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ゴッホ展 こうして私はゴッホになった (2回目感想前編)【国立新美術館】

先日、休日出勤の振り替えで平日にお休みを取って、終盤となった国立新美術館の「没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」を観てきました。

P1160696.jpg

【展覧名】
 没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった

【公式サイト】
 http://www.gogh-ten.jp/tokyo/
 http://www.nact.jp/exhibition_special/2010/gogh/index.html

【会場】国立新美術館
【最寄】千代田線乃木坂駅/日比谷線・大江戸線 六本木駅
【会期】2010年10月1日(金)~12月20日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間50分程度

【混み具合・混雑状況(平日15時半頃です)】
 混雑_①_2_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
平日の昼間ならそんなに混んでいないのでは?と淡い期待をしたのですが、全然甘かったですw 以前行った時よりも混んでいて、どこも列を組んで観ているような感じでした。さすがに終盤となると混み合うのは仕方がないので、これから会期末の混み具合についてはもう覚悟を決めるしかないと思います。(公式サイトでは比較的空いているになってましたが、混んでます)

さて、各コーナーの趣旨や代表的な作品は以前の記事でご紹介したので、今回は以前ご紹介した作品以外で気になった作品について前編・後編に分けてご紹介しようと思います。 (今回は補足的な感じで、私の簡単な感想のみです^^;) 

 前回の記事:
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想前編(国立新美術館)
  ゴッホ展 こうして私はゴッホになった 感想後編(国立新美術館)


<第1章 伝統-ファン・ゴッホに対する最初期の影響>
まずは最初期のコーナーです。ゴッホのルーツとなった画家の作品が多いコーナーとなっています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「自画像」
この作品はパリ時代のものですが、冒頭にハイライト的に展示されています。やや右を向き、目だけこっちを向けている自画像です。黄土色の背景に点描のような技法で赤や青を混ぜつつ描かれています。そんなに強烈な色彩ではないですが、色が響き合い生き生きとした雰囲気がありました。

ジャン=フランソワ・ミレー 「漁師の妻」
ミレーはゴッホが特に敬愛していた画家です。この絵は左を向いて頭を押さえている漁師の妻が描かれています。周りは暗く夫が帰ってこないか遠くを見つめているようです。上着とスカートの組み合わせが赤と青なので宗教画的なものを感じるのですが、どうなんでしょうか。崇高な人間性を感じさせる作品でした。

テオドール・ルソー 「ジュラ山脈高地を下る牛」
T・ルソーはミレーと同じくバルビゾン派の代表的な画家です。これは、山道を下るたくさんの牛達を描いた絵で、全体的に暗い感じがします。しかし、力強さも伝わってくる作品でした。

シャルル・ドービニー 「四月の月(赤い月)」
ドービニーもバルビゾン派です。これは絵の真ん中にオレンジの夕日のようなものが描かれていますが、タイトル的に月なのかな? 暗くなった中に木々や川が描かれ、空には星も輝いていました。 郷愁を誘われましたが、不思議と寂しい感じはしなかったかな。

テオフィール・デ・ボック 「河の景観」
大きく取られた空と、その下の川に浮かぶ船や河岸を描いた作品です。写実的で、爽やかで穏やかな雰囲気を持った絵でした。これについてはあまり解説がないのが残念。


<第2章 若き芸術家の誕生>
2章はゴッホの素描が中心となった章です。ゴッホを指導したハーグ派のアントン・モーヴの作品も並んでいます。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「ヤーコブ・マイヤーの娘(バルグの教則本中のホルバインの素描による)」
同じような横向きの女性を描いた素描が2点並んでいました。これは右隣に展示されていた作品をゴッホが模写した作品で、オリジナルと比べると若干うつむき加減に違いがあったり、女性に厚みがあるように思います。筆致もオリジナルのほうが細かい感じもするかな。ゴッホがどのように素描を見につけたのかを知る上で興味深い展示方法となっていました。

