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白洲正子 神と仏、自然への祈り 【世田谷美術館】

前回ご紹介した砧公園の桜を観た後、同じ公園内にある世田谷美術館で、「白洲正子 神と仏、自然への祈り」を観てきました。

P1180242.jpg

【展覧名】
 白洲正子 神と仏、自然への祈り
 生誕100年特別展 世田谷美術館開館25周年記念

【公式サイト】
 http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

【会場】世田谷美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東急田園都市線 用賀駅


【会期】2011年3月19日~5月8日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(平日15時頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
この日は有給休暇を取って行ったのですが、平日なら空いているだろうと思っていたら甘かったw 年配を中心に結構混んでいて、小さめの作品などは列を組んで観ているような状態でした。予想以上の人気ぶりに驚きです。 …それもそのはず、この展覧会では仏像・神像を始めとした国宝や重要文化財がいくつも並んでいて、滅多に東京では見られないような西国の寺社所蔵の作品が並んでいました。(さらに先週辺りにテレビでやってたらしいので、それも混雑の原因かも。)

さて、今回の展示は随筆家の白洲正子を主人公として、彼女の西国の寺社巡りを追っていくという趣旨となっています。各作品の前に原稿用紙のようなものに、白洲正子が書き残した感想?のような文があり、当時の想いがわかるようになっています。
 参考リンク:白洲正子のwikipedia

しかし、今回の展示はこのテーマが非常にわかりづらい。 そもそもこのタイトルでは仏像・神像などの展示と気づかれないのではないか?と余計な心配をしてしまうくらいですw 以前、三井記念美術館でも會津八一に絡めて仏像を展示していましたが、あれと似た感じで、白洲正子の部分はよくわからなかったですw
 参考記事:奈良の古寺と仏像 ~會津八一のうたにのせて~ (三井記念美術館)

また、章分けとしては以下の10章からなっていますが、展示順がバラバラで、章を設定した意味がないくらい混じってました。 …ということで、章分けや白洲正子の足跡とかは無視して鑑賞することにしましたw いきなり趣旨をぶっ千切る感じで申し訳ありませんが、今回はそこを抜きにして各作品の感想と会場の様子だけご紹介しようと思います。各章の意図などは公式ページに書いてあるので、気になる方はそちらをご確認ください。 なお、ご紹介する各作品には作品番号も併記しておこうと思います。ハイフンの前の数字が以下の各章に連動していました。

<Ⅰ 自然信仰>
<Ⅱ かみさま>
<Ⅲ 西国巡礼>
<Ⅳ 近江山河抄>
<Ⅴ かくれ里>
<Ⅵ 十一面観音巡礼>
<Ⅶ 明恵>
<Ⅷ 道>
<Ⅸ 修験の行者たち>
<Ⅹ 古面>


1-8 「那智参詣荼羅図」
那智の滝とその周辺を俯瞰するように描いた絵地図のような曼荼羅です。右上に大きな白い滝、中ほどに熊野那智大社とたくさんの人たち、手前には海と船、札所なども描かれています。那智の滝が信仰の対象となり賑わっている様子がよく伝わってくる曼荼羅でした。
この隣にも同様の那智の滝の曼荼羅がありました。これを観ていたら、伊勢神宮の曼荼羅を思い出しました。
 参考記事:伊勢神宮と神々の美術 (東京国立博物館)

6-15 「金銅 十一面観音立像」
小さめの日本最古(飛鳥時代)の十一面観音像です。十一面観音なので頭の上にも10の面を持っているのですが、普通の十一面観音像は1面1面で表情が変えられているのに対し、こちらは特に違いが無いようでした。むしろ消えかけているようにも見えますが…。また、これは那智で経塚と思われる場所から出土したとも解説されていました。温和で静かな面持ちをしているのが優美な仏様でした。
今回は十一面観音が1つの章となっているので多くの作品を見られますが、こちらは特に好みでした。

2-12 「家津美御子大神坐像」 ★こちらで観られます
正面を向き、手に笏(聖徳太子が持ってるようなやつ)を持った神像です。全体的に滑らかな印象で気品があります。解説によると1本の木から出来ているそうですが、結構大きくて一種のオーラが漂っていました。

