田中一村 新たなる全貌 (感想前編)【千葉市美術館】
つい今日のことですが、千葉市美術館に行って「田中一村 新たなる全貌」を観てきました。この展覧会は田中一村の生涯を辿るような内容で、かなりのボリュームとなっていましたので、前編・後編に分けて詳しくご紹介しようと思います。

【展覧名】
田中一村 新たなる全貌
【公式サイト】
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2010/0821/0821.html
【会場】千葉市美術館
【最寄】千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など
【会期】2010年8月21日(土)~9月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(平日15時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
今週はシルバーウィークとは言え、今日は平日にも関わらず老若男女で混みあっていて、場所によっては人だかりができるくらいでした。先週の新日曜美術館で放送されたのと会期末が近いためかな?(周る順序を変えれば自分のペースで観ることができたので、めちゃくちゃ混んでいるというほどではありません。)館員さんが夕方の方が空いていると言っていたのを聞いたのですが、確かに17時を過ぎた頃にはだいぶ空いているようでした。鑑賞時間とのバランスを考えて狙ってみるのも良いかと思います。
さて、今回の内容についてですが、スケッチや画帖も含めて250点近くの展示品が並ぶ充実の内容となっていました。そもそも田中一村って誰?という人も多いかと思いますので、冒頭にあった概略をご紹介しようと思います。
田中一村は1908年に栃木で木彫家の息子として生まれました。子供の頃に東京に移り住み、その頃には「米邨」という父親の名前にちなんだ画号を使って画才を見せていたようですが、父の手ほどきのみで特定の師はいなかったそうで、自力で南画の技法を取得したそうです。 その後、東京美術学校の日本画科に入学しましたが、2ヶ月で自主退学してしまいました。 昭和13年(1938年 30歳くらい)になると千葉市に移り住み、千葉の自然を描いた作品を残しました。昭和22年(1947年 40歳くらい)には初めて「青龍展」で入選しましたが、その後の公募展は落選続きで切り詰めた生活をしていたようです(この展覧会ではあまり説明されていませんが、落選した自分の絵を燃やしてしまったエピソードを先日の新日曜美術館で紹介していました。) 千葉には20年ほど住んでいましたが、昭和33年(1958年 50歳くらい)に沖縄の奄美大島に移り、染色工として働きながら絵を描いていたそうです。生前はあまり評価されず69歳で亡くなったのですが、没後の1980年にテレビ番組(日曜美術館?)で紹介されたことで注目を浴びて、ブームとなったそうです。
と、こんな感じで大きく分けて東京、千葉、奄美で活動していたようです。そのため、展覧会も住んでいた場所で3章構成になっていました。 また、今回の展覧会は生誕100余年のタイミングでしっかりとした調査を行い、一過性のブームで終わらせないという意気込みも感じる内容で、新出の作品を含んだ濃厚な展覧でした。 …さらに詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、似たような作品名が多いので作品番号を記載しておきます。
<第1章 東京時代>
この章は少年時代から千葉に引っ越すまでの東京時代の作品が並んでいました。なんと「八童米邨」と署名された8歳(数え年)の頃の作品から並んでいて、その神童ぶりを伺わせました。
3 田中一村(米邨) 「白梅図」
これは「九童米邨」と署名があるので、9歳の頃の作品かな? 花の付いた梅の木が描かれた作品です。軽やかに描かれた梅はどう観ても子供が描いた絵じゃない!w 小さな時から画才があったことがよく分かる作品でした。
この辺には短冊状の8歳の頃の作品もありました。
7 田中一村(米邨) 「泥中君子図」
これは14歳の頃の作品です。墨の濃淡で簡略化された蓮が描かれた絵で、タイトルは泥の中に生まれながら清らかであるという意味があるようです。これまた14歳とは思えない完成度の高さです。
