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琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (2回目)【出光美術館】

もう終わってしまった展示ですが、震災の前に、出光美術館で開催されていた「琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界」に再度行ってきました。せっかくメモを取ってきたので、一応ご紹介しておこうと思います。(この展示は3/11の震災で打ち切りとなってしまいました)
 参考記事:
  琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第1部 煌めく金の世界 (出光美術館)
  琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派― 第2部 転生する美の世界 (出光美術館)

P1170687.jpg

【展覧名】
 酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―
 第2部 転生する美の世界

【公式サイト】
 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

【会場】出光美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】JR・東京メトロ 有楽町駅/都営地下鉄・東京メトロ 日比谷駅


【会期】
 第1部 煌めく金の世界  2011年01月08日(土)~02月06日(日)
 第2部 転生する美の世界 2011年02月11日(金)~03月21日(月)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間10分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日13時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_4_⑤_満足

【感想】
3月の上旬に行ったのですが、2月中旬に行った時と同じくらいの混み具合で、1つの作品に2~3人がつくような感じでした。
さて、早速内容についてですが、各コーナーの趣旨や代表的な作品は以前の記事でご紹介したので、今回は以前ご紹介した作品以外で気になった作品についてご紹介しようと思います。 (補足的な感じですので、以前行ったときの記事を先に読んでいただけると嬉しいです^^;) 


<第1章 琳派の系譜 ―風神雷神・歌仙・物語絵>
まずは風神雷神のあった章で、まだご紹介していなかった作品についてです。

俵屋宗達・烏丸光広 「西行物語絵巻 第一巻」
これは離宮の鳥羽殿での歌会の様子を描いた作品で、宗達が絵巻物を模写したもののようです。屋敷に歌人達が座って並んでいて、その部屋の襖には山水画が描かれています。昔ながらの大和絵風であり、鮮やかで華麗な色彩で細やかかつ優美に描かれていました。 解説によると、出家前の西行法師が鳥羽上皇に賞賛されて太刀を貰うシーンらしいのですが、それっぽいものは見当たらなかったかな。

伝 俵屋宗達 「源氏物語図屏風残闕(桐壺)」
宗達の工房で作られた作品の1枚で、元は6曲1双の屏風のうちの1場面だったのを額縁に収まるくらいにしたものです。源氏物語を主題として54図あったらしいですが、これは「桐壺」の場面を描いたもので、市松模様の床の建物の中の人と、牛車の前で地面に座る人々が描かれています。私としてはちょっと硬い感じも受けましたが、解説では古風な図様から離れた装飾的で華やかな作風と説明されていました。

伝 俵屋宗達 「源氏物語図屏風残闕(葵)」
こちらも源氏物語を主題とした作品で、元は8曲1隻の屏風の1場面だったものの1つのようです。葵の「髪削」の場面で、2人の十二単の女性と、碁盤の上に乗る幼い紫の上、その後ろでハサミをもって髪を切ろうとしている光源氏が描かれています。緑の畳の上に女性達の着物が映えて何とも優美な感じがしますが、どこか悲しそうな雰囲気も感じました。(この場面のことはよく思い出せないのがもどかしいw)


<第2章 薄明の世界 ―江戸琳派の銀屏風>
続いて2章の銀屏風のコーナー。

伝 尾形光琳 「流水図屏風」
「光琳波」と呼ばれる流水文を描いた2曲の屏風です。単純化された流水が下方にうねるように描かれていて、上部は空白となっています。波の周りには銀砂子が撒かれ、所々には金砂子も混じっているようでした。流水文に合わせて銀の特性をうまく利用した作品じゃないかな。解説によると元は伝 宗達の「燕子花図屏風」の裏面に描かれていたそうです。

酒井抱一 「夏秋草図屏風草稿」
屏風の草稿で、本画は尾形光琳の雷神風神図屏風の裏に描かれていた「夏秋草図屏」です。(本画は東博にあるのですが、去年見逃してしまった!) 右隻に夏草、左隻に秋草が描かれ、お互いに対になるように草がなびいています。下絵とは言え、伸びやかな雰囲気で描かれていて見応えがあり、軽く色もつけられていました。解説によると、光琳の描いた雷神の裏は夏草、風神の裏は秋草となっていたようで、光琳への敬意と、それに負けずに競演した抱一の意気込みを感じます。

