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モネとジヴェルニーの画家たち (感想後編)【Bunkamuraザ・ミュージアム】

今日は前回の記事に引き続き、bunkamuraの「モネとジヴェルニーの画家たち」の後編をご紹介いたします。前編には混み具合なども記載しておりますので、前編を読まれていない方は前編から先にお読み頂けると嬉しいです。
 前編はこちら

P1160816.jpg P1160812.jpg

まずは概要のおさらいです。

【展覧名】
 モネとジヴェルニーの画家たち

【公式サイト】
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/10_monet/index.html
 http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/shosai_10_monet.html

【会場】Bunkamuraザ・ミュージアム
【最寄】渋谷駅/京王井の頭線神泉駅
【会期】2010年12月7日(火)~2011年2月17日(木)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
前編ではモネが移り住んできてから徐々にジヴェルニーに画家達が集まり、50人程度になった辺りまでご紹介しましたが、後編ではさらに人気となった頃からジヴェルニーの芸術家村としての終焉までをご紹介します。

<第3章 家族と友人>
画家50人でも充分人気だとは思いますが、ジヴェルニーは1895年には人気がありすぎるほどだったようです。1915年までに300人以上がここに訪れているというので、元々の人口が300人の村には多すぎるくらいの盛況振りですw その為、画家たちは村でも影響力を持つ存在になっていったようです。一方、長期滞在者の関心は風景や村ではなく、庭や家族、友人達に移っていったようで、この章ではそうした作品が並んでいました。(庭や家族だったらわざわざこの村でなくても…と思うけど、芸術家の楽園だったんでしょうか)
なお、ジヴェルニーの外国人画家の7割程度はアメリカ人だったそうで、その話は4章に繋がっていきます。 また、日本からも児島虎次郎がこの地を訪れているそうです。…児島虎次郎はベルギーのラーテム村にも出没してた記憶がw (残念ながら今回の展示には児島虎次郎の作品はありませんでした。)
 児島虎次郎の参考記事:
  フランダースの光 ベルギーの美しき村を描いて (Bunkamuraザ・ミュージアム)
  大原美術館名品展 (宇都宮美術館)

セオドア・アール・バトラー 「庭の入口」
2章でモネの義理の娘ブランシュ・オシュデ=モネをご紹介しましたが、この人はモネの2番目の妻アリス・オシュデの娘シュザンヌの夫となった画家です。(つまり、モネの義理の息子ということになります。)
この絵は、自宅の緑の門と、そこに通じる道が描かれ、道の両脇には真っ赤な花と緑の葉が並び、強い対比となっています。真ん中には視界をさえぎるように木?が描かれ、これは浮世絵の大胆な構図からの影響かもしれません。解説では装飾的でポスト印象派のようだと言っていましたが、確かにそのような作風でした。

セオドア・アール・バトラー 「画家の子供たち、ジェイムズとリリー」 ★こちらで観られます
室内で真っ白な服を着た子供と、輪のような物をおもつ子供が手を繋いでいます。カーペットや壁紙が薄いピンクの成果、色合いが明るく感じられ、子供たちの笑顔からは幸福感が出ているように思いました。

フレデリック・ウィリアム・マクモニーズ 「アリス・マクモニーズ夫人」
この人は彫刻の勉強をしていたそうですが、これは絵画作品です。ピンクっぽい赤のドレスを着てこちらを向いて座る女性が描かれた肖像で、若々しい感じがします。少し歯を見せて明るい表情を見せ、親しげな印象を受けました。気品も感じられるし、中々好みの作品です。 この作品の隣にもこの人が描いた肖像画がありました。


<第4章 ジヴェルニー・グループ>
20世紀初頭の10年間、ジヴェルニーの画家は「装飾的印象主義」という様式で明るい色彩と量感を表現する画法となっていったそうです。7割を占めたアメリカから来た画家達は本国ではジヴェルニー・グループと呼ばれ評価されていたのですが、1914年になり第一次世界大戦が始まると皆この地を去り、ジヴェルニーの芸術家村としての時代は終わったそうです。 ここには世界大戦までのジヴェルニーの景色や庭でくつろぐ女性像などが展示されていました。

ルイス・リットマン 「早朝」
ベッドの上で上半身裸の女性が座っている姿を描いた作品です。印象派風の色彩に見えましたが、ベッドの花柄や服などに装飾的な模様が見られるように思いました。次の時代に変わってきた感じがします。

