれたそうで、印象派は近代化で変わって行く町並みを好んで描いていました。このコーナーではそうした都市を主題にしたテーマの作品が並んでいました。

ユベール・ロベール 「風景」
手前に大きく高さのある石造りの橋が描かれ、橋の上には馬車が通り、橋の下では洗濯をする女性や牛達が描かれています。橋のアーチの中から雄大な風景が遠くに見えるのが面白かったです。

ロタール・フォン・ゼーバッハ 「雨の通り」
ストラスブールの広い街路を描いた作品です。雨が降っているらしく空はどんよりとしていますが、道は光を反射しているように見えました、道には馬車と2~3人の傘をさした人くらいしか歩いておらず閑散としていて、ちょっと寂しげですが好みの作品でした。

モーリス・ド・ヴラマンク 「都市の風景」 ★こちらで観られます
単純化された形の家が描かれた作品です。色数は少ないですが流石に濃い目の色彩で、壁などは微妙な色の変化を見せています。四角や立方体で表現した家から、セザンヌの影響を強く感じられる作品でした。

アルベール=シャルル・ルブール 「ドルドレヒト大聖堂」
背景に大聖堂の見える川を描いた作品です。船が浮かび、川は景色を反射しています。この人は印象派らしく、光の表現に力を入れているように思えました。

<第4章 水辺の風景>
この章では水辺の風景の作品が並んでいました。それぞれの画家がどこに主題を置くのかで全く違う表情を見せていたように思います。

ヘンドリク・ウィレム・メスダッハ 「海景」
美しいグラデーションで黄金に染まる夕焼けをバックに、帆船(漁船)が描かれています。特に手前の船はマストの周りが輝いているようでした。また、波は穏やかで理想的な雰囲気の作品でした。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 「ヴィル=ダヴレーの池」 ★こちらで観られます
川で小舟を漕ぐ男性が描かれた田舎の風景です。背景の空や森にはコローらしい柔らかい空気感が漂っています。小舟を漕ぐ様子だけが動きを感じさせ、それが周りの静けさを増していると解説されていました。どこか郷愁を誘われる作品で、かなり好みでした。

この辺には外光派のブーダン、バルビゾン派のドービニー、印象派のシスレー、フォービスム(っぽくないけど)のマルケ、新印象主義のシニャックなどの有名画家の作品が並び、様々な流派の作品が堪能できました。

フランソワ=ルイ・ダヴィド・ボシオン 「レマン湖」
この画家はスイスの画家です。湾曲した湖畔と帆船が描かれ、背景には雲が描かれています。薄く明るめの青と白が多く使われ、爽やかな雰囲気の作品でした。また、鳥が飛んだり湖面を泳いだりしている様子からも平和でのんびりとした感じを受けました。

マックス・エルンスト 「暗い海」
シュルレアリスムのエルンストの作品がここにあるのに驚きましたが、これは海を描いた作品らしいです。暗い画面で、赤や青に見える部分もありますがかなり暗く不安を与えるような感じの海?です。 上部には半円、中央に円がこすり出されるような表現で描かれ意味深でした。

<第5章 田園の風景>
この章は田園風景の作品が並ぶ章でした。18世紀も後半になると、田園風景を描くのも隆盛を極めていたそうで、今回の展示でも一番点数の多い章となっていました。

アンリ・ジュベール 「ヴュー=フェレットの羊の群れ」
結構大きな絵で、広大な牧草地で草を食べる羊たちと羊飼いが描かれています。その上部の3/4くらいは空となっていて開放感を感じました。どこか神聖なものを感じて、聖書を主題に取ったのかな??と思いましたが、特に解説は無かったので思い過ごしかもしれません。

アルフレッド・シスレー 「家のある風景」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。緩い曲線の丘を歩く2人の人物が描かれ、奥にある家に向かっているかな?と思わせます。向かう道には下りと上りの坂があるように見え、解説によると起伏のある土地は単調になりがちの田園風景に池や川とは違った面白さを与えてくれるそうです。また、丘の線と木立の半円が奥の家に視線を集めるとも説明されていて、確かにその通りでした。普通の風景に見えて色々計算されているようです。
この辺にはコローの円形の作品やピサロの初期の作品などもありました。

クロード・モネ 「ひなげしの咲く麦畑」 ★こちらで観られます
今回の展覧会でも人気の出そうな作品です。一面に広がるひなげしの花畑が描かれた作品で、1つ1つの花ではなく畑全体の色合いを描いたように思えます。遠くまで見渡せる広々とした風景と、右にある手前の木の存在から遠近感を感じました。

ラウル・デュフィ 「3つの積み藁のある風景」
その名の通り積み藁のある風景を描いた作品なのですが、これがデュフィなんだ!?とちょっと驚いた作品。単純化されセザンヌの影響を感じさせました。色彩は豊かで濃かったかな。
近くにはマルケの作品などもありました。

オスヴァルト・アッヘンバッハ 「古代ローマ遺跡のある風景」
古代ローマの遺跡が左手に描かれ、その横の土の道を人々が走っている様子が描かれています。どうやら雨が降り始めたらしく、人々が走っていく方向には明るい光があり、右手には暗い雲が広がっていました。どこか神話のような風景に思えましたが、ドラマチックで人々の気持ちが伝わりそうで面白かったです。

ギュスターヴ・クールベ 「ルー渓谷の雷雲」
暗い雲のかかった、かなりスケールが大きい渓谷の風景です。崖の側面が白く、そこには光が当たってるように見えます。手前に2人の人と犬が描かれているのですが、消え入りそうなくらい小さく、自然の雄大さを表現しているように思いました。


<第6章 木のある風景>
最後は木を主題にした風景画となっていました。風景にアクセントやリズムを与えたりするだけでなく、自分の人生を重ねたような作品も並んでいました。

フランソワ=ルイ・フランセ 「アンティーブの眺め」 ★こちらで観られます
コローに手ほどきを受けた画家の作品です。真ん中に大きな木が立ち、背景に海、港町、山が描かれています。また、木の周りには小さく描かれた人が何人かいて、木の大きさを感じます。解説によると、高台から港を見守ってきた木を80歳を越えた自分の人生と重ねているのではないかということでした。明るく穏やかな雰囲気でした。

テオドール・ルソー 「木の幹の習作」
倒れて朽ちてゆく木を描いた作品です。緻密で写実的に描かれ、周りの草も1本1本描かれていました。かなりリアルで、ありのままを描く姿勢が感じられました。

ヴァシリー・カンディンスキー 「サン=クルー公園」
カンディンスキーと言えば抽象画が有名ですが、これはまだ具象的な作品です。点描のような表現で描かれた風景画で、黄緑の池を描いているようです。解説によると、単なる具象ではなく、形態と色彩に関心があり、抽象への予感があるようです。カンディンスキーのこの時期の作品はあまり観たことがないので貴重な体験でした。


ということで、知らない画家やこんな作品もあったのか!というものが結構あった展覧会で、新しい発見が多く満足できました。今は観るべき展覧会が多くて目移りしてしまうくらいですが、この展覧会も見て損はないかと思います。


おまけ:東急の通りにあるショーウィンドの写真
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