14 田中一村(米邨) 「蘇鉄図」
U字に折れたような幹のソテツ(南国の植物)が2本描かれた作品です。葉っぱは軽やかに描かれていて、風に揺れるようです。それに対して幹はモコモコした感じを受けたかな。解説によると、これは中国の画家の花卉図という作品に倣ったそうで、淡墨の筋目描きの技法を使っているようでした。
34 田中一村(米邨) 「蘭竹図」
裏と面が見られる衝立の作品です。片面は赤、白、黄、ピンクなどの色で描かれた、大きな牡丹の花と緑の葉っぱが何とも鮮やかな色合いです。また、青い太湖石という大きな石?も描かれ色の対比が強烈でした。よく見ると花の皺や花弁までも細かく描かれていたのも見事。 それに対してもう片面は、墨の濃淡で描かれた竹や草花で、力強く勢いを感じる筆遣いでした。左上には漢文もあったかな。 色彩と濃淡が両面となっているのが対比的な作品でした。
この辺にあった説明によると、東京美術学校を2ヶ月で辞めた際、理由は「家事都合」と言っていたそうです(諸説ありそうですが) また、その年は沢山の作品を描いていて、政界・財界の人を含む人々から注文を受けるなど、彼の作品の需要は広がっていったようです。画風については南画を踏襲しつつも描線の強さや色彩の鮮やかさに彼の個性があるそうで、腕前や需要はこの頃にピークを迎えたと解説されていました。 この辺りにはそうした時代の作品が展示され、特に吉祥の意味を持つ草花を描いた掛け軸がずらっとならんでいました。
35 田中一村(米邨) 「富貴図」
この展覧会のための調査で確認された新出の屏風です。2つ屏風が並んで展示されていたので一双なのかな(多分) 左隻?には金地を背景に青い木?に入った赤やピンクの牡丹と白い水仙らしき花が描かれていて、その色使いが鮮やかで強い感じを受けました。それに対して右(右隻?)の絵は、金地を背景に描かれた竹や草木など、ダイナミックな筆運びを感じさせました。
この辺にあった解説によると、昭和5~6年(1930年くらい)になると、それまでの見事な上海画壇風の作品はぷっつりとなくなったそうで、ちょうど日中関係の悪化と時期が重なるようです。23歳の頃(1931年くらい)に新しい画風を支持者に見せたところ、賛成者は無かったそうで、支援者たちと絶縁しアルバイトで病気の家族を養う道を選んだようです。この時期は空白の時期と考えられていたそうですが、実際には多様な画風を試していた時期で、この辺りには多彩な画風の作品が並んでいました。
38 田中一村(米邨) 「水辺にめだかと枯蓮と蕗の薹」
これが新しい作風として支援者に見せた作品です。枯れている蓮とその周りに集まるメダカの影が描かれ、土手には緑の草(フキノトウ?)なども観られます。 全体的に淡く、上部の草は背景に溶け込みそうな感じで、確かに今までとは少し違って見えました。これも良い作風だと思うんですけどねえ…。
この近くには精密描写のような作品もありました。
41 田中一村(米邨) 「鶏頭図」
細長く縦に長い作品で、鶏頭という先端が鶏のとさかのような紅い植物を描いています。上部のとさかのような部分は細かくかかれ、毛のような細かさです。一方、色は意外と落ち着いていてこれまでのような強烈さはあまり感じませんでした。
44 田中一村(米邨) 「秋色」
これも縦長の絵です。紅葉に染まる様々な色の葉っぱが描かれていて、透けるような薄めの色ですが鮮やかな印象を受けます。この頃に色々な画風を模索しているのを感じる作品でした。
<第2章 千葉時代>
30~50歳までは千葉で過ごしたようで、畑仕事や鳥を飼ったりしながら手仕事もやるという感じで生活していたそうです。この頃は鳥を飼っていたせいか、鳥を描いた作品も多く並んでいました。 また、江戸以降の南画に興味を寄せている時期でもあったようでした。
なお、この章は米邨時代と田中一村の時代の作品があるので、このブログでは田中一村の表記で統一しておきます…。
47 田中一村 「蓬洲瑞靄図」
仙人が出てきそうな霧が立ち込める山の中に、赤い楼閣が建っている様子が描かれた作品ですこれもまた以前とは違う画風に思えるかな。 解説によると、中国の古画を参考にしつつ、装飾的な要素もあるようで、この頃の院展の「朦朧体」も意識しているそうです。
53 田中一村 「桐葉に尾長鳥」
