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琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 【出光美術館】

先週の祝日に、有楽町駅の出光美術館で「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―」を観てきました。この展覧会は期間が2つに分かれていて、この日は「第1部 煌めく金の世界」の内容となっていました。

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【展覧名】
 酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―
 第1部 煌めく金の世界

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店

【最寄】
 JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅


【会期】
 第1部 煌めく金の世界  2011年01月08日(土)~02月06日(日)
 第2部 転生する美の世界 2011年02月11日(金)~03月21日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
流石にこれだけの展示となると人が多かったですが、たまに混みあってる感じがする程度で、基本的には自分のペースで観ることが出来ました。

今月、琳派作品を観る機会はこれで3回目です。琳派好きの私としてはこれだけ一気に展示があるのは嬉しい限りです。(おかげで満足度⑤を頻発してますがw)
 参考記事:
  本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)
  帰ってきた江戸絵画 ニューオーリンズ ギッター・コレクション展 感想前編(千葉市美術館)

さらにこの展示は時期によって作品もがらっと変わります。1部は琳派の始祖である俵屋宗達の作品が多めで、2部は酒井抱一の作品が中心となるようです。
今日は、その1部の中で気に入った作品を章ごとにご紹介しようと思います。


<第1章 美麗の世界 ―琳派はここからはじまった>
まずは宗達と光悦の作品が並んだコーナーです。琳派とは尾形光琳の作風を受け継ぐ流派のことですが、光琳は宗達や光悦に多大な影響を受けました。解説によると宗達と光悦は王朝時代の雅な美意識を踏まえながら豊かに翻訳して斬新な造形美を作っていったようです。ここにはそうした伝統と革新を感じさせる作品が並んでいました。

本阿弥光悦/俵屋宗達 「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」
光悦の書と宗達の画の断簡が4枚展示されていました。これらは元は25mにもおよぶ巻物だったのを分割したものです。蓮の葉が水に浮かぶ光景から枯れる様子までを背景にして、歌が詠まれています。まさに流れるような華麗な文字が美しく、書が分からない私でも光悦は別格で好みです。宗達の画も華やかさと儚さを併せ持つようで、品格がありました。

本阿弥光悦/俵屋宗達 「花卉摺絵古今集和歌巻」
宗達の画を元にした版木を使って花模様の金泥に金砂子を撒き、その上に歌を詠んだ作品です。これも煌びやかなのに落ち着きがあり、優雅な雰囲気がありました。

この近くには光悦の兎の香合もあり、それも好みでした。(所々にある工芸作品も1部・2部で内容が変わります。) さらに少し進むと扇形の宗達の作品が続きます。宗達は元々は扇屋だったので、扇は重要な作品ではないかと思います。
 参考リンク:俵屋宗達のwikipedia

伝 俵屋宗達 「梅に柳図扇面」
これは扇型の作品です。緑色の梅と柳が描かれているのですが、どうやら作成途中か工房での見本のようなものだったらしく、扇に「銀泥」とか「箔」と書かれています。こういう作品は当時の様子が分かって面白いです。 この隣も同じように色指定などが描かれた作品でした。

俵屋宗達 「扇面散図屏風」
6曲1双の屏風です。金地の画面に沢山の扇が置かれていて華やかな印象を受けます。1つ1つの扇の意匠が違っていて、花鳥風月がなんとも優雅です。この作品の扇は屏風に直接描いているようでした。

この近くには尾形乾山の扇形の器や野々村仁清の色絵茶碗などもありました。

俵屋宗達 「扇面散貼付屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風です。左右に10枚ずつ扇が貼り付けてあり、下地は金銀を使って草花が描かれています。先ほどの作品の扇は整然とした感じでしたが、こちらは扇が舞い飛んでいくような光景となっていて、風雅な雰囲気に思いました。これは今回の展示でも見所の1つだと思います。


<第2章 金屏風の競演 ―伊年印草花図屏風>
続いてのコーナーは宗達の屏風を中心に「伊年印」と呼ばれる印の押された作品が並んでいました。寛永年間(1624~44)初期より、宗達の工房で制作された一連の草花図屏風には宗達の署名が無いらしく、「伊年」と印章されているそうです。

伝 俵屋宗達 「月に秋草図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の金屏風です。右隻に銀の半月が昇り、所々に萩やススキなどの秋草が金地に浮かぶように描かれていて、天と地の境目が曖昧です。近くで見ていると吸い込まれそうに思えたのですが、それは奥行きを感じたからかも?? 本人の作かは私には分かりませんが、好みの作品でした。

[伊年]印 「四季草花図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の小さめの屏風です。右隻から左隻にかけて春~冬の花々が描かれています。花は鮮やかなように思えましたが、よく観ると淡い塗り方のようで、背景の金地が透けて見えたのはちょっと驚きました。 あちこちに花が並ぶ華やかな作品でした。大胆な花の配置も見所です。

