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ベルナール・ビュフェのまなざし フランスと日本 【ニューオータニ美術館】

もう10日ほど前ですが、永田町・赤坂見附のニューオータニ美術館で「ベルナール・ビュフェのまなざし フランスと日本」を観てきました。

P1180121.jpg

【展覧名】
 ベルナール・ビュフェのまなざし フランスと日本

【公式サイト】
 http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/201103_buffet/index.html

【会場】ニューオータニ美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】東京メトロ 赤坂見附駅・永田町駅


【会期】2011年03月29日(火)~05月29日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 0時間45分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日14時頃です)】
 混雑_1_2_3_④_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_③_4_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
結構お客さんがいるようでしたが、特に混んでいるわけではなく自分のペースでゆっくり観ることができました。
さて、今回の展覧会はベルナール・ビュフェの個展となっていて、26点と少数でしたが作風の変化や日本との関わりなども分かる面白い内容でした。詳しくは気に入った作品と共にご紹介しようと思います。

<フランス>
まずはフランスでの活動についてのコーナーです。ビュフェは1928年のパリ生まれで、美術学校時代から頭角を現していたそうで、1947年のサロン・デ・ザンデパンダンに出品し注目を集めたそうです。その後、各国で個展が開催されるなど活躍し、初期は色調を抑えた画風だったのが50年代中ごろからは徐々に鮮やかな色調に変わって行ったそうです。・・・最も評価が高く人気があるのは初期のようですが、色彩が増えてからは人間としての暖かみや情感があると解説されていました。(なんかユトリロみたいな画風の変遷のような気がします)
ここにはそうした画風の変化も感じられるような作品も並んでいました。

ベルナール・ビュフェ 「パレットのある自画像」
白壁を背に椅子に座る自画像で、足元にパレットが置かれています。 非常に縦長で細長い印象を受ける描写で、垂直・水平の線が多く使われた直線的な絵となっています。色合いは落ち着いていて、静かな印象を受けました。

ベルナール・ビュフェ 「アトリエ」
大きな絵で、19歳頃の作品です。窓から外の建物も見える室内の様子を描いていて、壁に掛かったパレット、自転車、ストーブ、椅子、イーゼル、机、右下の方にはイーゼルに向かうビュフェ自信の姿も見えます。これもグレーがかって幾何学的な感じがするかな。 19歳とは思えないほどの世界観で、既にビュフェっぽさが確立されているように思いました。 これは以前、目黒区美術館で観た気がします。
 参考記事:ベルナール・ビュフェ展 (目黒区美術館)

ベルナール・ビュフェ 「カフェの男」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。工場の機械のように大きなコーヒー沸かし機の前でギャルソンが腰に手を当てて立っている姿が描かれ、やはり縦長のっぽな感じで直線が多い構図となっています。色合いもグレーなどが多く、顔は無表情であるなど、静かでありながら少し緊張感があるように思いました。

解説によると、ビュフェはこれを描いた年に南仏に滞在し、翌年から南仏で活動していたそうです。その地の明るい太陽の光はビュフェの画風にも変化をもたらし、色彩も増えて行ったようです。

ベルナール・ビュフェ 「目玉焼きのある静物」
かなり横長のキャンバスの作品です。テーブルの上に乗った青い鍋の上で、目が2つある目玉焼きが焼かれ、周りにはワインボトルやコップなどが置かれています。とにかくキャンバスの形と構図の取り方が変わっていて面白く、テーブルの茶色、背景の黄色、ボトルの緑、鍋の赤、卵の白と黄、コップの中のワインの赤…というように色も多彩でした。明るめな色なのに落ち着いた雰囲気がありました。

ベルナール・ビュフェ 「百合の花」
テーブルの上の花瓶に入った百合の花を描いた作品です。細長く尖ったような印象があり、背景はグレーで全体的に沈んだ色となっていました。解説によると、この作品はモチーフを描く前にキャンバスに白絵具を塗って、乾いてから黒絵具を油とワニスで薄く引き延ばして背景を作っているそうです。こうした技法は1955~1960年くらいまでの作品に観られるとのことでした。
隣にもこれとにた作風のバラの絵も展示されていました。

ベルナール・ビュフェ 「サン・ジャックの塔」
1971年の作品で、橋と町並みが描かれています。幾何学的で輪郭がしっかりした描写は変わっていませんが、木の緑や川の青などは爽やかな雰囲気を出していて、ここまで観てきたビュフェの荒涼とした雰囲気とは違って見えました。