黒っぽい緑の大きな葉っぱと、その茎にとまっている4羽の尾長鳥を描いた作品です。心なしか単純化され大胆な印象を受けました。
この辺は鳥のスケッチや木々を描いた作品が多く、鳥類の画帖などは動きを感じる仕草で描かれていました。
117 田中一村 「白衣観音図」
岩の上で座っている白衣の観音像を描いた掛け軸です。静かな感じでどこともわからない視線が神聖な雰囲気でした。 これは終戦直後に3ヶ月かけて百数十枚の描き損じと手持ちの画紙のほとんどを費やしてやっと完成したそうで、かなりの力作のようでした。
この辺は観音や十六羅漢の絵が並んでいて、この作品と同じタイトルで似た作品も後のほうにもありましたが、全体的に一村の仏画は少なそうでした…。
124 田中一村 「木魚(米邨作)」
これは絵ではなく、木魚そのものです。父に木彫りの手ほどきを受けていたようで、こうした木魚などもこの頃の収入源となっていたようです。左右対称の優美な幾何学模様で、その器用さや感性が伺えました。近くには根付も展示されていたので、木彫も得意だったようです。
54 田中一村 「秋色」
細い杉が横に沢山並んでいる並木道を描いた作品です。右のほうには馬がいて、のんびりした牧歌的な雰囲気です。また、空には雲が立ち込めていて、その陰影が強いせいか力強い印象も受けたかな。また画風が変わったような気もしました。
この辺にはこうした千葉の風景画がずらっと並んでいます。当時を知る人が観ればどの辺と分かるそうで、実際に観た風景を描いていたようです。
64 田中一村 「山の田」
山と森の合間にある田んぼで、牛に農具を引かせている農夫が描かれた風景画です。人と牛の大きさから木々や山の大きさを感じ、緑がかった画面からは爽やかさを感じました。
ここら辺で上の階は終わりで、下の階に移動します。まだ2章の千葉時代は続きますが、下の階からは米邨から田中一村に画号を変えた時代になりますので、今日はここまでで区切ろうと思います。次回は、この展覧会のメインディッシュとも言える奄美時代の作品を含んだ後編をご紹介しようと思います。


【展覧名】
田中一村 新たなる全貌
【公式サイト】
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2010/0821/0821.html
【会場】千葉市美術館
【最寄】千葉駅(JR・京成)京成千葉中央駅(京成) 葭川公園駅(千葉都市モノレール)など
【会期】2010年8月21日(土)~9月26日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
2時間00分程度
【混み具合・混雑状況(平日15時頃です)】
混雑_1_②_3_4_5_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_4_⑤_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_3_④_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
今週はシルバーウィークとは言え、今日は平日にも関わらず老若男女で混みあっていて、場所によっては人だかりができるくらいでした。先週の新日曜美術館で放送されたのと会期末が近いためかな?(周る順序を変えれば自分のペースで観ることができたので、めちゃくちゃ混んでいるというほどではありません。)館員さんが夕方の方が空いていると言っていたのを聞いたのですが、確かに17時を過ぎた頃にはだいぶ空いているようでした。鑑賞時間とのバランスを考えて狙ってみるのも良いかと思います。
さて、今回の内容についてですが、スケッチや画帖も含めて250点近くの展示品が並ぶ充実の内容となっていました。そもそも田中一村って誰?という人も多いかと思いますので、冒頭にあった概略をご紹介しようと思います。
