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MOMASコレクションⅡ 【埼玉県立近代美術館】

アンドリュー・ワイエス展を観た後、埼玉県立近代美術館の常設展(MOMASコレクションⅡ)を観てきました。この美術館では常設のことをMOMASコレクションと名づけて、期間が決まっているようです。

P1150342.jpg P1150348.jpg

【展覧名】
 MOMASコレクションⅡ

【公式サイト】
 http://www.momas.jp/4.htm

【会場】埼玉県立近代美術館
【最寄】北浦和駅
【会期】2010年7月17日(土) ~ 10月17日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日16時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
館内は空いていて、自分のペースでゆっくり観ることが出来ました。
いつもそうですが、ここは館内で白黒の絵葉書のような詳細な解説がもらえるのが非常に親切です。 いくつか気に入った作品をご紹介しようと思います。
 参考記事:MOMASコレクション3 (埼玉県立近代美術館)


<1 光と風の贈り物>
最初は光と風をテーマにしたコーナーで、古今東西の絵画作品が中心でした。

秋岡美帆 「ゆれるかげ」
最近よく出会う秋岡美帆の作品で、タイトルのようにぼんやりとした影がざわめいているような作品です。いくつか同じような作品を観たことがあり、どうやって描いているのだろう?と思っていたのですが、これは地面に映った樹木の影を、ピントをずらしてスローシャッターで撮影した画像を、「NECO」というコンピューターを使った技法で麻紙に定着させたものだそうです。拡大転写だったのですね。本当にゆらいでいるような感じを受ける作品でした。
 参考記事:陰影礼讃―国立美術館コレクションによる (国立新美術館)

岸田劉生 「路傍初夏」 ★こちらで観られます
濃い色彩で土の道、青空、緑の木々が描かれた作品です。色の対比のせいか明るく、生き生きとした印象を受けました。これを描いていた頃は療養をしていた時代だそうですが、岸田劉生の充実期にあたるそうです。この作品はその中でも会心の作として自選画集にも載っているほどなのだとか。

この辺にはモネが2枚展示されていました。(2点とも以前ご紹介しましたので詳細は割愛) 実は「ルエルの眺め」はワイエス展の出品作品と同じく「丸沼芸術の森」の所蔵作品のようです。

モーリス・ドニ 「トレトリニェルの岩場」 ★こちらで観られます
岩場で水遊びをしている子供や女性たちを描いた作品です。石を投げようとしている子や、水に入ろうとしている子、大波に顔を隠す仕草の女性など様々に過ごしているようです。全体的に平面的で、波などは装飾的な感じをうけるかな。この波の表現は日本の浮世絵の影響と解説されていました。

瑛九 「希望」
今回の展示では瑛九の作品が随所で見られました。これは白黒で抽象画のように見えますが、写真の一種です。写真と言ってもカメラを使わない「フォトグラム」という方法で作られていて、これはマン・レイなども使っていた技法です。(マン・レイのレイヨグラフのことです) 何となく人間の形をしているように思ったのですが、これは人物の型紙や針金などを使って作成したようでした。写真なのに抽象的・幻想的というのが面白いです。
 参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)

ジェームズ・ダレル 「テレフォン・ブース(コール・ウェイティング)」
これは5分くらいの体験型の作品で、体験する際は係員の方にその旨伝えて、順番を待ちます。この日は空いてたのですぐ体験できました。 タイトルの通り、電話ボックスくらいの箱に入って立つと、半円状のスクリーンのようなものがあり、そこに青、赤、紫といった色が映し出されます。たまに凄い勢いで点滅をするので、体調が悪い人などは体験できませんw 本当にチカチカが激しくて、幾何学模様のようなものが眼に焼きついた気がします。 解説によると、これは光を知覚する自分自身を感じるための部屋なのだとか。ずっと点滅を見ていると、光って何だっけ?という感じでゲシュタルト崩壊のような気分になりましたw


<2 天空の彼方へ>
続いては宇宙や天体をテーマにした作品のコーナーです。ここは戦後の日本人の作品ばかりでした。

瑛九 「宇宙」
瑛九の晩年の作で、点描で描かれた抽象的な絵です。色とりどりの点が沢山あるのですが、意味ありげに真ん中が黒くなっていたのが気になりました。独自の宇宙観なのかな? 近くにはこれと似た作風で同じ頃に描かれた「雲」という作品もありました。

