アントワープ王立美術館コレクション展 【東京オペラシティアートギャラリー】
先週の日曜日に初台へ行って、東京オペラシティアートギャラリーで「アントワープ王立美術館コレクション展 アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂」を観てきました。いつもどおり、ぐるっとパスを使って入りました。

【展覧名】
アントワープ王立美術館コレクション展
アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂
【公式サイト】
http://www.operacity.jp/ag/exh120/
【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅
【会期】2010年7月28日(水)~10月3日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
思ったより空いていて、自分のペースでじっくりと観ることが出来ました。
今回の展示はベルギーのアントワープ王立美術館のコレクションが並ぶ展示で、特に近代絵画を中心に70点ほどの内容となっていました。ベルギーと言えば真っ先に思い出すマグリットやデルヴォーを始め、アンソール、クノップフといったベルギー展ならではの名前も並び、ほとんどが日本初公開となっているそうです。詳しくはいつも通り章ごとに気に入った作品を紹介していこうと思います。
なお、館内は冷房が効いていて寒いくらいでしたので、苦手な人は何か用意して行ったほうが良いかもしれません。
<第1章 アカデミスム、外光主義、印象主義>
まずはフランスからの影響が色濃いコーナーでした。写実主義(レアリスム)はフランスでは1850年代から始まっていましたが、ベルギーでは1860年代に本格化したそうです。1883年には「20人会」という前衛グループが発足され、フランスの印象派や新印象主義をベルギーに紹介しました。特に1887年に紹介されたスーラの影響は大きく、点描画が流行したそうです。1910年には印象派やセザンヌの影響を受けたクウテルスが「ブラバントフォーヴィスム」を展開するなど、フランスの影響を受けつつも独自の絵画様式が生まれていたようです。
・・・この辺の流れは2009年に行われた2つのベルギー絵画展(特に損保ジャパンの展示)でもご紹介しましたので、気になる方は参考記事も読んでみてください。
参考記事:
ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
ルイ・アルタン(ド・サン=マルタン) 「海景」
海辺の港湾の風景で、船が何艘か浮いている様子が描かれています。色は抑えられているように思いますが、微妙な空の色合いを表現していて穏やかな雰囲気があります。ぱっと観た感じでも印象派からの影響を感じる作品でした。(この画家は冬をパリで過ごしていたらしいので、印象派から影響を受けたのは間違いなさそうです。)
フランツ・クルテンス 「陽光の降り注ぐ小道」
縦長での絵で、木々の隙間から光が差し込む並木道が描かれています。上部まで緑が多い、光の明暗が見事です。これも印象派やバルビゾン派の影響を感じる作品でした。解説によると、元々は写実主義だったそうです。
ジェームス・アンソール 「待ち合わせ」
20人会にも参加していたアンソールの作品で、戸の開いた室内でテーブルに向かって座っている黒い帽子と白?のドレスを着た女性が描かれています。室内は少し薄暗く、女性の顔は帽子で隠れて見えていません。テーブルの表面には反射する外の光など写実的な感じもあるのですが、何処か神秘的な静けさを感じました。
ジャン・バティスト・デ・グレーフ 「公園にいるストローブ嬢」 ★こちらで観られます
森を背景に、白い服を着た少女が花束を持ってこちらを観ています。背後に羊がのそっと出てきた感じも可愛いw 全体的に明るい画面で鮮やかな色彩です。解説によるとこの画家は写実主義を守ったそうですが、アカデミックと印象派の間のように見えたかな。
ジェームス・アンソール 「防波堤の女」
薄暗い空の下、防波堤で傘をさしている後ろ向きの女性が描かれています。海を眺めているのかは分かりませんが、少し寂しいと言うか情感があるように思いました。解説によるとクールベのようにパレットナイフを用いて描いていたらしく、さっと描かれたようなタッチが不思議な魅力を出していました。
アルフレッド・ウィリアム・フィンチ 「西フランドルの風景」 ★こちらで観られます
これはかなり細かい点描で描かれた作品です。手前に濃い緑の木々、奥に薄い緑の草原、上部には空が描かれています。緑にはオレンジの点が混ざり、黄緑には黄色や水色、空にもオレンジや白といった別の色が混じっていました。スーラの影響がわかりやすい作品でした。
アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ 「洗濯をする女」
庭で物干しを持ち上げて洗濯物を干す女性が描かれた絵です。全体的に斜線のような(点描を線に伸ばした感じの)表現となっていて、独自の新しい技法でした。荒い木版の彫り跡のような力強い表現に思いました。
