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江戸を開いた天下人 徳川家康の遺愛品 【三井記念美術館】

1週間ほど前の土曜日に、三井記念美術館へ「江戸を開いた天下人 徳川家康の遺愛品」観に行ってきました。この展示は何度か作品の入れ替えをしているようで、私が行ったのは2010/6/5時点の内容でした。

P1120907.jpg P1120910.jpg

【展覧名】
 江戸を開いた天下人 徳川家康の遺愛品

【公式サイト】
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

【会場】三井記念美術館
【最寄】銀座線三越前/新日本橋駅/東京駅/神田駅
【会期】2010年4月14日~6月20日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
冒頭にも書きましたが、この展示は何回かの作品入れ替えがあるようでした。私が行った時には既に最後の期間の内容だったので今更遅いですが、公式ページで期間ごとの出品作品を調べることが出来ます。
 参考リンク(公式サイト):出品目録(pdf)

さて、今回の展示ですが、思った以上に多くの人で賑わっていました。人数で言うとそんなに多くはないと思うのですが、茶器や道具類など小さい品がガラスケースの中に展示されているところが多く、観るスペースが限られているので、列を組んで観る感じでした。2列目以降で見るのも大変なので混雑感がありました。 展示作品については重要文化財や国宝も多く、貴重な内容となっていました。(重文でも価値が分からない私にとっては、ピンと来なかったものもありますがw) 詳しくはいつもどおり、章ごとにご紹介しようと思います。 なお、貰った作品リストと公式ページの章の順序などが違っていますが、私が会場で観た順にご紹介しようと思います。


<家康所蔵の茶道具 名物道具と手沢品>
最初は茶道具のコーナーでした。初っ端から重要文化財がずらっと並び「名物」「大名物」と呼ばれる品々が多いです。この「大名物」というのは最高の格付けの品なのだとか。 また、解説によると徳川家康の遺品には2種類あるそうで、家康の没後に御三家に譲られた「駿府御分物」と、日常で身近に置いて使っていた遺愛品である「手沢品」に分かれるようです。このコーナーでは「駿府御分物」が多かったかな。

「名物 古銅砧形花生 銘杵のをれ」 
黒っぽい花入れです。中国の明時代頃に作られたもので、元は豊臣秀吉の所有物だったそうです。 それが石川氏に渡ったのですが、石川氏が関が原の合戦に敗れた際、家康にこの花入れを渡すことで死を免れたということです。武将の命を救うほどの価値があるとは…。私が観ても分かりませんでしたが、相当の名品のようでした。

「大名物 唐物茶壺 銘松花」 ★こちらで観られます
これは結構大きな壷で、室町時代に中国から伝わり、当時の記録の中で何度も名前が出てくる名品だそうです。(また、織田信長や豊臣秀吉らも歴代の所有者に名を連ねているそうです。) その大きさのせいか堂々としていて、側面の釉薬のかかり具合が風格を感じさせました。

「大名物 曜変天目(油滴天目)」 
黒いお碗のような器です。中に丸い粒状の銀の点が光っているのが特徴です。これは中国から伝わって堺の商人たちに珍重されていたのが後に家康に伝わった品だそうです。確かに中の粒の光が油の雫に見えるかも。

この辺にあった解説によると、家康は茶の湯の心得は相当あったようですが、茶器を愛好するというよりは政治的な視点で見ていたようで、秀吉よりも信長に近い姿勢と考えられているようです。

「大名物 三島茶碗 銘三島桶」 
千利休 ⇒ 利休の長男 ⇒ 家康 という順で伝わった茶碗で、元は朝鮮の日常使いの食器のようです。側面に斜めの線などが施されていて、その形が桶のように見えないこともないかな。楽茶碗に似た形だとも解説されていました。


