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20世紀のポスター[タイポグラフィ] 【東京都庭園美術館】

前回ご紹介した畠山記念館の展示を観た後、東京都庭園美術館にハシゴして「20世紀のポスター[タイポグラフィ]-デザインのちから・文字のちから-」を観てきました。

P1170659.jpg P1170654.jpg

【展覧名】
 20世紀のポスター[タイポグラフィ]-デザインのちから・文字のちから-

【公式サイト】
 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/typograph/index.html

【会場】東京都庭園美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】目黒駅(JR・東京メトロ) または 白金台駅(東京メトロ)
【会期】2011年01月29日~03月27日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_③_4_5_満足

【感想】
天気の悪い寒い日だったし、そんなに混んでいないだろうとたかをくくっていましたが、結構混んでて驚きました。若い人が多く、小さな部屋は人でごった返すくらいの人気ぶりでした。その為、ちょっと早足での鑑賞となりました。

さて、今回の展示ですが「タイポグラフィ」、つまり印刷物の文字の書体に関する展示となっています。冒頭にざっくりと1900年以降のタイポグラフィの流れについて説明されていて、それによると20世紀前半に構成主義やバウハウスに触発されて、シンプルな構造の「サンセリフ」という書体を中心にしたポスターが現れたそうです。その後、1950年~60年代のドイツやスイスでは画面を水平垂直に分割して文字や写真を構成する「グリッドシステム」が現れました。また、1960年~70年代のアメリカではヒッピー文化の中からサイケデリックな文字が生まれ、1980年~90年代はパソコンの登場で新たな時代を迎えたようです。 この展示ではそうした年代別に章が分かれ、110点程度ものポスターが並んでいました。詳しくは章ごとに気になった作品と共にご紹介していこうと思います。なお、今回の展示は難解な展示の割りに個々の作品の解説はあまり無かったので、私のてきとーな感想のみとなりますw


<第1部 1900s-1930s 読む文字から見る文字へ:タイポグラフィの革新>
タイポグラフィの起源は15世紀の活版印刷にまで遡るそうで、その後 書物に美しさが求められるようになってタイポグラフィと呼称されるようになりました。20世紀には「サンセリフ」=ゴシック体が生まれて奨励され、新しいタイポグラフィの流れはニュータイポグラフィと呼ばれて多くのデザイナーに影響を与えたそうです。ここにはそうした時代の様々なポスターが並んでいました。

エル・リシツキー 「ソヴィエト連邦展」 ★こちらで観られます
男女が並んで写っているポスターです。よく観ると2人の顔が重なっていて、男の左目と女の右目は1つの目となっています。頭には赤く「USSR」の文字があり、ソヴィエト時代のロシアの独特の雰囲気が出ていました。
 参考記事;
  ロシアの夢 1917-1937 革命から生活へ-ロシア・アヴァンギャルドのデザイン (埼玉県立近代美術館)
  「カナダ・アニメーション映画名作選」と「無声時代ソビエト映画ポスター展」

ヴィルヘルム・デフケ 「"砂糖":ドイツ砂糖製造加工産業展」
蜂を幾何学的に簡略化して描いたポスターです。同じ太さのまま直角直線を使った文字は実直で読みやすい感じでした。
今回の展示は文字が主役ですが、絵の方も面白い作品が多かったりします。

ヴィルター・ケッヒ 「装飾のない形態展」
文字が集まってペンチやトンカチのような形になっているポスターです。文字の線の部分が非常に太く、圧迫されるような感じを受けました。力強いけどちょっと野暮ったいかもw

マックス・エルンスト 「シュルレアリスム国際展」
奇妙なものをもつ裸の男性像と指差す出が円を描くように描かれたポスターです。(意味不明ですみませんw 何せシュールな絵なので…) 真ん中に文字あり、2種類の文字が使われているようで、例えばNは縦横の比率が1:1くらいの軽やかな文字と、3:1くらいの迫ってくるような文字となっていました。ちょっと書体が違うだけで結構印象が違うのがよく分かりました。
 参考記事:シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)

A.M.カッサンドル 「キナ入り食前酒デュボネ」 ★こちらで観られます
直線や直角、半円など組み合わせてワインを注ぐ男が描かれた作品です。文字は少し太めで簡潔な印象を受けました。カッサンドルは大好きなので、この作品も気に入りました。
 参考記事:
  所蔵作品展 アール・デコ時代の工芸とデザイン (東京国立近代美術館 工芸館)
  アール・ヌーヴォーのポスター芸術展 (松屋銀座)


<第2部 1940s/1950s タイポグラフィの国際化:モダンデザインの展開と商業広告の拡大>
ニュータイポグラフィの精神は第二次世界大戦の後、スイスで「国際様式」としてまとめあげられました。それには3つの特徴があるそうで、
 ①グリッドによる機能的な組版
 ②目的に適した画像と文字の使用
 ③サンセリフ体の使用
が挙げられていました。また、その一方では、1940~50年代はイラストレーションのポスターも盛んに作られていたそうで、その2つの傾向は時に融合しながら新たなポスターを生んでいったようです。

ケネス・ハーク 「すべてのニュースを正しく得よう」
枠に区切られて以下の文字が描かれたポスターです。
get  all  the  news
and  get  it   right
the  New  York  Times
上段と中段は読みやすい文字で書かれているのですが、下段だけ装飾的な文字になっていて面白かったです。枠に収まっているところはグリッドの考えに似てるかも。