フレデリック・カール・フリージキー 「百合の咲く庭」 ★こちらで観られます
白い花が並ぶ小道のある庭に、椅子とテーブルを出してくつろいでいる2人の女性を描いた作品です。1人は帽子を被って白いドレスを着て立っていて、もう1人はカップに何かを注いでいるような姿勢です。全体的に爽やかな白が多い作品で、花などから装飾性を感じ、女性達からは華やかさと優雅な雰囲気を感じました。

リチャード・エミール(エドワード)・ミラー 「水のある庭」 ★こちらで観られます
緑の日傘を差して、池(噴水みたいな)の淵に腰掛けている女性を描いた作品です。目を閉じて静かな佇まいで、背景には緑の野原や白いクロスをかけたテーブルセットなども観られます。水面も穏やかな様子を映しているようで、貴婦人の静かなひと時といった雰囲気でした。これも色の組み合わせが明るくて好みでした。

ピエール・ボナール 「にぎやかな風景」 ★こちらで観られます
ボナールは隣村に住んでいたようで、よくジヴェルニーのモネを訪ねてきていたようです。この絵は大画面で、セーヌ河の周りでくつろぐ人々を神話的な雰囲気で描いています。このモデルは彼の妻や子供、愛犬などと解説されていました。この辺の他の画家と比べるとちょっと暗めに見えましたが、ボナール独特の色彩となっていました。


[ジヴェルニーのモネ]
最後の辺りにはモネの睡蓮の連作が並んでいました。自宅の庭を大改造して池を造り、日本風の太鼓橋を作ったりした話は有名かな? 晩年のモネの代表作を楽しめるコーナーです。

クロード・モネ 「睡蓮」 ★こちらで観られます
今回のポスターの作品です。薄いピンクの花を咲かせる睡蓮が描かれ、深い色合いの水面と、淡い花と葉っぱの色彩の取り合わせが目に鮮やかです。可憐な印象を受ける素晴らしい作品で、かなり好みでした。

クロード・モネ 「睡蓮の池」
池にかかる太鼓橋を描いた作品で、これも恐らく今年のボストン美術館展で観たのと同じではないかと思いました。赤、緑、青など、色濃く描かれ、抽象画のような感じすらします。この作品は浮世絵からの影響もあるようでした。
 参考記事:ボストン美術館展 西洋絵画の巨匠たち 感想後編 (森アーツセンターギャラリー)

クロード・モネ 「睡蓮、柳の反影」
これは最早、抽象画のような大画面の作品です。かすかに睡蓮の葉っぱや花に見えますが、全体を覆っているのは暗い緑と白く太い線で、写実性ではなく感じるままに描いているように見えました。
この他にもモネの睡蓮は2点あり、合計5点並んでいました。

出口付近には約8分ほどの映像コーナーがあり、ジヴェルニーやモネの庭を撮った映像を観ることができました。


ということで、モネだけでなくアメリカの印象派も知ることができる貴重な展覧会となっていました。そもそもジヴェルニーが芸術家村になっていたということを知らなかったので、今回の展覧会は今後の参考にもなりそうです。嬉しいことに会期が長めですのでもう一度くらい行っておきたい展覧会です。

おまけ:
交差点近くにある東急のショーウィンドウ
P1160801.jpg
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Comment
やっと観ました☆
こんばんは☆
やっと、今日行って来ました!
ジヴェルニーの自然と光にあふれた絵画が多くて、見ていつて、心が軽くなるような感じがしました。
つたない私の趣味のトールでも、先生がよく空気感を大切にして!とおっしゃるので、こういう印象派の絵は、とても勉強になります。

わかりやすく、ポイントも絞られた、良い展覧会でした。

ブログ参考にさせて頂き、余計にわかりやすく感じたのかもしれません。

どうもありがとうございましたm(__)m
Re: やっと観ました☆
>cinquante さん
コメントありがとうございます。少しはお役に立てたようで嬉しいです^^
この展示はモネを中心に、のどかな風景や家族など温かみのある作品もあって良いですよね。
印象派は光の表現を信条としているので、まぶしいほどの光を感じます。
>わかりやすく、ポイントも絞られた、良い展覧会でした。
この展覧会はあまり知らなかったアメリカの印象派に焦点を当てているのが参考になりました。
若干、似た作品も多いですが、比べて観られるのも面白かったです。
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