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森と芸術 【東京都庭園美術館】

前回ご紹介した松岡美術館の展示を観た後、東京都庭園美術館に移動して「森と芸術」を観てきました。

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【展覧名】
 森と芸術

【公式サイト】
 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/mori/index.html

【会場】東京都庭園美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】目黒駅(JR・東京メトロ) または 白金台駅(東京メトロ)


【会期】2011年04月16日(土)~07月03日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間30分程度

【混み具合・混雑状況(日曜日15時半過ぎ頃です)】
 混雑_1_2_③_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_③_4_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
会場はそこそこ混んでいて、場所によっては人だかりが出来る感じでしたが、少し待てばじっくり観られるくらいでした。 …とは言え、私が行った日には大きな落とし穴がありました。公式ページに18時までと書いてあったので、この日の美術館ハシゴの最後にしたのですが、観ている途中(5章あたり)で閉館時間が17時と判明!w 最後の方はかなり駆け足で観る羽目となりました。4/29以降は通常通り18時までとなっているようなので、本当に行くタイミングが悪かったのかも…。

さて、肝心の内容についてですが、今回は「森」をテーマにした幅広い美術品の並んだ展覧会となっています。まず最初に玄関に入ってびっくり! 「森のカメラ・オブスクラ」という作品が玄関左手に展示されています。これは様々な置物?が棚に並んでいるような作品で、観ていて楽しくなる品でした。 ★こちらで観られます

美術館の中に入ると主に近代の絵画が中心ですが、流派は多岐に渡り、あまりその区切りを意識せずにこの美術館の空間を活かした楽しい展示風景となっていました。詳しくは章ごとに気に入った作品を通してご紹介しようと思います。 なお、私が観た順と作品リストの順番が結構違うのですが、作品リストの章の順でご紹介しようと思います。


<第1章 楽園としての森>
1章は森を楽園と捉えた作品が並んでいました。アダムとエヴァ(イヴ)の住んでいた楽園についての作品が多かったように思います。

アルブレヒト・デューラー 「アダムとエヴァ」 ★こちらで観られます
こちらは以前、デューラー展でも観た作品と同じかな。森の中のアダムとエヴァが描かれた版画で、超細密な描写となっています。アダムは手に木の枝を持ち、その枝には鳥がとまり、デューラーの名前の書かれた立て札がつけられています。 エヴァは両手に林檎を持ち、右手のは後ろに隠し左手で木に絡まる蛇に与えているように見えます。2人とも股間を葉っぱで隠しているのは既に知性が宿っているためかな?? このシーンがよく分かる作品でした。
 参考記事:アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然 (国立西洋美術館)

この辺は版画作品が並んでいました。

ポール・ゴーギャン 「かぐわしき大地」 ★こちらで観られます
こちらはゴーギャンのタヒチ時代の版画で、タヒチの裸婦とトカゲのようなもの、周りには花や家々などが描かれています。力強く素朴な雰囲気があり、ゴーギャンが求めた未開拓の楽園が表現されているように思います。
 参考記事:ゴーギャン展2009 (東京国立近代美術館)

この辺からあちこちにガレの花器や置物が置かれているのも注目です。ここは建物自体も作品と言えるので、こういう展示センスが心地良いです。

アンリ・ルソー 「エデンの園のエヴァ」 ★こちらで観られます
周りを沢山の植物に囲まれたジャングルのようなところに、花を摘んでいる裸婦(エヴァ)が描かれています。 空には月が浮かび静けさがある一方で、真っ直ぐに伸びた草などから生命力を感じました。好みの作品です。
 参考記事:アンリ・ルソー パリの空の下で ルソーとその仲間たち (ポーラ美術館)

アンドレ・ボーシャン 「楽園の開花」
赤や黄色、紫などの花が咲いている様子を描いた作品です。花は緻密に描かれていますが、配置は不自然なほどに整然と並んでいます。背景には湖などが描かれていますが、こちらは遠近感が合わずシュールな感じすら受けます。ここら辺が素朴派の独特の面白さかな。 ボーシャンは元々植木職人だったので、花の絵は特に見応えがあります。


<第2章 神話と伝説の森>
2章は1階の小部屋です。3章を先に観てしまったw ここには神話や伝説をモチーフにした作品が並んでいました。

アンドレ・ボーシャン 「ニンフたちの洞窟」
海辺の洞窟から出てくる裸婦(恐らくニンフ)と、船から出てきたような4~5人の赤い服の人々が描かれた作品です。洞窟の後ろには緑の木々があり、理想郷を発見されたのだろうか?とストーリーを考えてみたりw 素朴な感じのする作風です。