アントン・モーヴ 「オランダ風納屋と差し掛け小屋」
この画家は一時期ゴッホに絵を指導した先生です。これは、粗末な感じの掘っ立て小屋とその前に立つ女性、子牛などを描いた作品で、明るく穏やかな色彩で描かれていました。また、どこか牧歌的な雰囲気もあり、明暗も柔らかく感じました。

アントン・モーヴ 「フリース近郊」 ★こちらで観られます
畑に向かって絵を描いている画家を描いた作品です。空は曇っていて、ちょっと暗い感じもしますが、画中の画家は粛々と絵を描いている感じを受けました。この絵を描いたアントン・モーヴも一緒に屋外で描いたのかな。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「掘る人」
畑にスコップを突き刺して、持ち上げようとしている人を描いた作品で、視線は足元に向けられています。水彩で色付けされていて薄い色彩となっていますが、掘る人は力強く、労働を賛歌しているような神聖さを感じました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「種まく人」
ミレーの作品の複製を手本に描いた作品です。横向きで、握った手を背後に回していますが、あまり動きを感じずちょっと硬い雰囲気がありました。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「防水帽を被ったあごひげの漁師」
帽子を被った白髭の老人を描いた作品です。非常に緻密に描かれた顔はリアルな感じがします。その反面、下半分は黒い服となっていてあまり描き込まれていない感じでした。この頃のゴッホの素描の技量の高さを伺わせました。

ウィリアム・ヘイスマン・オヴァランドの原画による 「庶民の素顔。[イギリスのならずもの]」
服の首を掴まれ、前のめりで歩く男性の横顔を描いた版画です。ミリ以下の細かい線で描かれた顔は写実的で、ならず者らしい雰囲気があります。明暗も見事で、こうした作品をゴッホも参考にしていたようでした。


<第3章 色彩理論と人体の研究-ニューネン>
この章はニューネンという土地に住んでいた頃の作品が並んでいます。特に以前ご紹介した「じゃがいもを食べる人々」にまつわる章となっていて、それを批判したアントン・ファン・ラッパルトの作品なども展示されています。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「籠いっぱいのじゃがいも」 ★こちらで観られます
暗い背景にカゴに入った沢山のジャガイモと、手前にも溢れたジャガイモが転がっています。暗い中に同じような色で描かれていますが、明暗がつけられてちょっとゴツゴツした質感を感じました。

アントン・ファン・ラッパルト 「織工」
明るい光の差し込む窓の側で、織物機に向かって作業をする男性を描いた作品です。威厳に満ちた感じがして、差し込む光の表現が見事に思いました。中々好みの絵でした。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「女の頭部」
黒いフードを被り黒い服を着た老婆の顔を描いた作品です。こちらをじっと見つめ、皺だらけでちょっと悲しそうな顔に思えました。右のほうから光が当たっているような感じでした。

フィンセント・ファン・ゴッホ 「刈る人」
刈る人を題材にした3点の素描が並んでいました。私が特に気に入ったのは、帽子を被って鎌を両手に持つ男性の後姿を描いた作品です。こちらも労働の賛歌なのかな。動きも感じる作品でした。

ということで、前半はこんな感じです。2度目となると気を落ち着かせて観ることが出来るので、最初に観た時よりも色々見えてきたように思いました。こんな機会は滅多にないので、2回くらいは行っておかないとw

後半は目玉作品が沢山ある4章~6章をご紹介しようと思います。


 →後編はこちら


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Comment
No title
こんにちは☆
2回目のゴッホ展なんですね!
わたしももう一度観たいな~

やっぱりわたしは籠いっぱいのじゃがいもが好きなんです。
これのポストカードが欲しかった!
Re: No title
>アスカリーナさん
コメントありがとうございます^^
これだけの内容だと2回くらいはみておかないと勿体無いかなと
じゃがいもの絵は素朴だけど良い絵ですよね!

私はポストカードではなくガチャガチャのパズルと額縁のを買ってみましたw
グッズも楽しみの1つですよね。
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