<徳川家康とその一生>
続いて、家康の一生を描いた絵などのコーナーです。「東照大権現」として神格化された家康の像などが並んでいました。

伝 住吉如慶・具慶 「東照社縁起絵巻(模本)5巻の内巻第1」
3代将軍の徳川家光が命じて描かせた、5巻からなる絵巻物です。元は狩野探幽が描いたものを住吉如慶・具慶が模写したと伝わっているそうです。中身は家康が東照大権現として祀られるまでの一生を描いていて、これは母親が夢を見ているところや、家康の生誕の様子が描かれていました。模本のためか結構色鮮やかで保存状態が良かったです。

伝 住吉如慶・具慶 「東照社縁起絵巻(模本)5巻の内巻第2」 
こちらは先ほどの作品の続きの第2巻。大坂の陣を描いているようで、黒い馬に乗る家康と、数え切れないほどの武者達が描かれていました。・・・2巻で大坂の陣って展開が早すぎじゃないかなw
解説では家光は家康のおかげで将軍になれたことについて説明していました。家康のことを本当に神のように思っていたのかもしれないですね。

狩野探幽 「東照社縁起絵巻(仮名本)5巻の内巻第3」 ★こちらで観られます
先ほどの2つと同じ東照社縁起絵巻で、これは狩野探幽が描いたものです。ちょっと色があせてる感じもしますが、素晴らしい作品です。細かく描かれた湖畔の山と、そこに向かって行列が行進する様子が描かれています。この山は久能山らしいので、家康が死んだ後、最初に埋められた所を描いているのだと思います。 また、この絵巻には流麗な筆の書も書かれていて、そちらも見事でした。

天海僧正 賛写 「東照大権現像」 ★こちらで観られます
葵の紋が入った豪華な垂れ幕の下、黒い服(葵の文入り)を着て座る家康の像で、これは神となった姿のようです。晩年の容貌特長をよく捉えているそうで、きりっとした雰囲気がありました。よく知られている家康の顔のイメージそのものに思います。

「南蛮胴具足」 ★こちらで観られます
これは西洋の鎧を改装して作られた鎧です。金属製の胴をしていて、前面部に鉄砲を受けた跡があります。まさか撃たれたもの?と思ったら、試し撃ちをして鎧の強度を測った際の傷とのことでした。また、よく観ると非常に細かい彫刻も施されていました。当時のヨーロッパとの関わりも伺わせる中々興味深い品でした。

「金扇馬印」
巨大な金の扇子です。これは大将が居る所を示すためのものだそうで、立てると5~6mもあるのだとか。確かに目立ちそうですが、敵にも居場所がわかりそう。当時の戦いはそういうもんなんでしょうかね?w

この辺には刀、短刀、長刀、火縄銃、鞍などもありました。(これらも国宝や重文です)

「関ヶ原合戦図(津軽屏風) 右隻」 ★こちらで観られます
8曲の巨大な屏風です。これは最も古い関が原を描いた屏風だそうで、津軽に伝わったことから津軽屏風と呼ぶようです。私が観たのは右隻のみで、前期の展示では左隻が展示されていました。右隻は決戦の前日の様子が描かれていて、大画面なのに細かい描写で、大勢の兵達が山などに布陣を敷く様子が描かれていました。前日の緊張感がありましたが、どうせならドンパチ戦ってる左隻を観てみたかったかなw


<交易と究理へのまなざし>
続いてのコーナーは海外との交易や、家康の理数系への興味関心を伺わせる内容となっていました。

「金銀象嵌けひきばし」 
これは地図の上で距離を計ったりするコンパスです。金銀で花文と唐草文をあしらっていて豪華です。隣には東南アジアの地図もありました。 こういうもので海外の様子を伺っていたのかな。

「熊時計」
熊の形をした時計です。文字盤などは無く、決まった時間が来ると音を発していたそうです。この時代には既に時計もあったようですが、こういうデザインの時計があったのには驚きました。 この辺には時計がいくつかあり、時計好きだったのかもしれません。

「洋時計」 ★こちらで観られます
これは今回のポスターにもなっている時計です。スペイン船を救助した際のお礼としてスペインの国王から贈られた品だそうで、ぜんまい仕掛けで動きます。ドーム状の屋根を持ち、側面のアーチ状の中には景色の絵が描かれているなど、作りもだいぶ凝っていました。エピソードと共にヨーロッパとの繋がりを感じる貴重な品でした。