解説によると、この人は建築家・デザイナーとして名高い人だそうで、画家としては点描やゴッホ、ゴーギャンに影響を受けたそうです。その後、絵に満足できず応用芸術に向かったとのことでした。
リク・ワウテルス 「白衣の女」
窓の側で座っている画家の妻を描いた肖像画です。少し柔らかいけれど大胆な色彩で、セザンヌの影響を受けているのを感じました。隣にはナビ派を柔らかい色彩にしたような教会の絵もありました。
<第2章 象徴主義とプリミティヴィスム>
2章は象徴主義となっていました。クノップフ、スピアールト、レオン・フレデリックなどの作品が並んでいました。
ジェームス・アンソール 「フランドル通りの軍楽隊」
高い階の部屋から見下ろすように街中の道が描かれています。通りには軍楽隊がパレードをしているようで、人々がぎっしりと川の流れのように行進していました。町の建物は定規で線を引かれたようにきっちりしていて濃い色彩です。それに対して、左側の手前に描かれたベルギー旗などは単純化されたような感じでした。アンソールは色んな画風がありますね…。
フェルナン・クノップフ 「エドモン・クノップフの肖像」 ★こちらで観られます
横向きの男性像で、長らく自画像と考えられていたそうですが、どうやら父親を描いたものす。理知的な紳士の姿から内面まで伝わってきそうです。柔らかく落ち着いた色彩で、象徴主義的な幻想性のある静かな雰囲気が漂っていました。
レオン・スピアールト 「海辺の女」 ★こちらで観られます
暗めの海を見ている黒い服を着た女性の後姿を描いた作品です。ぼーっと浮かぶような女性に神秘性を感じます。解説によると、水平に描かれた水平の手すりには構図の計算があるようです。また、スピアールトは不眠症で夜の海岸をよく徘徊していたとも説明されていましたw 絵はほぼ独学で学んだようです。
この辺にはスピアールトの作品が4枚くらいありました。どれも幻想・神秘という言葉が似合います。
レオン・フレデリック 「咲き誇るシャクナゲ」 ★こちらで観られます
鉢に植えられた赤いシャクナゲが室内の椅子の上に乗せられ、黄色い服の少女が脇でじっと見つめている絵です。葉の緑、花の赤、服の黄色が目に鮮やかで、光と影の使い分けが生き生きとした雰囲気を出しているように思いました。穏やかで幸せそうです。
ヴァレリウス・デ・サデレール 「フランドルの雪景色」 ★こちらで観られます
雪の積もった山村の風景を描いた作品です。一目でピーテル・ブリューゲルの絵を連想させましたが、地平線がやけに低い位置に描かれているところが独特かな。広く描かれた空に沈む太陽のグラデーションは見事で、郷愁を誘いました。人っ子一人いない静かな風景でした。
<第3章 ポスト・キュビスム:フランドル表現主義と抽象芸術>
3章はピカソらが作り上げたキュビスムと、ドイツで生まれた表現主義(画家の主観を通して事象を捉える表現)から影響を受けた画家を紹介するコーナーでした。この章の画家の作風はバラバラだったかな。
グスターヴ・デ・スメット 「パリーの肖像」 ★こちらで観られます
金髪で大きな黒い目の少年が描かれ、背景には海が見えます。全体的に単純化され平面的な感じで、キュビスムからの影響を感じました。解説によると、2次元性を強調するような装飾性や親密感、キュビスム的アプローチの調和を図っているそうです。中々好みの作品でした。
フリッツ・ファン・デン・ベルへ 「人生」
右には暗い街角で手を挙げて叫んでいるような老婆、左には家の中の男の影と横たわる娼婦らしき女、背景には暗い教会が描かれています。直線や三角が多くてキュビスム的な要素を感じます。解説によると、この娼婦は老婆の若い頃ではないか?とのことで、画風にはフランドル表現主義の特徴が出ているとのことでした。 タイトルからして若い頃の成れの果てなのかな?ちょっと怖い教訓めいた作品に思いました。
グスターヴ・ファン・デ・ウーステイネ 「リキュールを飲む人たち」 ★こちらで観られます
一見、3人の男女が食卓を囲んでいるように見える絵です。しかしよく見ると、手前で横を向く男性の手にはパレットと絵筆が握られ、2人の女性は絵の中の人物であることが分かります。ちょっと騙し絵的な要素もあって面白かったです。
<第4章 シュルレアリスム>
最後はお待ちかねのシュルレアリスムのコーナーですが、他の章に比べて少ないように思います。マグリットは3点、デルヴォーは2点といった感じで全部で7点しかありません。しかし、いずれも面白くて素晴らしい作品でした。
ルネ・マグリット 「復讐」
部屋の中でイーゼルに置かれた風景画があり、その絵から雲が部屋にはみ出ているという不思議な光景です。雲が現実に対して「復讐」して絵から逃げているそうです。抜け出た雲は後ろの壁に影を落としているなど、現実と絵の境界が曖昧になるような描写が面白かったです。
ルネ・マグリット 「9月16日」
今回のポスターにもなっている作品です。夕闇の中に一本の木が立ち、その背景にあるはずの三日月が木の前面に回りこんでいるように見えます。この月が無ければ何ということも無い絵ですが、この月があるだけで超現実的な不思議な光景となっているのが面白かったです。流石はマグリットという作品でした。