[伊年]印 「四季草花図屏風」
前の作品と名前が同じですが、こちらも四季の花を描いた屏風です。こちらは花が上下2段に並んでいて、びっしり描かれてる感じがします。中には季節違いの順序になっているものもあるようでした。これはちょっと賑わい過ぎて野暮な気がw

俵屋宗達/烏丸光広 「西行物語絵巻 第四巻」
これは大和絵風の巻物です。老僧と西行が野原の中で座って話しているようで、周りは秋草や飛び跳ねる鹿が描かれています。その鹿たちのせいか、軽やかで繊細な雰囲気を感じました。解説によると、粗末な老僧と周りの華やかさが対比になっているようでした。

この部屋の中央は焼き物も展示されていました。主に乾山の角皿です。


<第3章 光琳の絵画 ―大胆かつ絶妙なデザイン構成>
続いて3章は大きな部屋の両脇に光琳の屏風が並んでいました。ここは点数少なめですが、濃密な内容となっていました。

伝 尾形光琳 「紅白梅図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の金屏風です。右席は大胆な余白に梅の枝が1本伸びています。左隻はぐねぐねと凄いうねりを見せる2本の梅が描かれ、紅白の花を咲かせています。この大胆な造詣センスから本人の作ではないかと考えられているようです。色の配置も絶妙で、たとえ本人の作品でないとしても今回の展覧会の中でも特に素晴らしい作品だと思います。

尾形光琳 「太公望図屏風」 ★こちらで観られます
2曲の屏風です。川の畔で笑顔で釣りをしている太公望が描かれています。画面の右上が緑、左下は藍色というように色面に分かれていて白い服の太公望に目が行きました。解説によると、背後の崖の輪郭は太公望の背中に集中するようい描かれているそうで、確かにその通りでした。構図が計算されているんですね。

尾形乾山 「梅・撫子・萩・雪図」
これは光琳の弟の乾山(陶芸で有名)の作品で、色紙くらいの小さな掛け軸が4幅並んでいました。金地を背景に墨でタイトルになっているモチーフと歌が描いているのですが、奥に気に入ったのは梅です。単純化されていて兄に通じるものを感じました。


<第4章 琳派の水墨画 ―宗達・光琳・抱一まで>
琳派の絵師は金屏風だけでなく水墨画も1つの主要なジャンルとして制作をしていました。これまでの作品以上に緩急をつけた印章を受ける作品が並んでいました。

伝 俵屋宗達 「龍虎図」
2幅セットの作品です。右幅は下からぬっと顔を出す龍が描かれ、左幅はそれを上から見下ろすような虎が描かれています。どちらも漫画のキャラクターのような愛嬌があってちょっと可愛いw 龍図の雲の濃淡は穏やかで、たらしこみによるにじみが使われているようでした。

尾形光琳 「竹虎図」
竹の中で前足をそろえて座る虎を描いた作品です。にらめつけるような顔をして、口をへの字にするなど、一応険しい表情なのですが、丸っこくて可愛らしい雰囲気のほうが強いかなw これもユーモラスで好みでした。 …というか水墨画も全部良いですw

酒井抱一 「白蓮図」
1部で唯一の抱一の作品。大きく蓮と白い花が描かれています。花は透明感を感じ、単純化されているのが優美な雰囲気を出していました。2部の作品も楽しみです。


<工芸>
ここまであまりご紹介しませんでしたが、工芸も良い品が並んでいました。最後の部屋にも尾形光琳の弟の尾形乾山の作品が並んでいました。

尾形乾山 「銹絵馬図茶碗」
小さめの白い茶碗に簡略化された馬が描かれています。軽やかで愛らしい雰囲気が好みです。 この近くには光琳による茶碗絵手本もありました。これは弟のために描いた絵付けの手本で、梅、竹、布袋?、馬、鹿などがすらっと簡潔に描かれています。どれをとっても気品と動きがあって何とも優美でした。光琳恐るべし…。

尾形乾山 「色絵龍田川文透彫反鉢」
深い鉢に川の流れやもみじが描かれている色絵です。特に面白いのは淵の部分で、もみじや流れの形に切り取られていて、絵と一体になっているようでした。色合いも雅です。

尾形乾山 「銹絵染付金銀白松波文蓋物」
蓋と中の様子が見られるように展示された箱です。蓋には白、金、黒を使って簡略化された松が折り重なるように描かれています。中は白地に様式となった波が描かれているなど、単純化・様式化のセンスが素晴らしい作品でした。

他にも蒔絵などもありました。


ということで、展示されている内容が素晴らしくて、テンションあがりっぱなしの展覧会でした。流石に数年前の近代美術館や東博の琳派展とまではいきませんが、これだけの内容を民間でやってくれるのは凄いと思います。 1部・2部ともに会期が短めですので、気になる方はすぐに行くことをお勧めします。私は勿論、2部にも行くつもりです。

おまけ:
この展示とは別に、小部屋でルオーとムンクの作品が常設されています。ムンクの作品は中々お目に掛けないので、これも1つの見所じゃないかな。


追記:
後日、2部にも行ってきました。感想はこちら
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