関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

黙示録―デューラー/ルドン 【東京藝術大学大学美術館】

前回ご紹介した黒田記念館の後、東京藝術大学大学美術館にハシゴして「黙示録―デューラー/ルドン」を観てきました。

P1150903.jpg

【展覧名】
 黙示録―デューラー/ルドン

【公式サイト】
 http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2010/apocalypse/apocalypse_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)など


【会期】2010年10月23日(土)~12月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間50分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時半頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
そんなに混んでいませんでしたが、そこそこお客さんが入っているようでした。同時開催で「明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山」も開催されていて、私はセット券で2つとも観てきました。

この展示は先日ご紹介した国立西洋美術館の「アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然」展の関連企画となっていて、デューラーに関しては西洋美術館の展示と同じく、メルボルン国立ヴィクトリア美術館の所蔵品となっています。

展示内容についてですが、「ヨハネの黙示録」をテーマにした版画を集めたものとなっています。私は黙示録については何度か読んでいるので馴染みがありますが、展覧会の中では内容についての説明はあまり無いので、知らない人は苦労するかもしれません。(聖書の引用などはありますが、その場で理解するのは難しいかと) 各場面の様子を描いた作品ばかりなので、行く前に黙示録の内容を把握しておいた方が楽しめる展示だと思います。(黙示録の話は結構長いので、この記事でも省略します。)
 参考リンク:ヨハネの黙示録のwikipedia (これもあまり詳しくないですが…)

章は大きく4つに分かれていて、デューラーの「黙示録」の連作を中心に、その前後の時代と後世への影響をテーマにしていました。詳しくは気に入った作品と共に章ごとにご紹介しようと思います。


<プロローグ デューラー以前の黙示録図像>
まず最初はデューラー以前の黙示録図像のコーナーとなっていました。入口には1470年代のヨハネとマリアの木像がおかれ、なかなか良い雰囲気が出ていました。

作者不明(推定制作地:ドイツ) 「最後の審判の時を告げる天使」(木版本『黙示録』第4版 第27葉上部より)
ちょっと漫画のような画風の作品です。人々と頭上の天使が単純化されて描かれ、どことなくほのぼのした感じすらしました。
この辺には何枚かこれと同じような作品が並び、黙示録の様子を描いた写本なども5冊くらい展示されています。まあ、デューラー以前はこんな感じかーってくらいで流し観してしまいましたw


<第1章 デューラー《黙示録》>
続いて、今回のタイトルにもなっているデューラーの「黙示録」のコーナーですが、意外と少なくて、作品リストを確認すると16点くらいしかありません。解説によると、「黙示録」の出版は下絵制作から印刷まですべてデューラー自身が監督していたらしく、それゆえ様々な革新があったようです。書籍形式で刊行されたのも当時では異例だったのだとか。これも西洋美術館の「大受難」のように当時最新の活版印刷の技術を使って多くの人に観てもらおうとしたのかも。
 参考記事:アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然 (国立西洋美術館)

アルブレヒト・デューラー 「神の玉座を囲む24人の長老」
神らしき存在と、それを囲む24人の人物を描いた作品です。数えるのも大変なくらいぎっしりと人々が描かれていますが、多分24人ですw 人々は天上で円を組むように配され、その下には水辺の町や木々の風景も広がっていました。神々しさを伝えているようでした。

アルブレヒト・デューラー 「第五および第六の封印を切る」
ぐにゃっとしたカエデというか、ヒトデのようなものが天から降ってきて、人々が慄いている様子が描かれた作品です。天上には天使に助けを請うような人々も描かれ、まさに大災害の恐怖といった感じです。中々怖さを感じる作品です。

アルブレヒト・デューラー 「ラッパを吹く七人の天使」
細長い管のラッパを吹く天使たちが描かれた作品です。上部中央にいるのは神でしょうか…。空から星が降ってきたり、海が荒れていたりと、これまた天使による浄化の真っ最中という感じで、不信心者は大変なことになってそうです。黙示録の一番怖い辺りです。

アルブレヒト・デューラー 「聖ミカエル、竜を倒す」
長い槍のようなものを持ち足元の竜に突き刺す天使と、その隣で弓矢を構える天使、剣を抜く天使などが描かれています。彼らの足の下には平和そうな水辺の教会のような建物も見えました。 これは迫力もあり派手なので好みの作品です。 この辺りには獣や竜といった悪魔を描いた作品もありました。


<第2章 デューラー以後の黙示録図像>
続いてのコーナーはデューラーの後の時代の作品が並んだコーナーです。デューラーの影響力は大きかったようで、その後デューラーの模倣が生まれていったようです。ここには主にマティアス・ゲールングという画家の作品が並んでいて、この画家は南ドイツで活躍していたそうです。「黙示録註解」という連作のための挿絵が並び、これは基本的に2枚セットとなっていて、左に黙示録の場面、右に寓意的な場面が描かれているようです(と言われてもよく分からなかった^^;)
また、当時はルターらによる宗教改革の真っ只中だったようで、作品からもそれが見て取れました。

マティアス・ゲールング 「第一のラッパ(黙示録8:7)」
ラッパを吹く天使と、その上の6人の天使を描いた作品で、ちょっと漫画のようなデフォルメを感じます。雲から凄い勢いで、石や火のようなものが下に向かって飛び出していっています。デューラーに比べると簡素な画風に思いますが、場面の解説絵としては分かりやすいかもw
この近くにはルターの聖書などもありました。