鈴木其一 「藤花図」
大きな掛け軸で、水墨画風の柔らかい筆致で描かれています。大きく描かれた藤の花が垂れ下がり、画面全体に銀砂子が散らされていますが、銀は変色して黒くなっているのが残念です。しかし、藤の色は鮮やかで、微妙な濃淡で表現された色あいでした。本来はどんな絵だったのか観てみたい…。銀は酸化してしまうのが弱点ですね。


<第3章 抱一の美 ―詩情性・情趣性の絵画>
3章は今回の主役である酒井抱一のコーナー。

酒井抱一 「糸桜・萩図」
2幅対の作品で、右幅は春の糸桜、左幅は秋の萩が描かれています。糸桜は、枝一本だけ大きく上に突き出してから下に垂れ下がっているのが目を引きました。また、短冊のようなものがついていて、これには抱一自身の俳句が書かれているようです。一方、萩にも真ん中辺りに赤い色紙があり、こちらにも自作の俳句がありました。萩の上の枝がなびいているのが、右の糸桜と呼応するようだと解説されていました。

酒井抱一 「糸桜図・燭台図扇面」
前述の糸桜を扇子にしたような作品です。まあ、モチーフは似ているけど、こちらの方がより軽やかな感じに思えたかな。洒落た扇子でした。

原羊遊斎・酒井抱一・鈴木其一ほか 「蒔絵下絵帖」
蒔絵師の原羊遊斎との合作の下絵です。簡潔ながらも優美な図案の画帖が並び、それを基にしたと思われる蒔絵も並んでいました。琳派らしい雅さのある作品郡で、いずれも好みでした。


<第4章 其一の美 ―明快性・機知性の絵画>
最後は抱一の弟子の其一のコーナーです。

鈴木其一 「蔬菜群虫図」
きゅうりと茄子がなっている様子を描いた作品です。深い緑の葉っぱが生い茂り、1羽の雀やたくさんの虫が周りに集まってきています。色鮮やかで細密な描写もある一方、どこかシュールさを感じるほどの賑わいで、ちょっと不思議な感覚を受けました。下の方の葉っぱの何枚かが黄色く変色しているのは意味深な気がしましたが、気のせいかな??

鈴木其一 「立葵図」
赤、白、ピンクの花を咲かす立葵を描いた作品です。色は強いですが落ち着いた雰囲気を感じます。解説によると、光琳や乾山も立葵をよく描いていたそうで、彼らは上にまっすぐに伸びるように描いているのが多かったようですが、この作品では右端の1本が斜めになっているのが抱一の独自性だと説明されていました。敬意を払いつつも独自性を出そうとしていたのですね。


ということで、途中で終わってしまったのが残念でならない展示でした。まあ、今年はまだ根津美術館の光琳の展示なども残っていますので、そちらにも期待したいところです。
それにしても、地震で屏風が倒れたなんて噂も聞きましたが、大丈夫だったんでしょうか…。 後世に残すべきものなので、地震による文化財への影響も気になるかぎりです。

この後、三菱一号館美術館へハシゴしてきました。
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Comment
こんばんは。w
お久しぶりです、Tomです。

ブログ、おかえりなさいませ!^^

未曾有の震災で、被災地はかなりの被害が
出てしまいましたが、
21世紀さんのところは大丈夫でしたでしょうか。;

いまだ、夜にちょっとした余震がありますが、
こちら関東地方はかなり街の空気もいつもの通りに
戻ってきました。
買占めも徐々に落ち着いてきたようです。
はやく被災地にも物資が行き届くと良いですね。

復興のため、出来れば美術鑑賞なども
考えているのですが、これもなかなか。
シュルレアリスム展、いまだ観ていませんが、
この展示会は逃しません。w

シュルレアリスムといえば、
先週のテレ東「美の巨人」は、マグリットだったらしいのですが、
Tomとしたことが、見逃してしまいました。;

くやしいです!!(ちょっと古いですね。笑)
Re: こんばんは。w
>Tomさん
復活いたしました。
私は物理的な被害は無かったのですが、この10日あまり続いたニュースの暗さには参りました。特に原発の追い討ちはいまだに心配です。
あとは停電が来るのも大変ですね。先週は自宅勤務だったので食らいまくてましたw とは言え、被災地の方の悲しみに比べれば何てことも無いレベルかな。

昨日までの3連休では臨時休館している美術館も多かったですね。私も震災後はまだ美術館に行っていません。
シュルレアリスム展は期間は長いですが、人気ですのでお早めにどうぞ^^

>先週のテレ東「美の巨人」は、マグリット
私はたまたま見ていました。(家でひきこもってたのでw) あれって再放送しないのかなあ。
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