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写楽 (感想前編)【東京国立博物館 平成館】

前回ご紹介した東京国立博物館本館のブッダ展を観た後、平成館に移動して、特別展「写楽」 を観てきました。かなりのボリュームの展示で、メモも多目にとってきたので、前編・後編に分けてご紹介しようと思います。

P1180784.jpg

【展覧名】
 特別展「写楽」

【公式サイト】
 http://sharaku2011.jp/index.html
 http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=706

【会場】東京国立博物館 平成館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】上野駅(JR・東京メトロ・京成)
【会期】2011年5月1日(日)~6月12日(日)
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 2時間30分程度

【混み具合・混雑状況(祝日15時半頃です)】
 混雑_1_②_3_4_5_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_4_⑤_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
こちらは初日に行ったのですが、こちらの展示も結構な混み具合で、一部は列を組んで観ているような感じでした。点数もかなり多くて、じっくり観ていたら2時間半もかかってしまいました。(と言うか、閉館になりそうだったので切り上げざるを得なかった) 混雑状況の確認は公式サイトでもできます。
 参考リンク:
  写楽展の混雑状況
  写楽展の作品リスト

と、ここまで先日の速報の内容をそのままコピーして手抜きしましたw さて、今回の展示は写楽のほぼ全作品を網羅し、無いのは4点という充実ぶりで、写楽以前から写楽以降の影響も含めて、様々な角度から作品を楽しむことができました。…満足度が4なのは、単に私があまり写楽を好きではないということに起因していますので、写楽好きの人には間違いなく大満足の内容だと思います。詳しくはいつもどおり章ごとに気に入った作品を通してご紹介しようと思います。 なお、同じ作品が複数展示されているものもあるので、作品番号も添えておきます。


<冒頭>
最初に簡単に略歴をご紹介すると、写楽は寛政6年(1794年)の5月から10ヶ月間だけ活躍した浮世絵師で、その作品は4期に分類することができるそうです。
 1期:黒雲母摺の大首絵(胸から上の肖像) 28点
 2期:全身像。伝統的形式と表現に戻っている
 3期:細判(縦長の紙)を主に描き、背景を黄色く塗り潰した大首絵
 4期:細判中心。重厚さは無くなった。
冒頭ではハイライト的に大首絵、全身像、背景が黄色い大首絵などが展示されていて、こうした画風の変遷が分かるコーナーとなっていました。

37 東洲斎写楽 「初代大谷徳次の奴袖助」
これは1期の頃の大首絵で、背景は黒雲母摺の作品です。左手で刀を持ち、右手は着物を脱ぐ仕草をして拳を握っています。口を結んでいて、ちょっと憎たらしい顔をしてますw 凄んでいるシーンかな?


<第1章 写楽以前の役者絵>
続いて1章は写楽以前の役者絵のコーナーでした。1629年に風紀を乱すとして女性が舞台に上がることを禁じられたため、歌舞伎は男だけという伝統が始まったそうです。歌舞伎は浮世絵誕生の頃から主な題材とされていたそうで、ここにも歌舞伎関連の作品が並んでいました。

1 「歌舞伎遊楽図屏風」
6曲1双の屏風です。左隻にたくさんの人々が同じ格好をしている歌舞伎の舞台らしき様子が描かれ、右席は遊郭で碁を打ったりしている女性たちなどが描かれています。ちょっとボロボロな感じですが、当時の様子がよく伝わってきました。
この隣には歌舞伎の楽屋を描いた作品もありました。

10 勝川春好 「初代中村仲蔵の石川五右衛門」
赤い隈取をした石川五右衛門を演じる初代中村仲蔵を描いた作品です。顔と胸だけ描かれているので大首絵と言って良いかな? 口を結んで見栄をきっていて緊張感があります。 太い輪郭で描かれていることもあり、迫力を感じました。

この辺には初期の鳥居派や勝川春章などの作品や役者絵なども展示されていました。

13 葛飾北斎 「三代目瀬川菊之丞の正宗娘おれん」
かの葛飾北斎のデビュー作で、勝川春章に入門した頃の「勝川春朗」名義の印があります。 描かれているのは美人画ですがどこか硬い感じがするかな。色は少なく、勝川派らしい雰囲気も感じました。これだけ観ても私には北斎とは分からないと思いますw


<第2章 写楽を生み出した蔦屋重三郎>
続いては写楽を生み出した、版元の蔦屋重三郎に関するコーナーです。蔦屋重三郎は以前、詳しく紹介した展示があったので詳細は参考記事をご参照して頂けると嬉しいのですが、ここでもざっくりとその人脈や功績などを紹介していました。最初の方には吉原細見という遊郭の番付ガイドブックのようなものも展示されています。
 参考記事;歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎 (サントリー美術館)

23 喜多川歌麿 「歌撰恋之部 深く忍恋」
キセルを持っている大きな髪形をした女性像で、少し黒い歯を見せて笑っているような表情です。タイトルは深く忍ぶ恋とのことですが、どの辺がそうなんだろうかと考えこんでしまいましたw 中々見栄えのする作品です。

26 喜多川歌麿 「婦人相学十躰 ポペンを吹く娘」
口でポッペンという当時の玩具を吹いて振り返る美人を描いた作品です。薄いオレンジの市松模様の着物が鮮やかで、明るい雰囲気がありました。恐らくこれは人相学シリーズの1つだと思うのですが、この顔はどういう女性なのかな??と考えましたが、わかりませんでしたw 
近くには蔦屋重三郎展で観た「婦女人相十品 文読む女」も出品されていました。また、歌麿や狂歌の本など蔦屋重三郎の仕事に関する品も並んでいます。