マティアス・ゲールング 「煮えたぎる鍋のなかの教皇と地上の支配者達」
大きな釜に浸かっている人々が描かれた作品です、冠をかぶった教皇の姿もあり、釜の下では悪魔みたいなのが火をくべていました。これは黙示録のどの場面か分かりませんでしたが、地獄絵図のような感じで、カトリックを痛烈に批判しているように思いました。

マティアス・ゲールング 「力強い天使としてのプロテスタントの説教師」
口から煙のようなものを出している人が、手に持つ本(聖書?)からも煙を出しています。これはオーラのようなものかな? 頭上にはキリストらしき姿も見られ、タイトルから察するにプロテスタントの説教師を讃える作品のようです。 結構分かりやすいプロパガンダだと思いました。

マティアス・ゲールング 「教皇とスルタンの冠を授けられる二体の悪魔」
スルタンというのはイスラムの皇帝のことで、この辺にはカトリックと同じようにトルコを悪役にしている作品もいくつかあります。これは大きな鍵を持った悪魔と、耳の大きな悪魔に冠を被らせようとする悪魔達が描かれています。 つまり教皇とスルタンも悪魔扱いってことかな? プロテスタントの急進的な一面がよく伝わってきました。この辺にはそういう作品がいくつかあります。

マティアス・ゲールング 「先年のあいだ繋がれているサタン(黙示録20:1-3)」
天使に首輪をつけられ、縄を引っ張られているサタンを描いた作品です。天使は十字架を振り上げて、竜のような顔をしたサタンは手を挙げて防ごうとしているようでした。この辺りは黙示録らしい内容で、分かりやすく説明しているようでした。


<第3章 近代:ルドン《ヨハネ黙示録》への道>
最後の章はルドンを含めたデューラーに影響を受けた後世の画家のコーナーです。といっても、ルドンの点数は14点程度とこれまたあまり多くありません。西洋美術館でもルドンの版画を観られましたが、ここれも幻想的な作品を観ることが出来ました。
  参考記事:19世紀フランス版画の闇と光 ― メリヨン、ブレダン、ブラックモン、ルドン (国立西洋美術館)

ギュスターヴ・ドレ/エドモンド・オリエ 「ドレ・ギャラリー」
これは本です。空飛ぶ馬に乗り大きな鎌を持った人が地上に向かっているように描かれ、後ろには羽の生えた人(悪魔か天使か分からず)が行列するように飛んでいます。毛並みが流れるような馬など、かなり精密に描かれ神聖な雰囲気が出ていました。陰影の表現も凄かったです。

アルフレート・レーテル 「屠殺者としての死、1831年、パリの仮面舞踏会におけるコレラの登場」
骨を持ってバイオリンを弾くようなポーズをしている骸骨人間(フード付きの服を着ている)を描いた作品です。周りには倒れて死んだ人たちや、恐れおののいている人たちもいます。彼らは楽器やお面を被っていて、これが仮面舞踏会であることを示しているようでしたが、不気味な雰囲気が増していました。
近くにはこのシリーズの作品もありました。

最後がルドンです。黙示録第6章の「青い馬」 (死と病気)に着想を得た作品が並んでいました。

オディロン・ルドン 「御使その香炉を持ちきたりて(黙示録8:5)」
薄っすら羽が生えた女性が、香炉らしきものを持っている様子が描かれています。左側はぼんやり暗くなっていて、ルドンならではの神秘的な雰囲気がありました。

オディロン・ルドン 題名失念
横向きの人が大きな下向きの鎌(死神の鎌みたいな)を持っている様子を描いた作品で、背後には大きな目のようなものも描かれています。意味はよく分かりませんが、幻想性があるというか、少し怖いくらいの畏れを感じました。

オディロン・ルドン 「…これを先年のあひだつなぎおき(黙示録20:2)」
暗い画面に溶け込むように、蛇が鎖に繋がれている様子を描いた作品です。大きく口を開けて苦しそうな感じもしました。 先ほどご紹介したマティアス・ゲールングと同じシーンですが、こっちの方が鬱屈した感じがするかもw

オディロン・ルドン 「これらの事を聞き、かつ見し物は我ヨハネなり(黙示録22:8)」
手を合わせて横を向いているヨハネを描いた作品です。静かで遠くを見つめるような眼が神秘的でした。


ということで、黙示録の話が好きな私としては中々興味深いテーマでしたが、この話を知らないとイマイチわからないかもしれません。また、お目当てのデューラーとルドンが少なかったのもちょっと拍子抜けかな。 貴重な品々だと思いますが、もう一押し欲しかったというのが本音です。
この後、同時開催の「明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山」も観てきました。
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コメント
No title
ルドン、大好物なのですが…
少なめなんですか
参考になります! 
いつもありがとうございます☆
2010/11/12(金) 19:08 | URL | ぞを #-[ 編集]
Re: No title
>ぞをさん
コメントありがとうございます^^
そうなんです、ちょっと少なめでしたねえ。
それでも流石はルドンといった感じでしたよ。
もう一個の展示も楽しめたので、行って損は無かったです。
2010/11/13(土) 00:38 | URL | 21世紀のxxx者 #-[ 編集]
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