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浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派 【千葉県立美術館】

先日ご紹介した千葉市美術館の伊藤若冲展に行く前に、千葉県立美術館にも行っていました。そこでコレクション展と特別展を観てきましたので、今日はまずコレクション展についてご紹介しようと思います。
コレクション展示は「浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派」、「描かれた房総-海辺の風景-」、「青木滋芳の染色」という3つの展示が大きな部屋で一緒になっていましたので、3つセットでご紹介します。(タイトルは一番会期の長い「浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派」としました。評価テンプレートは3つセットでの感想としています。)

P1120840.jpg

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【展覧名】
 浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派

【会期】2010/01/30(火)~10/11(月)

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間15分程度

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【展覧名】
 描かれた房総-海辺の風景-

【会期】2010/05/18(火)~07/19(月)

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間10分程度

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【展覧名】
 青木滋芳の染色

【会期】2010/05/18(火)~07/11(日)

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間10分程度

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【公式サイト】
 http://www.chiba-muse.or.jp/ART/exhibition/index.html
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【会場】千葉県立美術館 第2展示室
【最寄】JR京葉線・モノレール 千葉みなと駅


【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この美術館はユトリロ展以来なので3年ぶりくらいでした。駅から少し離れているので、千葉市美術館とここをハシゴするのは中々に大変だったりしますが、滅多にこないのでコレクション展示は楽しみにしていました。空いていてじっくり観ることができたのも嬉しい限り。

順番的には房総⇒浅井⇒青木の順にぐるっと周るのだろうと思いますが、一番点数も多く充実していたのが「浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派」でした。なので、実際の順番とは関係なく気に入った順にご紹介していこうかと思います。

<浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派>
最初は浅井忠と彼に影響を与えた画家たちを辿る内容でした。浅井忠は佐倉藩の江戸屋敷で生まれたそうで、千葉にゆかりがある人物です。浅井忠に絵を教えたのはイタリア人のアントニオ・フォンタネージで、フォンタネージはパリ万博でバルビゾン派の作品を観て以降、バルビゾン派の影響を強く受けた画家でした。そのため、浅井忠にもバルビゾン派の影響が強く、後にフランスに留学した際にはバルビゾン村に訪ねているほどなのだとか。 この展覧ではそうした繋がりを感じさせる作品が並んでいました。作品点数は18点と少ないですが見所が多かったように思います。

浅井忠 「藁屋根」
北関東にあった藁葺き屋根の家を描いた作品です。家から篭を背負った女性と子供?がこちらに歩いてくるようです。細かく柔らかな雰囲気の作品で、空気感がちょっとコローに似ている気がしました。解説によると、奥行きのある表現が観られるのは写真を活用したためではないかとのことです。

浅井忠 「農婦」
これは2年半のフランス留学中に描いた作品です。恐らく部屋の中だと思いますが、座っている老婆が描かれています。画面の左側が明るく、右側は暗くなっていて明暗があります。また、絵に残された筆跡から結構早く描いたのではないかと推測されます(1日で描きあげたらしい) 解説によると、浅井忠はこの留学中で印象派や外光派に触れて、豊かな色彩の光の表現を身につけたようです。この作品の光もそういう流れなのかもしれません。

アントニオ・フォンタネージ 「十月、牧場の夕べ」
これはバルビゾン派と交流を持っていたフォンタネージ(浅井忠の先生)の作品です。結構大きな絵で、木陰で家畜と休んでいる?女性を描いた作品です。遠くの空は明るく、女性や木の周りが暗く描かれています(バルビゾン派はこういうのが多いかも) 解説によるとロマン主義的な憂鬱と抑制を感じる作品なのだとか。様々なルーツを感じさせる作品でした。

テオドール・ルソー 「バルビゾンの農村」
広い湿地のような原っぱと、奥に見える家々が描かれていて、水を飲んでるか草を食べているのかわかりませんが、原っぱで馬っぽいのがのんびりしている様子も見られます。結構細かく描かれていますが、目の前が開けているせいか広々とした感じで牧歌的な雰囲気が漂う作品でした。

ジャン・フランソワ・ミレー 「垣根に沿って草を食む羊」
これはかなり気に入った作品です。垣根の草を食べる羊たちが垣根に沿って沢山並んでいるのですが、左右に分かれていて、左の方は柔らかい光が当たり、右の方は日陰になっています。一生懸命草を食べる羊の様子がなんとも可愛いw また、左下の方には1頭だけ木陰で休んでいる羊がいて、我関せずという感じなのも面白かったです。光の対比の効果や、羊の動き・感情まで伝わってきそうな作品でした。