この辺には眼鏡、鉛筆、ハサミ、薬の調合本、すり鉢、ビードロの薬壷など、生活に使ったような品がありました。 やけに薬関係のものが多いなと思ったら、家康は薬の調合が得意だったそうです。そんな一面があったとは知らなかったので、ちょっと驚き。
その他には、伽羅など香木も展示されていてました。

「駿河版銅活字 23箱の内」 ★こちらで観られます
これは、銅活字印刷の道具で、判子のように文字が刻まれたものが沢山詰まった箱です。 家康は日本の活版技術に大きな足跡を残しているそうで、こうした品から活版印刷にも力を入れていたことがわかりました。これもまた知らない一面だったので、意外なことを知れて面白かったです。


<書画と公文書>
このコーナーは公文書と自分で描いた絵などのコーナーでした。地味と言えば地味ですが、歴史の証人のようなものもありました。
解説によると、家康はよく文書を使った駆け引きをしていたそうですが、約束や契約をよく守っていてために多くの武将の信頼を得ていたようです。そうした信頼があったからこそ天下が取れたのかもしれません。

「征夷大将軍宣旨案」 
これは後陽成天皇が家康に征夷大将軍を任じた書とまったく同じものです。まさに天下を取った証と言える書だけに歴史の重みを感じました。

伝 徳川家康 「水艸立鷺図」 ★こちらで観られます
これは家康が描いたとされる絵です。横長の画面の右下にサギと竹が水墨で描かれていて、その他の部分は余白となっています。解説によると、観たところ素人っぽいですが、大胆な余白などから洒落たセンスを感じられるとのことでした。なお、こうした直筆と伝わる作品は10点ほどがあるようです。どこまで本人が描いたか分かりませんが、少なからず絵に興味があったことを伺わせる作品でした。


<文房・調度・染織と日常の品々>
最後は調度品や着物などのコーナーでした。普段、どういった生活をしていたのかが伝わるような内容でした。

伝 狩野孝信 「南蛮交易図腰屏風」★こちらで観られます (3章)
これは寝室に置いていた屏風です。港に中国風の船が来て交易をしている様子が描かれていて、西洋人らしき人の姿も見えました。寝室にまでこういう作品を置いていたのは、やはり交易にかなりの興味関心を持っていたためじゃないかな。家康の知的好奇心の強さを感じました。 (余談ですが、江戸時代というと鎖国のイメージがありますが、鎖国は徳川秀忠と家光の時代に成立した政策です)

「薄浅葱地渦巻文麻浴衣」 
これは家康が着ていた小袖(浴衣みたいな薄手の着物)です。一見、ただの真っ白な小袖に見えますが、これは色が抜けてしまったためだそうで、隣に再現された小袖が展示されていました。水色の地に白の線で沢山の渦潮が描かれた模様があり、涼しげで面白いデザインでした。家康は着るものにこだわりがあったそうです。

この辺には他にも櫛やたらい、手ぬぐいかけなど、身だしなみのための道具が並んでいました。 結構お洒落な人だったのかもしれません。狸親父のイメージがちょっと変わったかもw


ということで、家康の意外な一面や人柄も伝わってくる内容でした。日用品や書など一見地味なものもあるので、もうちょっと華があっても良かったかなと思ったりもしますが、貴重な品々を観ることが出来ました。 もう来週には終わってしまう展示ですので、気になる方はお早めにどうぞ。
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Comment
こんばんは!
洋時計、なんだかいいですね~。
時計台みたいな形してて結構好きかも^^
かなり多く展示されてるんですね!
おもしろそう☆

応援ポチッ☆
Re: こんばんは!
>東京レポーターじゃみ~るさん
いつも応援ありがとうございます! 最近ランキングも下がり気味なので有難い限りです。

この展示は結構幅広い展示内容でした。出品目録を見ると半分以上は重要文化財というのも凄いです。 歴史に興味がある人は楽しめると思います。キラキラしたお宝的な作品は少ないので、ちょっと渋めかなw
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