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陰影礼讃―国立美術館コレクションによる 【国立新美術館】

先週の土曜日に、国立新美術館で「陰影礼讃―国立美術館コレクションによる」を観てきました。

P1140954.jpg

【展覧名】
 陰影礼讃―国立美術館コレクションによる

【公式サイト】
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2010/shadows/index.html

【会場】国立新美術館 企画展示室2E
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2010年9月8日(水)~10月18日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
あまり混むこともなく、自分のペースでゆっくり観られました。展覧会の入口でチケットを買うので、入口あたりだけは混んでたかな。
この展覧会は陰影をキーワードに、「独立行政法人国立美術館」が持つ古今東西の美術品を展示していて、どちらかというと「独立行政法人国立美術館」の名品展といった色あいが強い内容に思いました。独立行政法人国立美術館とは、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館の5館のことのようで、2001年4月に発足して今年で10年目を迎えたようです。その5館であわせて33300点ものコレクションを誇るそうで、今回はその中から100人の画家の170点もの作品が展示されています。 (とは言え、西洋美術館や東京国立近代美術館の作品は常設に展示されている作品も多く出品されているので、よく観る作品もちらほらあります。) 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、今回は解説があまりなかったので、単なる私の感想のみとなりますw


<第1章 影あるいは陰、そして描写>
[影と陰の諸相]
最初は写真のコーナーでした。教会や建物、船などを撮った写真がありましたが、7点と少ないので、ここはあっさり見てメモを取らなかったです^^;

[実在感の創出]
こちらは絵画のコーナーです。陰影で実在感を出すような作品がテーマのようでした。

小出楢重 「裸女と白布」
白いベッドの上で向こうを向いて横たわる裸婦が描かれた作品です。体の表面やベッドの模様に陰影がついていて、色鮮やかさと微妙な表現を楽しめました。
この辺にあった安井曽太郎の裸婦も中々好みでした。

ギュスターヴ・クールベ 「りんご」
どっしりとした感じの林檎が4つ描かれた静物です。特に手前の2個は赤々としていて、形はむしろトマトみたいなw 表面には光沢や影の表現があり、リアリズムを感じました。

速水御舟 「秋茄子と黒茶碗」
金地を背景に2つの茄子と黒茶碗が描かれた静物です。艶やかな光沢と質感があり、茄子には存在感がありました。観た感じで精密描写の頃の作風かな??
 参考記事:速水御舟展 -日本画への挑戦- (山種美術館)


<第2章 具象描写の影と陰>
続いて2章は具象的名描写をした絵画と版画のコーナーでした。主題によって3つの小コーナーに分かれています。

[肖像、または人のいる情景の演出]
まずは人物画のコーナーでした。

浅井忠 「編みもの」
椅子に腰掛けて編み物をする女性像です。窓から差し込む光が半身を照らし、手前は影になっていました。柔らかめの陰影かな。 …そう言えば浅井の源流とも言えるバルビゾン派の作品は少なかったかも。今回の趣旨に合ってる気がするんだけどなあ。

この辺にはギュスターヴ・クールベの「もの思うジプシー女」なども展示されていました。
 参考記事:国立西洋美術館の案内 (常設 2009年10月)

岸田劉生 「古屋君の肖像(草持てる男の肖像)」
今回のポスターにもなっている作品です。草をつまんで持つ男性像は非常に写実的に描かれ、顔のてかりや凹凸による陰影まで観ることが出来ます。無表情なのが逆にリアルな気がw
 参考記事:
  東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)
  没後80年 岸田劉生 -肖像画をこえて (損保ジャパン東郷青児美術館)

松本竣介 「並木道」
全体的に緑がかった作品で、並木のある坂道と、そこを歩く黒い帽子の男性が描かれています。何となくルソーのような雰囲気があり、どこかシュールさすら感じました。
つい最近、岩手でこの人の沢山の作品を観ることが出来たので、ようやく作風を認知できるようになってきましたw
 参考記事:岩手県立美術館の案内 (番外編 岩手)

印藤真楯 「夜桜」
大きな桜やそれを支える柱が、沢山のかがり火で照らされている様子を描いた作品です。桜の周りにはベンチようなものに腰掛けて見物する着物の人々が描かれていました。かがり火の中で浮かび上がる桜が幻想的で、火の光の暖かみも感じました。