田中一村は1908年に栃木で木彫家の息子として生まれました。子供の頃に東京に移り住み、その頃には「米邨」という父親の名前にちなんだ画号を使って画才を見せていたようですが、父の手ほどきのみで特定の師はいなかったそうで、自力で南画の技法を取得したそうです。 その後、東京美術学校の日本画科に入学しましたが、2ヶ月で自主退学してしまいました。 昭和13年(1938年 30歳くらい)になると千葉市に移り住み、千葉の自然を描いた作品を残しました。昭和22年(1947年 40歳くらい)には初めて「青龍展」で入選しましたが、その後の公募展は落選続きで切り詰めた生活をしていたようです(この展覧会ではあまり説明されていませんが、落選した自分の絵を燃やしてしまったエピソードを先日の新日曜美術館で紹介していました。) 千葉には20年ほど住んでいましたが、昭和33年(1958年 50歳くらい)に沖縄の奄美大島に移り、染色工として働きながら絵を描いていたそうです。生前はあまり評価されず69歳で亡くなったのですが、没後の1980年にテレビ番組(日曜美術館?)で紹介されたことで注目を浴びて、ブームとなったそうです。
と、こんな感じで大きく分けて東京、千葉、奄美で活動していたようです。そのため、展覧会も住んでいた場所で3章構成になっていました。 また、今回の展覧会は生誕100余年のタイミングでしっかりとした調査を行い、一過性のブームで終わらせないという意気込みも感じる内容で、新出の作品を含んだ濃厚な展覧でした。 …さらに詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。なお、似たような作品名が多いので作品番号を記載しておきます。
<第1章 東京時代>
この章は少年時代から千葉に引っ越すまでの東京時代の作品が並んでいました。なんと「八童米邨」と署名された8歳(数え年)の頃の作品から並んでいて、その神童ぶりを伺わせました。
3 田中一村(米邨) 「白梅図」
これは「九童米邨」と署名があるので、9歳の頃の作品かな? 花の付いた梅の木が描かれた作品です。軽やかに描かれた梅はどう観ても子供が描いた絵じゃない!w 小さな時から画才があったことがよく分かる作品でした。
この辺には短冊状の8歳の頃の作品もありました。
7 田中一村(米邨) 「泥中君子図」
これは14歳の頃の作品です。墨の濃淡で簡略化された蓮が描かれた絵で、タイトルは泥の中に生まれながら清らかであるという意味があるようです。これまた14歳とは思えない完成度の高さです。
14 田中一村(米邨) 「蘇鉄図」
U字に折れたような幹のソテツ(南国の植物)が2本描かれた作品です。葉っぱは軽やかに描かれていて、風に揺れるようです。それに対して幹はモコモコした感じを受けたかな。解説によると、これは中国の画家の花卉図という作品に倣ったそうで、淡墨の筋目描きの技法を使っているようでした。
34 田中一村(米邨) 「蘭竹図」
裏と面が見られる衝立の作品です。片面は赤、白、黄、ピンクなどの色で描かれた、大きな牡丹の花と緑の葉っぱが何とも鮮やかな色合いです。また、青い太湖石という大きな石?も描かれ色の対比が強烈でした。よく見ると花の皺や花弁までも細かく描かれていたのも見事。 それに対してもう片面は、墨の濃淡で描かれた竹や草花で、力強く勢いを感じる筆遣いでした。左上には漢文もあったかな。 色彩と濃淡が両面となっているのが対比的な作品でした。
この辺にあった説明によると、東京美術学校を2ヶ月で辞めた際、理由は「家事都合」と言っていたそうです(諸説ありそうですが) また、その年は沢山の作品を描いていて、政界・財界の人を含む人々から注文を受けるなど、彼の作品の需要は広がっていったようです。画風については南画を踏襲しつつも描線の強さや色彩の鮮やかさに彼の個性があるそうで、腕前や需要はこの頃にピークを迎えたと解説されていました。 この辺りにはそうした時代の作品が展示され、特に吉祥の意味を持つ草花を描いた掛け軸がずらっとならんでいました。
35 田中一村(米邨) 「富貴図」
この展覧会のための調査で確認された新出の屏風です。2つ屏風が並んで展示されていたので一双なのかな(多分) 左隻?には金地を背景に青い木?に入った赤やピンクの牡丹と白い水仙らしき花が描かれていて、その色使いが鮮やかで強い感じを受けました。それに対して右(右隻?)の絵は、金地を背景に描かれた竹や草木など、ダイナミックな筆運びを感じさせました。
