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猪熊弦一郎展『いのくまさん』 【東京オペラシティアートギャラリー】

もう半月ほど前ですが初台の東京オペラシティアートギャラリーで猪熊弦一郎展『いのくまさん』を観てきました。まったく予備知識無しで観たのですが、知らないようで意外と身近なところで作品を観ている人でした。

P1130262.jpg

【展覧名】
 猪熊弦一郎展『いのくまさん』

【公式サイト】
 http://www.operacity.jp/ag/exh117/

【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅
【会期】2010年4月10日~7月4日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
会場は空いていて自分のペースで好きに観られました。しかし、この展覧会は、ある意味あっけに取られた内容で、よく理解しないうちに出てきてしまったかも^^;  最後の出口の所に略歴がありましたが、この略歴を先に読んでれば少しは見方も違ったかもな~と、権威主義的なことを考えてしまいました。

このブログでは先に略歴をご紹介すると、「いのくまさん」こと猪熊弦一郎は高松に生まれ、子供の頃から絵が好きだったそうです。画家になるか発明家になるかで迷ったようですが、画家の道を選び、東京美術学校に入学し藤島武二に師事します。藤島から絵画とは物を正確に描くことではなく物を理解して描くということを教わったそうです。その後、帝展で入選し、1936年に新制作派協会を結成しリーダーになりました。フランスに留学した際には、マティスに「お前の絵は上手すぎる」と言われたそうで、猪熊は思ったことを素直な虚心の無い姿で表現するようになったようです。 第二次世界大戦で帰国し、戦時は中国やフィリピンに派遣されました。戦後は家で猫を1ダースも飼って猫の絵を描いたり、三越の包装のデザインや上野駅のコンコースの絵を描いたりと精力的に活動していたようです。また、マーク・ロスコやイサム・ノグチ、ピカソ、藤田嗣治などとも親交があったとのことです。今回のタイトルの『いのくまさん』というのも詩人の谷川俊太郎の絵本のことらしく、様々な芸術家との交流をうかがわせます。 
ということで、略歴を読むといのくまさんは凄い人なのですが、展覧会では何度となく「子供の絵みたい!」を連呼してしまいましたw 先にご紹介した藤島やマティスの教えなど露知らず、失礼な鑑賞者ですみません(><) どうしてそう思ってしまったのかは、公式ページでいくつか作品を観て頂ければご理解頂けるかと…。 展覧会でも詳しい説明があまりないので、各作品の意図や意味を知るのは大変でした。(感性が鈍いだけかもw) 

さて、ようやく本題です。展覧会の構成はモチーフごとに10ほどのコーナーに分かれていました。無題の作品が多く、1点1点紹介するのも難しいので、ごく簡単に説明していこうと思います。

<こどもの ころから えが すきだった いのくまさん おもしろい えを いっぱい かいた>
最初は様々なものを描いたコーナーです。飛行機、鶴、船、侍が刺されている絵?など内容はバラバラですが、出鼻から子供の悪戯描きに見えて面食らいました。

<いのくまさんは じぶんで じぶんの かおを かく>
次に自画像のコーナーです。簡略化された顔から本格的な油彩の作品が並んでいました。観たままではなく率直な気持ちで描いたと言われると、なるほどと思える内容かも。

<ほかの ひとの かおも かく>
<たくさん たくさん かおを かく>
この辺は簡略化された顔を沢山描いたコーナーで、タイル絵のように何人もの人物像を縦横に並べた作品が何枚かありました。みんな微妙に違う顔をしているのが面白いです。この辺になると単純に絵から伝わる楽しげな雰囲気を味わうように観ていました。

<いのくまさんは とりが すき>
鳥をモチーフにしたコーナーです。簡素で可愛らしい鳥達が描かれたスケッチがならんでいました。非常に親しみやすいです。

<いのくまさんは ねこも すき いっぱい いっぱい ねこを かく>
ここが一番気に入ったコーナーでした。いのくまさんは猫が好きで1ダースも飼ってたほどなので、猫が群れて遊んでいるような絵が何枚もありました。やはり簡素な絵ですが猫の生態を観察していたのが伝わってくるようでした。簡素にこれだけ表情豊かに描けるのはとても凄いことなのでは?と思ってみたり。 何といっても可愛いw

<いのくまさんは おもちゃが すき>
ここは動物や車などのミニチュアの玩具などが並んだコーナーです。観るだけで愛らしさを感じ、いのくまさんの玩具に対する楽しげな感情が伝わってくるようでした。

<いのくまさんは かたちがすき こんな かたち あんな かたち かたちは のびる かたちは まがる かたちは つながる かたちは かぎりない>
<いのくまさんは いろも すき こんな いろ あんな いろ いろが うまれる いろが ささやく いろが さけぶ いろが うたう>
この辺りは幾何学模様を組み合わせたような抽象画のコーナー。カラフルで、抽象化された街や宇宙、円や四角などが描かれていました。明るく力強い色彩で、幾何学のモチーフでも生き生きした感じを受けました。逸話としてはスターウォーズが好きでよく観ていたというような話もあって、宇宙自体が好きだったのかも。

<ぬりえをしよう>
これは塗り絵の配布コーナー。持ち帰って自由に塗って楽しめます。

<いのくまさんは たのしいな>
ここは失念。1点のみのコーナーです。

<コリドール>
いのくまさんは「最も優れた芸術は建築である」と語っていたそうで、公共建築の壁画などを多く手がけました。また、「芸術と生活は結びつくものである」という考えもあって工芸や服飾など様々な分野で活躍したそうです。ここにはそうした各地にある作品の写真などが展示されていました。


ということで、私も現代アートや抽象画なども結構見てはいますが、今回の展示で全然理解できていないことが露呈してしまった気がしますw いやー、本当に美術というのは奥が深いものです。子供の絵のように観えて実は大物画家の作品、そんな驚きがある内容でした。

おまけ
↓上野駅で撮ってきた写真。私はこれをよく観てます。確かに右下にサインがありました。
P1130306.jpg
他にも半蔵門線の三越前駅の壁面、帝国劇場の壁画やステンドグラスも猪熊氏の作品のらしいです。結構、身近で目にしていたことに驚きでした。「いのくまさん」の呼び名が似合うような親しみが持てる作品達でした。
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Comment
こんばんは!
オペラシティでこんな展示やってたんですね!
オペラシティからは割と近いとこに住んでるんですが、こういった展示会場があること自体初めて知りました^^;
ちょっくら見に行ってみようかな~☆
Re: こんばんは!
>東京レポーターじゃみ~るさん
世の中にはあまり知られていないようですが、オペラシティにはこのギャラリーとICCという2つの展示室があります。(ICCはこの次の記事でご紹介しました)

7/28からは「アントワープ王立美術館コレクション展 ─ アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂」という非常に面白そうな展示も始まりますので、お楽しみに^^ ICCとのハシゴもお勧めです。
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