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江戸民間画工の逆襲 【板橋区立美術館】

速報でもご紹介いたしましたが、ゴールデンウィークの祝日に板橋区立美術館へ行って、「館蔵品展 江戸民間画工の逆襲」を観てきました。もうすぐ終わってしまうので、先にご紹介しておこうと思います。

美術館の近くにある幟に注目。不便でゴメン(><) ←よし、許した!w
P1180914.jpg P1180907.jpg

【展覧名】
 館蔵品展 江戸民間画工の逆襲

【公式サイト】
 http://www.itabashiartmuseum.jp/art/schedule/now.html

【会場】板橋区立美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】三田線西高島平駅、東武・有楽町線成増駅など


【会期】2011年4月2日(土)~5月8日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間00分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時半頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_4_⑤_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
空いていてゆっくり観ることができました。冒頭でもネタにした通り、どこの駅からも遠いのが大変だからかも…。しかし、この展覧会は面白い品が並んでいる上に無料で、さらに写真を撮ることもできるという至れり尽くせりのサービスとなっていました。

さて、今回の展覧会についてですが、狩野派のような御用絵師ではなく、江戸の民間で活躍した絵師を取り上げた展覧会となっていて、琳派もあれば河鍋暁斎のような幕末の絵師もあるという、結構幅広い内容となっていました。 詳しくは、撮ってきた写真を使って、気に入った作品をご紹介しようと思います。あまり多く紹介するのもあれなので、ほんの一部です^^;

まず入口で驚きました。座敷となっていて、三方の壁を屏風作品が屏風らしく展示されていました。
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また、この展覧会の面白い点の1つは、各作品に独自の新タイトルがつけられているところで、中には笑ってしまうような名前をつけられた作品もありました。せっかくなので、こちらも記載しておきます。

岡田閑林 「花鳥図押絵貼屏風」  新タイトル:「小鳥と花の大合唱」
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こちらは六曲一双の屏風の右隻です。中国の沈南蘋から影響を受けた 南蘋派風の写生画法で描かれているようで、結構写実的でした。
この近くには河鍋暁斎の龍虎図屏風もあり「ドラゴン・タイガー最終決戦」という面白いタイトルをつけられていましたw

続いては奥の展示室。こんな感じで結構な密度で展示されています。
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酒井抱一 「白梅雪松小禽図」  新タイトル:「雪の日の朝」
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この写真だとわかりづらいですが、左の松には雀がとまっています。対となるように向き合っていて右は硬め、左は柔らかめの印象を受けました。凛とした雰囲気があります。

鈴木其一 「漁夫図」  新タイトル:「魚採りは楽しいぞ」
P1180973.jpg
下の方で魚とりしている人たちの姿が見えます。やまと絵や中国からの影響を感じるかな。

鈴木其一 「双鶴春秋花卉図」  新タイトル:「ゴージャスな花を両手に鶴が鳴く」
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新タイトルのセンスにちょっと笑ってしまいましたw 両脇の枝が中央に向かって伸びて三角形を描いているように見えるかな。(枝の先は描かれていませんが) 色とりどりで華やかな印象を受けました。

酒井道一 「桐菊流水図屏風」  新タイトル:「黄金に映える桐と菊」
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今回の展覧会でも特に見栄えの良い作品。道一は抱一の弟子で、師の作風によく似ているように思います。色の組み合わせが鮮やかで雅な雰囲気がありました。
これほど琳派が多かったとは思わなかったので、これは予想外。

野崎真一 「四季花鳥図」  新タイトル:「季節ごとのお花はいかが?」
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4幅対で、右から春夏秋冬の花鳥が描かれています。1幅でも見応えがありますが、4つ揃うと非常に色も構図もバランスが良く感じました。

諸葛監 「松二虎図」  新タイトル:「ガオッ!オイラはトラだ」
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こちらも新タイトルで笑ってしまいました。 結構細かく描かれているのですが、丸々して可愛らしいw 解説によると、朝鮮からの民画のトラを参考に描いているようでした。この時代に江戸にはトラがいませんからね。

この部屋にもまだ他にも良いと思った作品はありましたが、続いては隣の部屋です。

月岡芳年 「芸妓図」  新タイトル:「何かご用?」
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この芸妓図からは非常にすらりとした印象を受けました。確かに左側にいる人と会話をしているような感じかな。月岡芳年が学んだ歌川派らしい作風のようでした。
この辺には美人画も何点かありました。

葛飾北斎 「萩の玉川図」  新タイトル:「人のいない風景」
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元は六玉川を描いた6枚セットだったそうですが、現存は5枚だそうです。これは想像で描かれているとのことでしたが、詩情を感じる作風に思いました。

河鍋暁斎 「鍾馗二鬼図」  新タイトル:「鍾馗の小鬼退治」
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右に虎に乗った鍾馗様、左に逃げる鬼達が描かれています。迫力と威圧感のある鍾馗様は服をなびかせてスピード感もありました。橋にしがみついたりダッシュで逃げる鬼もちょっと可愛いw