アンリ・ファンタン・ラトゥール 「二人のオンディーヌ」 ★こちらで観られます
月光を背景に腕を枕にして寝そべる裸婦と、後姿の裸婦が描かれています。左の寝ている裸婦はぼんやりしていて、体の境目は曖昧で精霊のようでした。幻想的な美しさのある作品です。

この他にもシェイクスピアの名場面版画集や失楽園を題材にした版画などがありました。


<第3章 風景画のなかの森>
3章は風景画の歴史についてのコーナーのようでした。風景画の偉大な先人はクロード・ロランで、フランスを出てローマに住み、牧歌的な風景を描いていたそうです。また、他にも自然を敬意を持って描いたバルビゾン派の作品などもこのコーナーにありました。

クロード・ロラン 「小川のある森の風景」
山の中の川の側にいる人たちを描いた作品です。 1人の女性が座り、2人の男性が話しかけているように見えます。その後ろにはロバを追う女性の姿もあり、ちょっとのんびりした感じかな。背景には遠い丘や城のような建物も見え、理想的な風景に思えました。

カミーユ・コロー 「サン ニコラ レ ザラスの川辺」 ★こちらで観られます
森の中の川辺で2人の女性が何か作業をしている?様子を描いた作品です。ややぼんやりした木々の表現や空気感はコローならではかな。のんびりとして心休まる風景でした。

テオドール・ルソー 「森の中の猟犬」
森の中を歩く猟犬を描いた作品で、視線の先には空を飛ぶ鳥の姿も見えます。陰影が強く、森の影の表現がうっそうとした感じとなっていました。森の深さを感じます。

この辺はフォンテーヌ・ブローの森の写真などもありました。クールベやペーニャの作品も面白かったです。

ポール・ゴーギャン 「愛の森の水車小屋の水浴、ポン=タヴェン」
川の側で裸になった子供たちが描かれ、背景には水車がみえています。人物はハッキリ描かれていますが、背景は曖昧で色が中心みたいな感じかな。愛の森っていう意味はよく分かりませんでしたw


<第4章 アール・ヌーヴォーと象徴の森>
4章はアール・ヌーヴォーなどのコーナーでした。とは言え、色々な作風の画家・作家の作品があります。

ギュスターヴ・モロー 「恋するライオン(原画)(『ラ・フォンテーヌの寓話』より)」
木に寄りかかってライオンの頭を撫でている裸婦が描かれた白黒のエッチングです。均整の取れた裸婦はすらっとしていて、優美で神秘的な雰囲気がします。それを観ているライオンも目に知性を感じました。何故モローがこのコーナーなのかはよくわかりません(象徴って方かな)が、これは幻想的で素晴らしい作品でした。

近くにはラファエル前派のバーン・ジョーンズの作品もありました。

エミール・ガレ 「草花文花器」
透き通った黄色がベースの花器です。右の取っ手や下の方は赤透明になっていて、表面には蝶や草花があしらわれていました。自由かつ自然への理解を感じる作品に思います。解説によると、ガレは「我が根源は森の奥にあり」と言って玄人はだしの植物研究家でもあったそうです。

エミール・ガレ 「花器 『アルプスのアザミ』」
深い緑地に緑のアザミの花をあしらった花器です。装飾的で花や葉っぱが盛り上がっています。色合いも綺麗で、大胆さを感じる作品でした。

この辺にはアール・ヌーヴォーを代表するドーム兄弟の作品や、寄木・象嵌を使ったガレの家具などもありました。

ポール・セリジェ 「ブルターニュのアンヌ女公への礼賛」 ★こちらで観られます
今回のポスターにもなっている作品です。様式化された植物の葉っぱの模様(森らしい)を背景に、アンヌ女公という女性に植木鉢のようなものを渡す人と、旗を持つ人、見守る人が描かれています。まるで中世のタペストリーのようで、質感もザラザラした感じに思えます。ぺったり平面的な色合いで、緑地に赤い服がよく目立ちました。

モーリス・ドニ 「聖母月」
白い花を咲かした木の下に座る聖母子と、その周りに沢山の白い衣のシスター?のような人たちが描かれています。全体的に色が淡く爽やかで、装飾的な構成かな。ちょっと不思議な神秘性がありました。ちなみにタイトルの聖母月というのは5月のことを指すそうです。今にぴったりかも。


