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フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線 【森美術館】

記事が前後しましたが、前回ご紹介したお店でお茶をする前に、六本木ヒルズの森美術館で「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」を観てきました。

P1190260.jpg

【展覧名】
 フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線

【公式サイト】
 http://www.mori.art.museum/contents/french_window/index.html

【会場】森美術館  ★この美術館の記事  ☆周辺のお店
【最寄】六本木駅
【会期】2011年3月26日~8月28日
 ※営業時間・休館日・地図・巡回などは公式サイトでご確認下さい。

【鑑賞所要時間(私のペースです)】
 1時間20分程度

【混み具合・混雑状況(土曜日17時頃です)】
 混雑_1_2_3_4_⑤_快適

【作品充実度】
 不足_1_2_3_④_5_充実

【理解しやすさ】
 難解_1_2_3_④_5_明解

【総合満足度】
 不満_1_2_3_④_5_満足

【感想】
先日ご紹介した森アーツセンターギャラリーと同様にこの日は六本木ヒルズ自体が空いていて、ゆっくり観ることができました。

さて、今回の展覧会はフランスの現代アートの賞である「デュシャン賞」の10周年記念となっていて、その受賞作・ノミネート作が28名120作も並んだ展示となっています。何年か前に、ここでイギリスの「ターナー賞」の展示をやったことがありますが、それと雰囲気は似てたかな。今回も非常に面白い内容となっていましたので、気に入った作品をご紹介していこうと思います。
なお、今回の展覧会には作品リストが無かったので、作品名はメモを元に記載しています。間違っていたらすみません。

まず最初にデュシャン賞の名前のもととなったマルセル・デュシャンの作品が並んでいました。

マルセル・デュシャン 「L.H.O.O.Q」
これはレオナルド・ダヴィンチの「モナリザ」の複製に髭をかいた作品です。小中学生が教科書にやるような感じで描き足されていますw デュシャンはこうした元の作品の意味を変えてしまい、本物としての価値を無視するような作品で美術界に波紋を呼んだ人です。 解説によると、この作品の名前をフランス語で読むと「彼女は発情している」という意味になるそうで、モナリザが可哀想になってくるほどでしたw

マルセル・デュシャン 「泉」
これはデュシャンの作品でも有名な、男性用便器にサインをしただけの作品です!w これはレディメイド つまり既製品を芸術作品としたもので、こんなのが芸術なの??と驚いてしまいますが、これを見出したことが重要なのだとか。出品予定だった展覧会には拒否されたようですが、美術の意味を問いただすきっかけとなったシリーズです。

この辺にはシュルレアリスム展でもあった瓶乾燥機そっくりのレディメイド作品などもありました。
 参考記事:シュルレアリスム展 感想前編(国立新美術館)

マルセル・デュシャン 「フレッシュ・ウィドウ」 ★こちらで観られます
恐らく、今回の展覧会名はこの作品から来ていると思います。見た目は青いドアのガラスの部分が黒くなっているというもので、観ただけでは意味までは難解かな。フレンチウィンドウをもじってフレッシュ・ウィドウ(なりたての未亡人)というタイトルが面白くて、タイトルを考えるとこの黒が喪服を思わせるようにも見えました。

ここから先がデュシャン賞の受賞作・ノミネート作のコーナーとなります

ワン・ドゥ 「中国日報-都会は男性のプロフィール トップ10」
くしゃくしゃに丸めた新聞紙?が巨大化したような作品で、金属の置物のようにも見えます。解説によると、これは情報に踊らされていることを表現しているようでした。タイトルは新聞の内容かなw

ブリュノ・ペナド 「無題 大きな一つの世界」 ★こちらで観られます
右手を突き上げているタイヤのマスコットで有名なミシェランマンの像です。全身がチョコレートみたいな茶色で頭はアフロという面白い格好をしていて、胸には「大きな1つの世界」という意味の赤い文字が書かれていました。解説によると、常識にゆさぶりをかけてくるとのことでした。私の見解としては、フランスは移民を受け入れているので、これは黒人に関係しているんじゃないだろうかと思いましたが真意や如何に…。

リシャール・フォーゲ 「無題」 ★こちらで観られます
壁に影絵のような彫刻のシルエットが描かれた?作品です。よく見ると、ブランクーシやピカソ、ドガ(昨年、横浜美術館にきた踊り子の彫刻)などの作品の影となっていて、それがランダムに並んだ感じがかえって関係性を考えてしまいました。理屈を考えなくても洒落た雰囲気がして楽しいです。
 参考記事:ドガ展 (横浜美術館)

この人の作品は他にも面白いものがあって、先ほどのミシェランマンの作品の近くには、子供用の自転車にカラフルなチェーンロックがびっしりつけられている作品もありました。フランスは自転車泥棒が多いらしいので、その皮肉なのかな。

グザヴィエ・ヴェイヤン 「ブラインド・スカルプチャ(ルノー)」
これは板が何枚かならんで輪切りになった人体のようにみえる作品です。横からみるとただのいたなのですが、立って見ると人間型に見えるのがちょっと不思議。 解説によると、ギリギリのところまで単純化しているそうで、CTスキャンを彫刻にしたような感じでした。面白いです。

