江戸の人物画―姿の美、力、奇 (前期 感想前編)【府中市美術館】
今日(土曜日)、府中市美術館へ行って震災によって開催が延期されていた「江戸の人物画―姿の美、力、奇」を観てきました。この展覧会は前期・後期で大きな入れ替えがあるようで、この日は前期の内容でした。点数はあまり多くない内容ですが、私の好みの展示で、沢山のメモを取ってきましたので、前編・後編に分けてじっくりご紹介しようと思います。

【展覧名】
江戸の人物画―姿の美、力、奇
【公式サイト】
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/jinbutsu/index.html
【会場】府中市美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など
【会期】
前期 2011年03月25日(金)~04月17日(日)
後期 2011年04月19日(火)~05月08日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
※東京電力が発表する計画停電(第2グループ)の時間帯、およびその前30分とその後40分は閉館とのことです。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
地震で延期となり金曜日から始まったばかりですが、空いていてゆっくりと観ることができました。まだ震災も落ち着いたとは言えない頃に行ったので、この日の混み具合はあまり参考にならないかもしれません。私自身も震災後初めての美術鑑賞でした。
さて、この展示を観る上で、気をつけないといけないことが2点あります。まずは計画停電による開館時間の問題で、この美術館は2Gに組み込まれているようです。今後の停電は25グループになるとのことですので、グループ分けを含めて停電の実施状況を確認しておかないと、開催日でも閉館の可能性があります。
もう1つは前期・後期の入れ替えで、リストを確認するとほとんどの作品が入れ替わるようです。もしお目当ての作品がある場合は、事前に公式サイトのリストを確認しておくことをお勧めします。
参考リンク:作品リスト(pdf)
さて、肝心の内容についてですが、今回の展示は江戸時代の絵師たちの人物画にフォーカスしたもので、様々な画風の絵師の作品が並んでいました。変わった絵が多く、驚きと面白さを感じさせるものばかりでした。詳しくはいつものように気に入った作品を通じて章ごとにご紹介していこうと思います。なお、作者名・作品名の前に○を入れたのは通期で展示されているものです。無印は前期のみ展示の作品となります。
<冒頭>
まずは冒頭に2点の作品が並んでいました。
円山応挙 「布袋図」
掛け軸に描かれた等身大くらいの大きさの布袋図で、杖を持って口を大きく開いてこちらを観ています。そのお腹は大きく膨らんでいて、髪や髭、体毛などはかなり細かく描かれています。その一方、服や杖は太い線で大胆に描かれていて繊細さと豪快さが両立しているのが面白かったです。
この隣も項羽を描いた等身大の作品でした。
<美の百様>
続いてのコーナーは美人画などが並んだコーナーでした。浮世絵などで量産され似通った雰囲気があると言われる江戸時代の美人画ですが、このコーナーには個性的な美人画が並んでいました。
鈴木春信 「風炉と美人図」
簾の下がる屋内に座る2人の女性と、表に立つ遊女と2人の禿を描いた作品です。遊女の着物は豪華で、赤や青の色が鮮やかです。繊細な美しさを感じる美人画でした。
祇園井特 「観桜美人図」
桜の木を背景に、様々な着物をきた5人の女性達が横に並んで歩いている様子を描いた作品です。傘を開いている人もいて、どうやらお花見に行くところのようですが、女性の顔つきや人の大きさに何か違和感が…。 どちらも「素朴」と言えば良いかな?? 奥の大きな女性と手前の小さな女性の大きさの差が倍くらいあったりしてちょっと奇妙です。顔は下手なのか特徴を強調しているのか分からず、ちょっと怖いw この絵師は去年、板橋区立美術館の展覧会でも観ましたが一種独特の画風で妙に記憶に残りますw
参考記事:諸国畸人伝 (板橋区立美術館)