レイモン・サヴィニャック 「ダンロップ社」
車を運転するポーズの人が浮くように描かれ、4つのタイヤと予備のタイヤも浮いているように見えます。運転手とタイヤ以外の車が透明になった感じと言った方がわかりやすいかな。右上にはDUNLOPと社名が描かれていて、見覚えがある書体に思いました。

山城隆一 「森・林」
白地に「森」と「林」という漢字が大小様々に沢山書かれたポスターです。ちょっと怖いくらい並んでいますが、密集しているところは森っぽさが出ていて面白かったですw

マックス・フーバー 「モンツァ・グランプリ」 ★こちらで観られます
何色かの矢印が左回りにカーブを描いて、レースのカーブを彷彿させるポスターです。上に書いてある文字も、左側は手前になっているように大きく右側は小さくなり、斜めに書かれていてスピード感を感じさせました。これは今回の展示の中でもかなり気に入りました。

1階はこの辺りで終わりです。2階への階段の踊り場にもポスターが展示されていました。バウハウスやダダ展のポスターだったかな。
 参考記事:バウハウス・テイスト バウハウス・キッチン展 (パナソニック電工 汐留ミュージアム)


<第3部 1960s/1970s 躍動する文字と図像:大衆社会とタイポグラフィの連結>
1960年代になるとアメリカの学生運動の高まりや自由なファッション、ポップな音楽、ヒッピー文化などがポスターにも影響を与えたそうです。国際様式を学んだデザイナーの中からもタイポグラフィを再検討する動きが現れたのもこの頃だそうです。

横尾忠則 「大山デブコの犯罪」
歌舞伎で使われる「大入」の文字(勘亭流?)があり、白のほうに太めの女性が腋毛を見せるように包丁を振り上げている姿を描いたポスターです。ちょっと馬鹿馬鹿しい雰囲気かなw 背景には富士山とかステレオタイプな日本のイメージ風景が広がりますw 右側には「次の職業の方はご招待」と書かれ、自衛隊、ストリッパー、立ちんぼ、などなどが挙げられていたり、特別出演に「アフリカ黒人」と書かれているなどおふざけな感じがするポスターでした。まあ、タイトルもからしてふざけてますねw

ウェス・ウィルソン 「グレイトフル・デッド、ジェームズ・コットン・ブルース・バンド、ローター&ザ・ハンド・ピープルのロック・コンサート」
ピースマークの車輪のようなものを持つフードを被った女性を描いた作品で、曲線がどこかアールヌーボー的な感じを受けます。ぐにゃぐにゃした文字は古代遺跡の文字みたいな印象を受けました。これも結構好みかな。この辺にはウェス・ウィルソンの作品が5~6点並んでいました。

ロバート・インディアナ 「ロバート・インディアナ[LOVE]展」
新宿にもあるロバート・インディアナの「LOVE」の彫刻をそのままポスターにしたような作品です。(ポスターでは青地に緑色になっています。) こうして改めて文字として見ても、遊び心とポップさを感じて面白いです。
 参考リンク:ロバート・インディアナのwikipedia

この辺は狭いので混雑感がありました。


<第4部 1980s/1990s 電子時代のタイポグラフィ:ポストモダンとDTP革命>
1980年代にはデザインが求められ、「ポストモダニズム」という流れが生まれました。歴史的な様式の引用や折衷的な表現が登場し、さらに90年代にアップルのパソコンが発売されるとその傾向が加速したそうです。ここにはそうした新しい流れの作品が並んでいました。

ポール・ランド 「アイ・ビー・エム」
「目、蜂、M」の絵と文字が並んでるポスターです。英語にして発音すると、Eye、Bee、Mですw 蜂の縞模様はIBMロゴの縞模様のようで、よく似合っています。なぞなぞみたいな発想ですが、思わずニヤリとしてしまうポスターでした。

福田繁雄 「狂言」
黒地に太い白の渦が巻いていて、渦の両端に足袋を履いた足が描かれているポスターです。非常に軽やかなステップを思わせ、洒落た感じがします。下には赤い字でKYOGENと書かれ、伝統ある狂言も現代的なセンスで表現されているように思いました。

五十嵐威暢 「EXPO'85」
機械か建物の図面のような立体的なオブジェが「EXPO」の文字の形になっているポスターです。上にはEXPO85、下にはつくば万博のマークが入っていました。これを文字と言うのか分かりませんが、ちょっと懐かしいので反応しましたw

浅葉克己 「アジアのタイポグラフィ」
ノートの罫線のようなものに、牛の角やウサギを思わせる象形文字が描かれたポスターです。ある意味、一番ストレートに文字の意味を感じるかなw 素朴さと先進的な雰囲気が混在する作品でした。


と言うことで、結構面白いポスターに出会うことが出来ましたが、もうちょっと説明が欲しいかな…。文字の力がテーマでしたが、絵の力の方に気が行ってたようにも思うので、ちょっと企画とは違う楽しみ方をしてしまったようにも思いますw 空いていればもっと咀嚼できたかも…。 私には難解でしたが、デザインを志す人には面白い展示だと思います。
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Comment
No title
この展示は気になって行きたいと思っています。
近いからいつでもと思っていると終わってしまうので気をつけないと・・・。

この展示会のポスターはこの種の仕事をしている人にはなるほどと思うポスターです!
Re: No title
>きぼう丸さん
コメントありがとうございます^^
この展示はクリエイターさん向けの内容かもしれません。
私には難解でしたが、様々なタイポグラフィとデザインが並んでいますので、
そういう仕事の方には得るものが多いと思います。
結構人気があるようですので、お早めにどうぞ^^
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