関東近辺の美術館めぐり ~美術・美景・美味を楽しむブログ~

これは本ではない―ブック・アートの広がり 【うらわ美術館】

もう10日くらい前ですが、埼玉県の浦和にあるうらわ美術館で会期末ぎりぎりの「これは本ではない―ブック・アートの広がり」を観てきました。この展示は既に終了していますが、予想以上に面白かったのでご紹介しておこうと思います。

P1170213.jpg P1170216.jpg

【展覧名】
 これは本ではない―ブック・アートの広がり

【公式サイト】
 http://www.uam.urawa.saitama.jp/tenran.htm

【会場】うらわ美術館  ★この美術館の記事
【最寄】JR浦和駅 (埼玉県さいたま市)


【会期】2010年11月20日(日)~2011年1月23日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日11時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会期末が迫っていたこともあってか、結構お客さんが来ていました。…と言っても混むというわけでもなくゆっくり鑑賞できました。

さて、この うらわ美術館は本に関する展覧会が多い美術館ですが、今回の展示は「これは本ではない」と言いつつ「ブック・アートの広がり」というサブタイトルがありました。その謎は展示の冒頭で分かるのですが、いつもどおり気に入った作品を通じて展覧会の雰囲気をご紹介していこうと思います。

ルネ・マグリット 「対蹠地の黎明」
本とパイプやビンを描いたエッチングで、「イメージの裏切り」という有名な作品に関する作品です。 (「イメージの裏切り」はパイプが描かれているのに「これはパイプではない」と文字が書かれているのが、イメージを裏切っていると言う意図がある作品です。) この作品自体はビン、鳥、パイプ、葉っぱの形にくりぬかれた本の表紙となっていました。これが次の展示作品に関係してきます(この展覧会のタイトルもここから来てるんじゃないかと)

柏原えつとむ 「THIS IS A BOOK.」
黒いページに「これは本である」と灰色の文字が書かれた作品です。前述のマグリットの影響を感じます。近くには展示されているページ以外の写真もあったのですが、「これは本である」と英語とか絵を使って描かれているけど、内容があまりないw 本とは何か?と考えさせられるような作品でした。この展示は常にこれは本であるか本でないか?を考えさせられますw

八木一夫 「ノー」
陶器でできた本で、ページの谷の部分の左右にNOと描かれています。これはジャスパー・ジョーンズの「批評家は見る」との関連があるそうで、それに敢えてNOと言っているようでした。陶器の本とは面白いなと思いましたが、この後いくつか陶器作品が出てきます。

三島喜美代 「WORK-96A」
巨大な古雑誌・古新聞を重ねた束に見える作品です。1996年のジャンプやマガジンも積まれていますw 鉄やセメントで出来ているらしいですが、質感があって、本物の新聞などに見えます。 新聞は1996/1/12付で、若田さんの宇宙飛行の記事が載っていて、広告まで再現されていました。何でこんなモチーフにしようと思ったんだろw

三島喜美代 「Comic Book」
こちらは陶器で出来た漫画雑誌です。1978年~82年くらいのマガジンやジャンプ、少女コミックなどが再現されて積まれています。ジャンプはページが開いていて中のページが読めます。少しめくれている下のページも描かれているようでクオリティに驚きました。

この近くには同じ三島喜美代 氏のレンガのような陶器を敷き詰めた作品もありました。

荒木高子 「聖書シリーズ(黄金の聖書・砂の聖書・燃えつきた聖書)」
いずれも陶器でできた3つの聖書です。穴が空いている聖書、砂のような聖書、灰になっているような聖書… というように様々な状態を表現しています(他には石の聖書もありました) 結構リアルな質感で、いずれも英語で書かれた文章を読むことができます。どんなになっても聖書は聖書であるという点に希望があるそうです。解説ではこれらは作者自身の自画像と自認していることも分かりました。