最初の部屋は周りが暗めで文字を読むのに難儀するかもしれません。また、会場の壁では那智の滝の映像も流していました。

2-9 「彩絵檜扇」
27枚の檜を重ねて作られた扇で、表面に色絵がつけられています。白鷺、竹、梅などが描かれ、金銀の箔が散らされていて、ちょっと褪せている感じもありますが、今でもその色合いが美しく感じられました。解説によると、これは33年に1度の式年遷宮の際に新調されたそうです。

9-7 「役行者神変大菩薩像」
結構大きな役行者(えんのぎょうじゃ)こと役小角(えんのおづの)の像です。(神変大菩薩というのは没後1100年の時のおくりな) 錫杖と巻物を持って座り、歯を出して笑っているように見えます。胸の前が開いていて、凹凸がリアルです。 神仙的な雰囲気と迫力があるように思いました。
なお、今回は修験道の開祖である役行者を題材にした作品も何度も登場します。前鬼・後鬼を連れた作品などもあるので、ある程度知っておいた方がより理解が深くなるかと思います。
 参考リンク:役小角のwikipedia

1-2 「富士曼荼羅図」
中央に富士山、右に日輪、左に月輪が描かれた富士とその麓の絵地図のような曼荼羅です。手前には神社があったり富士山に登っていく人が描かれているなど、古来から富士山が霊峰として信仰されていたことがわかる作品でした。

1-14 「日月山水図屏風」 ★こちらで観られます
6曲1双の屏風です。右隻には緑色の山々と川の流れ、左隻には白い山と川が描かれています。大和絵風で、川のうねりやこんもりとした山の形など、簡略化された表現が何とも雅やかな感じを受けました。これは今回の展示でも見所の1つだと思います。

屏風も出てきてますます何がテーマか分からなくなってきましたw 他にも蒔絵や神像、半跏像など様々な品が並んでいます。

3-7 「銅版法華説相図(千仏多宝仏塔)」
仏塔を銅版に刻んだもので、こちらも国宝です。真ん中に塔があり、その周りには大小沢山の仏の姿が曼荼羅のようにびっしり刻まれていました。これも驚きの作品でした。

2-17 「男神坐像」
奈良時代の貴族のとような姿をした髭の長い男神の座像です。顔の表情だけ大まかに作られている感じで力強さを感じました。素朴だけれども神秘的な雰囲気があります。
この作品の一角は少し小さめの神像が並ぶコーナーで、神仏習合の思想の成り立ちなども紹介されていました。神像も仏像に影響を受けているので、この辺は何の宗派か割り切るのは難しいかなw

6-12 円空 「役行者小角像」
錫杖と独鈷杵のようなものを持った役行者の像です。にこっとした顔で親しみがあり、少し粗い彫りのように見えます。素朴な中に強いエネルギーを感じる円空らしい作品でした。
今回の展示には円空の作品もいくつかあり、円空好きの私としては嬉しいサプライズです。

6-11 「十一面観音立像」
蓮の葉?の入った花瓶のようなものを持つ十一面観音の像です。非常に細かく優美な印象を受ける仏像で、光背は特に緻密で神々しさがよく表現されていました。

4-15 円空 「歓喜天像」
少し小さめの像で、2人で抱き合っているように見えました。抽象的で現代彫刻のような斬新さがあって驚きです。

4-14 円空 「観音像群像(31躯のうち10躯)」
10体の観音像が密集して展示されていました。荒々しく木目や削り跡を感じる彫りで、顔は線で表現されているなど一見すると簡素な印象を受けます。しかし、この彫りが陰影をつけていて円空独特の神秘性を出しているように思います。10体まとまっているのも面白かったです。

8-9 「雲中供養菩薩像(北一号)」 ★こちらで観られます
平等院にある52体の菩薩のうちの1体です。琴のような楽器を弾いて歌うような姿をしていて、雲の上に乗っています。雲は立体的で流れるような感じかな。歌う表情をしている仏像を観たのは初めてかも?? これまた優美な仏像でした。

