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琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 【出光美術館】

つい先日の日曜日に、出光美術館で「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―」の第2部「転生する美の世界」を観てきました。1部とはガラリと変わり、絵画作品は全て入れ替わっているようでした。
 参考記事:琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)

P1170632.jpg

【展覧名】
 酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―
 第2部 転生する美の世界

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅

【会期】
 第1部 煌めく金の世界  2011年01月08日(土)~02月06日(日)
 第2部 転生する美の世界 2011年02月11日(金)~03月21日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日13時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
始まって3日目でしたが既に混みあっていて、大盛況となっていました。1つの作品に2~3人がつくような感じで、場所によっては人だかりができていました。

内容としては俵屋宗達らが中心だった1部と比べて、酒井抱一とその弟子の鈴木其一の作品が中心となっていました。非常に素晴らしい作品の数々にテンションも上がりっぱなしですw 詳しくは各章ごとに気に入った作品と共にご紹介しようと思います。


<第1章 琳派の系譜 ―風神雷神・歌仙・物語絵>
最初のコーナーはいきなり目玉作品が展示されていました。

鈴木其一 「三十六歌仙図」
時代を超えた三十六歌仙が所狭しと描き込まれた掛け軸です。それぞれの衣の色の鮮やかさもあり、非常にカラフルな印象を受けます。人々は流れるように配置されていて、実際に数えると35人いるようです。(もう1人は高貴な斎宮女御であるため、御簾の裏に隠れている) また、この作品は絵の周りの表装の部分も肉筆で描かれていて、天と地の部分に流水に扇紋、中廻しに幾何学的な蜀江文が施されていて、作品の華やかさを盛りたてていました。素晴らしい作品です。

参考画像
1245800078_183.jpg

酒井抱一 「風神雷神図屏風」 ★こちらで観られます
2曲1双の屏風です。師弟関係はありませんが琳派の始祖である俵屋宗達、尾形光琳と共通の画題で、光琳の影響を強く感じます。光琳の風神雷神は先日観たばかりですが、比べてみるとややこちらのほうが2神が大きく描かれているように思いました。また、一見お互いに視線を合わせているように見えましたが、よくよく見ると微妙に合わないなど、光琳の作品との違いもあるようです。どことなくこちらは軽やかで少し気安い感じがするかな。これを観るのは3年ぶりくらいなので、今回は貴重な機会だと思います。
なお、この作品からは離れていましたが、宗達・光琳の作品の写真もあります。比べて観ると面白いかと。
 参考記事:本館リニューアル記念 特別公開 (東京国立博物館 本館)

俵屋宗達 「歌仙図色紙(大伴中納言家持)」
大伴家持の肖像と歌が描かれた色紙です。家持は線で描かれ、シャープな印象を受けます。色紙の方は金で描かれた草木を背景に、流れるような字が書かれていました。解説によるとこれは元々、三十六歌仙として6曲1双の屏風に貼り付けられていたものだそうです。完成作を観てみたかったですね…。何とも残念なことです。

この辺には宗達作と伝わる作品が並んでいました。下手すると全部メモする勢いになるので、ここはあえて割愛します。

酒井抱一 「八ツ橋図屏風」
メトロポリタン美術館が所有する尾形光琳の同名の作品を模倣した屏風です。根津美術館の燕子花図屏風にも似ているけど、あれには橋がないのでちょっとまた違うかな。金地にたくさんの燕子花(かきつばた)がリズミカルに描かれ、それを縫うように簡素な橋がかけられています。近くにあった写真で光琳の作品と比べると、色が淡くてスッキリした印象を受けるかな。燕子花の配置も整理しているようです。私としては光琳のほうが好きですが、こちらもかなり見応えがありました。
 参考記事:国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開 (根津美術館)


<第2章 薄明の世界 ―江戸琳派の銀屏風>
続いて2章は銀屏風のコーナーです。江戸時代中期に銀地屏風の志向が高まったそうで、抱一にとっても創作の要だったそうです。1章でいきなり豪華絢爛な作品が並んでいましたが、こちらは風流な趣を感じる作品が多かったように思います。