<第5章 庭園と「聖なる森」>
ここからは2階です。ここには庭に関する作品が並んでいました。

ジェームズ・アンソール 「愛の園」
庭?に集まる貴族風の格好をした人々を描いた作品です。周りはかなり抽象的で、神秘と言うか少し怖いくらいで不安なものを感じました。

隣の小さな部屋にはイタリアのボマルツォの聖なる森(通称:怪物公園)というところの白黒写真が何枚か展示されていました。怪物が大きく口を開けた地獄の入口(★こちらで観られます)や巨人、神話の神の像など造詣の面白いものが撮られていました。


<第6章 メルヘンと絵本の森>
続いては絵本のコーナーでした。この辺から結構駆け足で観てますw

ギュスターヴ・ドレ 「赤ずきんちゃん(『ペローのおとぎばなし』より)」 ★こちらで観られます
ご存知、赤頭巾ちゃんの絵本の挿絵です。白黒で写実的に描かれていて、狼は赤頭巾ちゃんよりも大きい! じ~っと狼を見つめるめは絶対に疑っている目だと思いましたw こんな迫力ある絵本なら全部観てみたい。

この他にも同じくドレの描いた「眠れる森の美女」や、アリスを題材にしたもの、ヘンデルとグレーテルなど、おなじみのタイトルもありました。


<第7章 シュルレアリスムの森>
階段を上がると7章なので、実際にはこちらから観ました。シュルレアリスムの作家のコーナーです。

ルネ・マグリット 「常套句(共通の場所)」
柱の影に隠れた人を描いた作品なのですが、ちょっとおかしい光景であることにすぐ気がつきます。森が柱のようになっていて、手前であるべき光景と奥にあるべき光景が逆転しているのが面白いです。これは「白紙委任状」を彷彿する作品でした。
 参考記事:奇想の王国 だまし絵展 感想後編 (Bunkamuraザ・ミュージアム)

マグリットは3点ありました! しかもどれも面白い作品です。

マックス・エルンスト 「王妃とチェスする王」
これは恐らく国立新美術館のシュルレアリスム展に出ている作品と同じものかな。牛の頭をした人がチェスを指している作品です。すらっとした雰囲気があり、デザイン的にも簡潔で面白いと思います。
 参考記事:シュルレアリスム展 感想後編(国立新美術館)

マックス・エルンスト 「灰色の森」 ★こちらで観られます
廃墟か岩山か分からないものと、空に大きな白い輪が描かれた作品です。超然として静かに佇んでいるような感じを受けました。白い輪は鳥の目のように見えるけど、どうでしょうか。

この辺には植物の拡大写真なども展示されていました。また、その隣の部屋はジャン・アルプの作品を集めた部屋でした。アルプの作風はマティスのジャズを思い起こさせるかな。 他にはマン・レイの「白と黒」の写真作品などもありました。
 参考記事:マン・レイ展 知られざる創作の秘密 (国立新美術館)

ポール・デルヴォー 「世界の果て」
これはリトグラフです。手前に赤い花の帽子?を被る女性、周りは屋外のランプの下で椅子に腰掛ける裸婦などが描かれています。裸婦は魂の抜け殻みたいな感じがして怖いw 画面の奥には黒い服の男が駅に向かっている様子となっていて、裸婦や鉄道といったデルヴォーらしいモチーフが並んでいました。夢の中のような不条理さを感じます。


<第8章 日本列島の森>
最後は日本のコーナーでした。

岡本太郎 「森の家族」
左に白い顔のようなもの、右に黄色い顔のようなもの、中央に9の字みたいな顔?が描かれた抽象的な作品です。激しい色使いとうねるようなタッチが強烈で、凄いエネルギーがありました。
この部屋には他にも沖縄や縄文土器を撮った写真もありました。これについては3月から開催されている岡本太郎展を観れば理解できるかと。
 参考記事:生誕100年 岡本太郎展 (東京国立近代美術館)

男鹿和雄 「もののけ姫 背景画 カット2 (エミシの森)」
スタジオジブリのアニメ映画「もののけ姫」に使われた背景です。青とも緑ともいえない色を基調に、ブナの木が描かれていました。これは白神山地で取材したそうで、深遠な雰囲気が出ていました。

最後の部屋にはこの美術館のある白金の森の昔の写真などが並んでいました。


と言うことで、予想以上に充実した内容となっていて驚きました。デルヴォーやマグリットにも会えるとは嬉しいサプライズ。今年話題の岡本太郎もあれば、モローなどもある… 本当に名品の森のような展覧会でした。これは今期の展覧会でもお勧めの1つです。

おまけ:
美術館の玄関からの景色。
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