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日本美術のヴィーナス -浮世絵と近代美人画- 【出光美術館】

先週の土曜日に、日比谷の出光美術館で「日本美術のヴィーナス -浮世絵と近代美人画-」を観てきました。

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【展覧名】
 日本美術のヴィーナス -浮世絵と近代美人画-

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅

【会期】
  前期:2010年7月31日~8月22日
  後期:2010年8月24日~9月12日

 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間10分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この日は結構お客さんが多くて、1作品に1人~2人くらいの混み具合でした。主に年配の方が多かったかな。中々に賑わっていました。
今回の展示は女性の「清涼美」をキーワードに出光美術館の優美な美人画コレクションの数々が展示されていました。詳しくは章ごとに気に入った作品をご紹介しようと思います。


<第一章 清涼の美人>
今回の展覧は特に章分けの必要性を感じませんでしたが、まず最初は今回の展示のテーマでもある「清涼」のコーナーとなっていました。

「普賢菩薩騎象図」 ★こちらで観られます
雲に乗った白い象の背に乗る普賢菩薩を描いた掛け軸です。手を合わせて澄んだ表情をしていて、唇の赤が艶やかな雰囲気を出していました。
解説によると、インドから伝わった神々(吉祥天や弁才天)を除けば、仏には性別が無いそうですが、普賢菩薩や観音菩薩のように女性をイメージした仏はしばしば描かれたそうです。

喜多川歌麿 「更衣美人図」 ★こちらで観られます
今回のポスターになっている掛け軸です。少し首を傾げて右手に扇子を持ち、左手で右肩を触っている着物の女性像です。色白で優美な雰囲気が漂い、赤い着物がちょっと見えているのが艶やかさを引き立てているように思いました。

勝川春湖 「蛍狩美人図」
蛍狩りに来た若い2人の姉妹が描かれた掛け軸です。背景には葦の葉のみが描かれ、周りには蛍はいないようです。うちわを持って薄い緑の着物を着た姉は清涼という言葉がぴったりな雰囲気を出していました。勝川春湖はこの作品の近くにあった作品も良かったです。

鳥文斎栄之 「舟遊図」
霞がかった満月の下、川の上に屋形船が何艘か浮かび、左側には大勢で賑わう橋が描かれています。手前では柳の木下で屋形船が留まり、中の男達が舟の脇の2人の女性に声をかけているようです。この手前の風景だけが色濃く描かれ、紫と青の女性の着物が清涼感と色気を出していました。また、全体的に楽しげで粋な雰囲気を感じる作品でした。

この辺には蒔絵や陶磁器などもあったのですが、今回のメインは美人画なのでご紹介は割愛します。

「誰が袖図屏風」
6曲1双の金屏風です。画面に人の気配は無く、左右に「衣桁」という着物をかける物干しみたいなものがあり、細やかで色とりどりの着物がかかっています。扇、草花、水車など、着物の意匠も様々で華やかです。左隻にはお膳のようなものやカゴのようなものもありました。この主題は好みです。


<第二章 古雅の幻影>
このコーナーは古典や故事、謡曲のイメージを要素に入れて、別のもので表現する「見立て」が使われた作品が多くありました。

喜多川歌麿 「娘と童子図」 ★こちらで観られます
緑色の着物を着た若い女性が赤い鞠を持っていて、足元にいる幼い弟がその鞠に向かって手を伸ばして欲しがっている様子が描かれています。弟の前にはコマと紐が転がっていて、どうやらコマ遊びには飽きてしまったようです。 微笑ましい光景ですが、これは善財童子を伴う観音を思わせるそうで、さらに訶梨帝母(鬼子母神)を基にしているとも考えられるとのことです。参考として醍醐寺の訶梨帝母の絵の写真が解説にありました。

葛飾北斎 「月下歩行美人図」
大きな月と、その下を歩く女性を描いた作品です。背景には何も無く、女性の白い顔が一際目を引き、周りは静かで幻想的な雰囲気の作品でした。 ・・・これは見立てかは分かりませんでした。

<第三章 美人たちの遊宴>
このコーナーは遊宴をテーマにしていて、多くの美人が楽しみに興じている姿が描かれた作品が並んでいました。

菱川師宣 「遊楽人物図貼付屏風」
6曲の小さな屏風です。1扇ごとに美人たちが遊楽にふけっている様子が描かれていて、桜の下での宴会の様子、三味線を弾いている様子、碁を打っている様子、本を読んでいる様子、花札?に興じている様子など、様々な場面となっていました。いずれも複数の人々が描かれ、女性の華やかさと楽しげな雰囲気を感じました。着物も華やかです。