志村榛斎 「見立江口君図」
大きな白い象の上に乗った遊女を描いた作品です。象は伝説上の生き物みたいな雰囲気があるかも。遊女の方は頭にたくさんのかんざしをつけて、優美で繊細な着物を着ています。解説によると、これは西行法師の逸話に基づく見立てだそうで、西行法師が大雨の日に遊里で宿を求めたところ、「世を捨てた者が一夜の宿に固執してどうするのか」と断られたそうです。この話が、遊女は実は普賢菩薩の化身だったという説話と結びつき、普賢菩薩がいつも乗っている白い象と一緒に描かれたのがこの絵の題材のようでした。そういわれて観ると遊女に気品を感じます^^;
山口素絢 「洋美人図」
どこの国とも分からない服を着た外国人女性3人と抱かれた子供が描かれた作品です。1は黒人っぽいので明らかに日本人ではありません。正直、作風自体はあまり好みでもないのですが、異色の雰囲気にちょっと驚きました。解説によると、1817年にオランダの商館長が家族を連れて日本に来た時に大騒ぎになったそうで、その家族を描いた絵や版画が出回ったそうです。この作品もその時のものを参考に描いているようでした。
この近くには長澤芦雪の作品もありました。
<「迫真」のゆくえ>
続いては写実性に関するコーナーでした。江戸時代に西洋の写実画法が伝わったようで、それは江戸時代の絵師には驚きだったようです。しかし、彼らはそれをそのまま同じように描いたわけではなく、自分達の表現で描いたようで、独特の作風の作品が並んでいました。
○ 大久保一丘 「伝大久保一岳像」
人物を写実的な西洋画風で描いた作品です。(モデルが男か女かわかりづらいですがw) 着物を着てじっとこちらを観ていて、全体的に日本の絵とは一線を画す雰囲気がありました。解説によると、この作品に似たものは20点程度もあるそうです。しかし、複数人によって描かれているようで、他は作者不明だったり、何のために20点も描かれたのかは謎のようでした。
円山応挙 「三美人図」
3人の女性が描かれた美人画で、1人は立姿で2人は座っています。立っている女性が話しかけているのかな。モデルは応挙の身近な人物のようですが、それぞれの顔は非常に個性的で、美人と言うか微妙なラインですw 上部にある賛には、応挙が現れてから日本の絵は「学画」(手本に従って描く)から「真写」に一変したと書かれているらしく、ありのままに特徴を描いている作品のようでした。
○太田洞玉 「神農図」
これも西洋画のような雰囲気の作品です。白髪で長い白髭の老人が描かれていて、これは中国の伝説の皇帝「神農」(様々な植物を舐めて薬効を調べたとされる人物)のようです。緻密で柔らかい雰囲気で、陰影の表現が西洋っぽさを出しているように思いました。絵の下にはアルファベットが書かれ、「オランダ流のスタイルで描く」という意味のようでした。
この隣には西洋版の神農といえるヒポクラテス像(渡辺崋山)が展示されていました。
<聖の絵姿>
続いては聖人などを描いたコーナーでした。
住吉広行 「賢聖障子絵」
3幅対の掛け軸で、儒教の聖人が描かれています。左から紫、白、赤の中国風の服を着た年老いた聖人が描かれています。結構写実的に描かれていて、それぞれ厳格そうな雰囲気がありました。解説によると、この絵は紫宸殿に飾ってあったものが1788年に燃えたので、それを復興させるために描いた作品の試作のようです。
参考記事:番外編 京都旅行 京都御所
○ 呉春 「松尾芭蕉像」
真正面を向いた、頭巾を被った松雄芭蕉の肖像です。写実的に描かれ、柔和で穏やかな表情で少し微笑んでいるように見えました。最初は聖人のコーナーに何故芭蕉さんが!?と思いましたが、芭蕉は神格化されていったそうで、俳聖として奉るためにこのような正面向きの絵が描かれたのではないかとのことでした。
<ポーズ考>
ここからは後半の部屋です。このコーナーはモデルのポーズに注目していて、日本古来のポーズや西洋画のポーズを取り入れたものなどが並んでいました。
不詳 「舞踊図」
6曲のミニ屏風で、1扇ごとに1人ずつ、扇子を持って様々なポーズで踊る女性の姿が描かれています。着物を翻し、扇子を広げる様子は一瞬を捉えたような感じで、動きを感じます。6枚並ぶとそれが一層強まっているように思いました。
