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ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ (感想後編)【横浜美術館】

今日は、前回ご紹介した横浜美術館の「ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ」の後編をご紹介します。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

まずは概要のおさらいです。
P1130810.jpg

【展覧名】
 ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ

【公式サイト】
 http://www.tbs.co.jp/pola2010/s

【会場】横浜美術館
【最寄】JR桜木町駅/みなとみらい線みなとみらい駅
【会期】2010年07月02日~09月04日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】

<Ⅰ 印象派>
さて、昨日は印象派とゴーギャンやセザンヌなどをご紹介いたしましたが、まだⅠ章は続いております。展覧会の中間地点のすぐ後にはスーラやシニャックが並ぶ、新印象主義のコーナーとなっておりました。

ジョルジュ・スーラ 「グランカンの干潮」 ★こちらで観られます ☆以前の紹介記事
砂浜で斜めに傾いた帆船が描かれています。船のマストの斜めの線や、水平線、砂浜など、直線が多い構図に思います。また、薄い青の空、緑の海、薄茶色の砂浜というように、何段かに色が分かれているようで、点描による色彩の表現が面白いです。よく観ると絵全体を囲うように青とオレンジの縁取りも描かれていて、空と砂浜の部分ではその配合も違っているなど、縁にまで拘って描かれているのが驚きでした。

この近くにはピサロの点描時代の作品もありました。

アンリ・エドモン・クロス 「森の風景」 ★こちらで観られます
シニャックらと交流のあったクロスの晩年の作品です。森の中が描かれ、ヤギ?のような動物の姿なども観られます。大き目の点で描かれた木々や草などはタイル絵みたいな感じすらします。(光の境界をあえて曖昧にしているのかな??) 静かながらも生き生きとした雰囲気のある作品でした。

ポール・シニャック 「オーセールの橋」 ★こちらで観られます
点描による新印象主義と言えばシニャックです。この作品は、橋と聖堂を背景に、河とその周りを描いています。水色、紫、緑などシニャックらしい色使いですがシニャックにしては点はまだ大きくないかな。下の方には点が規則的に並び、リズミカルな感じを受けました。

イポリート・プティジャン 「髪をすく裸婦」 ★こちらで観られます
川の畔で髪の毛の水を絞っている裸婦が、こちらに振り返っている様子が描かれています。艶やかな肌がよく表現されていて、背景の緑や青に映えていました。 これも点描で描かれているのですが、点描は当時の先進的な技法であったのと対象的に、理想的な女性像を描くという古典的な題材であるのが面白かったです。淡く幻想的でうっとりするような魅力がありました。

オディロン・ルドン 「日本風の花瓶」 ★こちらで観られます ☆以前の紹介記事
花の入った花瓶という、具象的なものを描いているのに、どこか幻想的で神秘性すら感じる作品です。背景の空気に溶けてしまいそう…。この絵は何度観てもぼーっと見とれてしまいます。

この辺にはロートレックの油彩作品などもありました。


<Ⅱ エコール・ド・パリとピカソ>
ここからは印象派から少し時代の進んだエコール・ド・パリの時代の作品になります。1つの小部屋に1人という感じで、ずらっと並んで展示されていました。こんなことが出来てしまうコレクションの豊富さは凄いですね。

パブロ・ピカソ 「海辺の母子像」 ☆以前の紹介記事
所謂、ピカソの「青の時代」の作品です。これはポーラ美術館の門外不出の作品だそうで、今回の目玉作品の1枚です(何度か観てる気がしますが、全部ポーラ美術館だったかな…??) 子供を抱いた女性が砂浜で立っている様子が描かれ、全体に青みがかっている中で、手に持った赤い花が非常に目を引きます。母親の厳粛な面持ちからは苦悩を感じました。
ピカソは初期の作品やキュビスムの時代の作品もあり、ここだけで変遷が観られるかもw

キース・ヴァン・ドンゲン 「乗馬(アカシアの道)」
非常に強い色彩のアカシアの並木道と、そこを走る馬、馬車、自転車などが描かれています。強い緑と馬の茶色が特に目を引きました。走っている馬の様子などは躍動感もあり生き生きとしていました。 この作品のあった部屋はドンゲンの部屋になっていて、何枚も作品を観られる貴重な機会となりました。