ポール・デルヴォー 「バラ色の蝶結び」
古代都市のような町と岩山を背景に、虚ろな目をした女が蝶結びのバラ色の大きなリボンを羽織るように観につけています。その周りでも裸の女たちが夢遊病のように立っていて、足元には大きなリボンや骸骨なども落ちていました。 怖い夢の世界のようで、観ているだけで不安な気持ちになってきますw この作品もかなり良かったです。
ポール・デルヴォー 「ウェステンデの海」
これはモノクロの水彩画です。浜辺を描いた静かな風景画で、ボードを見るまでデルヴォーの作品だとは分かりませんでした^^; 微妙な濃淡で描かれていて、油彩のシュールな絵とは違った魅力がありました。
ということで、シュルレアリスムのコーナーがもう少し欲しかったかな。これが中心かと思ってきたので、ちょっと残念…。 とは言え、ベルギーならではの感性を味わえる内容だったのは良かったと思います。
この後、上の階の常設にも行ってきました。シュルレアリスムを求めてやってきた私的には常設の方が「当たり」だったかもw 次回ご紹介しようと思います。


【展覧名】
アントワープ王立美術館コレクション展
アンソールからマグリットへ ベルギー近代美術の殿堂
【公式サイト】
http://www.operacity.jp/ag/exh120/
【会場】東京オペラシティアートギャラリー
【最寄】初台駅
【会期】2010年7月28日(水)~10月3日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間20分程度
【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_③_4_5_満足
【感想】
思ったより空いていて、自分のペースでじっくりと観ることが出来ました。
今回の展示はベルギーのアントワープ王立美術館のコレクションが並ぶ展示で、特に近代絵画を中心に70点ほどの内容となっていました。ベルギーと言えば真っ先に思い出すマグリットやデルヴォーを始め、アンソール、クノップフといったベルギー展ならではの名前も並び、ほとんどが日本初公開となっているそうです。詳しくはいつも通り章ごとに気に入った作品を紹介していこうと思います。
なお、館内は冷房が効いていて寒いくらいでしたので、苦手な人は何か用意して行ったほうが良いかもしれません。
<第1章 アカデミスム、外光主義、印象主義>
まずはフランスからの影響が色濃いコーナーでした。写実主義(レアリスム)はフランスでは1850年代から始まっていましたが、ベルギーでは1860年代に本格化したそうです。1883年には「20人会」という前衛グループが発足され、フランスの印象派や新印象主義をベルギーに紹介しました。特に1887年に紹介されたスーラの影響は大きく、点描画が流行したそうです。1910年には印象派やセザンヌの影響を受けたクウテルスが「ブラバントフォーヴィスム」を展開するなど、フランスの影響を受けつつも独自の絵画様式が生まれていたようです。
・・・この辺の流れは2009年に行われた2つのベルギー絵画展(特に損保ジャパンの展示)でもご紹介しましたので、気になる方は参考記事も読んでみてください。
参考記事:
ベルギー幻想美術館 (Bunkamuraザ・ミュージアム)
ベルギー王立美術館コレクション『ベルギー近代絵画のあゆみ』 (損保ジャパン東郷青児美術館)
ルイ・アルタン(ド・サン=マルタン) 「海景」
海辺の港湾の風景で、船が何艘か浮いている様子が描かれています。色は抑えられているように思いますが、微妙な空の色合いを表現していて穏やかな雰囲気があります。ぱっと観た感じでも印象派からの影響を感じる作品でした。(この画家は冬をパリで過ごしていたらしいので、印象派から影響を受けたのは間違いなさそうです。)
フランツ・クルテンス 「陽光の降り注ぐ小道」
縦長での絵で、木々の隙間から光が差し込む並木道が描かれています。上部まで緑が多い、光の明暗が見事です。これも印象派やバルビゾン派の影響を感じる作品でした。解説によると、元々は写実主義だったそうです。
ジェームス・アンソール 「待ち合わせ」
20人会にも参加していたアンソールの作品で、戸の開いた室内でテーブルに向かって座っている黒い帽子と白?のドレスを着た女性が描かれています。室内は少し薄暗く、女性の顔は帽子で隠れて見えていません。テーブルの表面には反射する外の光など写実的な感じもあるのですが、何処か神秘的な静けさを感じました。
ジャン・バティスト・デ・グレーフ 「公園にいるストローブ嬢」 ★こちらで観られます
森を背景に、白い服を着た少女が花束を持ってこちらを観ています。背後に羊がのそっと出てきた感じも可愛いw 全体的に明るい画面で鮮やかな色彩です。解説によるとこの画家は写実主義を守ったそうですが、アカデミックと印象派の間のように見えたかな。
ジェームス・アンソール 「防波堤の女」