この作品のあった部屋の壁際には大きめの仏像がずらりと並んでいました。主に十一面観音立像で、毘沙門天などもあります。

6-8 「焼損仏像残闕(千手観音像トルソー)」
焼けて朽木のようになった仏像の残骸です。もはや仏像というよりはオブジェ的な感じになっていますが、首から下の部分が残っていて、大きなくびれと非常に長い足が女性を彷彿させるような美しさがあります。これは仏像の芯の部分のようですが、現代アート顔負けの曲線美がありました。焼けても美しいって凄いなw

6-3 「十一面観音立像」
6本の腕を持った2mほどもある大きな十一面観音です。目をつぶっていて手を前に出すように立っているのですが、顔はちょっと険しいような雰囲気を感じました。
この両脇も十一面観音立像でした。この部屋を出ると休憩コーナーに2分半の映像があり、十一面観音像や神仏習合への白洲正子の想いなどが紹介されていました。

5-1 「福太夫面」
目が釣りあがり、口を開いたお面で、神事の舞を踊る時に用いる面のようです。笑っているとも怒っているとも分からない顔でしたが、民俗的な風土を感じる不思議なパワーがありました。
この辺はお面のコーナーとなっていて、翁や尉といった面もありました。(お面は出口付近にも展示されています)
 参考記事:
  能の雅(エレガンス) 狂言の妙[エスプリ] (サントリー美術館)
  新春を仰ぐ 大倉コレクション 能面・能装束展 (大倉集古館)

面のコーナーの隣には3分程度の映像もあり、白洲正子の西国巡礼やかくれ里を巡った時の想いなどが紹介されていました。また、白洲正子の愛蔵品も並び、勾玉や鈴、蓮弁、石仏、熊谷守一の書、犬の像などが展示されていました。

7-7 「狗児」 ★こちらで観られます
ころっとした感じの子犬の像で、くりっとした目をしているのが何とも可愛らしいです。これは高山寺の所有で、明恵上人ゆかりの品だそうです。隣には明恵上人を描いた作品(国宝)も展示されていました。

9-8 「役行者倚像・前後鬼坐像」
杖と数珠を持った年老いた役行者が座り、その両脇に2体の鬼が侍っている3体セットの作品です。役行者は遠くを見るような目で静かに座っているのに対して、鬼はそれぞれ斧と徳利?のようなものを持ってこちらに吼えてくるような迫力を感じました。

この近くは修験道に関するコーナーで、懸仏や鏡、斧なども展示されていました。そして最後の出口付近は再びお面のコーナーです。何で面のコーナーが2つに分かれているのかよく分かりませんw

6-6 「追儺 子鬼」
鬼の面です。牙が生え、目が飛び出るくらい大きく、眉や鼻もせり出して非常に彫の深い顔立ちになっています。まさに鬼の形相といった感じで迫ってくるような勢いがありました。

10-4 「舞楽面 新鳥蘇(シントリソ)」
流れるような曲線の眉と両頬に赤い斑点のある面で、ちょっと抜けた親しみのある顔に見えました。雅楽の面かな??

10-5 「舞楽面 陵王」
凹凸の激しい金色の顔に巨大な目、頭の上から龍が覗くように顔を見せている異形の面です。鬼のように激しい表情をしていて恐ろしくもありますが、蘭陵王を題材にした作品に共通する華やかな雰囲気もありました。
 参考記事:皇室の名宝―日本美の華 <1期> 感想後編 (東京国立博物館 平成館)
 参考リンク:蘭陵王のwikipedia

出口にも7分程度の映像がありました。観終わってから出る前に一旦入口に引き返して、さらっと二度観をしたのですが16時過ぎには空いているようでした。私が観た時間帯より少し後のほうがいいかもw

ということで、私にはテーマや展示順がいまいち理解できませんでしたが、展示されていた作品は見事でした。白洲正子の文や解説をしっかり読んでいたら鑑賞するのに時間がかかるかもしれません。 まあ、それ抜きでも充分に日本古来の自然信仰や日本の美意識などが詰まっているように思います。特に仏像好きの方には面白い展覧会じゃないかな。 公園の桜と合わせて観にいくのがベストタイミングかと思います。
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