シャルル・フランソワ・ドービニー 「ヴァルモンドアの小川」
高い木々でうっそうとした森と、その間を流れる川が描かれています。川の畔では2人の子供が花で遊んでいるようで、2人の辺りだけ光が当たりスポットライトのようになっています。また、森の中には母親と思われる人が小さく描かれ、遠くから見守っているように思いました。1枚の中にこれだけドラマがあるのが面白くて、光と影の強弱がそれをより劇的にしているように思いました。 なお、解説によるとこの絵は古典主義的な画風をとどめているのだとか。

ジャン・バティスト・カミーユ・コロー 「ナポリ近郊の思い出」
森や建物が見える道を、吟遊詩人のような人が歩いている様子を描いた絵です。少しぼんやりした空気感がコローらしい雰囲気でした。まだ観たことが無い作品だったので嬉しいw

コンスタン・トロワイヨン 「河辺の道」
これは今回の展示で1番気に入った作品です。手前から土道が伸びていて、向こうから沢山の羊やヤギが羊飼いらしき人に導かれてこちらにやってきます。また、羊たちの後ろでは大きな藁を積んだ横向きの荷台を運ぶ牛が描かれ、どうやら羊たちと交差点ですれ違った後のようでした。さらに、牛車が通り過ぎたばかりの橋の上には紳士と女性が佇んでいました。田舎の交差点からこれだけのドラマが描かれるとは、素晴らしい! そして、もう一度全体を見渡すと、羊たちに強い光があたり背景の空も輝くようです。そのせいか、どこか後光が差すような神聖さすら漂っているように思えました。


ということで、小展ながら粒ぞろいだった感があります。これ以外にもクールベの作品などもあり、満足できる内容でした。さらに会場でもらえるパンフレットには浅井忠やバルビゾン派の解説が詳しく書いてありますので、バルビゾン派とは何ぞや?という方にも楽しめるのではないかと思います。


<描かれた房総-海辺の風景->
こちらは千葉県の房総を題材にした作品が並んだコーナーでした。作品13点のミニ展示です。

石川響 「小湊の朝」
海と中央に太陽が描かれた作品。向こうには陸が見え、船も静かに浮かんでいます。とにかく太陽が力強く、黄色や緑、オレンジ、ピンクなどの色で表現されていました。色彩が幻想的な作品でした。

松本浩二 「海鹿島の夏」
海辺の海水浴?と果物の並ぶお店の中を描いた作品です。太い輪郭と単純化でどことなくデュフィやセザンヌの静物を思い出すかも。題材のせいか、ちょっと夏の海水浴場の楽しさを思い起こさせる作品でした。

小堀進 「真夏の海(太海)」
こちらは水彩の作品。ごつごつした岩場の海岸で、入り組んだところに白い波が押し寄せています。 岩は一見どこも同じように見えますが、よく観ると様々な色が使われ、リズミカルな配置に思いました。


こんな感じで千葉の海を題材にした作品を集めた展覧でした。県立美術館ならではの切り口じゃないかな。


<青木滋芳の染色>
こちらは千葉に住んでいた青木滋芳の展覧です。作品は5点なので1つのコーナーくらいの規模でした。

青木滋芳 「洞門」
2曲の屏風が3点あったのですが、これはそのうちの1つです。海の洞窟から見る切り立った海の崖の絵です。 緑や紺色などの少ない色で影絵のような色合いで描かれていて、静かで力強い印象を受けました。また、シンプルで簡略化されている作風に思います。 解説によると、この人の作品は日本各地で描いた写生を元に蝋染めの技法で描かれているそうです。まず白布に下絵を写し、そこに防染剤の蝋を引いては刷毛で染料を置き、さらに蝋を引いては別の染料を置いていく…というのを繰り返して描くそうです。 描き終えたら、鉛分の無いガソリンで蝋を洗い流し、蒸し器で染料を発色させて色を定着して、最後に水にさらして洗ってようやく完成するそうです。 作品を観たときにはそこまで分かりませんでしたが、これは途方も無く手間がかかりそうですね。頭が下がります。


ということで、それぞれ点数は少なかったですが予想以上に満足できました。特に「浅井忠・フォンタネージとバルビゾン派」は素晴らしかったです。

この後、特別展の「日本赤十字社所蔵美術展」も観てきました。こちらは既に終了した展覧ですが、こちらも満足な内容でしたので次回の記事でご紹介しようと思います。
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