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セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅 (感想後編) 【ブリヂストン美術館】

今日は前回の記事に引き続きブリヂストン美術館の「セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅」をご紹介致します。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

P1160207.jpg

【展覧名】
 セーヌの流れに沿って-印象派と日本人画家たちの旅

【公式サイト】
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibit/index.php?id=81

【会場】ブリヂストン美術館
【最寄】JR東京駅・銀座線京橋駅・都営浅草線宝町駅
【会期】2010年10月30日(土)~12月23日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間40分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
前編は1章と2章でセーヌ河の上流とパリ周辺に関する作品をご紹介しましたが、後半は河口に向けての地域に関する作品となっていました。

<第3章 印象派揺籃の地を巡って>
3章はアルジャントゥイユやブージヴァル、クロワシー、シャトゥーといった土地に関するコーナーでした。アルジャントゥイユはモネが主に活動した地であり、クロワシーは印象派誕生の地だそうです。また、シャトゥーはヴラマンクとドランが共同のアトリエを設けるなど、フォービスムの活動地点もこの辺りが中心だったようです。 そのため、このコーナーは印象派とフォービスムの多い内容となっていました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「パリ郊外、セーヌ河の洗濯船」
これはルノワールの晩年の作品のようです。全体的に黄土色の落ち着いた色彩で、セーヌ河と河に止まった船が描かれ、右のほうには岸と町並みの様子も見られます。私にはぱっと観てもルノワールと分からず、より印象派風に思えました。晩年にもこういう作風があるんですねえ。

シャルル=フランソワ・ドービニー 「アンドレズィの夕暮れ」
写実的な感じで、セーヌ河沿いで洗濯をする2人の女性を描いた作品です。日が暮れてきているのか、少し暗くなってきています。その光の表現が見事で、自然の大きさのようなものを感じました。

クロード・モネ 「橋からみたアルジャントゥイユの泊地」
高い位置から見下ろすようにヨットがあつまる泊地を描いた作品です。空には雲に隠れた太陽があり、その光が水面に反射して柔らかい雰囲気で穏やかな作品となっていました。
ここら辺からモネの作品が沢山出てきます。元々あるブリヂストン美術館のコレクションに加え、他の美術館の作品もあるので見応えがありました。

モーリス・ド・ヴラマンク 「サン=ドニ運河」
河とその岸にある家々を描いた作品です。ヴラマンクの作品としては色が落ち着いている方だと思います(それでも濃いですけど) また、幾何学的でオレンジ色の屋根の家々などからはセザンヌの影響を感じました。
ここにはヴラマンクも3点ありました。いずれも好みの作品で嬉しい^^


<第4章 ジヴェルニーと芸術家村>
続いてはジヴェルニーやヴェトイユといった地を題材にした作品のコーナーでした。いずれもモネに関する地で、モネは1878年にヴェトイユに移り住みました。また、1890年から亡くなる前までジヴェルニーで過ごしました。その後、ヴェトイユは多くの日本人画家も訪れ、一種の芸術家村のようになっていたとのことでした。

土田麦僊 「ヴェトイユ風景」 ★
テンペラで描かれた作品で、全体的に淡い緑色がかった風景画です。幾何学的な家々の屋根が見え、右上には教会らしき建物も見えます。緑が多いせいか生き生きとした雰囲気のある作品でした。

この辺にはドービニーの「ボニエール近郊の村」など以前に村内美術館で観た作品もありました。
 参考記事:村内美術館の案内

クロード・モネ 「セーヌ河の朝(ジヴェルニーのセーヌ河支流)」 ★
3点連続でモネがあり、特に気になったのが中央にあったこの作品でした。(両脇はブリヂストン美術館の所蔵品) これは最近観た(恐らくボストン美術館展)作品とよく似ていると思ったら、21点の連作のうちの1枚だそうです。川の上から川を見た構図で、白~黄色~ピンクと柔らかなグラデーションの空とそれを映す水面が描かれ、両岸の緑なども含めて穏やかな川の雰囲気が感じられます。
この3つ並べた展示方法はかなり良かったです。この辺はモネ好き必見だと思います。

この章にはこの他にもモネや日本人画家の作品がありますが、作品数は他の章より少なめだったかな。


<第5章 セーヌ河口とノルマンディー海岸>
最後はセーヌ河の河口と海岸に関するコーナーでした。河口にはオンフルールやル・アーヴルといった港があるそうで、景勝地としての側面から多くの画家に描かれているとのことでした。

モーリス・ド・ヴラマンク 「曳船、ルーアンにて」
橋とその下を通ろうとしている黒い蒸気船を描いた作品です。対岸は町並みが広がり、奥行きを感じます。解説によると堅固な空間構成とのことでした。ヴラマンクも結構あるので、好きな方は今回の展覧会は楽しめるんじゃないかな。

ここら辺にはこの美術館のコローやブーダン、松岡美術館のモネなどもありました。

ギュスターヴ・カイユボット 「トルーヴィルの別荘」 ★
カイユボットの作品は中々お目にかからないので、反応しましたw 木の隙間から見る海と、近くに立つ2軒の家が描かれた作品です。明るい色彩で描かれ、手前の木の暗さと対照的な明暗となっていました。のんびりした雰囲気が漂います。

藤田嗣治 「ル・アーヴルの港」
港というか堤防のような所を描いている作品です。空は暗く、広いところに1人の人影がポツンとしていて、どこか寂しい雰囲気がありました。 右の方では水の引いた所?で作業する人も描かれていて、港の日常風景のようでした。それにしても、藤田にこういう作風もあるのかと、ちょっと驚きです。藤田の画風は幅広いなあ。

ギュスターヴ・クールベ 「エトルタ海岸、夕日」 ★
ピンク色に暮れている海岸を描いた作品です。左には穴の空いた門のような岩「アヴェルの門」が描かれています。美しいグラデーションで穏やかな光景となっていました。

クロード・モネ 「アヴェルの門」 ★
こちらも「アヴェルの門」という岩を描いた作品で、モネ好きの方は連作で観たことがあるかもしれません。海の断崖絶壁を見下ろすように見た構図で、遠くの水平線と空は溶け込むように曖昧になっていました、柔らかな赤や緑の水面とゴツゴツした岩の対比が面白かったです。

この隣にもエトルタの断崖を描いたマティスの作品などもありました。

ラウル・デュフィ 「ドーヴィルの突堤」
桟橋にいる人々や沢山のヨット、灯台などが描かれた作品です。軽やかで色彩も美しくデュフィならではの魅力を感じます。楽しげな雰囲気が好みでした。

この近くには他にもモネの初期の作品や、ドービニーの大画面の作品など、最後まで本当に見所が多い内容でした。


ということで、日本でも人気のある印象派、エコールドパリ、フォーヴなど定番の画家から、日本のあまり知られていない画家まで、幅広くかつ良質な作品に出会うことができました。こんなに揃えの良い内容だと思っていなかったので、予想以上に楽しむことができました。 この時期、お勧めの展覧会の1つです。

この後、常設もちょこっとだけありますが、割愛します。今回は古代美術品のコーナーは入れないようになっていました。

おまけ:ブリヂストン美術館の建物の裏にF1カーが展示されていました。
P1160179.jpg

どうやらF1タイヤサプライヤー14周年の記念のようでした。株主のUI兄弟(特に兄)はあれでしたが、会社は頑張ってますねえ。
P1160184.jpg
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