この辺にあった解説によると、昭和5~6年(1930年くらい)になると、それまでの見事な上海画壇風の作品はぷっつりとなくなったそうで、ちょうど日中関係の悪化と時期が重なるようです。23歳の頃(1931年くらい)に新しい画風を支持者に見せたところ、賛成者は無かったそうで、支援者たちと絶縁しアルバイトで病気の家族を養う道を選んだようです。この時期は空白の時期と考えられていたそうですが、実際には多様な画風を試していた時期で、この辺りには多彩な画風の作品が並んでいました。
38 田中一村(米邨) 「水辺にめだかと枯蓮と蕗の薹」
これが新しい作風として支援者に見せた作品です。枯れている蓮とその周りに集まるメダカの影が描かれ、土手には緑の草(フキノトウ?)なども観られます。 全体的に淡く、上部の草は背景に溶け込みそうな感じで、確かに今までとは少し違って見えました。これも良い作風だと思うんですけどねえ…。
この近くには精密描写のような作品もありました。
41 田中一村(米邨) 「鶏頭図」
細長く縦に長い作品で、鶏頭という先端が鶏のとさかのような紅い植物を描いています。上部のとさかのような部分は細かくかかれ、毛のような細かさです。一方、色は意外と落ち着いていてこれまでのような強烈さはあまり感じませんでした。
44 田中一村(米邨) 「秋色」
これも縦長の絵です。紅葉に染まる様々な色の葉っぱが描かれていて、透けるような薄めの色ですが鮮やかな印象を受けます。この頃に色々な画風を模索しているのを感じる作品でした。
<第2章 千葉時代>
30~50歳までは千葉で過ごしたようで、畑仕事や鳥を飼ったりしながら手仕事もやるという感じで生活していたそうです。この頃は鳥を飼っていたせいか、鳥を描いた作品も多く並んでいました。 また、江戸以降の南画に興味を寄せている時期でもあったようでした。
なお、この章は米邨時代と田中一村の時代の作品があるので、このブログでは田中一村の表記で統一しておきます…。
47 田中一村 「蓬洲瑞靄図」
仙人が出てきそうな霧が立ち込める山の中に、赤い楼閣が建っている様子が描かれた作品ですこれもまた以前とは違う画風に思えるかな。 解説によると、中国の古画を参考にしつつ、装飾的な要素もあるようで、この頃の院展の「朦朧体」も意識しているそうです。
53 田中一村 「桐葉に尾長鳥」
黒っぽい緑の大きな葉っぱと、その茎にとまっている4羽の尾長鳥を描いた作品です。心なしか単純化され大胆な印象を受けました。
この辺は鳥のスケッチや木々を描いた作品が多く、鳥類の画帖などは動きを感じる仕草で描かれていました。
117 田中一村 「白衣観音図」
岩の上で座っている白衣の観音像を描いた掛け軸です。静かな感じでどこともわからない視線が神聖な雰囲気でした。 これは終戦直後に3ヶ月かけて百数十枚の描き損じと手持ちの画紙のほとんどを費やしてやっと完成したそうで、かなりの力作のようでした。
この辺は観音や十六羅漢の絵が並んでいて、この作品と同じタイトルで似た作品も後のほうにもありましたが、全体的に一村の仏画は少なそうでした…。
124 田中一村 「木魚(米邨作)」
これは絵ではなく、木魚そのものです。父に木彫りの手ほどきを受けていたようで、こうした木魚などもこの頃の収入源となっていたようです。左右対称の優美な幾何学模様で、その器用さや感性が伺えました。近くには根付も展示されていたので、木彫も得意だったようです。
54 田中一村 「秋色」
細い杉が横に沢山並んでいる並木道を描いた作品です。右のほうには馬がいて、のんびりした牧歌的な雰囲気です。また、空には雲が立ち込めていて、その陰影が強いせいか力強い印象も受けたかな。また画風が変わったような気もしました。
この辺にはこうした千葉の風景画がずらっと並んでいます。当時を知る人が観ればどの辺と分かるそうで、実際に観た風景を描いていたようです。
64 田中一村 「山の田」
山と森の合間にある田んぼで、牛に農具を引かせている農夫が描かれた風景画です。人と牛の大きさから木々や山の大きさを感じ、緑がかった画面からは爽やかさを感じました。
ここら辺で上の階は終わりで、下の階に移動します。まだ2章の千葉時代は続きますが、下の階からは米邨から田中一村に画号を変えた時代になりますので、今日はここまでで区切ろうと思います。次回は、この展覧会のメインディッシュとも言える奄美時代の作品を含んだ後編をご紹介しようと思います。
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