薄暗い空の下、防波堤で傘をさしている後ろ向きの女性が描かれています。海を眺めているのかは分かりませんが、少し寂しいと言うか情感があるように思いました。解説によるとクールベのようにパレットナイフを用いて描いていたらしく、さっと描かれたようなタッチが不思議な魅力を出していました。
アルフレッド・ウィリアム・フィンチ 「西フランドルの風景」 ★こちらで観られます
これはかなり細かい点描で描かれた作品です。手前に濃い緑の木々、奥に薄い緑の草原、上部には空が描かれています。緑にはオレンジの点が混ざり、黄緑には黄色や水色、空にもオレンジや白といった別の色が混じっていました。スーラの影響がわかりやすい作品でした。
アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ 「洗濯をする女」
庭で物干しを持ち上げて洗濯物を干す女性が描かれた絵です。全体的に斜線のような(点描を線に伸ばした感じの)表現となっていて、独自の新しい技法でした。荒い木版の彫り跡のような力強い表現に思いました。
解説によると、この人は建築家・デザイナーとして名高い人だそうで、画家としては点描やゴッホ、ゴーギャンに影響を受けたそうです。その後、絵に満足できず応用芸術に向かったとのことでした。
リク・ワウテルス 「白衣の女」
窓の側で座っている画家の妻を描いた肖像画です。少し柔らかいけれど大胆な色彩で、セザンヌの影響を受けているのを感じました。隣にはナビ派を柔らかい色彩にしたような教会の絵もありました。
<第2章 象徴主義とプリミティヴィスム>
2章は象徴主義となっていました。クノップフ、スピアールト、レオン・フレデリックなどの作品が並んでいました。
ジェームス・アンソール 「フランドル通りの軍楽隊」
高い階の部屋から見下ろすように街中の道が描かれています。通りには軍楽隊がパレードをしているようで、人々がぎっしりと川の流れのように行進していました。町の建物は定規で線を引かれたようにきっちりしていて濃い色彩です。それに対して、左側の手前に描かれたベルギー旗などは単純化されたような感じでした。アンソールは色んな画風がありますね…。
フェルナン・クノップフ 「エドモン・クノップフの肖像」 ★こちらで観られます
横向きの男性像で、長らく自画像と考えられていたそうですが、どうやら父親を描いたものす。理知的な紳士の姿から内面まで伝わってきそうです。柔らかく落ち着いた色彩で、象徴主義的な幻想性のある静かな雰囲気が漂っていました。
レオン・スピアールト 「海辺の女」 ★こちらで観られます
暗めの海を見ている黒い服を着た女性の後姿を描いた作品です。ぼーっと浮かぶような女性に神秘性を感じます。解説によると、水平に描かれた水平の手すりには構図の計算があるようです。また、スピアールトは不眠症で夜の海岸をよく徘徊していたとも説明されていましたw 絵はほぼ独学で学んだようです。
この辺にはスピアールトの作品が4枚くらいありました。どれも幻想・神秘という言葉が似合います。
レオン・フレデリック 「咲き誇るシャクナゲ」 ★こちらで観られます
鉢に植えられた赤いシャクナゲが室内の椅子の上に乗せられ、黄色い服の少女が脇でじっと見つめている絵です。葉の緑、花の赤、服の黄色が目に鮮やかで、光と影の使い分けが生き生きとした雰囲気を出しているように思いました。穏やかで幸せそうです。
ヴァレリウス・デ・サデレール 「フランドルの雪景色」 ★こちらで観られます
雪の積もった山村の風景を描いた作品です。一目でピーテル・ブリューゲルの絵を連想させましたが、地平線がやけに低い位置に描かれているところが独特かな。広く描かれた空に沈む太陽のグラデーションは見事で、郷愁を誘いました。人っ子一人いない静かな風景でした。
<第3章 ポスト・キュビスム:フランドル表現主義と抽象芸術>
3章はピカソらが作り上げたキュビスムと、ドイツで生まれた表現主義(画家の主観を通して事象を捉える表現)から影響を受けた画家を紹介するコーナーでした。この章の画家の作風はバラバラだったかな。
グスターヴ・デ・スメット 「パリーの肖像」 ★こちらで観られます
金髪で大きな黒い目の少年が描かれ、背景には海が見えます。全体的に単純化され平面的な感じで、キュビスムからの影響を感じました。解説によると、2次元性を強調するような装飾性や親密感、キュビスム的アプローチの調和を図っているそうです。中々好みの作品でした。
フリッツ・ファン・デン・ベルへ 「人生」
右には暗い街角で手を挙げて叫んでいるような老婆、左には家の中の男の影と横たわる娼婦らしき女、背景には暗い教会が描かれています。直線や三角が多くてキュビスム的な要素を感じます。解説によると、この娼婦は老婆の若い頃ではないか?とのことで、画風にはフランドル表現主義の特徴が出ているとのことでした。 タイトルからして若い頃の成れの果てなのかな?ちょっと怖い教訓めいた作品に思いました。
グスターヴ・ファン・デ・ウーステイネ 「リキュールを飲む人たち」 ★こちらで観られます
一見、3人の男女が食卓を囲んでいるように見える絵です。しかしよく見ると、手前で横を向く男性の手にはパレットと絵筆が握られ、2人の女性は絵の中の人物であることが分かります。ちょっと騙し絵的な要素もあって面白かったです。