平山郁夫 「入涅槃幻想」
これは今回の展覧会でも特に良かった作品です(前はいつ観たか思い出せず…) ぼんやりと黄金に輝く仏陀と、その周りを囲って看取っている無数の人影、白い鳩?や小鳥などを描いています。ぼんやりとしているのが幻想的で、神聖な雰囲気がよく出ていました。素晴らしいです。

この後は版画のコーナーです。ムンク、ロートレック、ドラクロワ、ドーミエ、ジャック・カロなどの作品が並んでいました。

ウジェーヌ・ドラクロワ 「墓に運ばれるキリスト」
洞窟のようなところで、3人の男性に持ち上げられて更に深い地下へと運ばれるキリストを描いた作品です。シャベルと共にたいまつを持った人の周りや、洞窟の入口付近からもれる光などによって、光によって人々に微妙な影が落ちていました。ドラマ性を強めているようで面白かったです。


[風景表現の構成要素]
続いて風景画のコーナーです。

安井曽太郎 「奥入瀬の渓流」
大胆にデフォルメされ、色鮮やかな渓流が描かれています。陰影というよりは光が溢れているような感じに思っていましたw
この辺には、この作品と共に以前ご紹介した黒田清輝の「落葉」などもありました。
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)

浅原清隆 「郷愁」
これはどうして陰影がテーマの本展に出ているのかよく分かりませんが、青い海とやや緑色の空の微妙な色の変化は陰影と言うべきなのかも。シュルレアリスムのような作品です。
 参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2010年05月)

リチャード・ウィルソン 「ディヴォリの風景(カプリッチョ)」
丘の上にある遺跡から見る風景を描いた作品です。向かいの山にも遺跡があり、手前には倒れた円柱なども描かれています。遠くの空の空気感が柔らかく、神々しい感じすらしました。

モーリス・ドニ 「ロスマパモン」
家の裏庭で遊ぶ2人の少年と犬?を描いた作品です。ぺったりとした色合いで描かれ、所々が暗めの影が伸びています。恐らく画面の外に大きな木があるのかな。見えない存在を探してしまいました^^;

この辺はモネの作品などもありました。

アンリ=ジャン=ギヨーム・マルタン 「カオールの橋」
川にかかる橋を描いた作品で、橋の下部は3つのアーチを描いています。水面にもそれが映っていました。柔らかい色合いで、アーチの中の陰影を表現していたのが面白かったです。

東山魁夷 「映象」
暗い夜の湖を描いた作品かな? 周りは暗いのに白い木々が水面に映っている不思議な光景です。 真っ暗だと思っていた背景も、よく見ると森のような形を微妙な陰影で表現していたのが驚きでした。神秘的で好みの作品です。

横山大観 「暮色」
裏に竹林のある農家?を描いた作品で、手前には黒い牛が描かれています。もやなのか霧なのか、黒い朦朧としたものが漂い、情感を出していました。
この作品の隣にあった竹内栖鳳の作品も良かった…。

この後も版画のコーナーがありました。コローやドービニーなどは好みだったかな。


[主張する影、自立した影]
ここはシュルレアリスムのような幻想的な絵が多かったです。

甲斐庄楠音 「幻覚」
紅い着物の女性が踊っている様子を描いた作品です。燃え立つような赤の衣が妖艶さを出していて、踊りでポーズを取る手の影が背景に映り、幻想的…というよりも妖気すら感じました。狐のような顔もまた妖しい。

北脇昇 「クォ・ヴァディス」
荷物を背負って、砂漠のようなところを歩く男性の後姿を描いた作品です。足元にはオウムガイのようなものや、道しるべがあり、彼方では人々の更新や土砂降りの雨など、今後の不安を感じさせる風景となっていました。シュールな感じで好みです。
  参考記事:東京国立近代美術館の案内 (2009年12月)

北脇昇 「独活」
2本のウドと切り株が描かれ、背景はがらんとした地面と空、壁に映るウドの影などが見られます。ウドには血のような色が付いていて、人のような生々しさがありました。これもシュールですが、少し怖さを感じる作品でした。

この辺にはイヴ・タンギーなどもあったかな。シュルレアリスム的なものが集まっていました。その後はまた版画で、ゴヤやドラクロワ、ドーミエ、クリンガー、ムンクなどの作品が並んでいました。