司馬江漢 「学術論争図屏風」
2曲の屏風で、ちょっと色が黒ずんでいるのが残念。画風も画題も完全に西洋風で、背景には西洋の町並みが描かれ、手前に中世風の服を着た4人が身振りをしながら何か真剣に話しているようです。左には本を持っている人がいるので学術論争であることを感じさせます。詳しい解説は無くて何をしているか伝わってくるのが面白いです。身振りも西洋っぽさを感じますw 作風も含めて興味深い作品でした。
円山応挙 「鍾馗図」
等身大くらいの鍾馗様を描いた作品です。右手で後ろに剣を持ち、左手は足のあたりの着物を持ち上げるような仕草をしています。顔はやや右上を観ていて、左足を少し前に踏み出しているような感じでした。私にはこのポーズの意味は分かりませんでしたが、よく考察されたポーズであると解説されていました。理知的な顔をしているとのことでしたが、確かに激しさと言うよりは静かな雰囲気を感じたかな。 なお、この作品は応挙が没した年の描き初めだったようです。
小田野直武 「西洋人物図」
青と赤の衣を纏った老人が、キリスト教の祈りのポーズをしている作品です。掛け軸ですがかなり西洋風です。江戸時代ですので、もちろんキリスト教は禁教の時代ですが、たまたま見た作品をもとに描いているようです。ドラマティックな雰囲気がありました。
ちなみにこの人は秋田派の画家で、2年くらい前にこの美術館でも作品を展示していました。
参考記事:山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年 後期(府中市美術館)
ちょっと中途半端な区切りですが、長くなるので今日はこの辺までにしておきます。ここまでだけでも江戸時代にもこれだけ色々な作風があるのかと驚かされる面白い展示です。 次回は後半の3つの章をご紹介する予定ですが、後半には私の目当ての蕭白の作品も数点あり、さらに満足な内容となっていました。
⇒後編はこちら

【展覧名】
江戸の人物画―姿の美、力、奇
【公式サイト】
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/jinbutsu/index.html
【会場】府中市美術館 ★この美術館の記事 ☆周辺のお店
【最寄】京王線府中駅/京王線東府中駅/JR中央線武蔵小金井駅など
【会期】
前期 2011年03月25日(金)~04月17日(日)
後期 2011年04月19日(火)~05月08日(日)
※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。
※東京電力が発表する計画停電(第2グループ)の時間帯、およびその前30分とその後40分は閉館とのことです。
【鑑賞所要時間(私のペースです)】
1時間30分程度
【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
混雑_1_2_3_4_⑤_快適
【作品充実度】
不足_1_2_3_④_5_充実
【理解しやすさ】
難解_1_2_③_4_5_明解
【総合満足度】
不満_1_2_3_④_5_満足
【感想】
地震で延期となり金曜日から始まったばかりですが、空いていてゆっくりと観ることができました。まだ震災も落ち着いたとは言えない頃に行ったので、この日の混み具合はあまり参考にならないかもしれません。私自身も震災後初めての美術鑑賞でした。
さて、この展示を観る上で、気をつけないといけないことが2点あります。まずは計画停電による開館時間の問題で、この美術館は2Gに組み込まれているようです。今後の停電は25グループになるとのことですので、グループ分けを含めて停電の実施状況を確認しておかないと、開催日でも閉館の可能性があります。
もう1つは前期・後期の入れ替えで、リストを確認するとほとんどの作品が入れ替わるようです。もしお目当ての作品がある場合は、事前に公式サイトのリストを確認しておくことをお勧めします。
参考リンク:作品リスト(pdf)