奥山民枝 「ゆらぐ」
大きな作品で、ぼんやりとした色彩で虹だけを描いた絵です。空気に溶け込むように淡く、繊細で神秘的な感じを受けました。
そういえば以前にこの人の日食?の作品を観たのを思い出しました。
 参考記事:ヴェルナー・パントン展 (東京オペラシティアートギャラリー) ※同時開催で奥山民枝展

志水児玉 「緯度35度48分14.648秒/緯度139度29分32.32秒」
網目(スプリング状?)というか、光のグラフのような作品が4点並んでいました。どういう意味かは分かりませんでしたが、幾何学的な形が綺麗でした。

野村仁 「太陽7月」
暗闇の中、弧を描いて輝く刀のような形の線が2本、向かい合うように並んだ写真作品です。…実はこれはピンホールカメラで日の出から正午までの太陽の軌跡(左)と、正午から日没までの太陽の軌跡(右)を撮ったものです。この人の作品はこうした通常の目では見られないような天体の姿を見せてくれるのが非常に面白いです。 科学的な要素と美術的な要素の両方を感じる作品でした。
 参考記事:野村仁 変化する相―時・場・身体 (国立新美術館)


<3 美術館物語:すわってみる・さわってみる>
この美術館は「椅子の美術館」としても名高いのですが、今回は1つのコーナーとして椅子を展示していました。一部を除いて、実際に座ることができます!

チャールズ・レニー・マッキントッシュ 「ヒルハウス1」
長いハシゴのような背もたれの椅子です。中々すわり心地もいいです。 これは結構有名かな。同じデザインの椅子がヤフーで売ってたりしますw
 参考リンク:マッキントッシュデザイン ヒルハウスチェア

オリヴィエ・ムルグ 「ジン(アームチェア)」
赤いクッションで包まれた柔らかなフォルムの椅子です。座るとふんわりした感じかな。お洒落な感じです。

梅田正徳 「月苑」 ★こちらで観られます
これは月明かりの庭に咲く桔梗をイメージした椅子で、巨大な赤い花の中に腰をかけるような感じのデザインです。花びらの部分が肘掛になっているのですが、これが絶妙で座り心地も思った以上に良かったです。発想も面白いし、かなり気に入りました。


<4 陶芸の前衛運動から>
最後は現代の陶芸のコーナーでした。

鈴木治 「二頭立」
爽やかな色の青磁かな。足の付いた馬を形式化したような形の陶器と、車の車輪部分のような形をした陶器のセットでした。素材は昔の磁器のようでしたが現代的なデザインで面白かったです。この隣にも「朱夏の雲」というハートみたいな形の作品があり、点数は少ないものの個性的で良かったです。


ということで、今回も中々楽しめました。特に椅子のコレクションは難しいことを考えなくても楽しめるのではないかと思います。椅子好きの方にはこの美術館はたまらないと思います。
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はじめまして
21世紀のxxx者さん
はじめまして
ブログいつも参考にさせていただいております
ブログとても気に入りましたのでリンクさせていただきました
先週、東郷美術館とポーラ美術館に出かけてきました
私も雑多なブログをやっていまして、その中で美術館の
記事を少しづつ増やしていく予定です
よろしくお願いいたします

Re: はじめまして
>うさみさん
はじめまして! コメントとリンクを頂きありがとうございます。
いろいろなことに関心を持たれているようですね。私からもリンクを張らせて頂きました。
奇遇にも私も先週、ポーラ美術館でアンリ・ルソー展を観てきました。
これも近いうちにまた記事にしようよ思います。
今後ともよろしくお願いします^^
今後ともよろしくお願いします
ありがとうございました
記事楽しみにしております 
私は9/25に行ったのですが、天気予報が外れて晴れて楽しめました
今後ともよろしくお願いします(u_u)
Re: 今後ともよろしくお願いします
>うさみさん
私が行った時も晴れてました。あの辺は屋外まで楽しめる美術館も色々あるので、晴れてたほうが嬉しいですね

今後ともよろしくです(>_<)
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