33 栄松斎長喜 「四季美人 雪中美人と下男」
雪の積もる大きな和傘を差した黒い着物の美人と、傘をかぶった下男を描いた作品です。下男は首を下に向けていて、その首に美人が肘を乗せているようなポーズが面白いですw また、繊細で鮮やかな色合いが美しく、カラフルな印象を受けました。


<第3章 写楽の全貌>
写楽は蔦屋から出版されましたが、写楽の登場する少し前は未曾有の不況だったそうで、江戸の三座と呼ばれた芝居小屋も休業するほどだったらようです。やがて賑わいが戻ってきた寛政6年に頃合をみて写楽はデビューします。このコーナーでは同じ時期の他の絵師と写楽の作品を並べ、同じ役者をどのように描いたかを比較するように展示していました。

207 東洲斎写楽 「三代目坂田半五郎の藤川水右衛門」
腕まくりのポーズをしている役者の大首絵です。茄子みたいな形の顔をしているかなw 隣にも同じ役者の絵があったのですが、特徴とポーズは似ているものの、写楽の方がずんぐりした感じが出ているように思いました。 同じ役者の比較シリーズは中々面白いです。

このあたりには興行のパンフレット・ポスター的役割を担った絵本番付なども展示されていました。

213 東洲斎写楽 「三代目佐野川市松の祇園町の白人おなよ」
扇子を持った沢山の簪を差した女形を描いた作品です。鼻が長く目が小さく描かれているのが特徴的かな。隣にあった勝川春英の作と比べると、確かによく似た特徴で同一人物と分かりました。とは言え、やはりこちらの方がデフォルメされている気がします。

221 東洲斎写楽 「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」 ★こちらで観られます
これは写楽の中でも特に有名な作品かな。両手を大きく開いて見栄を切る役者を描いた作品です。口をへの字にして目が釣りあがり、気迫が伝わってきました。
この近くには現在巡回中のボストン美術館の浮世絵展でも展示されていた「市川男女蔵の奴一平」や「初代中山富三郎の松下造酒之進娘宮ぎの」などもありました。
 参考記事:ボストン美術館 浮世絵名品展 (山種美術館)

236 東洲斎写楽 「三代目市川八百蔵の不破の伴左衛門重勝」
雲と雷のような模様の着物をきた役者の全身像です。両手で刀を掴んで見栄を切っていて、全身像だとすらっとした感じがするかな。 近くには同じ格好の役者絵もあり、こうした絵は役者に見所を聞いて描いていたそうです

この辺は写楽以外に歌川豊国の作品が多かったように思います。この次の部屋もひたすら役者絵です。

261 十返舎一九 「三代目市川八百蔵の八幡太郎源のよし家 」
手甲をつけた武士の姿を描いた作品で、作者名を見てちょっと驚き。結構、細密に描かれていて、周りの作品にも引けをとっていないように思いました。結構多才な人だったんですね。

この辺りから版の比較の展示となっていました。同じ絵柄でも版が違うと雰囲気もかなり違います。丁度、近くの西洋美術館でやっているレンブラント展でも似た趣向の展示がありましたが、版画は版の違いも見所の1つだと思います。
 参考記事:レンブラント 光の探求/闇の誘惑 (国立西洋美術館)

63 65 東洲斎写楽 「市川鰕蔵の竹村定之進」 ★こちらで観られます
朱色の着物を着た役者の大首絵が2枚展示されていました。右の65番は肩の衣は黒っぽいのに対して、左の63番は黄色っぽくなっています。背景の暗さも違うし、鮮やかさに差があるようでした。

70 69 東洲斎写楽 「初代尾上松助の松下造酒之進」 ★こちらで観られます
右手で扇子を持つ刀を差した浪人役を描いた作品です。だらしない頭や無精ひげなどが落ちぶれた感じがするかな。これも2枚の版違いが並んでいて、右の69番は着物の紋が日の丸の扇子を描いたものに見えます。一方、左の70番はその後に刷られたもので、扇子の中に「松」と書かれている紋となっていました。
他にも保存状態の違いで変色の様子が分かるものや、先述の蔦屋展でご紹介した「二代目嵐龍蔵の金かし石部の金吉」の版違いなどもありました。


ということで、今日はこの辺までにしておきます。他の絵師の作品もあるので、ちょっと点数が多すぎるような気もしますが、贅沢な悩みでしょうかw これを観ておけばいっぱしの写楽通になれると思います。
次回の後編では1期~4期の作風の変遷がよく分かるコーナーについてご紹介しようと思います。


 後編はこちら


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Comment
No title
おはようございます。
σ(^○^)も見ました。
でも作品はあまりみなかったかもぉ(汗)
次の展覧会会場の設営に入る事になっていますので、
現調でした。
次は98.9%
ワクワクです。
Re: No title
>σ(^○^) さん
コメントありがとうございます。
この展示は結構混んでいたので、部屋を観て回るのも大変だったのでは?w
作品と部屋がマッチしているとより楽しく感じますよ^^

次は「空海と密教美術」ですね。これは貴重なものが出てきそうです。
また裏話を楽しみにしております^^
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