モーリス・ユトリロ 「ラ・ベル・ガブリエル」
右側にパリの路地にある居酒屋「ラ・ベル・ガブリエル」が描かれ、左側には壁に落書きをしている人物が描かれています。この人物はユトリロ本人のようで、落書きには「モーリスはガブリエル(居酒屋の女将)を愛している」と書かれているそうで、愛のメッセージのようです。他にもハートを矢が射抜くような落書きがあり、面白かったです。この間ユトリロ展を観たばかりですが、ユトリロの人生にこういうエピソードがあったとは知りませんでした。
 参考記事:モーリス・ユトリロ展 -パリを愛した孤独な画家- (損保ジャパン東郷青児美術館)

モーリス・ユトリロ 「シャップ通り」 ☆以前の紹介記事
ユトリロの中でも評価の高い「白の時代」の作品です。町の建物を高い位置から観たような視点で描かれ、建物に質感を感じます。向こうに見える階段や聖堂など奥行きも感じることができました。素晴らしい作品です。

マリー・ローランサン 「ヴァランティーヌ・テシエの肖像」 ☆以前の紹介記事
真っ白な肌で水色の透き通るような服を着ている女性像です。隣には首の長い犬がいる点や、柔らかい色彩などローランサンらしい作品でした。この女性は当時の人気女優なのだとか。
 参考記事:マリー・ローランサンの扇 (川村記念美術館)

アメデオ・モディリアーニ 「ルニア・チェホフスカの肖像」 ★こちらで観られます ☆以前の紹介記事
青い目、長い首、アフリカの彫刻を思わせる顔など、モディリアーニの特徴がよく分かる作品です。白いブラウスやブローチなど、清楚な感じがよく出ていました。独特な面持ちは優美さを感じます。モディリアーニも数点ありました。

モイーズ・キスリング 「ファルコネッティ嬢」
実物大くらいの大きな肖像画です。手にバラのような花を持った女性像で、真っ赤なドレスが目に鮮やかです。肩にかけているストールは肌に透けていました。じっとどこかを観る表情は少し神妙な感じかも。背景は緑の椅子で、緑と肌色、緑と赤という感じで3つの色が呼応しているようで鮮やかでした。

マルク・シャガール 「私と村」
ヤギと緑の男が向き合っているのが大きく描かれ、その真ん中に薄い赤の道が走っています。その周りではヤギの乳絞りをする人や農夫、家並みなど生まれ故郷の思い出を描いているようでした。幻想的な作品です。

マルク・シャガール 「ヴィテブスクの冬の夜」
暗い雪の街(シャガールの故郷)を背景に抱き合う男女が浮かんでいます。女性は白いベールを被っているので花嫁かな? その隣には赤い馬、背景には黄色い太陽のようなものなど神秘的な作品でした。
 参考記事:シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い―交錯する夢と前衛― (東京藝術大学大学美術館)

レオナール・フジタ(藤田嗣治) 「猫を抱く少女」
暖炉の前で猫を抱いている少女です。猫の顔は驚いてのけぞる様な藤田の絵によく出てくる猫の顔をしています。少女の座り方がモナリザみたいだなーと思ってみたり。可愛らしい作品でした。 藤田は1950年代の作品のみで乳白色の頃のは無かったですが、結構あって嬉しかった。
 参考記事:
  藤田嗣治-東京・ニューヨーク・パリ (目黒区美術館)
  よみがえる幻の壁画たち レオナール・フジタ展 (そごう美術館)


ということで、国内屈指のコレクションだと思います。横浜という交通の便が良いところで観られるので、今までポーラ美術館に行くことができなかった人には良い機会じゃないかな。(きっと、帰る頃にはポーラ美術館に行ってみたくなるかとw) 美術館賞の初心者の方にもお勧めの展覧会です!

おまけ:美術館の前の噴水。遊ぶ子供が何とも涼しそうでした。
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Comment
No title
こんにちは。
モネの睡蓮の池、オルセーにほぼ同じものがありましたね。
新美で観た時、「何でポーラのがあるんだ?」と思いました。
微妙にポーラのが縦長のようです。
この展覧会には、まだ行ってないのですが、ポーラには2度行ってます。9月からのにも行こうかと思ってます。

ところでリストありましたか?
ここの特別展は、無いことが多いと聞きましたが。

では、また。
Re: No title
>ベンゼンさん
モネの連作の作品はそういうことがありがちかもしれませんね。
この展示はポーラ美術館の美味しいところを持ってきている感じがするので、
2回行かれているようなら嬉しい再会が多いと思いますよ。

リストはありますが、会場の係員の方に言わないと貰えません。ここは大体そういう感じかな。
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