藤森静雄 「『月映』Ⅱより《こころのかげ》」
耳をふさいで立つ人が抽象化されたような版画です。何かにおびえるような怖さを感じる版画でした。


<第3章 カメラが捉えた影と陰>
続いては部屋一面に並んだ写真のコーナーです。ほぼ白黒の作品で、陰影がよく出ているものばかりでした。

アンドレ・ケルテス 「マルティニーク、1972年1月1日」
ベランダから海を望むような感じの構図ですが、そこに写っているのは人の影だけで、実際の人はいないのが面白いです。まるで影が海を見ているようでした。

篠山紀信 「<熱い肉体>より」
両手を挙げ、足を後ろに折り曲げるほど強くジャンプしているような少年(少女?)と、走っているような少年を撮った写真です。ほとんど影絵のようなシルエットだけですが、力強く生き生きとしたものを感じました。

アレクサンドル・ロトチェンコ 「階段」
今回のポスターにもなっている作品です。これはつい最近に庭園美術館でも観たような気がします。子供を抱えて階段を登る母親を撮った写真で、階段の影が斜めにリズミカルに並んでいるのが面白いです。ロトチェンコはこういう発想があったからデザインの仕事も素晴らしいのかも。
ロトチェンコはこの他にも「ライカを持つ女」もありました。
 参考記事:ロトチェンコ+ステパーノワーロシア構成主義のまなざし (東京都庭園美術館)

畠山直哉 「アンダーグラウンド」
写真のコーナーでカラーだったのはこれだけかも。これは3枚あった作品で、地下の下水道の風景のようでした。ガランとして殺風景な空間があり、照明をつけているところだけが明るくなっていました。洞窟に入ったような感じすらします。


<第4章 影と陰を再考する時代>
最後の章は、現代美術を中心に概念などを通じた陰影表現のコーナーとなっていました。

[概念的な思考]
まず最初にマルセル・デュシャンのインスタレーションが展示されていて、自転車の車輪や、宙に釣られた雪かき用のシャベルや帽子かけに光を当てて、会場に影を落としていました。中々シュールな雰囲気で面白かったです。

高松次郎 「影」
この章を少し進むと高松次郎のコーナーでした。これは巨大な円筒形の側面に描かれた壁画のような作品で、白地に薄っすらと本物の影のような人物の形が描かれています。煙草を吸ったり、話をしたり、髪を押さえたりと行動は様々です。この作品を展示している部屋の暗さと影の具合がちょうど良くて、鑑賞者の影が映っているような錯覚を覚えたのが楽しかったです。(煙草を吸っている姿とか、ちょっと驚きましたw)
この辺にはこの作品のための下絵(メモ入り)や習作などもありました。細かく格子状に区切られた枠の中に描かれていたのが興味深かったです。
 高松次郎の参考記事
  トリック・アートの世界展 -だまされる楽しさ- (損保ジャパン東郷青児美術館)
  奇想の王国 だまし絵展 感想後編 (Bunkamuraザ・ミュージアム)

アンディ・ウォーホル 「マリリン」
マリリン・モンローの写真にカラフルな色をつけたような作品が4つならんだものです。ポップでウォーホルらしい作風に思いますが、これを陰影と言えばいいのかな?w
この辺にはリキテンスタインも何枚かありました。


[同時代の美術から]
最後は現代アートのコーナーでした。もはや陰影なのかも分からない作品もあったようなw

秋岡美帆 「ながれ」「よどみ」「そよぎ」
大きな3枚セットの作品です。これもつい最近観た記憶があるのですが思い出せず…。緑の画面のなかで少しずつ色を変えて流れのようなものを表現していました。緑のせいか結構爽やかな印象もうけました。

クシシュトフ・ヴォディチコ 「もし不審なものを見かけたら……」
最後は映像作品です。真っ暗な部屋に5つの縦長の窓のようなものが映され、いずれも薄い幕でもあるように(白カーテンを通したように)窓の外がぼやけて見えます。 窓の外では窓拭きをしたり、携帯で話している様子が分かりますがクリアには見えませんでした。会場にはその音も流れてくるので、ちょっとリアルかも


ということで、ジャンルや作風など多岐に渡りますが、良質の作品ばかりで満足しました。解説はあまり多くないですが、テーマを気にしないほうが楽しめるかもw これを見逃したらもう観られない!というわけではないと思いますが、一気にあれこれ観られるので、普段あまり美術館に足を運ばない方には多くの画家を知る機会になるのではないかと思います。

おまけ:
この日、会場の出口で国立新美術館に関するアンケートをやっていて、それに答えたらオリジナルグッズを貰えました。結構な問数でしたがこれは嬉しいかも。今後とも日本の美術界を牽引するよう頑張って頂きたいものです。
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