さて、肝心の内容についてですが、今回の展示は江戸時代の絵師たちの人物画にフォーカスしたもので、様々な画風の絵師の作品が並んでいました。変わった絵が多く、驚きと面白さを感じさせるものばかりでした。詳しくはいつものように気に入った作品を通じて章ごとにご紹介していこうと思います。なお、作者名・作品名の前に○を入れたのは通期で展示されているものです。無印は前期のみ展示の作品となります。
<冒頭>
まずは冒頭に2点の作品が並んでいました。
円山応挙 「布袋図」
掛け軸に描かれた等身大くらいの大きさの布袋図で、杖を持って口を大きく開いてこちらを観ています。そのお腹は大きく膨らんでいて、髪や髭、体毛などはかなり細かく描かれています。その一方、服や杖は太い線で大胆に描かれていて繊細さと豪快さが両立しているのが面白かったです。
この隣も項羽を描いた等身大の作品でした。
<美の百様>
続いてのコーナーは美人画などが並んだコーナーでした。浮世絵などで量産され似通った雰囲気があると言われる江戸時代の美人画ですが、このコーナーには個性的な美人画が並んでいました。
鈴木春信 「風炉と美人図」
簾の下がる屋内に座る2人の女性と、表に立つ遊女と2人の禿を描いた作品です。遊女の着物は豪華で、赤や青の色が鮮やかです。繊細な美しさを感じる美人画でした。
祇園井特 「観桜美人図」
桜の木を背景に、様々な着物をきた5人の女性達が横に並んで歩いている様子を描いた作品です。傘を開いている人もいて、どうやらお花見に行くところのようですが、女性の顔つきや人の大きさに何か違和感が…。 どちらも「素朴」と言えば良いかな?? 奥の大きな女性と手前の小さな女性の大きさの差が倍くらいあったりしてちょっと奇妙です。顔は下手なのか特徴を強調しているのか分からず、ちょっと怖いw この絵師は去年、板橋区立美術館の展覧会でも観ましたが一種独特の画風で妙に記憶に残りますw
参考記事:諸国畸人伝 (板橋区立美術館)
志村榛斎 「見立江口君図」
大きな白い象の上に乗った遊女を描いた作品です。象は伝説上の生き物みたいな雰囲気があるかも。遊女の方は頭にたくさんのかんざしをつけて、優美で繊細な着物を着ています。解説によると、これは西行法師の逸話に基づく見立てだそうで、西行法師が大雨の日に遊里で宿を求めたところ、「世を捨てた者が一夜の宿に固執してどうするのか」と断られたそうです。この話が、遊女は実は普賢菩薩の化身だったという説話と結びつき、普賢菩薩がいつも乗っている白い象と一緒に描かれたのがこの絵の題材のようでした。そういわれて観ると遊女に気品を感じます^^;
山口素絢 「洋美人図」
どこの国とも分からない服を着た外国人女性3人と抱かれた子供が描かれた作品です。1は黒人っぽいので明らかに日本人ではありません。正直、作風自体はあまり好みでもないのですが、異色の雰囲気にちょっと驚きました。解説によると、1817年にオランダの商館長が家族を連れて日本に来た時に大騒ぎになったそうで、その家族を描いた絵や版画が出回ったそうです。この作品もその時のものを参考に描いているようでした。
この近くには長澤芦雪の作品もありました。
<「迫真」のゆくえ>
続いては写実性に関するコーナーでした。江戸時代に西洋の写実画法が伝わったようで、それは江戸時代の絵師には驚きだったようです。しかし、彼らはそれをそのまま同じように描いたわけではなく、自分達の表現で描いたようで、独特の作風の作品が並んでいました。
○ 大久保一丘 「伝大久保一岳像」
人物を写実的な西洋画風で描いた作品です。(モデルが男か女かわかりづらいですがw) 着物を着てじっとこちらを観ていて、全体的に日本の絵とは一線を画す雰囲気がありました。解説によると、この作品に似たものは20点程度もあるそうです。しかし、複数人によって描かれているようで、他は作者不明だったり、何のために20点も描かれたのかは謎のようでした。
円山応挙 「三美人図」
3人の女性が描かれた美人画で、1人は立姿で2人は座っています。立っている女性が話しかけているのかな。モデルは応挙の身近な人物のようですが、それぞれの顔は非常に個性的で、美人と言うか微妙なラインですw 上部にある賛には、応挙が現れてから日本の絵は「学画」(手本に従って描く)から「真写」に一変したと書かれているらしく、ありのままに特徴を描いている作品のようでした。
○太田洞玉 「神農図」
