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ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ 【東京国立近代美術館】 (後編)

昨日のヴィデオ展の感想の続きです。
昨日の記事はこちら


【展覧名】
ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ

【公式サイト】
http://www.momat.go.jp/Honkan/waiting_for_video/index.html

この展示で思ったのは、映像美術というのは単に美しいものを撮るものではなく、動きや音を駆使して、物事の本質を表現していくのが大事なのだろうということ。
本来は眼に見えない「感覚」の伝わり方を表現した作品や、単純な動きの繰り返しの中に無意味と意味の境界線を問う作品、視点を変えることで現実の世界が非現実に見えてくる作品など、どれも豊かな発想を持っていました。

昨日に引き続き、気に入った作品を紹介。

作品名がわかりませんが、恐らく日本の作品で驚きの作品がありました。モニターの前の真ん中あたりに金魚鉢?を置いて、鉢側面のレンズ効果を映像に組み込んでいる作品でした。モニターの左端から人が歩いてきて、金魚鉢で歪んで半透明に見える部分になると、平泳ぎの動きをして、金魚鉢を抜けるとまた普通に歩き出すという作品。金魚鉢を介さずに横から鑑賞すると、単に画面の真ん中にくると平泳ぎの真似を始める映像なのですが、金魚鉢があると水族館の大型水槽の中で泳いでいるように見えるのが面白かった。映像だけでなく視聴方法も作品に取り入れるアイディアに驚きました。

リチャード・セラ 「鉛をつかむ手」
横向きの右手が大写しにされていて、画面の上から鉛が落ちてくるのをキャッチする映像です。鉛は油で真っ黒で、それをつかむ手も汚れています。つかんだり、ミスったりを延々繰り返します。オチとかなくてそれだけです。 終わりなく不条理なまでに繰り返します。何だか人生の縮図みたい・・・w 延々と繰り返す系の作品は1つのジャンルなのかも。

リチャード・セラ 「カラー・エイド」
画面全体で色紙を写していて、その色紙をどんどんめくっていく映像。めくるごとに色が変わっていくのですが、めくられた瞬間は1つ前の色が眼に焼きついているので、今の色と眼の中で混ざります。眼の補色効果まで作品に組み込むのか!と驚くばかりです。

リチャード・セラ 「鉄道旋回橋」
橋が横に90度旋回する映像です。(そんな橋があることも驚きですが) その旋回している橋の中にカメラが固定されているのがこの作品のポイントです。映像を観ると、橋の中は動かず、まるで景色の方が周りをまわっている感じがします。天動説を映像化したかのようです。視点次第で、感じ方が全く逆になるのが面白かったです。

ダン・グレアム 「向き合った鏡と時差をもつヴィデオ・モニター」
これは部屋全体が作品になっています。リアルタイムの部屋内を写した映像と、5秒くらい時差のある映像があります。それが鏡あわせになっていてもう何が何だか(><) 現実の映像が非現実のように思えてきて、不思議な感覚でした。

フランシス・アリス「リハーサル1」
急坂と急坂に挟まれた谷間にはまってしまった車の脱出劇です。画面奥の急坂を登ろうとするも、力尽きてズルズルと谷底にバックしていきます。そこで逆にバックで手前の坂に登って、助走をつけてから再度奥の坂に挑みます。が、駄目・・・。というのを延々繰り返しますw 観ていると行けそう!というのがあって、引き込まれます。それと、登るときに軽快な音楽が流れるんだけど、ヨロヨロするとそれに連動して音楽がしょぼくなるのも面白いです。真っ赤な車も印象に残りました。

ペーター・フィシュリ + ダヴィッド・ヴァイス 「事の次第」
NHKのピタゴラスイッチみたいな作品です。(ピタゴラスイッチの動画検索結果
それがなんと30分!しかも一直線に進んでいく大作です。実はいくつかカットされているのを繋いでいるようですが、これだけ長いと見応えがあります。ついつい次はどうなる?が気になってしまったw

フランシス・アリス 「信念が山を動かすとき」
これを観ている途中で閉館時間になってしまいました(><) 大勢集めて砂丘をスコップで移動させるというぶっ飛んだプロジェクトのドキュメントです。盛り上がってきたところだっただけに残念。

ジル・ミラー「I Am Making Art Too」
出口にある作品です。入口にあった「I Am Making Art」へのオマージュ作品ですが、こっちは踊ってるので観ていて面白いです。(といってもちょっとしか観られませんでしたが。) 改めて考えてみると、どこからArtかというのは誰にも定義できないのかも。 そんなことを視聴者に逆に投げかけてくる作品です。


このほかにも面白い作品はあります。印象深い作品が多すぎて、回るのに時間が掛かりました。「木に潜むもの」を観たり常設で写真を撮ろうと考えてましたが時間が足りなかったです。ここも1日かかるなあ。

ちなみに今後の展示のスケジュールがありました。ゴーギャン展は混むんじゃないかな。
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