勝川春章 「美人鑑賞図」 ★こちらで観られます
この作品は以前にもご紹介いたしましたが、またメモしてしまったw 広い屋敷の中で10人くらいの女性が寄り合って掛け軸を見ている様子が描かれ、女性の着物が画面に彩りを与えているように思います。1人の女性のひざの上には猫が乗っかっていて、もう1匹掛け軸の入れ物にじゃれている猫も見られます。また、障子の横には牡丹が飾られていました。解説によると、猫は長寿の象徴、牡丹は富貴の象徴であり、吉祥のモチーフになっているようでした。まあ、難しいことを考えなくても一目で素晴らしさが分かるかとw
 参考記事:ユートピア ―描かれし夢と楽園― (出光美術館)

宮川長春 「江戸風俗図巻」
これは巻物で、川にかかる橋と屋形船が描かれています。上部には金砂子が撒かれ、絢爛豪華な雰囲気があります。この作品は春夏秋冬の場面があるようで、観たのは恐らく夏のようでした。 風情があって、楽しそうな人々の様子が色鮮やかに描かれていました。


<第四章 伝統美と革新のあいだ>
最後のコーナーは私にとっては大ヒットでした。ここは明治以降に浮世絵などを参考に描かれた日本画が並ぶコーナーでした。

上村松園 「四季美人図」 ★こちらで観られます
これは4幅セットの掛け軸です。桜の木の下で着物を翻す女性、屋形船の上で透ける団扇を持って立つ女性、障子を開けて足元の花を観る女性、雪の積もった傘を持って雪道を歩く女性 というように四季の女性達を描いています。いずれも瑞瑞しい美しさを感じる松園ならではの作品でした。 また、美人を画面からはみ出るように描いた構図が面白かったです。

上村松園 「灯」
水色の着物を着た女性が、袂で手に持つ燭台の蝋燭の炎を覆っている様子が描かれた絵です。白い肌の顔に赤い口紅が何とも艶やかで、その仕草と共に雅な雰囲気がありました。女性の上半身だけ大きく描かれているのですが、これは喜多川歌麿の大首絵の影響のようです。また、この作品は松園の母が死んだ3年後に描かれたものだそうで、思慕の情が表現されているのではないかと解説されていました。

菊池契月 「友禅の少女」
青い着物を着た黒髪で白い肌の女性が、赤い椅子に腰掛けてじっとこちらを観ています。こちらを見透かすような神秘的な目と、黒、赤、白、青といったハッキリした鮮やかな色彩が清廉な雰囲気を出しているように思いました。菊池契月はこの隣にあった作品も良かったです。

この部屋の中央あたりには陶磁器、化粧道具、香炉なども展示されていました。

鏑木清方 「五月晴」
両脇に杜若が咲いている橋を渡る女性を描いた作品です。扇の上に盃を載せて運んでいるようですが、視線を道の横に向けていました。薄い青の着物には紅白の牡丹も描かれ、清方らしい清らかな美人でした。
この辺は清方に深水といった大好きな画家の絵が並んでいて全部好みでしたw 隣にあった「たけくらべ」の絵も良かった…。

伊東深水 「通り雨」
薄い紫と赤の着物を着た女性が、青い傘を開こうとしている様子が描かれています。真っ白な肌に、口紅の赤や着物の色が映えて艶やかです。表情にも色気があって、この展覧の中でも色っぽさが群を抜いていたと思います。非常に魅力を感じる女性像でした。


ということで、華やかで好みの作品が多い内容で、特に四章は良かったです。夏に相応しい涼しげな美女が揃った展覧会でした。 …公式サイトを観ていると、後期の方が揃えが良さそうに思えてきますw 後期も行こうか悩む…。
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出光美術館で開催中の 「日本美術のヴィーナスー浮世絵と近代美人画」展に行って来ました。 展覧会の構成は以下の通り。 第1章:清涼の美人 第2章:古雅の幻影 第3章:美人たちの遊宴 第4章:伝統美と革新のあいだ 「美人」の括りがいまいち判然としない...
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