これも西洋画のような雰囲気の作品です。白髪で長い白髭の老人が描かれていて、これは中国の伝説の皇帝「神農」(様々な植物を舐めて薬効を調べたとされる人物)のようです。緻密で柔らかい雰囲気で、陰影の表現が西洋っぽさを出しているように思いました。絵の下にはアルファベットが書かれ、「オランダ流のスタイルで描く」という意味のようでした。
この隣には西洋版の神農といえるヒポクラテス像(渡辺崋山)が展示されていました。
<聖の絵姿>
続いては聖人などを描いたコーナーでした。
住吉広行 「賢聖障子絵」
3幅対の掛け軸で、儒教の聖人が描かれています。左から紫、白、赤の中国風の服を着た年老いた聖人が描かれています。結構写実的に描かれていて、それぞれ厳格そうな雰囲気がありました。解説によると、この絵は紫宸殿に飾ってあったものが1788年に燃えたので、それを復興させるために描いた作品の試作のようです。
参考記事:番外編 京都旅行 京都御所
○ 呉春 「松尾芭蕉像」
真正面を向いた、頭巾を被った松雄芭蕉の肖像です。写実的に描かれ、柔和で穏やかな表情で少し微笑んでいるように見えました。最初は聖人のコーナーに何故芭蕉さんが!?と思いましたが、芭蕉は神格化されていったそうで、俳聖として奉るためにこのような正面向きの絵が描かれたのではないかとのことでした。
<ポーズ考>
ここからは後半の部屋です。このコーナーはモデルのポーズに注目していて、日本古来のポーズや西洋画のポーズを取り入れたものなどが並んでいました。
不詳 「舞踊図」
6曲のミニ屏風で、1扇ごとに1人ずつ、扇子を持って様々なポーズで踊る女性の姿が描かれています。着物を翻し、扇子を広げる様子は一瞬を捉えたような感じで、動きを感じます。6枚並ぶとそれが一層強まっているように思いました。
司馬江漢 「学術論争図屏風」
2曲の屏風で、ちょっと色が黒ずんでいるのが残念。画風も画題も完全に西洋風で、背景には西洋の町並みが描かれ、手前に中世風の服を着た4人が身振りをしながら何か真剣に話しているようです。左には本を持っている人がいるので学術論争であることを感じさせます。詳しい解説は無くて何をしているか伝わってくるのが面白いです。身振りも西洋っぽさを感じますw 作風も含めて興味深い作品でした。
円山応挙 「鍾馗図」
等身大くらいの鍾馗様を描いた作品です。右手で後ろに剣を持ち、左手は足のあたりの着物を持ち上げるような仕草をしています。顔はやや右上を観ていて、左足を少し前に踏み出しているような感じでした。私にはこのポーズの意味は分かりませんでしたが、よく考察されたポーズであると解説されていました。理知的な顔をしているとのことでしたが、確かに激しさと言うよりは静かな雰囲気を感じたかな。 なお、この作品は応挙が没した年の描き初めだったようです。
小田野直武 「西洋人物図」
青と赤の衣を纏った老人が、キリスト教の祈りのポーズをしている作品です。掛け軸ですがかなり西洋風です。江戸時代ですので、もちろんキリスト教は禁教の時代ですが、たまたま見た作品をもとに描いているようです。ドラマティックな雰囲気がありました。
ちなみにこの人は秋田派の画家で、2年くらい前にこの美術館でも作品を展示していました。
参考記事:山水に遊ぶ 江戸絵画の風景250年 後期(府中市美術館)
ちょっと中途半端な区切りですが、長くなるので今日はこの辺までにしておきます。ここまでだけでも江戸時代にもこれだけ色々な作風があるのかと驚かされる面白い展示です。 次回は後半の3つの章をご紹介する予定ですが、後半には私の目当ての蕭白の作品も数点あり、さらに満足な内容となっていました。
⇒後編はこちら
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多分、年に70~100回くらい美術館に行ってると思うのでブログにしました。写真も趣味なのでアップしていきます。
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画像を大きめにしているので、解像度は1280×1024以上が推奨です。
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