<第4章 シュルレアリスム>
最後はお待ちかねのシュルレアリスムのコーナーですが、他の章に比べて少ないように思います。マグリットは3点、デルヴォーは2点といった感じで全部で7点しかありません。しかし、いずれも面白くて素晴らしい作品でした。
ルネ・マグリット 「復讐」
部屋の中でイーゼルに置かれた風景画があり、その絵から雲が部屋にはみ出ているという不思議な光景です。雲が現実に対して「復讐」して絵から逃げているそうです。抜け出た雲は後ろの壁に影を落としているなど、現実と絵の境界が曖昧になるような描写が面白かったです。
ルネ・マグリット 「9月16日」
今回のポスターにもなっている作品です。夕闇の中に一本の木が立ち、その背景にあるはずの三日月が木の前面に回りこんでいるように見えます。この月が無ければ何ということも無い絵ですが、この月があるだけで超現実的な不思議な光景となっているのが面白かったです。流石はマグリットという作品でした。
ポール・デルヴォー 「バラ色の蝶結び」
古代都市のような町と岩山を背景に、虚ろな目をした女が蝶結びのバラ色の大きなリボンを羽織るように観につけています。その周りでも裸の女たちが夢遊病のように立っていて、足元には大きなリボンや骸骨なども落ちていました。 怖い夢の世界のようで、観ているだけで不安な気持ちになってきますw この作品もかなり良かったです。
ポール・デルヴォー 「ウェステンデの海」
これはモノクロの水彩画です。浜辺を描いた静かな風景画で、ボードを見るまでデルヴォーの作品だとは分かりませんでした^^; 微妙な濃淡で描かれていて、油彩のシュールな絵とは違った魅力がありました。
ということで、シュルレアリスムのコーナーがもう少し欲しかったかな。これが中心かと思ってきたので、ちょっと残念…。 とは言え、ベルギーならではの感性を味わえる内容だったのは良かったと思います。
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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
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横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」 【ポーラミュージアム アネックス POLA MUSEUM ANNEX】 (12/26)
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第15回 shiseido art egg 【資生堂ギャラリー】 (12/23)
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映画「マトリックス レザレクションズ」(ややネタバレあり) (12/21)
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ブダペスト国立工芸美術館名品展 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ 【パナソニック汐留美術館】 (12/19)
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鈴木其一・夏秋渓流図屏風 【根津美術館】 (12/16)
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【根津美術館】の紅葉 2021年11月 (12/14)
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カフェラヴォワ 【新宿界隈のお店】 (12/12)
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川瀬巴水 旅と郷愁の風景 【SOMPO美術館】 (12/10)
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【SOMPO美術館】の案内 (12/06)
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小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌 【東京ステーションギャラリー】 (11/30)
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白井晟一 入門 第1部/白井晟一クロニクル 【渋谷区立松濤美術館】 (11/26)
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- 21世紀のxxx者:奇蹟の芸術都市バルセロナ (感想前編)【東京ステーションギャラリー】 (01/03)
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