マチュー・メルシエ 「無題」
これは先ほどご紹介したデュシャンの「フレッシュ・ウィドウ」と同じような形のフレンチウィンドウ型の作品です。しかしこちらは全部透明となって、だいぶ違う印象を受けます。展示方法も面白く、53階にあるこの部屋の窓の前に置かれていて、東京の展望が透けてみえるという趣向です。透明の窓は浮かぶようで、シュルレアリスム的な光景となっていました。 解説によると、透明にすることで機能やデザイン性が抽象化されるそうです。デュシャンへの挑戦なのか回答なのか…、野心的なものを感じる作品でした。

ドミニク・ゴンザレス=フェルステル 「エグゾトゥーリスム」
これは映像作品で、赤い雲のようなものを背景に、立方体や星のようなもの、アメーバ状のものが漂っているように見える映像です。これはデュシャン賞が開催されたパリのポンピドゥーセンターでの受賞者の紹介のために作られた作品だそうで、宇宙というか地獄というか、異世界を思わせる作品でした。

ローラン・グラッソ 「ホーンの視覚」
こちらも映像で、明るい森の中の道を延々と歩いていく様子を、歩いている人の視点から観たような感じです。ある程度進むと折り返して同じところに戻っていくのですが、たまに虫か葉っぱかわからないものが、蝙蝠のようにわさわさと舞っているのがちょっと怖いw あちこちに光が当たり明るく綺麗な森のはずなのに、何故か不安を感じる作品でした。本当の意図はわかりません^^;

クロード・クロスキー  作品名失念…
円卓に置かれたたくさんの白黒の写真から成る作品です。これは実際に触って裏返したり場所を動かしたりできるのですが、裏面にも写真が印刷されていて、どうやら航空写真の一部のようです。解説によると、この表裏は地球上の表裏の地点(日本で例えれば、表が日本で裏はブラジルという感じ)を撮ったものらしく、地図とは違った空間表現となっているようでした。鑑賞者によってごちゃごちゃに置かれているので、2つの地点のコラージュのようになっているのも面白かったです。

シプリアン・ガイヤール 「不信の時代の信仰」
これはまるでレンブラントらが活躍した17世紀のオランダの銅板画を思わせる絵画作品です。(連作的なタイトルのシリーズが数点) 中世風の自然の風景の中に、突如として近代的なビルが描かれ、ビルは風化した廃墟のようにも見えます。解説によると、我々の生活を未来人が観たような感じで描かれているそうで、批判的な意味が込められているようでした。 シュールで面白い作品です。
 参考リンク:レンブラント 光の探求/闇の誘惑 (国立西洋美術館)

トーマス・ヒルシュホーン 「スピノザ・カー」 ★こちらで観られます
これは自動車を使った作品で、これでもかというくらいガラスのコップやダンボール、本、スピノザというオランダの哲学者の肖像 などのガラクタが貼り付けられています。明らかにセロテープとか糊でつけられていて安っぽさが漂っていますが、その密度は作品に費やされた労力と圧倒的なパワーを感じさせました。これはスピノザにちなんだスピノザフェスティバルで、作者が一般の人と一緒に作ったそうです。民衆パワーの具現といえるかも。

フィリップ・ラメット 「合理的浮上」
重力が90度回転してしまったような世界で、ビルの屋上の縁に立っているスーツの男性を撮った写真作品です。この男性は作者だそうで、写真だけみると写真を合成してシュールな感じを出したのかな?と思いましたがそうではありません。実はこれは実写で、気球で作者を吊り上げて、90度回転した世界に立っているようにしたようです。
他にもこれが実写なの!?という作品が何点かあり、海中で昼寝をする姿や、ひょろ長い彫刻の上に立っている姿、海の上を歩いている姿 などの写真があり驚きの連続でした。非常に面白い作家です。

サーダン・アフィフ 「どくろ」 ★こちらで観られます
四角い箱からたくさんの銀色の玉が転がりだしたような作品です。銀の玉は鏡のようになっていて、中には髑髏のように見える影が映っていて驚きます。これは、天井のブロック模様が歪んで写ったもので、天井を観ても髑髏には見えませんが球体に歪むと髑髏になるという…。一種のトリックアート的な面白さがある作品でした。 メメント・モリ(死を忘れることなかれ)という伝統的な題材にもなっているようです。

最後はアパルトマンの1室のようなコーナーで、コレクターの所蔵品を並べて「コレクターのアパルトマン」を再現していました。こんなお洒落な家に住みたいものですw


ということで、予想以上に面白い展示となっていました。特に後半は面白かったです。地震の影響で展示できなくなった作品も結構あったようですが、これだけでも充分に楽しめました。
同時開催のMOMプロジェクトでは畳に絵を描く田口行弘 氏の展示となってました。こちらも面白い内容でしたので、ワンセットで楽しめます。
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