酒井抱一 「紅白梅図屏風」 ★こちらで観られます
今回の展覧会で最も好みなのはこの作品です。6曲1双の屏風で、落ち着いた銀地に右隻に紅梅、左隻に白梅が向き合うように描かれています。紅梅の枝は幾重にも曲がりくねって力強さを感じる一方、白梅は湾曲した曲線の枝で簡潔な印象を受けました。白梅の方は銀地に白い花が非常に清廉で、銀が雪か月光のように思えてきました。この趣は銀じゃないと出せない味です。

酒井抱一 「四季花鳥図屏風(裏・波濤図屏風)」
内裏雛のミニチュアの屏風で、表裏両方観られるように展示されていました。表面は金屏風で、大和絵風にケシや杜若、アジサイ、朝顔、桔梗など四季の花が鮮やかに描かれています。それに対して裏面は銀地に胡粉で、うねる波が描かれていて、激しい印象を受けました。こちらも銀と白が素晴らしい作品でした。
目線を作品の位置に合わせないとよく分からないのでご注意。

鈴木其一 「芒野図屏風」
銀地にびっしりと、単純化されたススキの野原が描かれています。そこに蛇行するようにもやが立ち込めていて、これは月光の中の霧を描いているようです。静かな空気感と共に、幻想的な雰囲気を漂わせていました。

この辺りには尾形乾山の焼き物(これも凄く良い)もありますが、今回は焼き物のご紹介は割愛します。何せ絵だけでも凄いことになってるのでw


<第3章 抱一の美 ―詩情性・情趣性の絵画>
続いて3章は酒井抱一のコーナーです。酒井抱一は姫路城主の酒井雅楽頭家という名門武家の次男として、江戸の別邸で生まれました。若い頃から能や茶、俳諧を嗜んでいたようで、狩野派や南蘋派、円山・四条派などの絵も研究していたそうです。やがて40歳くらいから尾形光琳の画風を学んだ(私淑)そうで、ここには琳派風作品の初期の作品も展示されていました。
 参考リンク:酒井抱一のwikipedia 

酒井抱一 「燕子花図屏風」 ★こちらで観られます
青の杜若(2本だけ白)が群生している様子が描かれた屏風です。花はコの字を左右反転したように配置されていて、何故か中央部が余白になっていて洒脱な印象を受けました。色は鮮やかですが細やかさがあり、奥の方の花は濃く手前は少し明るいなど、色に差があります。葉っぱには滲みを使った「たらしこみ」の技法も見られました。また、右下の方の葉っぱには、とんぼが留まっている様子が描かれ、優美な印象を受けました。
解説によるとこれは41歳の頃の作で、琳派風の草花図を描き始めた初期のものだそうです。

酒井抱一 「十二ヵ月花鳥図貼付屏風」
6曲1双の屏風で、1扇ごとに1ヶ月ずつ、1月~12月の代表的な花鳥が描かれています。右隻から1月なのですが、展覧会の流れは左隻からなので、気づかないと逆行して見ることになるかもw 特に気に入ったのはアジサイで、色合いが何とも上品で雅な雰囲気がありました。これも今回の見所の1つだと思います。


<第4章 其一の美 ―明快性・機知性の絵画>
最後は抱一の弟子の其一の章です。其一は神田の紫染職人の子で、18歳で抱一の内弟子となりました。その作風には確かな描写に裏打ちされた構図と機知な趣向があるそうで、理知的な作品と解説されていました。
 参考リンク:鈴木其一のwikipedia

鈴木其一 「桜・楓図屏風」
6曲の小さい屏風です。手前に満開の桜の木のてっぺん辺り、奥に青々とした楓の葉とどっしりした幹が描かれています。華やかさと重厚さが対比的で、色もピンクと緑で対照的な面白さがありました。

鈴木其一 「四季花木図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風です。右隻は梅や牡丹、杜若など春夏の草花が描かれ、左隻は楓や桔梗など秋冬の草花となっています。大和絵や琳派らしい雰囲気を感じる一方で、この作品はどことなく中国画的なものを感じました。(其一は他の琳派の絵師に比べるとそんなに好きでもないのもそのせいかもw) 


ということで、非常に満足できる内容でした。これだけの展示が1ヶ月ちょっとしかないのは勿体無いとしか言いようがあります。気になる方はお見逃しのないようお早めにどうぞ。お勧めの展覧会です。
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