渡辺英司 「蝶瞰図/うらわ美術館ウォールケース インスタレーション2010」
会場の壁一面(恐らく30mくらいはあったと思う…)に実寸代の蝶の標本がぎっしりと飾られた作品です。 …と、よく見ると蝶ではなく蝶の図鑑を切り抜いた本のようです。ガラスケースの外にも貼られ、とにかくその数に圧倒されます。1つ1つの蝶も本物のようで、その発想の面白さを楽しむことができました。

西村陽平 「新修漢和大辞典」
紙の塊が扇状に開いている作品です。これは辞書を釜で焼いたものの残骸だそうで、焚書のタブーを感じさせます。他にも文庫本を焼いたものなどもあり、これらから儚さや虚しさを見出すことができるとのことでした。

福本浩子 「THE LIBRARY OF BABEL」
互い違いにレンガを積んだような巨大な柱と、その周りに正方形に敷き詰められたものが展示されていました。全て古本?? まさにバベル塔のようにそびえていました。解説によると、書物の持つ観念性と具体性を視覚化しているそうです。物体的な側面は非常によく伝わってきましたw

長沢明 「Paper Weight Ⅱ」
木箱なのか本なのか陶器なのか見分けがつかないオブジェのような作品。何を意図しているかは分かりませんでしたが、近くにはコラージュ作品などもあり、本が本でないような感じを受けました。

村岡三郎 「アイアン・ブック」
黒い鉄の大きな本の形の鉄板の上に、左右対称に1/4の弧が描かれています。これは指に硫黄をつけて円を描き、それを焼いて結晶化したものだそうです。指の運動エネルギーが視覚化され、動きを感じました。
この辺にはこうした鉄の本で様々なものを閉じ込めたような作品がありました。

吉増剛造 「緑の森の一角獣座」
銅版で出来た巻物です。よく分かりませんが、文字が書かれているようです。展示ケースの中にも沢山の銅板があり、巻物まで金属製のものがあるのかと驚きでした。

この近くにはカン・アイランという人の映像を使った作品が並ぶ別室が設けられていました。蛍光色に光る本のようなものが沢山ならび、それにプロジェクターで文字を映す作品や、電光掲示板のように字が流れていく作品などがありました。ポップな色合いで見ていて楽しくなりました。

河口龍夫 「水に浮かぶファーブル昆虫記」
水を張ったたらいの上に本を浮かべた作品。たらいは6つあり、各1冊ずつ浮かんでいるのですが、その上にも鉛のようなものが置かれていました。解説が難しくて意図は理解しずらいですが、生命の源としての水に関連しているようでした。浮かぶ本というのが斬新に思えました。

河口龍夫 「関係 -本(種子を宿した北斎)オクラ」
これは類似作品を以前ご紹介した記憶があります。北斎というタイトルがついていますが、ただの鉛の板に見えるものに、種くらいのでっぱりが出ている作品です。これは鉛が放射能を通さないことに着想を得た作品で、未来に確実に種を伝えるためにこうしているようです。これが役に立つようなことには成って欲しくないものです。
 参考記事:河口龍夫展 言葉・時間・生命 (東京国立近代美術館)

遠藤利克 「コンテナー -焼かれた言葉-」
沢山の黒い大きな鉄カゴに入れられた無数の焼かれた本です。心なしか匂ってくるようなw 真っ黒でぼろぼろになっていて死を彷彿しました。焚書は本能的に怖いものを感じます。

若林奮 「正立方体」
正立方体の作品で、この中に文字が刻まれた銅版画がまるめれらて収められているようです。これも本と言えるのかどうか…w 

会場を出ると別室に先ほどの蝶の標本と同じように渡辺英司氏の作品がずらりとならんだ小部屋もありました。こちらはキノコ、葉っぱ、花などの図鑑が切り抜かれ、野原のようでした。

ということで、本を主題にした様々な現代アート作品が並び、各アーティストの独創的な感性に触れることができました。終わってしまってからのご紹介で申し訳ない限りですが、面白い展示でした。今年辺りから電子書籍は日本でも広がってくるのではないか?と言われていますが、本は本で大事にしていきたい文化です。
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