ベルナール・ビュフェ 「アナベル夫人」
1959年の作品で、黒いドレスを着た大きな目の女性が直立して少し手を広げる姿が描かれています。背景は茶色で、黒いドレスが際立って見えました。 この女性はビュフェの奥さんで、避暑地で出会ったそうです。その後、彼女は生涯のミューズとしてビュフェにインスピレーションを与えていたようです。

ベルナール・ビュフェ 「ダニエルとヴィルジニー」
こちらは1971年の作品で、自分の子供たちを描いた肖像です。こちらは色が明るく、タッチも違って見えました。自分の子供はさすがに明るくしたかったのかな?w

ベルナール・ビュフェ 「楽器」
ギターとバイオリン、花の入った花瓶などが描かれた静物です。非常に明るく強い色彩で描かれていて、むしろフォービスムの画家の作品のような強さ(特にデュフィあたり)を髣髴しました。これにはちょっと驚きました。

この辺には18分の映像のありました。「仔牛の頭部2」という絵を描いているビュフェを撮ったもので、タバコを吸いながら結構なスピードでどんどん進めていきます。途中で描き直したりもして、どのように作品が作られていったのかが分かる貴重な映像でした。

ベルナール・ビュフェ 「ボームのテラス」
オレンジ色の壁と赤色の屋根を持つ、木々に囲まれた家を描いた作品です。手前には大きな花瓶がいくつも配置された庭?があり、表には寝そべるためのチェアなども置かれています。これはビュフェが終の棲家とした家だそうで、この作品も色鮮やかで家が迫ってくるような感じすらしました。


<日本>
最後の一角は日本に関する作品が並んでいました。ビュフェは1980年(52歳)に初来日したそうで、彼の名前を冠した美術館を建てた親友が日本人であったこともあり、親日家だったそうです。また、生来物静かだった気質も日本に合ったのではないかとも解説されていました。

ベルナール・ビュフェ 「睨み合い(大乃國)」 ★こちらで観られます
大きな作品です。緑のまわしをした力士と、赤い装束の行事が描かれ、背景には同じような顔の着物の人たちの姿もあります。背景は暗いですが力士と行事は明るい色となっていて、そのせいか遠目で観ても2人が際立っているように思いました。力士は相手とにらみ合っているのか、緊張感のある顔をしていました。

この辺りには以前にご紹介したこの美術館所有の「二羽の鶴」も展示されていました。
 参考記事:新春展 (ニューオータニ美術館)

ベルナール・ビュフェ 「東京の高速道路」
立体的な首都高速を題材にした作品で、2つの道路が合流したところが描かれています。しかし車は1台も走っておらず、人の姿もありません。背景にはビルや曇り空が描かれているのもますます静まり返った雰囲気を出していました。色合いは明るいですがちょっと寂しい印象を受ける作品でした。


ということで、ビュフェの色々な作品を知ることが出来て面白かったです。落ち着いた色調だけでなく多彩な色が使われていたのは特に参考になりました。 それでも彼の作品には侘び寂びのようなものを感じるので日本でも人気があったのかなと思ってみたり。 元々私の好みでもあるので満足できました。
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Comment
No title
こんにちは!
いつもご苦労様です。
オータニ、来月行ってきます。
楽しみです。
静かな緊張と迫力、大好きです、ビュッフェ。
Re: No title
> I M A さん
コメントありがとうございます^^
この展示は結構色んな時期の作風を観ることが出来ました。
ビュッフェは遠くからでも一目で分かる独特のオーラがありますね。
是非、堪能してきてください。
いいですねぇ~
ビュッフェ、大好きなんです!
どうやら、この展覧会、関西ではやらないみたいですね・・・
色彩の無い頃の、緊迫して観てて心が締め付けられるような、
そういう画風が好きなのですが、明るい色も好きになれそうです。
いつもながら、丁寧なご紹介ありがとうございます。
静岡県に確か、ビュッフェ美術館ってありましたよね・・・?
いつか、行きたいです。
Re: いいですねぇ~
>彩月氷香さん
コメントありがとうございます^^
ビュッフェはちょっと哀しい雰囲気の作風に思っていたのですが、
色彩の豊かな作品もあるのがわかる展示でした。

ビュッフェの美術館は一度見てみたいですね。今回の展覧会でも出品されていましたよ。
関西ではやらないようですが、いずれまた観るチャンスはあると思います^^
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