加藤信清 「五百羅漢図」  新タイトル:「お経で書いたお坊さん」
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これは以前、この美術館の「諸国畸人伝」でもご紹介した驚異の作品です。右の拡大図を観ていただくと分かるのですが、五百羅漢がお経で描かれています! 間近でミュージアムスコープを使ってようやくわかるくらい細かくて、本当に驚きます。しかもこの作品のように1幅10人×50幅で500人描ききったというのだから、恐るべし偉業です。
 参考記事:諸国畸人伝 (板橋区立美術館)


ということで、作品数はそんなに多くは無いものの、展示方法・解説などが一風変わっていて、非常に面白い内容となっていました。展示期間が短いのが勿体無いくらいです。 もうすぐ終わってしまう展示ですが、この連休でお勧めしたい展示の1つです。
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Comment
楽しい!
いつも楽しみに拝見しています。

屏風を畳に座って見せる趣向がいいですね。
不逞の輩が傷をつけないかと、小者の私は心配なんぞしてしまいます。

新タイトルもグッドアイディアですね。
親しみやすく、また言葉から来るインパクトで印象に残ります。
美術館も努力をしているのですね。

ありがとうございました。
Re: 楽しい!
>白秋マダムさん
コメントありがとうございます^^
私もちょっとハラハラしましたが、これは素晴らしい趣向でした。
屏風を屏風らしく観る機会というのは中々ないですのでw

新タイトルもかっとんでるのが多くて思わず笑ってしまいましたよ。
無料だし、こういう親しみがある展示は良いですね。
小難しい漢字が並ぶよりも子供や美術初心者に美術の面白さが伝わると思います。
最近は商業主義に走り勝ちな展覧会も多いですが、こういう面白いアイディアで文化貢献している方が立派に思います。
これからも応援していきたい美術館です。
No title
「不便でごめん」がいいですねw

誰もが思っていたことをストレートに謝るという・・・
顔文字もいいです^^

京都の細見美術館で板区美の作品を持ち込んで
展示をやったときも、
おもしろ新タイトルがつけられていたのを思い出しました。
他のところもやったら面白いのに~と思います。


お久しぶりです♪
xxxさんお元気ですか?
って、不便な板区美に行ってらっしゃるということはお元気ですね!

屏風、いいなぁ♪
いつの間にか屏風好きになってました(≧∀≦)

わたしはやっとフェルメールを見てきましたよ~♪
すてき。
はじめまして。
幟に大受け♪確かに赦しちゃいます(笑)。

ほんとうに板橋美術館は、学芸員さんがとても頑張っていて、いつもよい企画展が多いのですが、如何せん行きにくい…。
泣く泣く諦めたものも多いです。。

この展覧会はノーチェックでした。
新タイトルの趣向がとても楽しいですね。
今回は(も)残念ながら逸してしまいますが、
しばらく他の展覧会でも心の中でやってしまいそうです、「新タイトル」あそび(笑)。

すてきなレポート、楽しませていただけてよかったです!
Re: No title
>ごじょさん
コメントありがとうございます。
この幟は面白いセンスですよね。私も雨の中歩いてきたのですが、これを観て笑ってしまいました。

細見美術館でそういう展示があったのですね。
きっと新タイトルも面白いものだったんじゃないかなw
こういう展示が増えれば美術鑑賞が好きになる人も多くなりそうですよね。
今後も期待したいところです。
Re: お久しぶりです♪
>アスカリーナさん
コメントありがとうございます。
ご無沙汰しております^^; なんとか元気にやっております。

屏風は日本美術の華だと思っているので、掛け軸より屏風があると嬉しくなっちゃいます。
こういう風に展示しているのも珍しいので、しばらくゆっくり観てきましたよ。

フェルメール展は堪能できたんじゃないかな?? 私もそろそろ2回目に行こうと思っています。
Re: すてき。
>chat_noirさん
はじめまして、コメントありがとうございます!
この幟は人気ですねw 私もここに行くことは稀で、よっぽど気になるものがないと…って感じですが、今回は行ってよかったです。
新タイトルはご紹介した作品よりも面白いものが多々あったので、できればより多くの人に足を運んでもらいたかったのですが、ちょっと紹介が遅くなって申し訳ないです^^;
恐らくまたこういう機会はあると思いますので、また足を運んだらご紹介していこうと思います。

>しばらく他の展覧会でも心の中でやってしまいそうです、「新タイトル」あそび(笑)。
確かにこれは面白そうですねw フェルメール展にはマイケル・ジャクソンそっくりの肖像がある!なんて話題もあったくらいだしw


私が行った展示はちょこちょことご紹介していく予定ですので、また遊びにきてください^^
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■2011/9/29
「週刊文春 10月6日号」に掲載されました
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■2009/10/28
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  → 関東 > 絵画

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