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明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山 【東京藝術大学 大学美術館】

前回ご紹介した黙示録の版画展を観た後、同時開催の「明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山」も観てきました。

P1150905.jpg


【展覧名】
 明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山
  第一部: ラグーザとその弟子たち
  第二部: 没後100年 荻原碌山

【公式サイト】
 http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2010/ragusa/ragusa_ja.htm

【会場】東京藝術大学大学美術館 展示室3・4(3階展示室)
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)など
【会期】2010年10月23日(土)~ 12月5日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間40分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日15時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらもそんなに混むことはなく自分のペースで見ることができました。あまり注目していなかった展示でしたが、実際に観てみたらあまり規模は大きくないものの好みの作品が多くて楽しめました。展覧は二部構成となっていて、第一部がラグーザ、第二部が荻原碌山となっています。詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。

<第一部: ラグーザとその弟子たち>
まずはヴィンチェンツォ・ラグーザのコーナーとなっていました。ラグーザはイタリア生まれで、明治9年に開校した工部美術学校に招かれ西洋彫刻を日本に伝えた人の1人です。日本には6年いたらしく、彼の作品には日本人もモデルとなっています。その時の気分までも映すとまで解説されていて、確かに感情豊かな彫刻がどど~んと沢山並んでいて驚きました。また、彼の美術教育のありかたにも注目し、弟子の作品も並んでいます。

ヴィンチェンツォ・ラグーザ 「日本婦人」
少し横向きで頭に布を巻いている日本女性の石膏像です。石膏なのに柔らか味があり、彫られた目が生き生きとしていました。少し開いた口の中には歯のようなものもあり、くちびるも柔らかそうな質感がありました。 また、着物から乳房が出ているのですが、これは左の襟が欠損したため露出しているそうです。 複雑に入り組んだ所はパーツに分解した後で合成する手法で作ったため、パーツが欠損しやすいと解説されていました。 …この作品だけで一気にラグーザの凄さが分かりました。
隣にはブロンズにした作品もあり、出口付近にはパーツに関する解説もあります。また、ラグーザの肖像画なども展示されています。

ヴィンチェンツォ・ラグーザ 「祈り」
墓碑装飾として作られた作品で、跪いて天に顔を向け、手を交差してして肩におき祈っている女性の像です。ほっそりした身体や衣の表現が何とも気品があり、動きや生気を感じました。中々ドラマチックな作品です。

ヴィンチェンツォ・ラグーザ 「日本の大工」
右肩を出している(これも欠損?)、たくましい大工の彫像です。横に視線を向け、歯を出して微笑んでいるように見えます。背中には刺青も描かれるなど、写実的でありながら、親しげで理想的な雰囲気を感じました

この辺の作品は石膏とブロンズがセットで展示されていました。私は石膏の方が好みです。

[弟子たち]
少し進むと弟子のコーナーです。

小栗令裕 「欧州夫人アリアンヌ半身」
頭に花飾りをつけた女性の胸像です。解説によると、装飾的な髪と肌の滑らかさの対比があるそうで、華やかさととしっとりした雰囲気がありました。

大熊氏廣 「破牢(スパルタアニベーラ全身)」
前のめりに階段を降りる上半身裸の男性の像で、これは模刻だそうです。右手に短剣を持ち背中の後ろに隠しているのは、タイトル的に牢破りしようとしているのかな? 中々の力強さで良い作品でした。 この人は首席で卒業したそうなので、かなりの腕だったようです。


<第二部: 没後100年 荻原碌山>
続いては荻原碌山のコーナーです。荻原碌山はラグーザの来日から30年後に、ロダンの「考える人」を観て、彫刻家を目指したそうです。パリで勉強し43歳で亡くなるまで日本の近代彫刻に新しい風を吹き込んだらしく、今年で没後100年になります。今回の展示では、特に絶作の「女」に焦点を当てた内容となっていました。
 参考記事:国立西洋美術館の案内 (常設 2010年10月 彫刻編)

荻原碌山 「文覚」
非常にごつごつした感じの男性の裸体像です。腕を組み、斜め上を観ているのですが大きくて力強い雰囲気がありました。

荻原碌山 「デスペア」
うつ伏せて泣いているような感じの女性像です。絶望の感情を表現しているのがよく伝わってくるのですが、当時はポーズが悪いとして文展では落選してしまったのだとか。悲しみを全身で表していました。

荻原碌山 「労働者」
膝の上に肘をつき、あごを乗せている裸体の男性像です。右手を右足の一部が欠けているぞ?と思ったら、本人が出来栄えに満足できずに取り去ったそうです。(元々は揃ってた) この人物はぼーっと何かを考えている感じでした。「考える人」とはちょっと雰囲気は違いますが。

荻原碌山 「女」
最後の部屋は「女」のブロンズ像などが沢山並んでいました。手を後ろで組み、上を見上げる女性像です。生き生きとしていて、少し眉を寄せて苦しそうな感じまでします。この作品の作成途中からはモデルを使わずに恋人をイメージして作っていると解説されていました。 これだけ感情豊かな像を作れるのに若くしてなくなったのは残念。

この部屋には3Dデジタルデータの立体出力の解説やデータを基に作られたものもあります。また、ブロンズ像の制作過程や、映像もこの辺にあり参考になりました。

ということで、予想以上に楽しめました。特にラグーザの作品はもっと観てみたいと思いました。なかなか観る機会も多くないと思いますので、黙示録の版画展に行くのであれば、こちらの展示もセットで観てみるのも良いかと思います。

おまけ:美術館の1階には「女」のブロンズ像が置かれ、それだけは触ってOKでしたので触ってきました。これも貴重な機会かもw
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